ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】   作:月乃杜

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 遅くなってしまった。




第67話:アーディ・ヴァルマの目覚めは間違っているだろうか

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 二四歳の成人女性だったアルフィアが八歳児な幼女と化した翌朝、ユートは治療用ポッドに裸体を晒して入った少女を見つめている。

 

 ガネーシャ・ファミリアのLV.3、冒険者というか憲兵として活動をしていた一五歳の少女であるアーディ・ヴァルマだ。

 

 右腕と左脚が喪われ、胸も半ばから吹き飛んでいて痛々しい姿ではあるものの、元が良かったから美少女としてギリギリ視れる姿だった。

 

 尚、ユートにリョナ嗜好は全く無いから今現在のアーディ・ヴァルマに興奮は覚えない。

 

 欠損部位が存在する以外の傷は治療が済んではいるものの、右腕と左脚と右側胸部の喪われてしまった部位が悲しみを思わせるが、ユートの中には当然ながら彼女を完全に治療する為のプランは幾つかが存在している。

 

「起こすか」

 

 スイッチオンで覚醒作業が行われて、アーディ・ヴァルマの意識が浮上した。

 

『こ、こは……私、どうしたの?』

 

 目を開いて呟くアーディ・ヴァルマはキョロキョロと辺りを見回し、自分が素っ裸なのに気付いて頬を赤らめるけど更に水の中で慌てる。

 

『え、水? 溺れ……って、息が出来ているね。いったい何がどうなってるんだろう? …………えっと、君は誰?』

 

 漸くポッド外のユートに気付いたらしく訊ねてくるアーディ・ヴァルマ、そして相手が男である事に気付いて身体を隠そうとして右腕が無いのに気が付いて驚きの表情に。

 

『これは……あ、そうだよね。あんな爆発で生きているだけでもみっけもんかな』

 

 闇派閥に属していた幼女、隠し持っていた自決装置により幼女とアーディ・ヴァルマは吹き飛んだ……筈であった。

 

 それでも彼女は生きている。

 

『若しかして、君が助けてくれたの? だったら御礼を言わなきゃだね』

 

「ああ、アーディ・ヴァルマ。君を救ったのは確かに僕だな。とは言え、見ての通り君の肉体には複数の欠損が有る」

 

『……だね、とても悲しいけど私は今生きてる。それは御礼を言いたいよ』

 

「そうか」

 

『私はどうすれば?』

 

「取り敢えず欠損部位以外の治療は済んでいる、だからポッドからはすぐにも出してやれるんだ。欠損部位の治療に関しては要相談って処だな」

 

『え、治せるの? ひょっとしてアミッドに治療を頼むとか?』

 

「彼女でも欠損は治せないだろ」

 

 治せるならナァーザの右腕も生身の筈であり、同じ値段か更に高くなるにせよ借金をこさえでもミアハは支払ったろう仮令、ディアンケヒトから土下座を命じられたとしても、自身の送還を命じられたとしても……だ。

 

 アミッド・テアサナーレは高潔な治療師であり未だに一九歳――ユートに於ける現代――という若さ、大抗争の時代は齢一二にしてその存在感を強く醸し出していたものである。

 

「幾つか治療プランは有るが、それのどれを選ぶかはアーディ・ヴァルマ……君自身で決めろ」

 

『わ、判った』

 

「じゃあ、治療ポッドから出す」

 

 内部の治療溶液が排水をされて水蒸気によって溶液を洗い流されると、今度は温風がアーディ・ヴァルマの身体を吹き付けて乾かしていく。

 

 一通りの作業が終わるとブンと音を響かせて、強化硝子で出来たポッドの扉が開いた。

 

「よっと」

 

「あう……」

 

「ん? 傷自体は癒えた筈なんだけどな。まだ痛むのか?」

 

「ち、違うよ。流石に素っ裸だから恥ずかしい。これでも一五歳で花も恥じらう乙女なんだよ?」

 

「我慢しろ。抱いてる時なら兎も角、今の状況で欲情……はするが襲ったりはせんよ」

 

「欲情はするんだ」

 

「何なら下半身を触ってみるか?」

 

「え?」

 

 アーディ・ヴァルマは思わず左手で言われた通りに股間を触ると……

 

「か、硬いよ」

 

 すぐにも硬くしたユートのJr.が当たって真っ赤な顔で呟いた。

 

「か、片腕片脚とオマケに胸の部位が無い傷だらけの女に欲情したの?」

 

「リョナ……傷だらけなのが好きなんじゃなく、単に裸の女の子の肌の温もりに反応してるんだ。男の性器なんて盛り易いからな。それにアーディ・ヴァルマは美少女なんだから仕方が無いんだと諦めてくれ」

 

「う、判ったよ」

 

 最初の科白では意味が通じないとすぐに気付いたユートは、そこら辺を言い直して取り敢えずは容姿の良さを誉めておく。

 

 実際、見た目にボーイッシュな髪型ではあるけど残された胸部は充分な張りがあって巨乳であると云えたし、腰付きも括れていて春姫を目当てに行った娼館で見掛ける戦闘娼婦(バーベラ)にも負けない。

 

 某・LV.5なアマゾネス(笑)は勿論の事だったけど除いてだ。

 

「さて、着いた」

 

「……へ? べ、ベッドって! 幾ら何でも気が早くないかな? 私達って会ったばかりだし!」

 

 愉快な勘違いをするアーディ・ヴァルマに対して嘆息をするユート。

 

「ヤりたいなら遠慮無くヤるけど? それとも、治療の説明を冷たい床に座ってして欲しいか?」

 

「え、あ……はい。柔らかなベッドの上で充分に嬉しいです」

 

 勘違いに気付いて元から男に裸を晒しているという気恥ずかしさから赤い顔を、更に赤面させてしまったアーディ・ヴァルマは頷きながらベッドを所望した。

 

「まぁ、選択した治療法次第では本来の使い方へシフトするんだけどな」

 

 幸い呟きは聞こえなかった様だ。

 

 ベッドに座らせると早速とばかりにストレージから紙の束を出して渡す。

 

「これは?」

 

「治療プラン。幾つか有る中から好きなのを選ぶと良い。だけど当たり前で物によっては莫大なる代金が発生する」

 

「う゛……代金かぁ」

 

 紙を見ると共通語で『義体プラン』と書かれており、簡素な人型の絵に人工的な腕や脚を装着している感じで描かれていた。

 

「義体プラン?」

 

「そう。言ってなかったけど僕は七年後の未来から来ていてね、ミアハ・ファミリアの娘が良い具合に焼き肉状態にされた挙げ句、生きた侭で美味しく喰われた事件があったんだが」

 

「ちょっ、焼き肉が食べられなくなるじゃない。ってか七年後の未来!?」

 

「尚、その未来のガネーシャ・ファミリアの中にアーディ・ヴァルマは存在しない」

 

「っ!? それってまさか……」

 

「あの幼女の自決で君は粉々に吹っ飛んで死んだみたいだ。未来に生き残っていたリューから聞いた話だけどね」

 

「リューって……リオン?」

 

「うん? そうだが、何でリオンの方で呼んでるんだ? そういやアストレア・ファミリアの連中もリオンと呼んでいたか」

 

「彼女がリオンと呼んでくれって言ってたから、私もアストレア・ファミリアの皆もそう呼んでるんだ。真名で呼ばないで欲しいってさ」

 

「七年後では“豊穣の女主人”の連中はリューって呼んでいたけどな」

 

 森の掟の違いだろうか? レフィーヤは自身のセカンドネームのウィリディスを同胞以外には呼んで欲しく無いと言っていた。

 

「ああ、リューは七年後には要注意人物としての手配を受けていたな。それが“疾風”のリオンだから敢えてリューと名乗ってるんだな」

 

「要注意人物?」

 

 今から二年後にリューは闇派閥から支援者に、果ては怪しければ罰するレベルで大暴れしたからギルドは彼女の冒険者資格や権利を剥奪したし、狙われた連中はリューに対して賞金まで掛けていたくらいに恐れていたらしい。

 

 尤も、今は取り下げられている。

 

「その話は扨置きアーディ・ヴァルマ、次の治療プランを見ていこうか」

 

 そう言われて気になりはしたが別の紙に書かれたプランを見た。

 

「生体義体プラン。機械的な義体ではなく細胞から培養した生体部品を用いる手法……ね」

 

 良い様にも聞こえるが、鍛えるのは生半な事では無いからリハビリも辛いだろう。

 

 魔導機械型ならばディアンケヒト・ファミリアの“銀の腕”を見知っているし、オスカー・オルクスが同じ様なプランを構築していた。

 

「で、此方は……念能力の再設定プラン? 意味がよく判らないよ」

 

 ユートの念能力である“人物再設定”であれば、喪われた欠損部位を再設定で戻す事が可能。

 

 義体より遥かに安全確実だ。

 

「そして代価がえげつないな」

 

 どのプランも基本的に億越えだったし、“人物再設定”が一番の高価であり然しながらプランとしてみれば一番良い。

 

 だけど義体プランには無い支払い方法が唯一、書かれているのが“人物再設定”プランだった。

 

「これ、支払いがお金じゃなくても良いっぽいんだけど……」

 

「ああ。それは女性限定だけど身体での支払いも受け付けている」

 

「何で?」

 

「前者のプランはどうしたって大金が必要になるプランだけど、三つ目のは僕の念能力という魔法とは異なるロジックの技術のみを使うからだよ。つまり支払い自体は必須だけど必ずしもお金である必要性は無いんだ」

 

「な、成程」

 

 義足義肢義手を機械的に造るにせよ、生体部品として造るにせよ、ドブにでも棄てるのかと言いたくなるくらいの大金が要るのに対して、三番目のプランは消耗するのはユートの精神力や体力であり、お金の掛かる某かという物の消費は一切が必要無いのである。

 

 だからこそ代金はユートの胸先三寸で、女性限定ではあれど肉体関係を……でも済んでいた。

 

 アーディ・ヴァルマは致命的なくらいお金が無いので、選べるプランは実質的に三つ目のプランのみという事になる。

 

 果てしなく貧乏という事では無い。

 

 別にお金の浪費が激しいといった意味では決して無くて、アーディ・ヴァルマもダンジョンには必要最低限潜っているのだけど、基本的には憲兵のガネーシャ・ファミリアとして仕事を優先的に行っており、単純に大金が無くても困らなかったから貯金も大した額には成らないのだ。

 

 況してや暗黒期と称される今の時代は、憲兵が確り働かないと不埒な輩は何処にでも湧き出てくるし、闇派閥なんて腐れた連中が幅を利かせているのが現状だった。

 

 正義を標榜するアストレア・ファミリアが率先をして働いてくれているものの、それでも闇派閥との闘いでファミリアの仲間が殉職だってするし人手不足は否めない。

 

 故に、お金稼ぎにダンジョンに行ってくる――何て出来る筈も無かった。

 

(お姉ちゃんに借金……無理だよねぇ)

 

 アーディ・ヴァルマにはシャクティ・ヴァルマという、義理でも何でも無い実の姉が居るけれど決してケチでは無いが大金は持ってない。

 

 ガネーシャ・ファミリアの幹部、次期団長とはいえ御給金はアーディ・ヴァルマとそんなに変わらないし、仮に倍の御給金であったとしても億を越えたヴァリスは持って無いだろう。

 

「そういえば、プランとは一切関係は無いけどさ……シャクティ・ヴァルマって知ってる?」

 

「ガネーシャ・ファミリアの団長だな、名前だけなら知ってるぞ。LV.5の第一級冒険者にして憲兵ファミリアの団長なだけに有名だからな」

 

「そっか、お姉ちゃんは普通に七年後も生きてるんだね。良かった」

 

 本来の世界線では自分が死んだっぽいから姉はどうかと思ったが、どうやら無事に暗黒期を生き延びてガネーシャ・ファミリアの団長を頑張って務めていると聞いて安堵する。

 

「で、プランはどうする?」

 

「か、身体で支払うならメリットは欲しいよね。他のプランに無いメリットって無いのかな?」

 

「治りが早い。正確には治すんじゃなく再設定をするだけだからな。それに機械型にしても生体型にしても結構な日数を入院しないといけないし、上手く着けても暫くはメンテナンス通いが必要になってくる。だけど再設定プランは元に戻すだけだからその日の内に終わる」

 

「確かにメリットが大きいね」

 

 この遅れた世界でも義肢の技術が存在するのはナァーザ・エリスイスの右腕を見れば明らかで、これはディアンケヒト・ファミリアにて製造された“銀の腕(アガート・ラム)”と呼ばれていた。

 

 ナァーザの名前はケルト神話の主神ヌァザから取られている為、ヌァザが喪った右腕をナァーザと同じく“銀の腕(アガート・ラム)”で補っている事からきている。

 

「君……あ!」

 

「どうした?」

 

「あの、さ……私は代価を身体で支払うんなら、君とシちゃうんだよね」

 

「何を当たり前な事を」

 

 腕組みして嘆息するユート。

 

「それなのに君の名前すら私は聞かされてない、七年後の未来から来たって胡乱な情報だけだよ」

 

「……あ」

 

 そういえば状況の説明をしていただけで名前を伝えていなかった気がする。

 

「そうだね、まだ名乗っていなかったよ。僕の名は……アストレア・ファミリアの連中には双子座のサガと伝えたが、君には普通に本名を教えても構うまい。アテナの黄金聖闘士で双子座(ジェミニ)の優斗だ」

 

「アテナ? それが君の……優斗のファミリアの主神様の名前? けどアテナ様なんて神様は居たっけな?」

 

「サーシャが、アテナが降臨したのは六年後だ。ヘファイストスの所で一年間を居候して過ごしたらしいからね」

 

「まだ降臨してない……あれ? じゃあ、優斗の恩恵ってどうなってるの? 主神が天界に送還されたら恩恵は封印される筈だよ。降臨していないなら送還されたのと状況自体は同じだよね?」

 

「ああ、恩恵ならこの時代に跳ばされて来てから封印状態だな」

 

「え、それは大丈夫なのかな?」

 

「問題無い。LV.2だから数値なんて誤差の範囲でしかないからな」

 

 ユートにとって“神の恩恵”は最近手に入れたというだけのオマケ、魔法は元々が使えていたのを此方の世界用に調律しただけだから本来の能力で使えたし、スキルは使えなくなったけど使えなくて困る事態になる様なモノでも無い。

 

 普段からバンバン使っているのなら未だしも、ティオナやリリやナァーザを相手にセ○クスをする云ってみれば大義名分的なモノ、【権能発詔】は権能を扱うのに魔力で肩代わりが可能なだけでしかなく、【聖剣附与】も鍛冶師でもあるまいし普段から鍛冶をしてないユートは使う事が余り無かった。

 

 正確にはナァーザの場合はポーションの水増しをして、味を甘味料で整えた劣化薬を売りつけてきた賠償代わりに抱いただけだが、余りの快感と好きだった男がバカ高い義手を自分の為に眷族達から見放されても手に入れてくれた主神であり、しかもこんな目に遭った理由が主神のポーションバラ撒きが原因で、流石に見放しこそしないにしても恋愛感情は主神への敬意に置き換わってしまっていて、一夜だけの関係の筈がズルズルと続いているだけに権能云々的には総じて困ってない。

 

 例えばオッタルやアイズが同じ状況になったら可成り困るだろう、アレン・フローメルにしてもユートが指針を打ち出さなければ自暴自棄になっていた可能性がある。

 

 まぁ、オッタル辺りはムスッとした表情が余り変わらないイメージもあるから慌てる姿がユートも思い浮かばなかった。

 

「普通は凄く困るんだよ」

 

「僕は聖闘士。元より“神の恩恵”ではなく自らが鍛えた肉体で闘えるからな。少なくとも“猛者”に負けたりしない程度には……ね」

 

「“猛者”って、あのフレイヤ・ファミリアの? まっさか~。だって彼はLV.6で私なんかじゃ足下にも及ばないんだよ? 猪人(ボアズ)だから力も耐久も始めからヒューマンの私より強いしね」

 

 猪人は総じて筋肉質でドワーフに近い肉体的な特性で、力と耐久が高くて俊敏や器用は低めといった感じだろうか? 魔力は矢張り高いといったイメージには無い。

 

 ヒューマンは勿論だが個人差こそあれだいたいが平均的な身体能力で、小人族は全体的にヒューマンと変わらない平均値が低い感じだろう。

 

 個人差――中には所謂、持っているという者も居るのが常であり、例えば元ヘルメス・ファミリアのメリルは基礎魔力値が高かったのであろう、魔法を修得して魔力の上がり方も良かったらしくLV.3にまで駆け上がっている。

 

 同じく現ヘルメス・ファミリアの小人族であるポットとポックは、最前線に自らの意志で出張って闘っているけど漸くLV.2。

 

 二人は正に平均的な小人族だった。

 

 ポット――少女の方だけなら“情交飛躍”を使えば幾らでも強く出来るが、やり方がえげつないのと双子のポックと共に強くなりたいらしいから、そこら辺は普通に断られている。

 

 尚、七年後であるユートの本来の時間軸に於けるα世界線ではポットとポックは、愚者(フェルズ)から受けた依頼でキークスやエリリーやホセ等と共に死亡をしている筈だった。

 

 生きているのは蘇生したから。

 

 それは兎も角、ヒューマンで平均的な能力だったアーディ・ヴァルマはLV.3に成った現在、矢張り割りかし平均的に上がった状態。

 

 力と耐久に優れ、ドワーフよりは俊敏も高いであろう猪人なオッタルは、LV.6とアーディ・ヴァルマの倍、器用や魔力以外では初めから太刀打ち出来なかっただけに同じLV.でもサシでは敵わないと思われる。

 

「実際、LV.7のオッタルに僕は勝っている。行き成り全力全開手加減無しで来ればもう少しくらいは闘えたろうに、様子見を優先してきたからってのも有るけど短時間で終わったな」

 

「レ、LV.7!?」

 

「どうやら少し未来、ゼウス・ファミリアに所属していたザルドって男との闘いの末に勝ち抜き、それでランクアップをしたらしいな」

 

「未来? どういう事?」

 

「僕は少し未来に顕れた。闇派閥の首領となったエレボスが連れて来たらしいな」

 

「た、大変だよそれ! お姉ちゃん達に報告をしないと!」

 

「駄目だ」

 

「な、何で!」

 

 余りにも冷たく言い放つユートに驚愕をしながら叫ぶアーディ・ヴァルマに対し、ユートは決して表情を変えずに告げる。

 

「そんな事実は七年後に無い。君は今の時点で既に死者として認識されているのに、現れたりしたら世界が僕の居た時間に繋がらなくなる。それは都合が悪いんだよ」

 

「けど!」

 

「仮に教えたとしてもザルドともう一人が現れ、オッタルやアストレア・ファミリアと闘うというのは変えられないし、万が一にも無理矢理にでも変えたりしたら余計な犠牲すら出るぞ? そして結果は僕が元の時間に回帰が出来なくなるとか、そんな無意味処か害悪な行為をさせるものかよ」

 

「が、害悪……」

 

「それに此処は星の海、迷宮都市が存在している惑星から約一光年は離れた位置に在るユニクロンの内部。抑々にして君は僕が連れ出さない限りは元居た場所には帰れない」

 

「なっ!? って、意味が判らないよ! 惑星とかいちこうねんって何?」

 

 ユートが手を振るとブンッと音を鳴らしながら顕れる球体、それには何やら青色が大半を占める中に茶色が混じったモノだ。

 

「惑星とは普段から君らが住まう大地を意味している。惑星の名前――ワールドネームは君らが決めて無いなら無名という事になる。一光年ってのは一秒間に約三〇万kmを進む光が一年を掛けて進む距離の事だ」

 

「よ、余計に解らなくなった」

 

 概念すら識らないからには理解が及ばない為、地頭は悪くないアーディ・ヴァルマにも理解が出来ないのは仕方が無い、アルフィアも概念を識らないから解らないというのが有った様に。

 

「其処らは君が望むなら勉強が出来る様にしてやるよ。どうせ七年間はこのユニクロンの内部に在るインナースペースの惑星に居るしか無いしな」

 

「七年間も!?」

 

「言ったろ? 僕は七年後の未来から来たんだ。そしてアーディ・ヴァルマは七年前の時点で自爆テロにより死亡している。少なくとも元の時間軸に回帰するまで君は万が一にも誰かに視られてはならないんだ」

 

「そんな……」

 

「事実上の軟禁生活だが、さっきも言った通りに望むなら勉強をさせる。家も建ててやるし食事も豪華にしてやるよ。太らない程度に愉しめ」

 

「つまり、帰れないだけで自由に過ごしていろって事なの?」

 

「まぁね。それとこの惑星には幾つかダンジョンが存在している」

 

「ダンジョン!」

 

「君の恩恵は破棄をするから“神の恩恵”から成るステイタスは無くなるが、異世界のステイタスを施してやるから探索してみると良い。それで強く成れば新たに“神の恩恵”を得た際にLV.1だとは思えない強さに成るだろうな」

 

「判ったよ……って、ん? 君が恩恵をくれるって意味なの?」

 

「ちょっと違う。異世界にはシステム的に似て非なるステイタスが存在するんだ。この世界程にはゆっくりじゃないレベルアップもするし、経験値が一定にまで上がれば勝手に上がる」

 

「へぇ」

 

「とはいえ一長一短でね。レベルアップするまではステイタスも上がらないんだ」

 

「それは確かに」

 

 “神の恩恵”は主神がアクティベートをしないと上がらないけど、それでもその気になれば毎日だって基本アビリティを上げられるのに相反して、勝手にレベルアップしてくれるけどステイタスが上がるのはその時だけ。

 

 成程、一長一短である。

 

「それと、身体はレベルと関係無く鍛えておいた方が良いぞ。確かにレベルアップで能力は上がるだろうが、若し“神の恩恵”みたいに無くなったら困るからな」

 

「それもそうだね」

 

「それじゃ、いつまでも肉体の欠損でもあるまいから始めるぞ」

 

「う、うん」

 

 ユートが全身全霊でオーラを集中して念能力を発動させると、仮想インターフェースが備え付けられたベッドが顕現化された。

 

「じゃあ、台に仰向けで寝ろ」

 

「判った」

 

 アーディ・ヴァルマが左手で大事な部位を隠して寝ころぶと、ユートはコンソールを操作していって過去にまで情報を遡行させていく。

 

 司波達也がエレメンタル・サイトを通じてやっているアレに近いが、遡るのは二四時間に限定をされるものでは無くて必要なだけ遡らせた。

 

 手脚や胸部が確り有った時点にまで遡行させ、それを現代のアーディ・ヴァルマに重ねる。

 

 仮想体だけどアーディ・ヴァルマは五体満足な姿で浮かび上がっていた。

 

「基礎はこれで良し」

 

 単純に肉体を元に戻すだけならこれで終わり、だけどユートはこの時点から更にアーディ・ヴァルマの姿を過去へと遡らせると、だいたい八歳くらいのミニマムな姿へと姿を変えさせる。

 

 七年後に元の一五歳にする為と、この年齢での鍛え直しをさせるのが目的であったと云う。

 

 実際、一五歳の侭で七年を迎えたら二二歳に成ってしまう訳だが、普通ならそれで正解であると断言も出来てしまうけれど、それはそれで伸び代を潰しているみたいで勿体ないと考えた。

 

 前世での再誕世界にて【聖闘士星矢】に於ける黄金聖闘士達は、その天才的な資質を以て九歳か其処らで修業をして、僅か一年で卒業して聖衣を授かったのだとか。

 

 故に半数もの黄金聖闘士が二〇歳前後であり、一番の歳上が双子座のサガが二八歳、射手座のアイオロスで二七歳、少し上で蟹座のデスマスクと山羊座のシュラが二三歳で魚座のアフロディーテが二二歳という若さだった。

 

 唯一、天秤座の童虎だけは前聖戦を生き残った上で教皇シオンみたいな代替わりもしてなくて、二六一歳というとんでもない老人聖闘士である。

 

 尚、教皇シオンは童虎みたいな女神の秘術を施される事も無く長生きしていた訳だが、これに関しては小宇宙を究極にまで燃やしてセブンセンシズに至ったが故に、老化をしてても細胞が元気に分裂を繰り返してくれたのであろう。

 

 なら唯一、第八感にまで目覚めていた乙女座のシャカであれば、教皇シオンよりも少しばかりは若い姿で生き残れた可能性もある。

 

 戦死をしなければ。

 

 飽く迄も可能性の話、夢の中か事実として生きたのかは判らないが龍星座の紫龍は普通に老いて死んだ……みたいに描かれていたし。

 

 次元の狭間で視た夢か現か、紫龍本人にさえも判らないそんな人生であったと云う。

 

 因みに、矢っ張りというか一輝は元の守護星座が鳳凰星座だからか、そして瞬はハーデスの器として魂を受け容れたからか? 長生きをした。

 

 決して二人が死ななかった訳では無いけれど、ユートと二百数十年後の聖域にて新しい聖闘士の指導をしたり、教皇と成って新しいアテナを迎えるユートの補佐役を任されたりしていたものだ。

 

 完全に人間の知り合いが居なくなった時点で、ユートは新しいアテナの許可の許に新教皇を新たに選出し、手土産代わりに双子座の黄金聖衣を貰ってから逆に、自分が造った双子座の黄金聖衣を置き土産として再誕世界を離れたのである。

 

 勿論、古い時代の人間がだ。

 

「ふむ、未来的にもう少しスタイルが良くなりそうだから一応は弄るか」

 

 但し、規則正しく学び遊び食べて眠るきちんとした生活リズムで暮らしていく事が大前提。

 

 例えば食っちゃ寝して碌に動かない人間が肥えずにスタイルが良く成るなど、よっぽど人生ってやつを舐め腐った才能の持ち主ぐらいだろう。

 

(ダンジョンだけでなく街以外のフィールドにも魔物が湧出する惑星アドベンチャー、はっきりと言って名前は判り易さ一直線に付けたけどな)

 

 食糧増産用惑星ユニウスセブン、特殊食材増産用惑星トリコ、海洋惑星オーシャン、機械生産惑星マシーン、金属生成惑星メタリオンなど判り易く名前を付けていた。

 

 そして惑星アドベンチャーは冒険者育成用で、ゲーム宛らに魔物が湧出する仕組みである。

 

 それはオルクス大迷宮みたいな環境だったし、仕組みとしては迷宮都市オラリオに近い。

 

 違うのは漂う瘴気が魔物に変換されるという、とある世界に於ける魔物の湧出システムを組み込んだという事、これにより魔物の死亡は=瘴気への拡散=魔物が湧出というループを作り出す。

 

 迷宮都市のダンジョンとは多少異なるシステムではあるだろうが、少なくとも似て非なるモノであるのは間違い無い筈だ。

 

 尚、ダンジョンでモンスターの素材とは死んだ人間も含まれている。

 

 瘴気が比較的だが少ない地に『始まりの街』と名付けた街が存在していて、最初に惑星アドベンチャーに降り立つ際には此処が選ばれる手筈。

 

 レベル1から鍛え直しなアーディ・ヴァルマからしたら丁度良い塩梅だろう。

 

「良し、これで終わりだ」

 

 最後の調律も終わってエンターキーを押したら作業も全過程を終了、アーディ・ヴァルマが目を覚まして起き上がると自分を見つめて驚く。

 

「ち、縮んでる!? 胸もペタンコで腰回りの括れも寸胴に……何で!」

 

「八歳にまで戻したからな」

 

「八歳ぃぃ?」

 

「折角だから惑星アドベンチャーで八歳児としてアドベンチャーズギルドに登録しろ。レベル1の状態から始められるから」

 

 ユートは笑いながら言う。

 

 惑星アドベンチャーはスタートが【Wizardry】に近く、バトルスタイルは【ドラクエ】シリーズに近いというか、顕れるモンスターは【ドラクエ】から選出されている。

 

 最初に種族は固定、得られたボーナスポイントを割り振って職業を決めてからギルドに登録する流れで、これが【Wizardry】のシステムに近いという事だ。

 

 選べる職業は【ドラクエ】シリーズからだが、プレイヤーとなるべき者は最初に基本職から選ぶ事に成っている。

 

 アーディ・ヴァルマなら戦士か武闘家辺りか、少なくとも僧侶や魔法使の類いは有り得ない。

 

 基礎能力次第では盗賊もいける。

 

「それじゃ、恩恵を破棄するぞ」

 

「それで刺すの?」

 

「そうだよ。心配しなくてもチクッとする程度で痛いって程じゃ無いさ」

 

 本来のコレは痛いけど。

 

 ユートはアルフィアの時と同じ様に真名による解放を行って、アーディ・ヴァルマの胸部へプスッと突き刺してやる。

 

「あ、うっ……」

 

 LV.3とはいえ恩恵を喪った事で肉体が枷を填められたみたいに重くなり、アーディ・ヴァルマはガクリと膝を付いてしまった。

 

「その状態にひとまずは慣れようか。普通に動ける様になったら惑星アドベンチャーのアドベンチャーズギルドに登録する」

 

「わ、判った」

 

「より正確には、念能力を修得してからって事になるんだけどな」

 

「ね、念能力? 君が私の身体を弄くり回したっていう能力だよね」

 

 悪気は無いのだろうが、それはえらく人聞きの悪い言い方だった。

 

 

.




 基礎としては優秀なので発は扨置き他の念に関しては教えていく感じです。


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