ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】 作:月乃杜
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オーラを……となるとハッキリと云って面倒臭い事この上ない為、未来にてアイズ達にも教えた魔力式念能力を教えていくのが吉。
何より今のアーディ・ヴァルマは八歳児にまで姿が戻っており、流石にオーラをぶつけて生死を分ける覚醒は勿論だったけど、性行為でオーラをレッツラ混ぜ混ぜというのも憚れる。
実際の年齢が一五歳だとしても。
そんな風に説明したら……
「それなら何で八歳に戻したのさ? だ、抱いてから八歳に戻せば良かったのに」
何て言ってきた辺り、存外と期待をしていたのかも知れない。
「念能力には性能や精度を上げる為に制約と誓約で縛るって手法が有ってね、僕の“人物再設定”にも制約として使えるのはその人物に対して一生涯に一度だけってのが有る。つまり一回しか使えないからやるなら一度に全部再設定しないといけなかったんだよ」
「そっか~」
納得するアーディ・ヴァルマだったが、実際にこれには抜け道が有る。
一生涯に一度だけなら即ち息の根を……心臓を停めて死んで蘇生したならもう一度、“人物再設定”の対象として能力を使う事が出来るからだ。
とはいえ、冥王ハーデスの権能を使える今なら気軽に出来てしまう死亡から蘇生の流れだけど、それが可能になる前のハルケギニア時代や次元放浪期や再誕世界でも初期の頃は難しかった。
まぁ、ハルケギニア時代とはいっても次元放浪期の後の話だから、原典で起きた事件は全て解決済みだった為に使い所は無かったりする。
「それじゃ、念能力を修得しつつ惑星アドベンチャーで共に冒険をする仲間を紹介しようか」
「仲間?」
「実は君と同じく此処に来ているあの惑星出身の人間が居てね」
ユートがアーディ・ヴァルマを連れ出して違う部屋へと向かい、その部屋に居る人物の許可を得て入ると矢張り八歳児くらいのミニマムな少女、白い髪の毛に翠の瞳を持つ彼女はアーディ・ヴァルマを見詰めて溜息を吐く。
「其奴がお前の助けたというアーディ・ヴァルマとやらか。自己紹介をしておく、私は元ヘラ・ファミリアのアルフィアだ」
「え、元ヘラ・ファミリアのアルフィアって云ったらLV.7の“静寂”!」
「その通り。今のアルフィアは患っていた病から快復しているし、君と同様に恩恵は破棄しているけど一足早く念能力の修業をしている。従って、今の彼女はLV.3だった時の君より強い」
「……は? 恩恵無しで?」
「無しでだ」
“神の恩恵”は人間の持つ可能性を引き上げてくれる成長ツール、LV.が一つ違うだけで殆んど勝ち目というのが無くなる。
例えばLV.2がLV.3に若し勝てる可能性が有るとしたら、潜在値を高めていた上で此方がギリギリまで基本アビリティを高めて、より良いスキルか魔法を使うくらいであろう。
「昨日、君を起こす前にちょっと教えておこうかと思っただけなんだが……“才禍の怪物”とか言われてるだけあって、“発”以外の四大行と応用技を全部修得したんだよな」
驚いた事だが、本当にちょっと教えただけなのに『こうか?』と言ってやって見せたのだ。
お陰でアルフィアは“発”――必殺技となる念は兎も角、既に“隠”だの“円”だの“堅”だの“流”だのというのは使えるし、何ならユートが自身で構築をした“然”すらも覚えてしまっている。
水見式もやらせてみたら水の色が銀色に変化をしていた、どうやらアルフィアは魔導士なだけあってか放出系に適性が有ったらしい。
(確か放出系は短気で大雑把だったよな。間違い無くアルフィアだよね)
飽く迄もヒソカ・モロウがちょっと言っていた独断と偏見、つまり必ずしも一致している訳では無いが謂わばオーラ別の性格分析によると、放出系の人間は短気で大雑把となる。
尚、ユートは具現化系寄りの特質系となってはいるのだが、神経質? カリスマ? 何ソレ美味しいの? みたいな感じだった。
ユートはスマホを見る。
「そろそろ来る筈なんだが」
実はこのユニクロンにて、とある人物との待ち合わせの時間がもうすぐだったのだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ねぇ皆? なーんで私だけが七年前に呼ばれたんだろう?」
「さぁ? 優斗君の事だから無意味に呼んだ訳じゃ無いと思いますけど」
幾人かの明らかにヒューマンな人物達が口々に話しているが、ユートが喚ぶ予定の一人だけが時間軸の違う場所を指定されたとぼやいていた。
黒髪をボブカットにしていて服装はジャージ姿で胸部装甲が分厚い少女、彼女は普通に喚ばれる予定だとスマホでメールが着ている。
此処は謂わばハブステーションの役割も熟している星間帝王ユニクロン、その内部にユートが創り上げたインナースペースに創造された惑星で、名前は『クイーン』と付けられている【閃姫】の為に創られた星だった。
惑星クイーンはユートでさえ入る事を憚れる、そんな星でインナースペース内でも時空壁により隔てられており、その気になれば時空間移動をする為のシステムまで組まれている。
星帝ユニクロンはトランスフォーマーに於ける負の神――混沌を齎す存在、“
因みに云うと、トランスフォーマーで正の神はセイバートロン星として存在するプライマスだ。
このユニクロンは【スーパーロボット大戦α】の世界にて、GGGの長官である大河幸太郎からの依頼で木星に行った際に見付けた死骸。
恐らくサイバトロンとデストロン――若しくはオートボットとディセプティコンが連合をして、星帝ユニクロンとの血戦を敢行されて相討ちになったか或いは敗北を喫したのだろう。
その内部にコンボイ型のトランスフォーマーの
遺骸が横たわっていた為、ユートは遺骸を研究してユニクロンのコピーとも云える衛星型の母艦であるダイコンボイ、万能型トランスフォーマーのオプティマスプライムを造っている。
どちらも自意識は無い。
実は同じユニクロン内に居ながら、【閃姫】達は惑星クイーンに居るから基本的に会う事などは無くて、特製のスマホを使っての連絡が主な手法として使われていた。
彼女が使っていたスマホがそれであり、メール機能でユートからの連絡が着たという訳だ。
「ま、直葉の言う通りよね。取り敢えず私はクロノポートで七年前に行くわ」
「私達はその侭、オラリオの拠点に行けば良いんでしょうか?」
見た目に幼い――実年齢は数百歳を越えているけど――ツインテールな少女が訊ねる。
「うん、迷宮には入らない様に言付かってるよ。だから直に拠点へ向かえば良いと思う」
それに応える直葉なる少女。
「お兄ちゃんや明日奈さんは別途の召喚になるとして、抑々にして私達が降りないとその召喚にしたって出来ないからね」
「ですねぇ」
この場に居るのはSAO組。
【ソードアート・オンライン】と呼ばれている世界で出逢った【閃姫】達で、見た目に地味っぽい茶色で短い髪の少女は篠崎里香 といい、本来は別の男に走ったから【閃姫】では無かったけど、一〇〇歳まで夫と共に生きていたのを夫が老衰で死亡、夫の薦めというか『解放』するという科白を受けて涙を流しながら頷いた。
夫に関して云うならば妻として愛していたし、子を成して孫も抱いて曾孫まで居て玄孫まで産まれた事で、家庭という意味では充分に過ぎるくらいの幸福を得ていたと云える。
ユートの支援を受けての話だけど事業を興しており、『リズベット金具店』はそれなりの盛況で子供や孫達も普通に大学まで行かせてやれたし、結婚の資金を出してやれるくらいは出来た。
唯一、まるで心の何処かに小さなトゲが刺さったかの様な痛みが無ければ、きっと絵に描いたかの如く幸福な人生だったのは間違い無い。
篠崎里香はSAOサヴァイバーと呼ばれている約六千人かの一人。
今すぐ近くに居て話している少女達の一人も同じくSAOサヴァイバーだ。
名前は綾野珪子、見た目が小学生にも見えるのは彼女がSAOのプレイヤーだったのが一二歳、つまり本来はプレイしてはならない年齢だった訳だけど、基本的にはユートが出会った年齢と同じ年齢で固定して貰っていた為、今の年齢の見た目を選んでいたのである。
全員で無く殆んどの【閃姫】がだ。
中には成長した姿を好む者も居たし、其処まで強制をする心算も無かった。
もう一人の黒髪でショートボブな少女の名前は桐ヶ谷直葉、綾野珪子は勿論だが篠崎里香でさえも羨む胸部装甲は可成りのもの。
とはいっても、彼女をSAOサヴァイバーと呼べるかはちょっとばかり微妙だろう。
SAO――ソードアート・オンラインは世界初のVRMMOーRPG、即ちナーヴギアというヘッドギアを装着して誤解を覚悟で云えば恣意的に見せられる夢の中で、実際にその世界へと降り立ったかの如く遊べる体感型ゲーム。
然しながらそんな初のゲームはクリエーターである茅場晶彦が神の如く乗っ取り、そして悪魔の如く絶望的なルールで縛り付けるデスゲームと化してしまった。
ログアウトボタンの消失、ナーヴギアを外すなどした場合は脳を焼き切られて死亡確定、ゲーム内での死亡はアバターの消滅と共に矢張り脳を焼き切られ、ゲームのみならずこの世からの永久的なログアウトという正に死のゲーム。
『これはゲームであっても遊びではない』というのが茅場晶彦の言葉。
こんな狂気染みたゲームが二年以上にも亘り続けられた訳だが、桐ヶ谷直葉は初めから参加していたのではなく中途からの参加。
本来ならば処分されていなければならなかったナーヴギアを友人から借り、それを使ってゲーム内に入り込んだ異物という扱いだろう。
アバターは彼女が遊んでいたナーヴギアと別のアミュスフィア――次世代機であるハードで発売された“アルヴヘイム・オンライン”にて作っていた“リーファ”がコンバートされた形だった。
羽根が退化した飛べない妖精ではあったけど、片手剣を使えばSAOのソードスキルは振るえるから、魔法もシステム的に使えないにせよ戦闘に支障は来さなかったのである。
故に桐ヶ谷直葉がSAOに居た期間は極めて短いので、SAOサヴァイバーとはちょっと呼べないかも知れない。
「昔に行ったトータスみたいにリアルなファンタジー世界なんだよね? 私は闘いとか余りしたくは無いんだけど……」
黒髪ぱっつんな少女は早見沙智。
原典では死亡してしまったけど、ユートが介入したβ世界線では死なず普通に生き残っているが故に、SAOサヴァイバーという扱いでこの場に居るからには彼女も【閃姫】な訳だし、ユートが関わったからこそ生き延びたのだ。
同じ【ソードアート・オンライン】の世界での【閃姫】の中で、今回の召喚にはSAOサヴァイバー以外は喚ばれていない。
そういう意味では朝田詩乃も桐ヶ谷直葉と似たり寄ったり、彼女は事故という形でどういう訳か別のゲームと無関係な機器でログインした。
SAOサヴァイバー以外には喚ばれていない、それは確かだった……確かなのだ間違いなく。
「何で私まで喚ばれたのよ?」
高校生くらいで金髪碧眼な美少女が居るけど、彼女はSAOサヴァイバーでは無いのである。
だけど【ソードアート・オンライン】の世界に生きた人間でも無い、SAOサヴァイバーのみが喚ばれたのは飽く迄もあの世界の人間に限って、つまり別の地球――平行異世界で生きてきた彼女はカテゴリーから外れていた。
彼女が着ている服は第一高校魔法科の女子制服であり、出身世界が【魔法科高校の劣等生】だというのがよく判る。
「確かサイオン系で魔法を使うのも試しておきたいって優斗君が」
彼女の質問に桐ヶ谷直葉が答えた。
霊力系も居たら良かったのだが、生憎と其方に【閃姫】は居なかったから召喚も叶わない。
「サイオン系ならミユキ達も居るじゃないの? 何で私?」
「嫌なんですか?」
「い、嫌では無いけど」
嫌がるくらいなら抑々にして【閃姫】契約など受け容れてはいない……が、彼女はユートと敵対した経緯もあるからちょっと居た堪れないのだ。
「リーナさんって確か、優斗君と闘ってバラバラ死体みたいにされたんでしたっけ?」
「そうよ、酷いと思わない?」
「国の思惑有りきとはいえ、リーナさんが襲い掛かったんだから自業自得じゃないんですか?」
「ウグゥッ!」
アンジェリーナ・クドウ・シールズ、米国人で日本の十師族たる九島家の血筋で“老師”と呼ばれる九島 烈の姪孫、それが桐ヶ谷直葉と会話を交わしている彼女の素性である。
嘗ては米国の魔法師集団の長を高校生の年齢で務めてきた才媛アンジー・シリウスだったけど、然しながら『パラサイト事件』で部下達を追った時の出来事が切っ掛けで零落した。
無論、原典の【魔法科高校の劣等生】に於いても同様の出来事は有ったけど、その相手は主人公の司波達也だった事もあって零落までは無い。
最終的に『灼熱のハロウィン』の容疑者としてユートと戦闘――α世界線ではこれが司波達也だった――となって、USNA統合参謀本部情報部内部監察局第一副局ヴァージニア・バランス大佐がモニターで観ている前で敗北を喫した挙げ句の果てに、四肢を断たれ更には素っ首を刎ね跳ばされてしまい死亡判定を受けてしまった。
米軍にとってシリウスの名は重い。
よって、アンジェリーナ・クドウ・シールズは米軍に籍の無い単なる小娘であり、米軍最強たるシリウスはベンジャミン・カノープスである……とされた。
それは兎も角、経緯が経緯だけどアンジェリーナ・クドウ・シールズはこうして【閃姫】と成りこの場に居るからには、【閃姫】としての責務となる『召喚に応える』事と『性交渉に応える』というのを行っている。
「だ、だいたい! サイオン使いって意味ならばミユキやホノカ達でも同じじゃないの!?」
「そういう意味では誰でも良かったんじゃないのかしら?」
リーナの叫びに対して苦笑いしつつ篠崎里香が自分の見解を言う。
確かに【魔法科高校の劣等生】という世界に於いては、原典から視ても第一高校の少女達を性的に喰いまくって【閃姫】は多い。
況してや、任務の最中では強制的に女装をさせられている黒羽文弥も女体化をさせられた上で、童貞の侭に処女を奪われてしまって謂わば雌堕ちさせられているくらいだ。
「誰でもって……」
「多分ね、優斗の事だから籤引きくらいの安直なやり方で決めたんじゃない? 良いじゃないよ、ちょっと甘えてくるぐらいに考えれば」
「甘え……そうね、甘える権利くらいは有っても構わないわよね」
篠崎里香の言葉にリーナは頬を朱に染めながら頷く辺り、切っ掛けはバラバラ死体も宛らな状態にされた上で権能を使われた事だったにしても、取り敢えず彼女はユートに愛情を抱いているのは間違いが無さそうだ。
SAOサヴァイバー+αはそれぞれに行くべき場所へと向かう、篠崎里香は七年前に位置している暗黒期の惑星アドベンチャーへ、桐ヶ谷直葉と綾野珪子と早見沙智と朝田詩乃は現代のオラリオに在るサーシャやヘスティアの本拠地へ。
尚、【戦姫絶唱シンフォギア】勢もSAOサヴァイバーではあるのだが、純粋な意味で云うなら彼女達は【ソードアート・オンライン】の世界の人間で無いから現状では含まれていない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「来たわよ」
「漸く来たかリズ」
「今は篠崎里香よ」
「ああ。そうだったな、里香」
ユートはSAOでの出来事やその後のALOや他のVRで、アバターネームたるリズベットと呼ぶ機会が多かったからか普通に『リズ』と呼ぶ。
とはいえ、矢張り篠崎里香も女であるからには名前で呼ばれたいみたいである。
「彼方の世界にも極東という日本の恐らく江戸時代に近い島国が在るが、里香と名乗るなら苗字を片仮名で名前を漢字でシノザキ・里香になるな。普通にオラリオ風で良いならリズベットと名乗るのもアリだけど……どうする?」
一応、極東の人間――ヒューマンとドワーフのハーフ――である椿は“椿・コルブランド”という極東風では無い名乗り方をしていたが……
「うーん、折角だしリズベットで往こうかしら。リズベット・シノザキで問題は無いわよね?」
「君自身がそう認識したなら多分だが神の恩恵にも刻まれるだろう」
「神の恩恵って?」
まだそこら辺を知らない篠崎里香は小首を傾げながら訊ねて来た。
「これから行く迷宮都市が存在する世界には神が実在する。そんな神が自らの血を以て背中に与えるのが“神の恩恵”でね、SAOやALOやGGOみたいなゲームのステイタスが得られるんだよ。因みに僕も持っていてアテナ・ファミリアって事に成っている。尤も、この時代にサーシャは未だに降臨してないから封印状態だけどな」
「アテナって、確か貴方の前世で行った世界に居着いたのがそうじゃなかった? ほら、銀髪の」
「あれは【カンピオーネ!】って世界に顕れていた闇のアテナ、一応は【魔法少女リリカルなのは】の世界に創った聖域の守護者として括ったけどな。彼女は“まつろわぬ神”に分類されている」
いずれにしてもアテナという神に違いないし、属性が正反対なのは【カンピオーネ!】の世界で最源流のアテナだったから、とはいえ母の役割のメティスとは異なり処女神には違いないからか、どうにも性交渉には奥手になりがちだった。
だからユートとしてもアテナとの性交渉は基本的に口と菊門だけ、普段は見た目が幼いから胸はぺったんこで使い様も無い。
然しながら【ありふれた職業で世界最強】という世界にて、空間魔法を手に入れた際に性能に関して考察していたら思い付いた。
(処女神って処女膜さえ傷付けなければ実は良いんじゃなかろうか?)
結果、空間魔法を使って処女膜に擬似的な穴を穿って抱いてやりましたとも。
勿論だけど、魔法を解除したら処女膜は無傷で済んでいたのである。
この魔法はこの世界の処女神にも当然だが通じるヤり方だから、サーシャとヤるにも問題は全く無かったり。
自身がベルとはイチャイチャする事が出来ないというのに、サーシャがヤってはヘスティアがごねそうだったから今は未だヤっていないけど。
「僕の再誕世界のアテナこそが光のアテナって処でね、γ世界線の二百数十年前に降臨したアテナこそがサーシャの前世に当たる。抑々サーシャってのはイタリアに産まれた際に付けられた人間としての名前だからな」
「そうなんだ」
ユートが介入したβ世界線はどちらも……だったから少々ややこしいが、αβ世界線とγβ世界線と分けて考えるのが吉。
「神の恩恵ねぇ……私は誰から恩恵を貰ったら良いのかしら? アテナ?」
「否、未だサーシャは降臨してないと言ったろ。それに里香はASOで鍛冶師をして、ALOでも鍛冶妖精レプラコーンを選んだ。リアルですらも僕からリアル鍛冶を学んで『リズベット金具店』を経営していたくらいだろう? なら得るべきは鍛冶神ヘファイストスの恩恵だな」
「鍛冶神ヘファイストス!」
「オラリオで有名処の鍛冶神はヘファイストスとゴブニュだが、ヘファイストスの所は見習い的な鍛冶師にも工房を与えてくれるからな」
未だにLV.1で“鍛冶”の発展アビリティを持たないヴェルフですら、彼専用の工房を与えられて鍛冶仕事を熟しているくらいだ。
小さくとも自分の城である。
「実際、僕ん所とヘスティア・ファミリアで使っている廃教会の周辺の土地。彼処だって工房を建てる為に確保していた場所だったんだろうしね」
ユートが言うと何故だかピクリとアルフィアの額が動き、スッと閉じていた瞳の内で右側をうっすら開いて見つめてきた。
ヘファイストスの派閥は人員もゴブニュ・ファミリアより多く、個人個人に工房を宛てがったら幾らお金と土地が有っても足りない筈。
其処はヘファイストス・ファミリアのブランドと信用が活きてくる。
あの廃教会も教会としては最早機能などしていないし、必要になったら教会を壊して工房を建てるべくヘファイストスが確保していたのだろう。
「それにゴブニュの所はな~」
「何かあんの?」
「如何にも男臭い職場って感じなのと、主神であるゴブニュは上半身を裸で歩き回る爺さんだ」
「へ、ヘファイストス様は?」
「地球ではアテナに粗相したりアフロディーテに浮気されたりした男神だけど、この世界では赤毛に眼帯付けた姐御肌な女神だな」
「ヘファイストス様一択で!」
篠崎里香の決断は早かった。
地球に於けるヘファイストスは男神、アテナに惚れて追い掛け回した挙げ句の果て無理矢理にでも致そうとして、男神の象徴をアテナの太股へと擦らせた瞬間に果ててしまい、白いのに汚らしくて熱い粘液をアテナの太股にぶっかけたのだ。
無論、アテナが戦神としての顔を覗かせるくらい烈火の如く怒り狂ったのは言うまであるまい。
アテナは天帝ゼウスより永遠の処女を赦された三柱の内の一柱、そんな処女神に男の穢れでしかないと認識する女を孕ませる為の駄液を掛けられたら鬼神にも成る。
尚、三柱の残り二柱は炉神であるヘスティアと狩猟神にして月神アルテミスの事を指していた。
「で、里香がヘファイストス・ファミリアに行く前にだが……この二人に武器と防具を造ってやってくれないか」
「ああ、此処で繋がるのね」
単純にヘファイストス・ファミリアに入団するだけなら、七年後のユートが一緒に連れて行けばそれで済む話なのに態々、一人で行かせてまでも七年前である現在に来させた理由。
「昔ならいざ知らず、今の里香……リズベットなら防具だって色々と造れるだろうからな」
「まぁね」
ユートの鍛冶師としての弟子、恋人に浮気を疑われてまで師事されて腕を磨いたのである。
武器のみならず防具や一般的な鍬や斧や鎚なども普通に造っていたし、何なら工業製品の手造りをしていたから板金工だって出来ていた。
抜き出し、バリ取り、穴バリ、曲げ、溶接から仕上げといった感じに金具店の面目躍如だろう。
そんな様子を見ては恋人も気が気でないのか、帰って来る度に寝室に連れ込んでは確かめるが如く抱いてその都度、篠崎里香から優しい口調にて『気は済んだ?』と頭を撫でられていたと云う。
篠崎里香がユートから教わった鍛冶師の仕事は多岐に亘り、武器造り防具造り装身具造りだけには留まらず魔法具造りすら視野に入っていた。
「素材は工房にだいたいは揃えてある。此方側の素材としてミスリルやアダマンタイトやオリハルコンと呼ばれる金属は元より、日緋色金や
「……それは嬉しいわよ、出来たらで良いんだけどね?
「あれは確かに硬さと軽さを併せ持つけど扱い方がまた別だぞ?」
「そっちの青髪の娘、多分だけどそういった金属で造った防具が映えるし、それに扱いにもハマると思ったのよ」
「そうだな……」
篠崎里香もSAOからリアルまで鍛冶師を続けてン百年、視ただけでもそれなりに判ってしまえるだけの経験値は持っている。
「そっちのアルフィアって云ったかしら? その娘はミスリル……私達の識る流白銀の方を金属糸にした物を使いたいわね」
「私は黒を好むのだがな」
「色はまた別に染めれば良いわ」
「ヘファイストス・ファミリアに入る方法だが、ヘファイストス本神か或いは椿・コルブランドに上手く武器を見せれば確実だと思う」
「そうなんだ」
篠崎里香の鍛つ武器は、発展アビリティみたいなブースト無しにヘファイストス並に強力故に、彼女の武器を見せてしまえば確実に一発で食い付いて来るであろう。
「取り敢えず見せる為の武器も鍛えておく必要性はあるみたいね」
篠崎里香――リズベットは苦笑いを浮かべながら新しい自分自身の武器を考えるのであった。
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リズベットは本来だと【閃姫】には成っていないけど、夫の死後に【閃姫】契約をしたちょっと異例なタイプです。