ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】 作:月乃杜
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篠崎里香――改めリズベットはオーラを用いた念能力を使える戦闘鍛冶師。
能力自体は割とよく在るモノ、英霊エミヤとか衛宮士郎が使う武器をビュンビュン飛ばすアレであり、リズベットも調子に乗って敵にぶっ放していたものである。
能力名は――『
本来は篠崎里香の系統は具現化系である為に、対極に位置している筈の放出系とは相性が最悪だったが、其処で活きたのが彼女にどういう訳だか発現をした
放出系の力に一〇〇%を加えて一四〇%にまで引き上げ、一〇〇%の具現化で創った武器を放つ事に特化させる事で出鱈目な殺傷力を得た。
篠崎里香は剣士では無いから剣は使えないし、侍では無いから刀を使えない、弓兵では無いのだから弓矢を使えない、銃士では無いから銃も扱えない、槍兵では無いから槍も使えない、斧兵でも樵でも無いから斧を扱えない、騎士では無いから細剣も騎士剣も使えない、鍛冶師だから扱えるのは当然ながら鎚系の武器のみである。
某・英雄王が折角の様々な宝具を担い手ではないからが故に使い熟せず、単に発射してぶつける事しか出来ないのと似た様なものだ。
だからか、
本来のオーラの性質なのか否か、基本的に自らの肉体から離れるとオーラは弱体化をする。
或いはオーラを供給し続けないとならないからだろう、肉体から離れたらオーラの供給が途絶えるからこそ弱体化するのかも知れない。
然し性質というなら放出系はその名が示す通り肉体から離して扱える系統、篠崎里香はこれを得る事で射出を可能とするのと同時に他者へ武器を貸し与える事も可能となっていた。
SAO内で創った武器も念能力で構築可能である為にダークリパルサーも創れる、即ちキリトに渡して使わせる何て事も可能なのである。
流石にドロップアイテムなエリュシデータまでは再現不可能だが……
「うーん、やっぱりランベントライトやダークリパルサーは創れるんだよね~。だけど中身を識っているのにエリュシデータは創れない。私の念能力の制約だから仕方が無いか」
ユートとの話し合いが無事に終わって、リズベットは自分自身の念能力を発動して嘗てSAOにてアスナが使ったランベントライト、キリトが使ったダークリパルサーを創って見比べている。
だけどあの独特な鍔の形状をした漆黒の魔剣であるエリュシデータ、何度も強化の為にキリトから預かっていたアレを創る事は出来ていない。
制約と誓約――念能力の強化をする為に必要な事の一つにソレが有り、一種のルールに基づく強化方法で比較的簡単に行える。
然しながら中身はエグくて、そのルールを破ると最悪で命を落とすし、良くて念能力を永遠に喪失する可能性があるからだ。
“
能力名の由来でもあった。
とはいえ、念能力を覚えた当初でさえそれなりの個数で武器の具現化を出来ていたというのに、今や数万くらい平然と具現化をしている。
何しろリズベットがユートの【閃姫】に成ったのはユート・スプリングフィールドだった時で、柾木優斗である今から見れば前世に当たる数百年処か千年は過ぎ去っていたのだから。
「キリトに渡すならエリュシデータを鍛えた方が早そうだよね」
勿論、キリト――桐ヶ谷和人は【閃姫】では無いのだけれど、桐ヶ谷直葉の兄貴枠や【閃姫】達の親友枠な結城明日奈の恋人枠としてエリシオンで明日奈と共に暮らしている。
それはクラインやエギルも同様で、エギルなんて奥さんも一緒に連れ立って来ているのだから恐れ入るというべきか。
残念ながらクラインのゲーム仲間までは居ないのだが……
リズベットの念能力はゲームで造った武器でさえも再現してしまう、実際にその武器はオーラで具現化した物だからクリスタライト製とかどうなっているのか? みたいな考えは不要。
要するに造れという事である。
「さて、本当に用意してくれるとは思わなかったわね……電子青鉱を」
電子の海より情報が形を以て存在する特殊生体鉱石、それが金属の身体を持っていたり鎧を纏っているデジモンが使うクロンデジゾイド。
色により性能が異なるが、
疾さがウリのアルフォースブイドラモンが纏うのもコレを使った鎧、防御性能は他のクロンデジゾイドと比べれば柔いのかもだが、それでも凡百な通常金属よりも群を抜いて硬い。
扱い方は他の金属と異なるけど、リズベットも一応はその扱いをユートから習っていた。
「先ずはアーディの戦闘衣とプロテクターよね、この電子青鉱を使って兎にも角にも軽くて丈夫な物に仕上げましょうか」
どうやら戦闘時に着る衣服をそう呼ぶらしく、ユートが昔に着ていた勇者専用の衣みたいな物を云うのだとリズベットは正しく理解をしており、手にしている特殊生体鉱石――電子青鉱を弄びながら呟いている。
電子生体鉱石――クロンデジゾイドを装備品へと換えるには火入れすら要らない。
仮想世界は情報が全て、情報の変化こそ鍛つという行為に相当すると云っても良かった。
リズベットの輝威の真なる力を発揮するべき時が来た……的な話で、彼女の輝威はユートの得た念能力である“人物再設定”が一番近い能力だ。
それにより自身の能力値に変更を齎した訳で、強化系と変化系のパーセンテージを減じて一番にパーセンテージが低い放出系へ補填した。
故にリズベットは強化系と変化系の二つに関しては初めから捨てていて、一〇〇%の具現化系と一四〇%に変わった放出系と系統的に六〇%なのが変わらない操作系へ訓練を集中したのである。
無論、こんな変則的な能力の取得をするというのは【HUNTER×HUNTER】の世界では理論上で無理筋だろうが、異世界人でありユートから薫陶を受けて真面目に修練に費やしたリズベットなればこそ、輝威の力も相俟って『
操作系は基本的に放出した武器の軌道変更に使うのが精一杯だが、真っ直ぐにしか飛ばせないのは矢張り闘いに用いる際に片手落ちだから。
「アルフィア……じゃなくてフィア・クラネルって改名したんだったわね。彼女には黒鍛鋼糸で編んだドレスを造るのが良さそう。黒鍛鋼は未来でヘファイストス様に渡してるらしいけど、彼女がオラリオで活動するのはその未来だもの」
故に問題は無い。
黒鍛鋼は嘗てユートが再誕世界で暗黒聖衣を造り直すのに使った魔導金属の一種、同じ漆黒という色をしているが暗黒聖衣と黒鍛鋼では明らかに輝きの違いがある。
というのも純粋なる単一元素な金属であるのが黒鍛鋼であり、暗黒聖衣は神剛鋼とガマニオンと銀星砂という神秘金属や魔導金属を混合しながらも通常金属まで使い量産し易くした物だからだ。
元より暗黒聖衣とは漆黒聖衣とも呼ばれていた通常聖衣の予備にして、正規の聖闘士として資格だけは与えられながら聖衣を与えられなかった者の為の余剰聖衣の予定だった。
故に通常金属で嵩増しをしたのだ。
青銅聖衣や白銀聖衣と同じ守護星座の形なのはそれが理由、だけど色が色なだけに雑兵にすらも纏われなかったこの黒い聖衣は、デスクイーン島へと封じられる形で黒い聖衣箱に仕舞われた。
尚、恐らく最後の聖衣として鳳凰星座の青銅聖衣が完成した後に量産聖衣計画が出たのだろう、暗黒鳳凰星座の聖衣を纏う暗黒聖闘士が雑魚として何人も現れたのだから笑える話。
「あっと……優斗、聞こえる?」
『どうした?』
「ちょっとエアリィの力を借りたいんだけれど、こっちに寄越してくれないかしら?」
『判った』
ユートが応じた瞬間、長い碧銀の髪の毛に深くて蒼空の如く瞳を持ち緑葉色の布っぽい物を周囲に纏わせ、白い肌を惜しげも無く晒している耳が少し尖った三〇
「ゆか、ゆうとに言われて来たんだけど? 炉に風を送れば良いのね」
「さっすが、判ってる」
エアリィ――エアリアルは風の上級精霊として存在しており、ユートが元の時代でサルベージをした火の上級精霊たるルベライトと存在としては同位となっている。
然してその実態とは、とある異世界に於いては風の精霊を纏める王にも等しい四大精霊が一柱、風のエレメンタルたるシルフィード
今のエアリィはといえば単なる風の上級精霊でしかなく、風の精霊王を名乗れる程の権能を揮えるだけの器を持っていない。
理由は簡単、今のエアリィは風のエレメンタルであるシルフィードが嘗て自身の力と人格を封印して、小さな上級精霊エアリアルだった頃に構築していた人格を切り取った上で、上級精霊としての器を与えられたシルフィードの娘に近い存在。
風の
風の精霊神と契約を交わした上に五源将とすら契約したユートは、手放すには余りにも惜しいというのがシルフィードの言い分だったのだけど、頬を赤らめてチラチラと目を背ける振りをしながらチラ見してきた辺り、
別にその主人公君を排除した訳では決して無いのだけど、抑々にして異世界側の召喚そのものに不備が有ったのも一つの原因であり、召喚され掛かった二人の少年少女を助けようとしてユートの持つ力が反応、結果としては少年の身代わり処かユートが本命と謂わんばかりに少女をオマケとして召喚されてしまった。
尚、少女は原典でも主人公の少年のオマケとして召喚されているけど、それこそが異世界側での召喚の不備によるものだったらしい。
また、これは似た事例が幾つか有ったからこそユートも混乱しなかったのだが、召喚の不備だけでなく本来の被召喚者では無かったユートを召喚した影響が少女に出てしまい、異世界生活の中で永らく記憶喪失に陥ってしまっていた。
それは扨置き、ユートと精霊契約を交わしているエアリィはその求め――命令に従って誰かへと力を貸すなんて事もする。
魔力を持った武器や防具を造る為にエアリィが風を送って熾した火、それは素材の純化を促進させて
それならば火の上級精霊を使えば良いのだが、ルベライト――ルビーもそうだけどエアリィとは同郷の火の上級精霊も、七年後の世界に居るから基本的にユートに纏わり付いているエアリィだけしか喚ぶ事が現状では出来ない。
精霊は精霊界に属しているけど、時の精霊ならまだしも他の精霊は時の概念に縛られる。
まぁ、リズベットからしたらエアリィだけでも充分にお釣りが来るから特に問題も無かった。
用意するのは精霊炉と神剛鋼製の鎚など道具類と素材、その素材も一流の魔導金属や神秘金属を用意して貰っておきながら二流の武器防具なんて造れはしない。
「さってと、鍛つわよ!」
取り敢えず鍛つのは武器、アーディ・ヴァルマが使う為の短剣を二振りというのが注文。
折角だから戦士という職業に就いた事も相俟って剣を使おうと考え、後に武闘家に転職をする事も視野に入れるならリーチが長い剣よりは短剣系が良いと考えたらしい。
名前:アーディ・ヴァルマ
ベースLV:1
職業【戦士】LV:1
これが今のアーディである。
ベースLVは基本となるアーディ本人のLVであり、職業LVはスキルや呪文を覚えたりボーナスポイントを加算したりする為のモノ。
能力値はベースLVが上がると本人の資質に合わせて自動的に上昇する。
現在の能力は飽く迄も彼女が恩恵を喪った状態でのもの、スライムやスライムベスやドラキーといった雑魚には普通に勝てる程度には能力が有る筈で、リズベット製の武器や防具を装備していればそれなりに進めるだろう。
況してや、リズベットは自身の鍛冶師としての技能をフルパフォーマンスで使う気満々だ。
それで出来上がるのは魔宝武器、ドラクエ的には魔法を撃てる武器の事を云う。
この世界では魔剣と呼ばれる類いの武器に当たる訳だが、その殆んどは実際の威力はこの世界の魔剣から視て突出している事は無い。
例えば“炎の剣”は初代ドラクエで店売りで最強の剣として登場するが、FC版は名前ばかりの謂わば張りぼてに近い物でしかかったけど、SFC版からは初級な閃熱呪文ギラを放つ事が可能。
そう、ドラクエⅠとはいえ最高品質な武器でありながら初級である。
はっきり言って後は竜王の城へLet's GOといった位置であり、剣としてはロトの剣を手に入れる迄の繋ぎにこそなるけど呪文の効果は特に必要の無い代物、炎の剣を装備して斬ればギラなんかより遥かにダメージが入るのだから。
尚、実際の効果は火の玉を放つ……火炎呪文のメラだったのは驚いた。
ユートは呪文を放つ武器は飽く迄も似た効果の呪文としているだけで、実際にその呪文を放っている訳では無いと考えている。
雷神の剣は
例えば、彼の偉大なる獣王クロコダインが使ったグレイトアックスにしても填められた魔法玉により、以前の真空の斧と同じく真空呪文に加えて新たに火炎呪文と爆裂呪文を放てるのだが、これもイオラに近い爆裂を放つのとメラミに近い火球を放っている訳だ。
だけど他に言い様が無いから呪文に照らし合わせているだけ、その所為かは知らないが同じ武器でも効果が異なる事もあれば、抑々にして武器銘と呪文の効果が合わない物まで存在する。
“雷の杖”……その効果はバギ。
何故に雷で真空呪文? となるくらい、ならば風の杖で良かろうものだった。
雷神の剣でベギラゴンなのは、説明書などによるギラ系の説明が雷を放つ呪文の名残りだろう。
だからこそユートは、魔法を放つ武器は現象として呪文みたいな効果を放っていると定義した。
リズベットも魔宝武具を鍛つ事が出来るので、アーディに渡す二振りの短剣には火炎呪文メラと氷結呪文ヒャドを放てる物を鍛つ。
スタート直後なら初級呪文でも問題は無いし、あの世界の魔剣とは違って使っても壊れない。
素材が違う、そして造り方が違うから効果的には兎も角として根本から視れば別物だった。
「ドラクエのゲームも武器の威力は普通で良いからさ、ちょっとお高い武器として魔宝武具ってか魔法の武器を売ってればな~」
そういう意味で【ドラゴンクエストⅣ】に於ける『第一章 王宮の戦士たち』と『第三章 武器屋トルネコ』、この二つの章では絶妙なタイミングで“破邪の剣”が手に入るのだ。
破邪の剣はどうぐとして使うとギラ相当の閃熱エネルギーを放射状に放つ……要するに一般的なギラと同じ効果を生む魔法の武器。
それが手に入る、そのタイミングの良さは可成りのものだと云えるだろう。
勿論、名も知らぬこの世界の魔剣とは違って壊れないから使いたい放題……ゲームでは。
当たり前だけど現実では無茶な――【DQダイの大冒険】のα世界線で、マァムの魔弾銃の弾にベギラマが入った状態で更にギラを容れて撃つといった、本来の仕様で想定されていない事をやらかせば壊れて然るべき。
「出来たわ!」
刃を鍛つ度に魔力を篭めていき、それを自分の目で視て正確に回路としていく鍛造の作業。
そして魔宝玉と名付けられたユート謹製である魔導具を填め込むと、赤い刃と蒼い刃で二振りの短剣が完成をしたのだった。
「銘は……まぁ、初級呪文を撃つだけの攻撃力的には聖なるナイフよりはマシな物だし、御大層な銘にする必要性は無いよね」
短剣を眺めて思案し……
「炎のナイフと氷のナイフでいっか」
そしてシンプルに決めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
時代は進んで七年後。
ヘファイストス・ファミリアの本拠地にていつもの通り、鍛冶師の仕事を嬉々として行っている短く刈ったピンクブロンドに赤系の服な少女――否や、実年齢にしたら既に数百か千歳すら越していてもおかしくないBBAが居た。
彼女はファミリアの本拠地に工房を与えられている数少ない眷族の一人、七年前にファミリアへの門戸を叩いて爾来、順調にランクアップを繰り返して今や団長である椿・コルブランドと同等のLV.5にまで至っている。
「おっし、完成したわ!」
喜色満面で鍛ち終わった漆黒の戦鎚を確り見詰めながら叫んだ。
彼女の名前はリズベット・篠崎。
LV.2へランクアップした時点で“鍛冶”という発展アビリティを取得、主神の名前を神聖文字で刻む事を赦された上級鍛冶師と成る。
そして今は最上級鍛冶師の名を欲しい侭にしており、椿・コルブランドの次席として副団長の座にすら至っていた。
コンコンというノック音。
「リズベット、入るわよ」
「どうぞ」
特に恥いる何かが有る訳でも無いから主神の声に招き入れる。
ガチャリと扉を開いて入ってきたのは声の通りにヘファイストス。
「相変わらず椿と変わらない鍛冶っ振りに恐れ入るわねリズベット」
「私の役割でアイデンティティですから。それで何か私に用事でしょうか、ヘファイストス様?」
「特に用事って訳では無いわ。少し篭もりっ切りだったから様子を見に来たのよ」
「そうでしたか」
鍛冶バカなリズベットは偶に寝食すら惜しんで鍛冶に没頭する為、彼女の姿を数日も見なかったらこうして足を運ぶくらいはしていた。
手慰みに造ったテーブルと椅子を用意すると、リズベットは紅茶を淹れて主神様へと出した。
「どうぞ、粗茶ですけど」
「有り難う。うん、美味しいわ」
淹れて貰った紅茶はオラリオ産では無いので、何処の茶葉かは気になったけどヘファイストスからしたら充分に美味しく飲めるし、序でに出された茶菓子も舌鼓を打つだけの味わいだ。
これらはリズベットが与えられたストレージの魔法に容れてあった物で、時間経過も無くて容量も可成り大きいから百年は愉しめる量。
ヘファイストスがリズベットの工房へと頻繁にやって来る理由が、椿や他の団員では気を利かせて御茶を淹れたりしてくれないから。
自身の眷族でこんなに気が利くのは後にも先にもリズベットくらいだろう。
「あら?」
ふと完成された戦鎚を視てヘファイストスにとって素材が最近、手には入った希少な魔導金属と同じである事に気が付いた。
「これ、まさか黒鍛鋼?」
「そうですよ」
「どうして貴女が? 未だ私と椿にしか回していなかったのに」
黒鍛鋼を鍛えられるのは“神匠”と天界にて名高かったヘファイストスか、或いは最上級鍛冶である椿・コルブランドくらいだと判断して今は鍛え方の試しをしている状態だ。
「私は恋人から貰ったのよ」
「恋人? 居るの?」
「居ますとも」
前の夫と死別してすぐにユートと出会った頃の年齢に戻され、中身まで新品と成ったリズベットは
【閃姫】とは即ち恋人とか愛人とか何なら妻として見ても良く、いずれにしてもヤるべき事さえヤっていれば基本的に自由に動けるし、欲しい物が有るのであらば買って貰う事だって叶う。
勿論、自由とはいっても恋愛の自由は当たり前の如く喪う訳で、下手に浮気に走ったりしたなら相手のJr.が爆発四散して御亡くなりになる。
実際に前世で浮気では無くて男側が強姦に走った結果、挿入をしようとした瞬間にドパンッ! と逝ってしまって悲鳴と共にぶっ倒れた。
哀れにも彼奴の薄汚くて粗末なモノは二度と使えなくなったのである。
未だ【閃姫】に成る前なら挿入が出来ていた訳だから、そうなっていた場合はユートが間違い無くぶち殺していたであろう。
正確には一瞬で殺るのでは無く、あの頃であれば先ずは死なない程度に加減をしつつズタボロに全身を、
狂えないから気が触れたりせず、死ねないから痛みは延々と繰り返される、その程度はしないと女性も強姦の苦痛を忘れるに忘れられないから。
因みに、当の強姦未遂だった女の子にそれを話したらドン引きされた……解せぬ!
そんな訳で色欲が強くて沢山の娘を侍らせながら強欲であり、嫉妬深い部分もあるから自分の女に手出しをしたら酷い目に遭わせるユート。
健啖で暴食も厭わずそれなりに矜持は持ち合わせているから傲慢にも成るし、勤勉かと思わせてだらけるのが好きな怠惰であり、更に某・強姦未遂犯が未遂でなければ激しい憤怒を見せたろう、未遂で報いは受けたから処分しなかったに過ぎないのだから。
揃いも揃った七つの大罪の見本市。
「恋人からの贈り物ですね」
「名前は……ユート?」
「そうですよ」
「だけどそれはおかしいわ」
「何故?」
小首を傾げるリズベット。
「彼は最近になってこの世界に来たと言っていたのよ? 異世界人とはいえ下界の子供である事には違いないわ、故に嘘を吐いたなら私達……神にはそれがすぐに判るのよ! ユートは嘘を吐いてはいなかった」
「でしょうね、それも間違いじゃありませんよ。少なくとも団長が随伴をしたロキ・ファミリアの遠征まで、優斗が実は二人存在していたんです。一人は遂最近になって顕れたヘファイストス様が出会った方、もう一人はロキ・ファミリアの遠征の帰りにえっと……何だっけ? カオスの歪みを越えて七年前に跳ばされてしまって七年間を過ごした優斗」
「なっ!? カオスの歪みを越えたですって? そんな……まさか?」
この世界では時間跳躍をカオスの歪みを越えると称しており、神々としてもそれは基本的に有り得ない現象として認知をしている。
つまりこの世界に時の神クロノスや刻の神カイロスは存在しないし、ニャル子さんみたいな存在も居ないという事であろう。
「そんなに驚きますか? 優斗からしたら時間跳躍って日常茶飯事まではいかなくても結構やっているみたいですよ」
「ハァ?」
女神としてははしたないけど、顎が外れそうなくらい大口を開けて驚愕をしてしまった。
「私が聞いた中では再誕世界で二四三年前に起きた冥王ハーデスとの聖戦時代、しかも平行世界で別々の世界線に跳んだらしいですよ」
「ハーデス?」
「この世界にも居ますよね? ハーデス様って名前の神様が。同じ様にゼウス様やポセイドン様も居るんですし」
「い、居るけど……」
この世界と地球では差違こそ有れど似たり寄ったりな部分も有り、神の名前の一致はその最たる例だと云っても良かろう。
男神と女神の違いも有るのはリズベットの目の前のヘファイストスで判る。
彼女は女神だけれども地球のヘファイストスは男神、それはロキ・ファミリアの主神たるロキにも同じ事が云えた。
この世界の神々は個体で完結している存在で、従って親子や兄姉弟妹などは居ない。
例えば女神デメテルに女神ペルセフォネという娘は存在せず、この世界ではデメテル・ファミリアの眷族達を指してペルセフォネと呼んでいる。
アテナ・ファミリアであるユートが聖闘士で、フレイヤ・ファミリアの面々が“
更にヘスティアから以前にユートが聴いた話をリズベットも聴いているが、この世界にウェスタという女神は或る意味で存在しないとか。
ウェスタは地球でローマ神話に於ける炉の神にして処女神であり、ギリシアの神話体系に於けるヘスティアに相当している女神の名前だ。
ローマ神話は名前こそ異なるがギリシア神話のオリンポス一二神などに相当する神が居る。
デジモンの場合は寧ろローマ神話の方で名前が挙がりながらオリンポス一二神だった。
ユートの主神アテナはローマ神話でミネルヴァという戦女神、デジモンではミネルヴァモンという名前で存在している。
そしてヘスティアのローマ神話ではウェスタ、つまりこの世界ではヘスティアの別名扱いだ。
尚、目の前のヘファイストスのローマ神話名はバルカン という鍛冶神に当たる。
「参ったわね、まさかカオスの歪みさえ越えているだなんて……」
頭を抱えるヘファイストス。
「抑々、私を七年前に喚び出してヘファイストス・ファミリアに入る様にいったのは優斗だし、それが無ければ私もこの時代でアテナ・ファミリアだかヘスティア・ファミリアだかに入団してたんじゃないですかね?」
「そうなるかぁ……」
となると、椿・コルブランドのレベルで鍛治の腕が立つリズベットが来てくれたのは僥倖。
「リズベットはユートから鍛治素材を受け取ったりしてる訳よね?」
「見ての通りですね」
「私も融通して欲しいわ」
「ヘファイストス様も優斗に抱かれた事は有りますか?」
「へ? あ、有るけど」
リズベットはユートがヘファイストス・ファミリアの本拠地に来ていたのは把握をしていたし、恐らくは七年前に言っていた黒鍛鋼の納品であると認知をしていたが、それだけにしては一晩中を部屋に篭もっていたのが気になっていた。
それに朝一番で出て来たヘファイストスの頬が紅潮していたのも知っており、その日に限ってだけど女の顔をしていて凄く魅力的な雰囲気を醸し出しているので、数少ない女性鍛治師は兎も角として男共は一様に前屈みになっていたもの。
「だったら頼めばヘファイストス様も素材を貰えると思いますよ?」
「本当に?」
「はい、個人的に少量ですけど」
それこそ、青生生魂や日緋色金や神秘金属としての
この世界のとは違う
「ま、今は優斗がロキ・ファミリアの遠征で居ませんけどね」
すぐに実行が出来ないという、ヘファイストスとしてもそれには苦笑いしか無かったと云う。
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何となく水増し感がある噺に……