ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】 作:月乃杜
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水晶の如く透明感のある黄金色、太陽の様に思える燦然と耀くその全身鎧は元が元なだけに龍、そう呼べるだけの威容を醸し出す。
「ユ、ユートかい?」
「そうだ、視ていたろ?」
「そうだけど……ね」
あのフィンですら恐れて……否、畏れていた。
それだけではない、ロキ・ファミリアやヘスティア・ファミリアやタケミカヅチ・ファミリア、ユート所属のアテナ・ファミリアのメンバー以外の者達は、等しく畏れを懐くその威容に立ち止まってしまっている上に、レックス・キメラでさえ後退りをする程の気配を出している。
「あのレックス・キメラは、モンスターとしてのLV.を7と見積もっていた。だけど最早、あれはLV.8だと視てもおかしくはない」
「それ程なのかい?」
「だから決めろ。あれに全滅するのを覚悟して、全員によるアタックを続けるか? それとも僕が単身で奴を……ぶち殺すのかをね」
それも早急に決めねばならない事案であろう。
「随分と強い言葉を使うね」
「冒険者なら普通に使うだろ?」
「まぁ、そうかも」
フィンは右手の親指を下唇に添えて思案する。
「僕達は此処から離脱をしよう!」
他ならない、迷宮都市で最大派閥の一角であるロキ・ファミリアの首領の言葉、しかもフィンのLV.は7という最強格の一人であるからには、彼の『離脱を』という言葉に重みがあった。
しかも、ユートの威容はレックス・キメラすらも動きを止める程、LV.2にランクアップをしたばかりと聴いても詐欺としか思えない。
それに誰だって死にたくないし、撤退しろと言うなら喜んで逃げる。
「間違って死なないでおくれよ? 君にはまだまだ訊きたい事が山程有るんだ。その鎧とかね?」
「ああ、奢りなら飯を食いながら多少は話そう」
苦笑いを浮かべたフィンが最後に撤退をした。
「随分と待たせたものだな、レックス・キメラ」
「グルル……」
レックス・キメラは黒剣――ウダイオスの大剣を手に駆け出し、上段から思い切り振り下ろして来たのをユートが腕で赤いエネルギーの盾により防ぎ、更に右手には腕から蒼白いエネルギーの剣を出現させウダイオスの黒剣をパリィしてやる。
レックス・キメラは咆哮を上げながら尖兵となる骸骨を出した。
「
骸骨兵は雑魚としても現れるモンスターだけど、ギルドが規定をするモンスターLV.は4だ。
《Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!》
然し、ユートはそんなLV.4のモンスターを、右手から生える蒼白いエネルギー剣の横薙ぎ一閃で消滅させ、更に背部の光翼を使った飛翔により頭部を取って斬りに行く。
「喰らえっ!」
斬っ!
それにより腕を斬り落とす。
どれ程に強靭な筋肉、強靭な竜鱗に鎧われて、どれ程の強靭な骨を持っていようとも複数回もの増幅の前には、レックス・キメラの腕など簡単に絶ち斬れるというもので、落とされた腕がビクビクと痙攣をしながら灰と化した。
《Divide!》
触れたが故に発動する半減。
「矢張り半減が出来ないか」
然し、それも思っていた通りの失敗に終わる。
味方に掛けるバフは通るが、敵に掛けるデバフは場合によって通らない事もあるから使い難い。
“赤龍帝の籠手”の第三の能力、貫通で半減を通すのも無理だろうと見ているユートは別の手を。
「『我目覚めるは覇者の御印を獲た二真龍なり、無限を制し夢幻に到る。我は大いなる夢幻を越えて、汝を未知なる路へ誘うであろう』!」
その詠唱は覇龍の呪文。
最初期段階の覇龍、超サイヤ人で云えば詰まり超サイヤ人2。
「ジャガーノート・ドライブ!」
《Juggernaut Drive!》
覇龍と成り巨大化した黄金龍は、その姿をより龍の型へ変質させた鎧と成って見た目は正しくドラゴン。
使えば大概の担い手を死なせてしまう覇龍ではあるが、ヴァーリ・ルシファーがそうであった様に莫大な魔力で抑える事も可能。
仮令、これが禁断の融合を成した二真龍だとしても……だ。
その力は正しく小さな龍、実際には更なる龍の神に成る――超サイヤ人3に相当する天神龍に。
「終わらせてやる!」
《Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!》
ユートは先程の御試し以上に増幅を掛ける。
《Explosion!》
「おらぁぁっ!」
「グオオオオオオオッ!?」
殴ったら巨体なレックス・キメラが吹き飛ぶ。
レックス・キメラは巨体だけど、覇龍化をしたユートの身体は同じくらいの大きさだったから、力の倍加による増幅をすれば当然の帰結。
「スペリオルドラゴンを
エネルギー剣を消して、弐式爆連打と云わんばかりに殴る殴る殴る殴る! と拳を打ち付けた。
「グギギッ!」
これ以上はさせぬとばかりに二首の内の一つがバロールの怪光線、今一つのゴライアスの首からはアンフィス・バエナの焼夷火焔放射を。
「やらさせるものか! プロテクトシェード!」
念能力たる“破壊神之左掌”によってどちらも防いでやり、エネルギーを五芒星に巡らせて反射をしてやった。
「GyaOooooooooooo!」
レックス・キメラは、堪らず悲鳴を上げて引っくり返る。
「二天龍を融合した二真龍に成ったからにはな、てぇめぇ如きに敗けるなんざ赦されやしねーんだよっ!」
右腕を引く。
「ブロークンマグナムッ!」
同じく念能力、“破壊神之右拳”により拳型をしたオーラをレックス・キメラへ飛ばしてやった。
「ガァァァァァッ!」
起き上がったばかりのレックス・キメラだったのに、ブロークンバーストよりも貫通性能の高いブロークンマグナムに腹部を貫かれる。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁぁぁっ!」
今度はDIOの無駄無駄ラッシュだったりする訳だけど、これはスタンドでは無く普通に自分自身が敵をぶん殴っているだけに過ぎない。
「グギャギャァァァァッ!」
とはいえ、覇龍の暴力に晒されれば痛いのだ。
強い防御力と再生能力を誇るレックス・キメラではあるものの、連続でダメージを受け続けていれば痛い上に再生が追い付かない。
同じ土俵に立てば高が階層主を継ぎ接ぎしただけのモンスター、そんな無様なモノに敗北を喫するなど無かったし、兵藤一誠やヴァーリ・ルシファーに加えて歴代の白龍皇達や赤龍帝達、彼らの名に懸けてあんなモノに敗けるなど赦されない。
それに名前を借りた【スペリオルドラゴン】の尊厳に懸けても高々、ちょっと竜の要素を持っているだけのモンスターなど斃せずして、どうして彼の名を名乗れようか?
「スレイヤード・スレイヤード・バルモル、暗き闇の雷よ……」
「グルル……」
「【
“力在る言葉”に誘発をされた稲光りが、大気中を奔り抜けるとレックス・キメラを撃ち貫いた。
「ギィィィガァァァッ!」
高圧電流に撃たれたレックス・キメラの筋肉が一時的に麻痺、そんな僅かな時間でもユートにとっては充分に過ぎるものが有る。
「ヘル&ヘブンッ! ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……」
元からユートは、魔石を破壊して灰にする心算など更々無い。
「てぇめぇの命の核、戴くぞっ! ウィィィィィータッ!」
既に麻痺で動けないレックス・キメラに追い討ちの如く、功性エネルギーと防性エネルギーを一つにした際に発生する力の嵐――E.M.Tフィールドが強く拘束をする。
若干だけ地面から浮いて背部から生まれ出でる推進力で突進、融合エネルギーを纏いながら両手をレックス・キメラの体躯へと突き刺すと、命の核であるを魔石を抉り出して、体内へと送り込んだ融合エネルギーを爆発的に開放した。
レックス・キメラは大爆発をして灰は灰へと、そして塵は塵に還る。
その後には、爆発痕以外に何も残りはしない。
ユートはレックス・キメラの魔石をストレージに仕舞うと、スペリオルドラゴンモードとでも呼べる超越黄金龍の鎧を解除する。
正確にはスペリオルドラゴンが、カイザーワイバーンとユナイトした姿に、スペリオルカイザーというSDである三頭身からリアル頭身に成った姿なのだけれど。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
撤退をした冒険者達は、第一八階層からは逃げられない状態だから出来得る限り戦場から離れた場所へと退避をしており、それ故にスペリオルドラゴンモードなユートがレックス・キメラと闘う処も観ていた。
その感情は助かった事への歓喜でも無ければ、モンスターが斃された安堵でも無い、其処に有ったのは正しく恐怖心であったと云う。
勇者が大魔王を討伐したら?
其処に生まれるのは大魔王を討つ程の力を持つ勇者に対する恐怖、例えば『破壊神を破壊した』として恐怖の対象とされたローレシアの王子であったり、大魔王バーンを討つ為に竜魔人の力を解放した勇者ダイ。
勇者ダイの場合は高がヒドラを殺した処を見られた程度で、ベンガーナ王国に居た連中から奇異な眼で視られた為の自身が懐いた恐怖心だけど、自らを『大魔王バーン以上の化け物』と称した程に鬼眼を解放前のバーンを、可成り圧倒していたのが原因ではあるのだろう。
とはいえど、これで臆する程度の冒険者なんかは隻眼の黒竜やその眷族と闘うなど不可能だし、ダンジョンの最奥へと至って全てに決着をなんて出来る筈が無いのだ。
ベート・ローガ風に云うならば、『足手纏いの雑魚』である。
但しそれは、ベート・ローガの様な『死んで欲しくないから巣穴に引っ込んでろ』という訳では無くて、本気で邪魔だという感情から。
其処に優しさなど微塵にも有りはしないのだ。
「ユート様」
「何だ?」
稍有って、背後からユートに声を掛けて来たのはリリルカ・アーデ。
「ユート様は
「……質問に質問で返すが、どっちだと思う?」
人間orモンスター?
「人間です、ユート様はユート様で充分ですよ」
「リリがそう思うなら、それで良いと思うけど」
「そうですね」
リリはユートに背後から抱き着き目を閉じた。
「一応の説明をしておくと、アレは異世界の神の一柱である“聖書の神”が創り出した神器と呼ばれてるアイテムだ。その中でも強大な生物を封印した封印型の神器にして可成り危険な物でもある。しかも僕はそれを同時に二つ使っているんだ」
「二つを?」
「一つは敵の力を半減させるモノ、もう一つは逆に自身の力を倍加するモノだ。その性質としては正反対に位置する力と成っているな」
正反対故に下手な融合は対消滅し兼ねないし、危険極まりない行為なのは兵藤一誠の例を挙げれば解り易く、ユートが二つの力を一つに融合させるのに長けていたからこそ可能と成っている事。
「神器というのは、リリにも使えるモノなのでしょうか?」
近くに来ていたフィン達からしたら可成り訊きたい事、ピタリと足を停めてしまいユートとリリの会話を聞き入る体勢に入っていた。
「神器はアイテムって訳じゃない、別の世界に生まれた人間にしか宿らない特殊な代物なんだよ」
「人間にしか宿らない?」
「そうだ。妖怪や妖精や悪魔や天使といった存在には宿らない。但し、ハーフで人間の血を引くのであれば話は違ってくるんだがね。後は抜き取った神器を宿す後天的な場合だ。僕は生まれ付いて宿した
「
人間であった後天的な悪魔である兵藤一誠達、吸血種でありながら人間との混血なハーフヴァンパイアのギャスパー・ヴラディ、同じく悪魔との混血児のハーフデビルなヴァーリ・ルシファー。
彼らは人間の血筋であるが故に神器を宿した。
「因みにだが、あの世界に生まれた訳じゃない僕は神器所持者だ」
「いずれにせよ、リリには扱えない代物だという訳ですか」
「
「……へ?」
「人工神器、名前の通り人工的に造ったモノさ」
とはいえ、特殊な魔導具という立ち位置なだけに簡単に誰かへ譲れたりする様な代物でも無い。
「まぁ、僕の神器に比べれば大剣とナイフくらいには差が有るけど」
寧ろ、赤龍帝の籠手や白龍皇の光翼は云ってみればロトの剣や天空の剣、ユートが造る人工神器はモノにもよるが店売りの武器であろう。
勿論だけど、神器の中でも程度の低い青い光の矢を撃ち出すとかなら、ユートの人工神器の方が能力的に余程優れている自負は有る。
「本来の神器は魂に癒着しているから、抜き取れなくは無いけど抜き取れば命を落とす。譲れと言われて簡単に譲れるモノじゃないんだ」
「成程、判りました。処でですが、ユート様の持っているソレは抜き取ったモノなのですよね?」
「そうだが?」
「抜き取られた方は、矢っ張り御亡くなりに?」
「死んだよ、当然ね」
白龍皇の光翼の時はユーキが相手をしたから、ユートが抜き取った訳でも無かったのけれど。
それを理由に『殺してない』と宣う気は無い。
赤龍帝の籠手に関しては、狼摩優世を殺害こそしたけど神器は魂から離れなかった為に奪う事が出来なかったが、どういう訳かユートの中に存在していたからこそ今はユートが所持者であった。
スペリオルドラゴンモードの解除をしたから鎧が消失し元の姿に戻っているし、ユートは変身をしていた前後とでまるで変わらないヒューマンとして立っている。
鎧の見た目は龍だったとしても、精神性は普通に人間なのだ。
「神器には通常の発動形態以外に、禁手と呼ばれる謂わば裏技に近い強化形態が存在しているが、強力な神器の中には更なる発動形態が有る」
「若しやそれが?」
「そうだ、僕が発動したのが正しくその形態だ。赤龍帝の籠手と白龍皇の光翼の場合は“覇龍”と呼ばれて、神器に封じられた天龍の力を強引に引き出すが故に、禁手化された鎧が見ていた通りのモンスター染みた形に変化する。そして大概の二天龍の担い手は覇龍の発動をして、大した時間も経たずに死亡をしている」
「なっ!?」
驚愕してしまうリリ。
「何しろ“覇龍”は暴走形態みたいなもんだしな、担い手は力を求めた挙げ句の果て力に呑まれた」
とはいえ、ユートの二天龍の神器はどちらにしても誕生したばかりのモノを、這い寄る混沌により持ち去られて勝手に転生者へ宿された。
故にこそ、残留思念による呪詛は存在していなかったけど。
尚、ユートの宿してた神器は全て神殺しの魔王の力によりシステム外と成り、何処ぞの超越者による無効化は効かなく成っていたりする。
当時は“聖剣創造”をジャンヌ・ダルクとは別口の者から奪っていたけど、その禁手による攻撃をその超越者は無効化が出来ずに喰らった。
禁手で“
「さて、僕はそろそろ帰る。仲間は全員を連れて帰るからリリ達は帰還の準備をしてくれるか?」
「判りました、ユート様」
ユートはさっさと帰ろうと提案をしたのをリリは直ぐ頷く。
「待ってくれないか?」
「何だ? フィン」
「色々と訊ねたいが、君達はどうやって帰る心算だい?」
「
そんな魔法は聴いた事も無くて、フィンは驚愕に目を見開いた。
広義で云うならばこれもルーラ系統と云えなくもない呪文であり、
「それは君達だけが?」
「僕の使える帰還呪文は、僕自身のパーティかクランである事を条件にしている。そうでない人間を一緒に連れては行けないんだよ」
「パーティは兎も角クラン?」
「ある意味でファミリアと言い換えても良いが、違うのは例えばアテナ・ファミリアの僕らだけでは無く、ヘスティア・ファミリアであるベル達もそうなんだが、ヘファイストス・ファミリアであるヴェルフやタケミカヅチ・ファミリアの千草も対象と成っている事だね」
ロキ・ファミリアならレフィーヤやティオナの二人が、確実にクランの対象と成っている筈だ。
「そういう制限が有るのか」
フィンは納得したらしい。
「……君が手伝ってくれれば、塞がれた一七階層への出入口を早く開通が出来たりしないかい?」
「するだろうな。その為の能力だって有るから。けどな、それを僕がする義理は無いだろう?」
「それは……無いな」
「義務なんてもっと無いし」
それでも遣っておけばコネには成るだろうし、ボールスが一声を掛ければリヴィラは使えなくなる事を鑑みれば、作業を手伝っていても損は無い筈だろうがユートとしては余り乗り気では無い。
「だいたい、助けられておいて遠巻きにしている連中を助けるのも……な。君ならそれで積極的に助けたいと思うか? なぁ、フィン」
「それは……」
ロキ・ファミリアに関して云えばフィンが待機を命じたからだから、タケミカヅチ・ファミリアも千草がそう申し出たからだが、然しボールスや他の連中に関しては単にユートを恐れたからだ。
ユートは善意には善意を、悪意には悪意を以て返すタイプだったからあの態度は些か頂けない。
こうなる事は解り切っていたが、それでもリヴィラへの被害を最小限にするべく動いてはいた。
「覇龍は消耗も激しいから、余り遣りたく無かったんだがな」
「……そうか」
意識を喪い、本能だけで敵味方関係無く暴れる暴龍と成り果てる覇龍形態、こいつを抑えるコツはMPの消費と共に無理矢理意識を繋ぐ事だったりするから、MPが秒間で一〇くらいは減っていく。
ユートの魔力量が莫迦みたいに大きいからこそ何とかなるが、白龍皇の鎧でさえも本来の担い手ヴァーリ・ルシファーでもなければ死に逝くし、ユートみたいな相反する力を融合させるなどして覇龍化をしてしまえば即死をするであろう。
まぁ、それ以前の問題なのかも知れないが……
「兎に角だ、僕はさっさと帰るぞ。流石にもう疲れたからな」
「その前に訊ねたい事が有るけど、良いかな?」
「手短に頼む」
そう言えば、幾つか訊きたいと言っていたか?
「先ず、君の魔法はいったい幾つ在るんだい? リヴェリアやレフィーヤみたいな特殊ケースなら兎も角、君はどんな理由でこれだけ?」
「単純に僕は初めから魔法が使えていただけだ。“神の恩恵”を背中に刻まれる前からな」
「マジックユーザーでも無いヒューマンである君がかい?」
「僕がヒューマンだとかどうとか関係は無いな。元々、僕は魔法を生まれた時から使っていたよ」
「生まれた時から?」
ユートは抑々、上司に言われて転生をした際に魔法を扱える様にと力を与えられたが、転生先で確りと勉強して実践して実戦にも出て上達してきたし、何なら次の転生先でも魔法を修めてきた。
故に新たな転生でも魔法は確りと使えている。
「メラ!」
徐ろに呪文を唱えると小さな……とはいっても威力はメラミと変わらない火球が掌へと顕れた。
「それは?」
「別の世界で使われてた呪文だよ、メラっていう簡単な火球を出すな。魔力強度次第で威力的にも充分過ぎるくらいに上がるもんだから」
ドラクエに攻撃魔力や回復魔力の概念が生まれてから、呪文の威力は取り敢えずそれに準拠をして上がっていく仕様に成っている。
それまでは決まった威力に乱数計算による上下が有るだけ、勿論だけど耐性次第ではダメージが半減したり無効化されたりはするが。
「その気に成れば『今のはメラゾーマでは無い、メラだ!』なんて事も可能……つってもその手のネタなんぞフィン達にはちょっと解らんか」
ユートは掌に顕れた火球を握り潰してしまいながら言ったが、それは謂わば大魔王ごっこだ。
「ネタ? それは神々がよく言っているやつなのかい? ロキもそんな事を偶に言っているけど」
「まぁ、大概は鉄板ネタとかで使われるからな」
正に鉄板ネタ。
「さて、まだ訊きたい事は?」
「グラディウス・レプリカ、これみたいな武器を君は造っていると思うんだけど、僕としては防具関連も欲しいと思っているんだよ」
「確かに僕は防具も造れるけどな、フィンは売って欲しいのか?」
「そうさ。僕は軽めの
「鎧タイプは苦手か?」
「苦手では無いけどさ、小人族な僕が重たい鎧はちょっとね。種族的に軽い鎧か戦闘衣の方がさ」
ガレスみたいなガッチリしたタイプであれば、重たい鎧を着込んでタンクなんかも可能だろう。
然しながら、小柄な小人族は寧ろ素早さを重視する方が多い。
居ない訳では無いのだが……
「まぁ、受注くらいはするけどな……高いぞ?」
「だろうね。ローンを組みたいんだけど大丈夫だろうか?」
グラディウス・レプリカで個人資金が空っぽなフィンは、身の安全を守る為の防具も欲しくなってローン返済を頼んでみる。
「フィンは天下のロキ・ファミリアの首領だし、それなりに信用も実績も有るから構わないが」
「君は先程みたいな重装甲もしている事もあるみたいだが、普段だと今みたいな軽装――と言うか戦闘衣の姿で闘っているだろう?」
「まぁね、この戦闘衣は
更には真銀や青生生魂や青鍛鋼などを使っての装飾を入れ、それにより魔術的に物理的に呪術的にも防御力を飛躍的に引き上げていた。
華美では無くて、大して目立たない様にしている訳だけど、そういった意味の有る装飾だから。
「僕の造る武具は、ヘファイストス・ファミリアやゴブニュ・ファミリア産の第一等級
特殊武装は通常の武装とは異なる特殊な機能を持たせた代物、アイズのデスペレートも第二等級特殊武装に位置していて、切れ味とか威力的なのは第一等級に劣るが
“凶狼”のベートが脚に装備する具足も特殊武装の一種で、魔法を吸収してその力を具足その物へと附与して扱う事が可能だった。
そういう意味ではユートの使っている武器も、立派な第一等級特殊武装に分類をされるだろう。
「まぁ、フィンなら多少のオマケはしようか」
「是非とも御願いしたいね」
苦笑いを浮かべながら肩を竦めているフィン、もう既に貯金も尽きて無いに等しいからローンを組みたいし、オマケをして貰えるのならして貰いたいと思ってしまうのは仕方がない事であろう。
「時間稼ぎは終わりか?」
「残念ながらね」
今度こそ本当の意味合いでフィンは肩を竦めて見せていた。
せめてリヴィラの顔役たるボールスが動いてくれたら、フィンはどうしてもそう思わずには居られないものであったと云う。
「ま、リヴィラに用は無いから別に構わないな」
「そうか」
ユートとそのパーティやクラン、ユート自身はアイテムストレージにアイテムを容れられるし、パーティメンバーやクランメンバーなら道具鞄を持たされる為、アイテムが一杯一杯に成ってしまう事が無いから、ユートにとってはリヴィラの街などは不必要ですらある。
「取り敢えず、仮にリヴィラの街が危機に陥っても助けないけどな」
「そうなるのかい?」
「最早、どうなろうとも知らん」
遠巻きにしている他派閥の冒険者達をユートは完全に切り捨てる。
「リリ」
「はい」
「ベル達に地上へ帰る通達をしてきてくれるか」
「わっかりました!」
リリは軽い敬礼をして動く。
程無くして、撤収作業を終わらせたベル達が集まって来たので、リヴィラの街の広場にて集合すると周囲が視ている中、さっさと帰ろうとした。
「ユート」
「どうした?」
「少し確認をしたいんだが、君の魔法の対象者にウチのファミリアの者は居たりしないのかい?」
「アイズ、レフィーヤ、ティオナは確実に大丈夫だろうな。後はエルフの中でもそれなりに仲良くしてるリヴェリアとアリシアなら或いは」
「そうか」
顎に手を添えて思案をする。
「悪いが、ウチのレフィーヤを連れて行って貰って良いか?」
「それは構わない」
フィンはレフィーヤに向き直る。
「レフィーヤ」
「はい」
「君は先に戻って、ロキへと報告をして欲しい」
「わ、判りました」
という訳で、レフィーヤは一緒に戻る事に。
小一時間後、完全に撤収準備を終えたアテナ・ファミリアとヘスティア・ファミリアに加えて、ヴェルフと千草とレフィーヤが集まる。
「おい、
「何だい、ボールス?」
「あいつらは何を?」
「帰るんだってさ」
「何処へ?」
「地上に決まっている」
「……は?」
マヌケな顔で、間抜けた声を上げるボールス。
「どうやってだ?」
「魔法でみたいだよ」
「ハァ?」
驚愕したのか、ボールスは目を見開いていた。
ユートはベルカ式のマジックサークルを展開、その回転をする闇色の輝きはユート達を包んだ。
「
そして全員が消えた。
「前にも話には聴いていたけれど、確かに凄いものだね」
何と無く話題に挙がったのを思い出しながら、フィンは自分達の撤収準備をする為に動き出す。
ボールス達はあんぐりと口を開けていたとか。
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