ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】   作:月乃杜

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 ストックが……





第8話:芋虫との戯れは間違っているだろうか

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「走ってきているのは?」

 

「ウチらのファミリアよ。金髪の人が団長のフィン・ディムナ。ドワーフの方はガレス・ランドロックね。狼人(ウェアウルフ)がベート・ローガで、ガレスに担がれているのはラウル・ノールドよ」

 

 互いに走っていたからか話している間に合流する。

 

「無事だったみたいだね」

 

「はい、団長!」

 

 フィン・ディムナからの問い掛けに、ティオネが顔を赤らめて返事をした。

 

 それを見ただけで、少なくともティオネがフィンにただならぬ想いを懐いているのは理解出来る。

 

 すぐ後ろには芋虫みたいなモンスター。

 

「アレって!」

 

「任せろ!」

 

 ティオナが出ようとするのを押し留め、ユートが前に出ると……

 

結晶障壁(クリスタルウォール)!」

 

 輝く光の壁で芋虫モンスターを防ぐ。

 

 小宇宙で作るより脆いのだが、それでも鉄壁の防御を誇る障壁だ。

 

「これで暫くは保つ」

 

「す、済まない……というか君は?」

 

「先客だよ。ロキ・ファミリアの団長殿」

 

「そ、そうか……」

 

 フィン・ディムナの問い掛けに、ユートは先客という一言だけで済ます。

 

「そこの担がれてる彼は、いったいどうした?」

 

「ふむ、あのモンスターは腐食液を吐き出しおるが、それをラウルが受けてしまってのう」

 

「成程、なら治療するから降ろしてくれるか?」

 

「良いのかの?」

 

「構わない、サービスだ」

 

「ふむ、宜しく頼む」

 

 ドワーフ──ガレス・ランドロックはラウルというヒューマンを、担いでいた肩から静かに降ろす。

 

「聖なる癒しのその御手よ 母なる大地のその息吹 我が前に横たわる傷つき倒れし彼の者に 我ら全ての力以て 再び力を与えんことを……」

 

 ラウルの身体に右掌を翳して呪文を詠唱する。

 

復活(リザレクション)

 

 治癒(リカバリー)よりも上位に当たる魔法であり、治癒が対象の活力を代償に癒す魔法なのに対し、此方は周囲の精気を集めて治療に回す。

 

 ラウルの傷はみるみる内に塞がっていき、腐食液を浴びた身体は修復された。

 

「後は意識を取り戻したら完璧だ」

 

「ありがとう、助かった」

 

「どういたしまして」

 

 ポーションやハイポーションでは間に合いそうにはないダメージ、万能薬(エリクサー)を使わねばらない処を治療魔法で治して貰えたなら僥幸だろう。

 

「さて、残るはモンスターの対処か。問題は腐食液を吐き出してくるのと死ぬと爆発して液を撒き散らす、しかも物理的なダメージを与えると腐食液で溶ける」

 

「うわ、めんどいね」

 

 ティオナがゲンナリとした表情となる。

 

「武器に不壊属性を付けたなら。フィン・ディムナ」

 

「何だい?」

 

「武器を貸してくれるか」

 

「……判った」

 

「見知らぬ相手にあっさりと渡すな?」

 

 自分から言って何だが、多少呆れが入った声色となって訊ねた。

 

「何、君が敵ではないと勘が云っているのさ」

 

「成程、納得した」

 

『『『『ええっ?』』』』

 

 二人の会話にティオナを中心に絶叫が響く。

 

 それを他所にユートが行うのはスキル行使であり、使うのは【聖剣附与(エクシード・チャージ)】だ。

 

「聖騎士ローランが持った聖剣・デュランダル附与」

 

 その効果とは暴君の如く切れ味と、決して滅する事の無い不壊属性。

 

 二つは附与出来ないが、これで少なくともこの槍は一時間は破壊されない。

 

「今のは?」

 

「スキル。今のその槍には不壊属性(デュランダル)が一時的に掛かっている」

 

「っ!? アイズの愛剣(デスペレート)と同じ!」

 

 驚くフィン・ディムナ。

 

 アイズ・ヴァレンシュタイン──種族はヒューマンであり、レベルは5の第一級冒険者の一角。

 

 愛剣は銘をデスペレートと云い、不壊属性(デュランダル)を持つ。

 

 威力は他の同等の剣より劣るが、少しでも長く戦う事を選んだアイズにとって不可欠な武器だ。

 

 当然ながら不壊属性なぞ簡単に附与は出来ないし、ユートがやったみたいな事は一種の反則だろう。

 

「ま、今はありがたいね」

 

 不壊属性を施された槍を振りながら言うフィン。

 

 正直、問い質したい気持ちも無いではなかったが、今はあの忌々しいばかりのモンスターを討つのみ!

 

「ねぇ、ねぇ。それって、複数にも出来るの?」

 

「ああ、自分の持つ精神力を代償に一時間だけ、何らかの力を附与出来るスキルだから。数に限度は無い」

 

「んじゃ、私の大双刃(ウルガ)にもお願い出来る? これ高いから壊したくはないしさ」

 

「此処を切り抜ける為だ、構わないよ」

 

 ユートはティオナが持つ巨大左右対称となる刃を、柄の両端に付けた大双刃なる武器に不壊属性を附与。

 

「あっりがとう!」

 

 余りにも重たいであろう武器だが、然しティオナはあっさりと振り回す。

 

「まったくあの子は〜……悪いけど此方もお願いね」

 

 胸部がティオナと正反対なティオネが、ククリナイフを渡してきた。

 

「了解」

 

「後でワシのも頼もう」

 

「はいはい」

 

 ガレス・ランドロックの斧にも次いで、不壊属性を掛けてやった。

 

「アンタは良いのか?」

 

「はん、要らねーよ」

 

 狼人の男──ベート・ローガは面白く無さそうな目で睨むと、さっさと芋虫型モンスターの方へ行く。

 

「さて、取り敢えず武器に不壊属性は附けた。これから結晶障壁(クリスタルウォール)を解除するから、奴らを討つ!」

 

「で? どう戦う?」

 

 フィンが質問する。

 

 この戦いに限り、ユートに戦闘指揮を任せるのだとフィンに言われた。

 

 理由は簡単、モンスターの侵攻を防いでいるのも、フィン達の武器に不壊属性を附与したのも、結局の処はユートだったからだ。

 

 フィンはそれならばと、ユートの指揮能力や戦闘力も見てみたくなった。

 

 情報を制するは何とやらとも云うし、彼はユートと同じく情報を大事にする。

 

 一方のユートは漏らしたくない情報以外は露出し、見せておく事も侭あるから問題なく引き受けた。

 

「結晶障壁を解除したら、すぐにレフィーヤが魔法で前面の奴らを潰す」

 

「わ、私ですか?」

 

「次に残った連中に僕が突っ込んで斃す。斃し切れなかった連中は後ろのフィン達に任せよう」

 

「君に掛かる負担が多くはないか?」

 

「大丈夫だよ、フィン」

 

「判った。見せて貰おう、君の力を……ね」

 

 フィンが納得した処で、作戦を開始する。

 

「誇り高き戦士よ、森の射手隊よ。押し寄せる略奪者を前に弓を取れ。同胞の声に応え矢を(つが)えよ。帯びよ炎、森の灯火(ともしび)。撃ち放て、妖精の火矢。雨の如く降り注ぎ、蛮族共を焼き払え」

 

 足下には魔法円(マジックサークル)が光り輝き、長杖を両手に持って前に掲げたレフィーヤは、此処に詠唱を完成させた。

 

 ユートが結晶障壁を解除した瞬間……

 

「ヒュゼレイド・ファラーリカッッ!」

 

 業火絢爛な焔の矢が放たれて、芋虫型のモンスターへと一斉に襲い掛かる。

 

 次々に着弾しては芋虫を焼き払い、僅かな時間にて半分以上が焼滅していた。

 

「よくやった! 後は此方に任せろ、レフィーヤ!」

 

 自分が役に立てた事が嬉しくて、そして褒め称えられたのがこそばゆくてか、真っ赤になるレフィーヤ。

 

 既に他の面々は襲い来るだろうモンスターに備え、武器を各々が構えている。

 

 ユートが自らの黒き剣──エリュシデータを揮い、芋虫型モンスターを次々に斬り裂いていくが、やはり討ち漏らしは出るもので、それら数体をロキ・ファミリアで叩いていく。

 

目覚めよ(テンペスト)

 

 アイズ・ヴァレンシュタインが唯一、行使が可能な附与(エンチャント)型な風の魔法──

 

「……エアリエル!」

 

 風を身体に、武器に纏わせてその身を疾風と化し、剣は暴風と成す。

 

 よって、防御不可能な筈の溶解液さえがアイズの身にも武器にも届きはせず、神速を以て全てを斬り裂く攻防一体の風の鎧。

 

「おい、アイズ。此方にも寄越しやがれ!」

 

 ベートが言うが早いか、アイズは【エアリエル】の魔法を彼の具足へと放つ。

 

 ベート・ローガ──ロキ・ファミリアの第一級冒険者の一角であり、誰よりも強さに固執をする狼人。

 

 その武装は両脚に穿いた具足、第二等級特殊武装(スペリオルズ)の【フロスヴィルト】……魔法攻撃を吸収し、特性攻撃に変える精製金属具足(ミスリルブーツ)である。

 

 僅かに数体なんて普通なら過剰だが、芋虫型モンスターは死ねば爆発して溶解液を噴き出すし、それでなくても体内の溶解液が武器を溶かしてしまう。

 

 その対策方法である。

 

「あっ! 反対側からも、モンスターが!?」

 

 反対側からも、自分達が来た方向からも再び現れた芋虫型モンスターに驚き、レフィーヤが焦りながらも絶叫をする。

 

「大丈夫さ、レフィーヤ」

 

「ワシらが此処に居る」

 

 小人族(パルゥム)の男──フィン・ディムナ。

 

 ドワーフの男──ガレス・ランドロック。

 

 共にロキ・ファミリアに於ける最古参、LV.6の第一級冒険者である。

 

 フィンは【勇者(ブレイバー)】の二つ名を持ち、ガレスは【重傑(エルガルム)】の二つ名を持つ。

 

 見た目からは想像も付かないが、フィン・ディムナは実はアラフォーであり、年の功と言い張る知性にてあらゆる状況を打破してきた実績があるロキ・ファミリアの首領。

 

 オラリオに於いて一・二を争う剛力の持ち主であるガレス、この場には居ないハイエルフの女性を含めて三人は謂わば最高幹部だと云っても過言ではない。

 

 その実力はLV.6という数字からして推して知るべしで、ロキ・ファミリアの中でもトップクラス。

 

 ユートは万が一にでも、というより半分は確信して背後からの襲撃を考えて、わざわざロキ・ファミリアのトップクラスを残した。

 

 それが理解出来ているからこそ、フィンもガレスも大人しく従ったのだ。

 

 尚、ラウルはLV.4。

 

 実力に申し分はないが、余り目立ってはいない。

 

「レフィーヤ、僕らが壁になるから魔法を!」

 

「は、はい!」

 

「ほれ、お前さんもじゃ」

 

「え? 自分もっスか?」

 

 レフィーヤは詠唱開始。

 

 ラウルはガレスに引っ張られて壁役を。

 

 激しい戦闘が始まる。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「数が多い。それにやはり後ろでも戦闘が始まった」

 

 ユートはぼやく。

 

 

 最初に現れた連中ならば既に全滅したが、先の方で次から次へと増殖されて、まったくキリが無い。

 

 どうやら、百や二百じゃ利かないくらい居る様だ。

 

「チッ、ウザいな」

 

 舌打ちしつつ詠唱。

 

 今ならば、アイズからもベートからも見えない位置に居るのは把握している。

 

 

 大地の底に眠りある凍える魂持ちたる覇王

 汝の昏き祝福で我に与えん氷結の怒り以て

 我が眼前の敵を討て

 

 

 それは覇王(ダイナスト)の凍れる魂、極北の冷たき大地を支配する魔族の将が一角から力を借りた呪文。

 

覇王氷河烈(ダイナスト・ブレス)!」

 

 【力在る言葉】に従い、放たれたは氷河さえ生み出すであろう負の温度。

 

 前方にのみ威力を発する為のアレンジはしてるが、基本的な部分は変わらない強烈なる吹雪が襲う。

 

 芋虫型モンスターは忽ち凍結し、更には粉々に粉砕されていく。

 

 普通に斃せば溶解液にて全てが消失するのだけど、この斃し方は絶妙だったらしく、アイテムストレージには魔石とドロップアイテムの名前が挙がっていた。

 

 【ヴィルガの魔石】

 

 【ヴィルガの溶解液】

 

 【ヴィルガの表皮】

 

 【ヴィルガの牙】

 

「ヴィルガ? これが芋虫の名前って訳か?」

 

 とはいえ、果たして売れる物なのかどうか?

 

 物に関しては帰ってから要検証するとして、ヴィルガとやらはどうやら一時的だろうが全滅らしい。

 

「終わった……の?」

 

「みたいだね。一時的にだろうけど取り敢えずは」

 

「けっ!」

 

 追い付いて来たアイズとベート。

 

「ヒリュテ姉妹は?」

 

「後ろにも芋虫野郎が出てきたらしくてな」

 

「そうか」

 

 規定事項故に驚くにも値しない情報。

 

「LV.6が二人に魔導師が一人、オマケにLV.5が二人なら問題無いな」

 

 武器の問題さえクリアをすれば、決して遅れは取らないであろう。

 

「……ラウルも居るよ?」

 

「うん? ああ、そうだったっけね……」

 

 ユートの中では現在出逢ったロキ・ファミリアの中に在って、最弱にカテゴライズされてはいるのだが、一応は彼もLV.は4だ。

 

 そういうユートはというと見えるLV.は1でしかなく、駆け出しも駆け出しな冒険者の卵に過ぎない。

 

 魔法とスキルは凄まじいものの、基本アビリティは初期としてはちょっと高めな程度でしかなく、こんな深層域で戦えるのは元々の能力がLV.5に相当し、【神の恩恵】でLV.が6相当になったから。

 

 ユートは初めから古代の英雄と同じくらいだった。

 

 それだけの話。

 

 勘違いをしてはいけないのが、ユート自身が単純にバグな訳ではない点。

 

 生まれ変わって鍛え直しをするし、それ以前の能力だってそれこそ生命懸けで身に付けたものだ。

 

 文句を言われる筋合いは無いだろう。

 

 それは兎も角、ユート達はフィン達と合流すべく、再び後ろへと向かった。

 

「やあ、君らも無事か」

 

「そっちも上手くやってくれたみたいだね」

 

 向こうも同じく考えたのだろう、途中で合流をする事が出来た。

 

「こうなるとキャンプの方も拙いかな?」

 

 自分達を襲ったヴィルガ──まだ名前は知らない──が第五〇階層のキャンプを襲っていても何らおかしくはなかったのだ。

 

「確かに……モンスターが階層を上がる事もあるか」

 

 フィンの言葉に肯定し、少し急いだ方が良さそうだとユートは考える。

 

 第五〇階層はモンスターが生まれない安全階層(セーフティゾーン)だけど、決してモンスターと遭遇をしない訳ではない。

 

「フィン、あんたのファミリアは第五〇階層に駐留をしているんだな?」

 

「ああ、そうだよ」

 

「なら急ごうか」

 

「君も来るのかい?」

 

「こうなったら一度帰るのも良さそうだし、そっちも帰る事になるだろ?」

 

「まあね、本当にモンスターに襲われていたなら」

 

 我知らず、ユートだけではなくフィン達の脚も駆ける様になった。

 

 他人事なユートと異なりフィン達はファミリアだ、安否が定かでない仲間達を急ぎ確認したい。

 

 嗚呼、それなのに。

 

 ダンジョンは生きているとはこの事か?

 

「親指がうずうず言ってる……来るかな?」

 

 フィンが自分の親指を舐めながら言う。

 

 ガコッ!

 

 ダンジョンに亀裂があちこちに入り、そこから生まれ落ちるブラックライノスの群れ群れ群れ群れ!

 

「モンスターハウスか!」

 

「あ? 何言ってやがる。【怪物の宴(モンスター・パーティー)】だろが!」

 

 ベートがこの現象の此方の言い方を教えてくれた。

 

「モンスター・パーティー……か。言い得て妙だね」

 

 折に触れてダンジョンはこんな意地悪をする。

 

 そしてこれが冒険者の命を刈り取るのだ。

 

「私が……いく!」

 

「アイズ?」

 

 フィンは疎か、レフィーヤでさえ文句も言わない。

 

 つまり、やれるという事なのであろう。

 

目覚めよ(テンペスト)

 

 単純な効果であるが故、超短文詠唱な魔法。

 

「エアリエル!」

 

 風が逆巻き、アイズ・ヴァレンシュタインの身体に纏われる。

 

 嘗て、アイズに主神が教えたジョークがあった。

 

『アイズたん、(つよ)なりたいんやったら必殺技の名前を叫ぶとええよ。そしたら、技の威力が上がるんやで?』

 

 それ以来、アイズは自らの必殺技の──主神が付けた名前を言之葉に乗せる。

 

「リル・ラファーガ!」

 

 単純明快、暴風を身に纏って閃光となるアイズ・ヴァレンシュタインは、前方の敵を一切寄せ付けない。

 

 ブラックライノスは次々と斬り裂かれていく。

 

「流石は第一級冒険者」

 

 既知外な戦闘力だ。

 

「急いで戻るぞ!」

 

 フィンの号令で駆ける、駆け抜けた先は第五〇階層への戻り口。

 

 見た先にはキャンプ地を襲うヴィルガの群れ。

 

 果たして何百匹居るか、数えるのも莫迦らしい。

 

 驚愕するロキ・ファミリアの面子に、アイズが再び魔法を使おうと口を開くのをユートが止める。

 

「僕が行こう」

 

「けど……!」

 

「試したい事もあるし……上手くいけば一網打尽にも出来る陣形だ」

 

 アイズがバッとフィンを見遣ると……

 

「頼めるかい?」

 

 ニヤリとしながら言う。

 

「任せろ!」

 

「なら、頼んだ!」

 

 フィンから全権委任されたユートは、アイズが風を纏った時より逸く駆けた。

 

「は、やい!」

 

「あれならあっという間……かな?」

 

 頼んだフィンからして、頬を引き攣らせる。

 

「聞こえるか、地上の神。ヘスティア、ミアハ、ヘファイストス、ゴブニュ!」

 

 地上の知り合った神々に念話を送る。

 

〔ユート君かい? あれから随分と経つけど、どうして戻って来ないのさ?〕

 

「ヘスティア、悪いんだけど帰ってからにしてくれ」

 

〔うっ!〕

 

〔それで? ユートは何故我らに声を届けた?〕

 

 代わりに訊ねてきたのはミアハ、【青の薬舗】を商う薬神である。

 

「ちょっと面倒な事になっていてね、僕は本来だと使えない力を使いたい。それにはこの世界の神々から、複数から許可を取らなければならない。力は最低限で二柱から……それで三〇秒だけ使える。そこから一柱増えて三〇秒ずつ、四柱で一分三〇秒だ」

 

〔私は構わない。君が悪い事に力を使うとは思えないのでな〕

 

 ミアハが許可した。

 

〔う、ボクもさ〕

 

 ヘスティアも許可する。

 

〔まあ、私も構わないわ〕

 

 ヘファイストスもやはり許可を出す。

 

「ゴブニュは?」

 

〔……良かろう〕

 

 これで全員から許可を得た事となり、ユートは僅かに一分三〇秒だけ本来の力を行使可能となった。

 

「翔けろ、僕の小宇宙!」

 

 この世界では封じられた小宇宙(コスモ)の力を。

 

 

.




 小宇宙が炸裂。


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