7XX年・・・
人類は壁の中でしか存在しない・・・
マコトは旧大陸の出身でかつて海の漁師であった、しかし今は小さな壁中の川で必死に淡水魚を捕っていた。
まだマコトが青年であった時のことである。
外地最南端のシガンシナ区で舟で魚を釣って生計を立てていた。
ゆっくり漁をしていると急に川の流れる速度が変わった。
「おい、もう少し帆を広げてくれないか!」
「マコト、風がないから無理だーー!!」
「リー、このままだと水門まで流されて舟がぶっ壊れるぞ!!」
水面上は50メートルの壁で巨人の侵入を防いでいた。
水面下は1メートル幅間隔の大きな鉄格子が巨人の侵入を防ぎ魚が自由に鉄格子の間を泳いでいた。
次にかじ取りをしていたリーを見た時は飛び込んで岸まで泳いでいた。
「おい、リー!!畜生!!!」
マコトも川に飛び込もうとしたが釣り針にひっかかり、なかなか釣り針がはずれなかった。
「ダメだ!間に合わない!!」
マコトの乗っていた舟は壁に激突して大破し、鉄格子の間から舟の残骸がシガンシナの川から排出された。
マコトも一緒に流されたが奇跡的に舟の残骸の木板が鉄格子に挟まりそこに押し付けられた。
だが恐怖は溺死だけではなかった。
(まさか・・・もう一度そのでかい体を見るとはな。)
川の流れがゆっくりになり、マコトは自力で全力で岸に泳いだ。
岸には漁仲間が心配して寄って来た。
「死んだかと思ったよ。お前はやっぱりついてるな。」
「これのどこがついてるんだ・・・」
マコトは上着のパーカーを脱いで両手でしぼりながら言った。
なぜ巨人と隣り合わせのシガンシナで漁をするかというと皮肉にも川幅や川底が深く漁獲量がシガンシナだけで9割を占めているからである。
だから漁師たちの間ではシガンシナは死の漁場とも言われている。
マコトはこの体験を転機にトロスト区に移住した。
30年後・・・
マコトの息子ケンタとトロスト区で漁をしていた時であった。
「シガンシナでは絶対漁をするなよ。特にシガンシナ川南部ではな。」
「なんで?父さんシガンシナ出身だろ?」
「だからだ、水が壁の外に排出されているが、水面下には鉄格子があり水面上は水門が閉まってる。怪物が入って来ないようにな。シガンシナで若い時見たが漁をしていた多くの東洋人が水流で舟が流され壁にぶつかり大破してそのまま壁の外に流された。漁師も一緒にな。壁の外に流された漁師は二度と戻らなかった。俺をのぞいてな。」
「父さん流されたことあんのかよ!!!」
「まさか、またあの怪物を目にするとは思わなかったよ。ある日漁をしていた時川の流れが急に変わった。そして壁ぎりぎりで漁をしてた舟が水門で叩きつけられて大破し流された。だが俺は鉄格子に奇跡的に引っかかった。舟の残骸とともに、壁の外を見たのは中に入る前以来だった。だがそこに怪物が鉄格子に群がってきたが川底で見てるだけだった。俺は再び怪物の恐怖を味わった。水流がゆるくなると死ぬ気で泳いで陸に上がった。あの時はこの世とあの世の堺を見たような気持ちだったよ。」
「分かったよ・・・父さん、もうジャックも生まれるし。」
祖父のマコトがボケ始めたころ・・・
「ジャックそろそろ舟に乗るか?もう五才だしな。」
「うん。」
ジャックは返事して外に遊びに行った。
「あんた、もうそろそろ話してくれよ。母さんのことを。」
「父さんから聞いた話だが俺を御産して亡くなったらしい。母さんのことは俺も知らないんだ・・・」
「そうかい、だからあんたはジャックのためにも生き抜いてね。私もあんたと同じ思いはさせないから。」
「だいぶ田舎口調になったな。」
ケンタは少し笑いながら言った。
十歳になったジャックは両親に言った。
「俺二年後に訓練兵団に入って憲兵になるよ。勝手だけど漁師は次男のヤックに継がしてやってくれ。」
両親は反対こそしなかったが、心配はしていた。
「お前の人生だ、好きにしろ。そして自分を貫け。」
「調査兵だけはやめてね。」
真剣に言うキャサリン。
ジャックは五人家族だった。
親父はトロスト川の漁師だった。
母親の名前はキャサリンでヤルケル区の貴族生まれだが、十六の時ここで親父と結婚した。
貴族のお嬢様と結婚出来たのは祖父が壁の中で一番の漁師だったからである。
両親は同い年だ、そして東洋人と西洋人の夫妻も当時は珍しかった。
祖父は南一番の漁師いや人類で一番の漁師だった、ボケるまでは。
弟の名前はヤックで六歳年下だ。
主人公の名前はジャック・ヤマト。
トロスト区に流れている川の漁師の息子でウォールローゼのトロスト区出身。
かつてジャックの祖父マコトは奴らが存在しなかった頃旧大陸沿岸で漁をしていた。
旧大陸に人類が住めなくなり、祖父は新大陸(壁の外)で漁をし始めた。
しかし新大陸にも巨人は出現し、祖父は壁の中に逃げ込んだ。
奴らが地上にはびこる前も壁の外を支配してからの人類にとっての暗黒の時代が訪れた時も祖父は漁業を続けた。
父親は純潔の東洋人であった。
ジャックの父親からは海を噂では聞くが海を見たことのない知らない世代であった。
海はウォールローゼ・トロスト区からウォールマリア・シガンシナ区の川が南に続いているらしいが水流に逆らうことがほとんど出来きず壁の外に出れば二度と戻って来れない。
※海に続く川は壁の中に多数存在する。しかし壁と同様水中には1メートル幅での鉄格子があり巨人の侵入を防ぐ役割を果たしている。
だが祖父はシガンシナ区から壁外に流されかけたが再びこの鳥籠(壁の中)に戻って来れた。
ジャックが物心つく時は祖父の認知症がひどくなっていた。
「聖域には神々や選ばれた人々が住んでおる。」
「南の最果ての島にはダーマ神殿が。」
「我一族はいずれ継承するだろう。」
祖父は認知症が重度になると支離滅裂なことを言っていた。
祖父はよく東洋人と言われていた、しかし人類はここにしか存在しない―――。
祖父や父親は、おい東洋人や、東洋人は魚しか食わないんだろ?とか、よく差別されていた。
東洋人はかつて旧大陸に住んでいたが奴らに領土を奪われ、入植してきた人種である。
ジャックの母親は西洋人の貴族であったが、東洋人の血筋としてヤマト一族は差別された。
ジャックは父親に歴史を教わった時かつて人類には人種があり、人同士の戦争があったと言っていた。
今、人類史上暗黒の時代では組織同士で血を流すのは考えられなかった。
しかし、噂の海については教わらなかった。
ただ人類が二度と見れないものだと父は祖父が若かった時子どもの時よく聞かされたらしい。
そしてジャックも海について聞こうとしなかった。
ジャックには堕落した夢があった。
それはウォールシーナで憲兵団に入って楽して金を稼ぐことだった。
憲兵団の仕事内容は国民に対して非公開されていたが、なぜかお金の周りは憲兵周辺が壁の中では一番よかった。
だからジャックは海には興味がなく先祖代々続く釣り人を継ぐのでなく憲兵になるのが憧れであった。
ここでジャックの友達マイク・ファームを紹介しよう。
彼はウォールマリアのシガンシナ区出身だ。
マイクはウォールマリアの東に広大な牧場を持つ有名な大地主の息子だ。
彼はよくトロスト区に肉を売りに来ていた。
ジャックはマイクと親友だった。
東洋人が差別される世の中にマイクはジャックに対して平等に接していた。
そして彼も壁の外には奴らがいると言っていた。
「俺は見たんだ。マリアの壁の上から・・・あんな奴らに人間が勝てるわけがない。」
マイクは思い出したかのようにおびえていた。
「奴ら?」
「憲兵・駐屯兵・調査兵たちはみんな口をそろえて言ってる、奴らを『巨人』と。」
「巨人?」
ジャックは巨人という言葉を初めて聞いた。
ジャックは帰って認知症の祖父に巨人について聞いた。
「じいちゃんは巨人って知ってる?」
祖父は真剣な顔でジャックに言った。
「これは二人だけの秘密じゃが、その怪物は人に似ていて倍大きいのじゃ。」
「怪物?巨人じゃないの?」
「まあ、同じようなものじゃ。すまんが漁の時間だ。」
それが祖父との最後の会話であった。
祖父は川へ行ったきり戻って来なかった。
水難事故で行方不明になったのだろう。
父親は堤防で憲兵団の船を見ていたジャックを励ました。
「親父はかつて海の漁師だった、奴らにこの中に追いやられる前もな。親父はマコト・ヤマトは好きな仕事中に死んで本望だろう・・・」
「父ちゃん、俺は釣り人にはならない。訓練兵団に入って憲兵団目指すよ!」
「確かに俺たちの家系は代々漁師だったが必ずしも漁師を継ぐ必要はない。頑張れよ、ジャック。」
一か月後、マイクが肉を月一でトロスト区に売り出しに来た時、ジャックに祖父のお悔みを言った。
そしてジャックはマイクの慰めに心から感謝した。
「ところで外の怪物って人に似ているのか?」
「それは兵士にしかわからないさ。お前がお金以外に興味持つなんてめずらしいな。」
マイクは肉を細切れにしながら言った。
「マイクの夢はなんだ?俺は憲兵になることだけど、」
「人類で一番大きい船を造る。」
「私有が作る船の大きさは王政が指定してるだろ。」
王政はクーデターを避けるために常に民間組織の監視、貨物輸送船などの取り締まりなど、いろいろ国民に対して規制していた。
「なら王政に影響を与えるくらいの大地主になればいいさ!!」
マイクは前向きであった。
「マイク、お前やっぱ夢でかいなーー!」
「お前こそ、憲兵になった時は脱税見逃してくれよ!」
「まだ訓練兵にすらなってねーよ。」
二人はその後も雑談していた。
二年後ジャックはウォールローゼ南東の訓練兵団に入った。
入団式は150人が教官によって始業式のような形で整列させられた。
「貴様はどこ出身だ?」
「ジャック・ヤマト、ウォールローゼ・トロスト区出身です。」
「貴様良い目をしているな?」
「ピクシス・ハワード、ウォールシーナ・地下街出身です。」
ジャックはピクシスとの出会いで自分の価値観が大きく動かされる。
訓練所には兵舎があり荷物を持っていった。
兵舎は四人一組の部屋で訓練兵舎は男女別だった。
ジャックが初めて部屋に行くともう三人がさきに場所を取っていた。
一人は知っていた、ピクシスだ。
ピクシスの出身が気になったがジャックはまだ知らないほうの二人の名前を聞いた。
「ジャック・ヤマトでトロスト区出身だ。」
「スコット・ノイルだ。ウォールマリア西で一件しか建ってない森の中に家があるんだ。」
「ノーランド・ポック。ストヘス区出身だ。」
「よろしく、スコット、ノーランド。」
「こちらこそ!」
「ジャック、君は東洋人か?」
「父は純潔の東洋人で母が西洋人だ。」
「かつて東洋人と西洋人が大きな戦争で戦ったらしいが今は人種がない、巨人のおかげだな。」
「そうだな。この時代に生まれてよかったよ。」
「だが差別は続いているがな。」
ピクシスは会話に水を差した。
「おい、なんか言いたそうだな。」
スコットがいきなり喧嘩腰になった。
「まあまあ仲良くやろうぜ。」
ジャックは二人をなだめるためにすぐ仲介に入った。
ノーランドは黙って見ていた。
ピクシスは部屋を出て行った。
「ところで君たちはどの兵団に入団希望なんだ?」
「そりゃあ駐屯兵団さ。」
「同じく。ジャックは?」
「憲兵になって楽して生きるんだ!」
「憲兵!!ここで総合実力ベスト5じゃないと無理だぞ!!」
「ああ努力するよ、無理なら駐屯兵団でもいいさ。さっき出て行った奴はピクシス・ハワードだ。あいつは悪い奴じゃないよろしく頼むよ。」
「そんなこと初対面で分かるのか?」
スコットはジャックがピクシスをかばったことに不満を感じた。
ジャックは部屋を出てピクシスを探しにいった。
ピクシスはラウンジで座り、外を見ていた。
ジャックは横の空いているイスに座り話しかけた。
「君は本当に人間同士の戦争が終わったと思うか?」
「いや終わらないだろう。さっきは部屋でああ言ったが俺は差別から逃げるためにも訓練兵になった。地位と名誉があれば東洋人もバカにされないかもしれないからな・・・君はなぜシーナから来たんだ?そもそも地下街なんてあるのか?夢はなんだ?」
ジャックは質問があふれ出た。
「質問のし過ぎだ。俺は駐屯兵になって人を守る。ただそれだけだ。」
ピクシスは冷静に少し笑みを含んで言った。
「だから人間の差別を嫌うんだな・・・。どうやら気が合いそうだよ。」
ジャックは少し笑いながら言った。
次の日早速兵士としての基礎知識を身に着ける授業が始まった。
「巨人は実に不思議な生き物だ、捕食は人だけしかせず、すぐ胃から吐き出す。私もマリアの壁の上からみたことあるが、人類は壁の中でしか生存できないだろう。弱点はうなじしかない。」
「壁の外はどうなっているんですか?」
「地獄だ。答えにはなってないが、調査兵団にしかわからない。調査兵団は一時期解体されたこともあったが今はちゃんと外に行っている。ただこれだけは分かっている。入れば十年以内には必ず巨人に食われる。それか憲兵になってるかだな。俺みたいに教師をしてるやつもいる。」
「そうですか・・・」
授業の後宿舎への帰り道の話・・・
「訓練兵団ローゼ南東支部は調査兵志願ゼロだな。」
「しかしなぜ調査兵団の人数は維持されているんだ。死にたい奴が500人もいるなんて信じられないよ。」
「きっと九割が罪人で構成されているんだろ。すばしっこそうだし、なあノーランド。」
「ピクシスはどう思う?」
「罪人は調査兵団とは別に放たれるらしぞ。だからそれはないな。」
ピクシスは冷静に言った。
「へー、ピクシスお前よくそんなこと知ってんな。罪人の息子だからか?」
いきなりピクシスがスコットに殴りかかった。
「俺の両親は冤罪で壁の外に追いやられた。俺はただ見ているしかなかった。だから俺は駐屯兵になって治安を維持するそれが俺の夢だ。そしていつかその憲兵に仕返しをしてやるんだよ!!」
「悪かった、悪かった!事情もしらずにじゃあともに人類を守ろう!」
「お前にそんなことできるとは思えないがな。」
ピクシスはあと二発スコットを殴り先に歩いて行った。
入団して一か月ついに実戦に向けての練習が始まった。
最初は立体起動装置によるバランスを保つ感覚練習だったが、150人全員が出来た。
案外楽勝だなと心で思っていた矢先、立体起動による直進がかなり難しかったのである。
木から木への移動、これがなかなかできなかった。
この技術を最初にできたものでも二週間かかった。
知り合いにはいなかったがこの練習だけで5人が事故で亡くなった。
それを応用してジグザグに立体起動をする練習もかなりきつかったが、合計二か月かかって立体起動を操れるようになった、そしてまた半年かけて巨人のうなじをそぎ落とす練習をした。
戦術面においてはピクシスが圧倒的にすぐれていた。
ある日事件は起きた。
ノーランドが巨大樹の森で立体起動中にガスが切れ思いっきり地面に叩きつけられたのである。
ジャックとスコットはノーランドに駆け寄りもうだめだと思ったが彼は奇跡的に生きていた。
しかも無傷だったのである。
ジャックとスコットは心の底から喜び、その日の夜は三人で盛り上がった。
しかし、次の日憲兵が来た。
「ノーランド・ポックはいないか~?」
「はい!」
憲兵4人が彼を連れていこうとした時、ピクシスが前に立ちはだかった。
「お前に両親を奪われ、住むところもなくなった。ここで切り捨ててやる!!」
「待て、ピクシス。」
ジャックとスコットは必死にピクシスを抑え込んだ。
「すいません。憲兵さん、なんかの間違いです。」
「そうか、ノーランドの件がなければ銃殺だったぞ。」
憲兵団はノーランドを連れ去って行った。
「ノーランドはきっとなんかの間違えで連れていかれたんだ。なあスコット?」
「ああそうだ、明日になれば帰ってくるさ。」
「あいつらは自分のすることにためらいはない。きっと俺の両親と同じ運命が待っているさ。」
「スコット、お前がノーランドを憲兵に売ったんじゃないのか?」
「ピクシス何を言い出すんだ、あいつは俺の幼なじみみたいなもんだぞ?」
「二人ともやめるんだ。きっと他の班の訓練兵に見られたんだ・・・」
ジャックはピクシスとスコットの口喧嘩を止めた。
ピクシスの言ったとおり訓練兵団にもどることはなかった。
そして訓練兵卒団式の時には100名になっていた。
卒団式の時には全兵団の代表や幹部たちが新兵入団を誘いに演説しに来た。
調査兵の人がまず最初に演説をした。
「私は調査兵団分隊長スコール・ノイルだ。調査兵団はただ死にに行くだけじゃない。十回生還すれば憲兵になれる。調査兵団はそのためにあるのだ。巨人への恐怖に打ち勝つものは王の周りで仕事する名誉があたえられる。その実力をいかに発揮するかで昇進が決まるのである。ちなみに駐屯兵団は一万人いるが憲兵になれるのは20年に一人だつまり20万分の1だ。それを忘れないように、以上だ。」
「あれスコットの親父だよな。」
「・・・・・」
次に駐屯兵の演説が。
「我が兵団は憲兵ほどではないが安定した仕事ができる。だがあまりに堕落すれば調査兵に異動になるかもしれない。だからしっかり気をひきしめろよ。」
憲兵は演説せずに兵舎の兵長室に総合成績トップ5が召集された。
「君たち五人は憲兵志望だな。」
偉そうな憲兵は当たり前のように言った。
その中にはジャックとピクシスも入っていた。
「いえ、私は駐屯兵団です。」
どうやら三年間ピクシスの考えは変わらなかったらしい。
「君は戦術面と実戦も十番くらいだが駐屯兵かね?」
「はい・・・」
ジャックは心の中で願った。
(ピクシスそうだ我慢をしろ。ノーランド以来憲兵とは会ってないからな。)
「他の四人は憲兵だな?」
「はい、この心臓を王に捧げます。」
訓練兵卒団式後スコットに聞いた。
「スコット、君は親父が調査兵だから駐屯兵になるんだな。」
すると彼らしくない真剣さでスコットは語った。
「俺は親父が調査兵だから幼少期から親父がいつ死んでもおかしくなかった。俺は母がいつも心配そうに親父の帰りを待っていた。故郷は森の中だから人はめったにいないし母も寂しそうだった。だから俺は安定したかつ安全な駐屯兵団に入ろうと思った。だが考えが変わった。俺も調査兵になる。親父は演説ではああ言っていたが憲兵にならずなぜ15年調査兵になり続けたのか知りたい。そしてこの王政はおかしい。ピクシスの両親、ノーランドの件俺は親父と同じものを観たい。そして答えが見つかれば憲兵になるよ。」
「そうか・・・」
スコットの決意を知ったジャックはなにも言えなかった。
そしてジャックは憲兵団、ピクシスは駐屯兵団、スコットは調査兵団に入った。
憲兵団になって入団して五年・・・
ジャックは罪人を処刑するのが嫌で俺はひたすら雑務をした。
最初の一年は貴族屋敷の掃除、二年目からは賄賂の不正監視や密船を取り締まる仕事である。
先輩方は接待や反逆者の拷問・処刑などをやりこなし、正直言ってちゃんとした治安兵団だった。
「これなら駐屯兵のほうがまだ仕事楽かもな。」
「かもね。でも給料は駐屯兵団の十倍だから私は満足してるよ。」
彼女はニーナ・ゾーンという名前で訓練兵団マリア北西支部の出身である。
父親はニーナが生まれてすぐ壁外調査中亡くなったらしい。
だから働いて九割の所得をウォール・マリア西の村に住む母に送っているらしい。
ジャックとニーナは港で密船を監視していた。
ジャックも一応所得の半分をトロスト区の実家に送っている。
今もジャックの両親は健在だ。
ジャックたちは五年間組んでいる憲兵だ。
新人憲兵は八人一組で五年間一緒に仕事をしなくてはならない。
「私貴族の人と見合いするんだ、もう二十歳だしあんたは結婚しないの?」
「ああ、ノーランドの真相を突き止めるまではな。」
「あんたノーランドの事憲兵になった時から言ってるよね!ノーランドと結婚したいの?」
なぜかニーナは怒りながら言ってた。
「俺は同性とは結婚しないよ。」
ジャックは冷静に切り返す。
「私はジャックの事好きだけど私の事どう思ってるの?」
突然言われて俺は笑ってしまった。
「なにがおかしいのよ!!」
「そんな気持ちは三年前に捨てたよ。」
「じゃあ私が貴族と結」
するとニーナの声をかき消す大声がした。
「おーい!!!ジャックじゃないか。」
「あんた誰だ、ここはシーナの憲兵中央会議所だぞ。」
「お前そんな堅い奴じゃないだろ!!マイクだよ!!!」
興奮したマイクだった。
「マイク!!!お前かわったなーー。7,8年ぶりだな、風の噂で聞いたがウォール・マリア全体の大地主になったらしいな。」
ジャックはマイクとの再会に一気に興奮した。
「親父の後を継いだんだ。」
「マイク、大地主、ってあのファーム農業財団の!!」
ニーナはジャックとマイクが知り合いだったことに驚いた。
財団をマリアに住んでいる人やマリア出身で知らないものはいないらしい。
改めて冷静になりジャックは聞いた。
「ところで憲兵中央会議所に何しに来た?」
マイクも冷静になり言った。
「王属憲兵って知ってるか?」
「いや知らない。王直属の憲兵か?」
「相変わらず鈍いな」
マイクは笑いながら言った後、真剣な表情をした。
「表には知らされない機密兵団が創設されるんだ。」
「そうか、俺には関係ないな。」
ジャックはマイクから目をそむけて言った。
「なぜファーム団が関係しているの?」
「それはマリアでは調査兵団に全面的に資金提供し駐屯兵団の3割に支援しているからだ。」
「お前そんなに偉くなったんだな。」
ジャックはマイクが前とは何か違うものを感じ、敵視した。
「言っておくが憲兵団が一番関係してくるからな。」
そう言って緊張しながらマイクは会議所に入っていった。
三時間後緊張して会議所に入っていったマイクが出てきた。
「ジャック、君を推薦しといたよ。」
ジャックには言ってる意味が分からなかった。
「機密兵団、いや中央憲兵団の団長に」
ニーナは不安そうになにかを言いたがっていた。
「俺には無理だ、なぜ俺を推薦した?」
「友達だし一緒に畑仕事したり漁もしたじゃないか。」
マイクはジャックを説得しにかかった。
「お前は変わったよ、マイク、人類で一番でかい船を造るんじゃなかったのか?」
「お前こそ、昔は商売の話しかしなかったのにな!!!」
「なんだと!!!」
ジャックはマイクの胸ぐらをつかんだ。
とめに入るニーナ。
「ちょっと待った待った、二人とも冷静になってよ。」
ジャックは胸ぐらをはなすとマイクはジャックを睨みながら消えた。
一週間後俺は会議所に召集された。
そして裁判みたいにど真ん中に立たされた。
全兵団統括本部長
「ジャック・ヤマト憲兵、あなたには機密兵団の団長の任命を拒否することができますが、拒否する場合君には拘束され二度と太陽はみれないでしょう。」
本部長は丁寧にジャックの異動について説明した。
いや、強制命令である。
「俺に王の番犬になれって意味ですか?」
「一人も罪人を処刑していない君が王の番犬になれるのか?」
本部長は急に態度を変え、ジャックを威圧した。
選択の余地はなかった。だが一つだけ疑問が湧いた。
「心臓を王に捧げます。」
「よし!では中央憲兵団団長にジャック・ヤマト憲兵を任命しよう。」
「質問ひとつだけよろしいですか?」
ジャックは勇気を出して聞いてみた。
「なんだね?なんでも聞きたまえ。」
「なぜ憲兵では腰抜けの俺が選ばれたんですか?あと副団長にスコット・ノイルを推薦します!」
「それはなぜか君が有力貴族から対人戦において最強であり対人戦術も評価されたからだ。まあファーム団の推薦も大きかったがな。だがスコット・ノイルはダメだ。スコットは調査兵団最年少団長で今や人類最強の身体能力を持つ。そして君には酷だがスコットを拘束する任務を命じる。」
ジャックは一瞬考えたが心臓にコブシを当てそのまま会議所を出た。
一番驚いたのはスコットが父親を壁の外で亡くした後に父の後釜で団長になっていたことである。
そして今日を持って調査兵団は解体され、スコットは行方不明である。
スコットは壁の外で何をみたのだろうか。
それはスコットを拘束すればわかる。
そしてピクシスに会いに行った。
この時俺はまだこの事態を楽観視していた。
ピクシスはシガンシナ区統括支部長という二十歳では異例の昇進をしていた。
ジャックは調査兵団が出発していたシガンシナなら何か手がかりがあると思った。
五日後のシガンシナ区で・・・
「ピクシス、お前やっぱすげえな。出世しすぎだろ。」
「お前ほどじゃない、なぜスコットが指名手配され調査兵団は解体されたんだ?」
いつにもまして真剣な顔のピクシス。
「・・・いろいろあってな。スコットの場所を知っているのか?」
「お前のやっていることは俺の両親、ノーランドの件についてした憲兵と変わらないぞ。」
「ああ、そんなことは俺が一番分かってる!俺だって最初は楽するために憲兵に入った。人をあやめるためじゃない。結果対立することになってしまったがな、残念だよ。」
そこにマイクがやってきた。
「スコットは心配ない。大丈夫だ、ピクシス。」
「マイク、お前ピクシスの知り合いだったのか?」
「なんでジャック、お前がいるんだ!!」
ジャックは部下を八人部屋に呼び、マイクとピクシスを拘束した。
「マイク、お前が俺を推薦しなければこんなことにはならなかったのに・・・」
「俺が推薦しなくてもお前が団長になるのは必然だった。マリアの大地主の票が団長任命に左右されるとでも思ったのか?」