選考会も終わりに差し掛かり、試合を見ていたら体を動かしたくなったという理由で走って帰ると言うジークと別れた俺は、どうせなら最後まで見て帰ろうと思って観客の少なくなった最前列まで移動しておっぱいの大きな子を探していた時だった。
「リヒターさん!」
「ん? リオちゃんか、わざわざ挨拶しに来てくれたのか」
丁度近くを通りかかったリオちゃんがわざわざ挨拶しに来てくれたのだ。
おまけと言っては失礼だがコロナちゃんにアインハルトちゃん、それに金髪にオッドアイの子と淡いピンクの髪を短めに切り揃えた子も一緒に来てくれた。
なんて、礼儀正しい子達なんだろうか。俺をサイフ扱いする奴らとは大違いだ。
「全員勝っていたよな。月並みで悪いがおめでとう」
『ありがとうございます!』
やばい、本気で心が浄化されそうだ。
いい子ちゃんズも大概だがこういった幼女の素直な笑顔を見ると自分がとんでもなく薄汚れた存在に感じられて苦しくなる。
まあ、正す気も無いけど。
「さてと、まだ会ったことのない子もいるみたいだから再度自己紹介するとしよう。
リヒター・ノーマンだ。出来れば名前で呼んでくれると嬉しい。よろしく頼むよ」
「はい! あ、私は高町ヴィヴィオです。よろしくお願いします、リヒターさん」
「はじめまして、ミウラ・リナルディです。よろしくお願いします!」
金髪オッドアイのどこかの聖王様を思わせる子がヴィヴィオちゃんで淡いピンクの髪の子がミウラちゃんだ。
どちらも元気いっぱいでこちらの方が押されてしまいそうな子達だ。
こういうのを天使というのだと切に思う。
「リヒターさんは、今日は私達の応援に来てくださったのですか?」
「ああ、まさかアインハルトちゃんとコロナちゃん達が同じチームだとは思わなかったけどな」
「そうですか、ありがとうございます」
ペコリとお辞儀をするアインハルトちゃんだが俺が応援に来てくれたことが嬉しいのか微妙に頬を赤らめている。
実はおっぱいの大きな子を探していたなんてこの子の前では口が裂けても言えない。
俺にも自尊心ぐらいあるんだ。まあ、ミカヤにも言ったから俺がおっぱいの大きな女の子が好きなのはバレているけどな。
「あのー、さっきから気になっていたんですけど」
「何だい、コロナちゃん? お兄さんに答えられることなら答えよう」
わざわざ授業で発表するかのように手を上げて質問をするコロナちゃんが可愛らしくてつい何でも答えてしまいたくなる。
決して俺がロリコンであるからではない。
「さっきはヴィクトーリア選手やチャンピオンと一緒に居ましたけど知り合いなんですか?」
その言葉をきっかけとして少女達全員が食い入るように見つめてくる。
やっぱり、少女達にとっては上位選手というものは憧れの存在なのだろう。
そんなヒーローの身近にいる人に話を聞きたいといった所だろうか。
まあ、隠すことは特にないから話すけどな。
「ああ、知り合いだな。ハリーと同級生なのはコロナちゃんは知っているか。ヴィクターに関しては……最近はバイト先の雇主だな」
「バイトですか?」
「そうだ。いいか、ミウラちゃん。人が生きていくためにはお金が必要不可欠なんだ。気づけばサイフになっていたなんてことは人生ざらにあるぞ」
「き、気をつけます!」
哀愁の漂う目で告げる俺に対してコクコクと頷くミウラちゃん。
どうやらお金の大切さが伝わったようでなによりだ。
また、明日もエドガー監修の元で執事のバイトをするので睡眠時間が削られる。
はぁ……仕事したくない。だが、金がなければ生きられない。ああ、無情。
「チャンピオンとはどんな関係なんですか?」
「ジークとか? ジークとは……何と言えばいいのか」
目をキラキラとさせたヴィヴィオちゃんの質問にどう答えればいいのか迷ってしまう。
正直に言ってこのまま攫って娘にしてしまいたいと思うような笑顔の少女の夢を壊すようなことを言っていいのだろうか?
乞食、家事壊滅、Gを見たら家崩壊、このどれもが少女達の夢を壊してしまうかもしれない特大の爆弾だ。
ここは嘘をついて何でもできる良き親友と答えるべきか。
それとも
非常に判断に悩む。
すると、そんな俺の様子に何を思ったのか先程よりも目の輝きを増したヴィヴィオちゃんが詰め寄って来る。
止めてくれ、そんな目で見られたら俺が成仏してしまう。
「もしかして……付き合っているんですか?」
「ほ、本当ですか! あのチャンピオンと付き合っているんですか!?」
「詳しくお聞きしたいです!」
「あの……ボクも」
「リヒターさんが付き合っている。そうですか……」
気づけば盛大な誤解を受けていた。
女の子だからかその手の話には目がないのか物凄い勢いで詰め寄って来る少女達に思わず頬が引きつる。
おい、誰だ。今ロリコンハーレムって言った奴。俺が好きなのはおっぱいの大きな女性だ!
それと、アインハルトちゃんが何とも言えない表情をしているのは何故だろうか。
クールなタイプだから聞きたくても聞けなくて葛藤でもしているのだろうか。
まあ、とにかく今は誤解を解くとしよう。
しかし、俺は少女達の勢いというものを舐めすぎていた。
「そういえば隣に一緒に座っていました!」
いや、一緒に来たんだから普通は隣に座るよな、コロナちゃん。
「一つのポップコーンを二人で食べてましたよ!」
俺の財布にはデカイやつを一つ買ってそれを分けた方が優しかったんだよ、リオちゃん。
「何だかチャンピオンがリヒターさんを見る目が熱ぽかったです!」
それは……否定は出来ないような気もするが、とにかく俺達は付き合ってなどいない。
今はそのことをしっかりと伝えるべきだろうと思い口を開く。
「まったく、女の子だからこういう話が好きなのは分かるが俺達は付き合っていな―――」
『リヒター、今日もご飯食べに行ってええ?』
「いつものことなのに、わざわざ通信か、ジーク。来るなと言ってもお前は来るだろ」
『あはは、バレとった? それで行ってもええ?』
「はぁ……おでんを作っておくから余り遅くなるなよ」
『おおきにな、リヒター! リヒターの優しいところが
最後に頬を真っ赤に染めながらも満面の笑顔を残して画面から消えていくジークに何とも言えない表情をする。
また家の食費が増えるが今回ばかりは応援してやろうと思っているので仕方がない。
まあ、何はともあれ。
「俺達は付き合ってなんていないぞ」
『嘘ですね!』
何がなんだか訳がわからないよ。
何故か凄みのある笑顔でニッコリと笑って詰め寄ってくる少女達。
天使のような笑みだが今はそれが怖い。
「一緒に家でご飯を食べているのに!?」
「いや、あいつが勝手に押しかけているんだが」
「でも、それを嫌がらずに受け入れていますよね?」
ヴィヴィオちゃんがズイと踏み込んでくる。
何なんだこの迫力は?
かの聖王を彷彿させるような圧倒的な覇気を纏ったヴィヴィオちゃんが怖い。
しかし、こんなところで怯むわけにもいかない。
「だから、俺とジークはそんな関係じゃない」
「でも、でも、あのチャンピオンがあんなに可愛らしい表情をしてたんですよ!」
「……知識や認識とは曖昧なモノだ、その現実は幻かもしれない。人は皆思い込みの中で生きている、そうは考えられないか?」
どこか遠い目で話す俺にヴィヴィオちゃんが思わず後退る。
例えば世界最強の女子と思われているジークが私生活ではダメダメな乞食だということみたいにな。
普段のジークはあんな感じだと誰が信じるだろうか。
出来ればヴィヴィオちゃんには夢を見ておいて欲しい。
現実を知るにはまだ早すぎる。……何でこんな真面目な話になっているんだろうな?
「それでは、一体全体お二人はどんな関係なのですか?」
「そうだな……敢えて言うのなら―――」
どこか安堵したような様子で聞いてくるアインハルトちゃんに言われて現在の俺達を言い表す簡単な言葉を思い出す。
すっかり忘れていたが俺は―――
「ジークのセコンドだな」
今回の大会はアイツと一緒に戦うんだ。
突然現れて主人公に絡んでいく年上キャラは大体敵キャラ(笑)