俺と乞食とその他諸々の日常   作:トマトルテ

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二十六話:呪いと日常

 判明した衝撃の事実に戦いているところにアインハルトちゃんと薄紫色の髪をした子が近づいて来る。

 だから、なんでみんなスカートでこんな所に来るんだ。

 パンチラは興奮してもパンモロは紳士的には余り興奮できない。

 

「なぁ、リヒター……さっきのセリフどこ見て言っとったん?」

 

 俺の腕の中でロリジークがジトリとした目で睨んでくる。

 このままでは殲撃を超至近距離から食らうはめになりそうなので、ごまかすようにジークの顔を俺の胸に押し付ける。

 腕の中でモガモガと足掻いているが無視してさらに強く押し付けてやるとそのうち頭から湯気を出してショートしてしまった。

 

「…………ッ」

「手を強く握り過ぎて血が出てるよ、アインハルト!?」

「マモレナカッタ……」

「何を!?」

 

 ギリギリと手を握りしめながらガックリと膝をつき地面に崩れ落ちるアインハルトちゃん。

 薄紫色の髪の子が慌てて助け起こそうとしているが返事がない。ただの屍のようだ。

 

「えへへ~。リヒターええ匂いやなー」

「もう、着いたから抱えなくていいな」

「あーーッ! 後一分、一分だけ満喫させてー!」

 

 俺に必死にしがみついてくるジークを無理やり引きはがして一息つく。

 再びヨタヨタとし始めるジークを尻目に薄紫色の髪の子の方を見る。

 因みにプチデビルは既に主の元に飛び立って行っている。

 

「えっと……取りあえず何ですか、この状況?」

「いつものことだ、気にするな。それよりも君は?」

「い、いつも? あ! え、えーとルーテシア・アルピーノです」

「リヒター・ノーマンだ、よろしく頼むよ……と、のんびりする暇はなさそうだな」

 

 いかにも混乱していますといった感じのルーテシアちゃんと自己紹介しているとバインドが引きちぎられる音が聞こえてくる。

 できるだけ下半身を見ないように魔女っ娘の顔を見ると怒りと悲しさ、そして寂しさの混じった表情で浮いていた。

 あの子も……ジークやアインハルトちゃんみたいな顔をするんだな。

 

 

「私は―――呪うことをやめない。私を見捨てたあの王たちを、私は絶対に許さないから」

 

 

 悪魔の翼を背中から生やし悲痛な叫びをあげる魔女っ娘。

 王ということはまた古代ベルカ絡みだろうな。あの子も記録(・・)を伝承しているタイプか……。

 本当にあの時代の奴らろくなことしてないな。人任せにせずに自分で解決しろよ。

 

「いけません、こちらにも攻撃してきます。お兄ちゃん、チャンピオン、手を!」

「ああ、全く嫌になるな……」

 

 いつの間にか復活していたアインハルトちゃんの手を掴み安全地帯へと移動する。

 何故かジークが握られた手を痛そうに擦っているが後が怖いので理由は聞かない。

 安全地帯に逃げ込んだ後でこっそりと魔女っ娘の様子を伺うとヴィヴィオちゃんが必死に説得を行っていた。

 

「もしよければお話をさせてくれませんか?」

「必要はない。最初の魔女クロゼルグはずっとあなた達の先祖を恨んできた。馴れ合うつもりなんてない」

 

 箒を突きつけて怒りの表情で告げる魔女っ娘にジークとアインハルトちゃんが気まずげな表情を見せる。

 魔女っ娘の顔は確かに怒りで満ちているが……どこか泣きだしそうにも見える。

 それが分かっているのかヴィヴィオちゃんは決して引かない。

 

「私は話を聞きたいですよ」

「―――箒星」

 

 だが、返事は冷たい物だった。眼前からロケットのように撃ちだされる箒。

 思わず悲惨な光景を思い浮かべ目を瞑ってしまいそうになるがその心配はなかった。

 持ち前の目の良さと反射神経を活かし、箒を躱してみせるヴィヴィオちゃん。

 

「少し、聞いてくださいね」

「これがなのはさん直伝のOHANASHIというやつか……流石はジーザス」

「あの距離で避けた……すごいなぁ」

「ええ」

「でしょ」

 

 発言がスルーされてもへこまない。だって男の子だから。

 まあ、何はともあれこれで一件落着な雰囲気になりそうだな。

 後はヴィヴィオちゃんが説得すれば―――

 

 

『イレイザー・バーストッ!』

 

 

 突如として魔女っ娘とヴィヴィオちゃんめがけてイレイザーが噴射される。

 なんとか二人で避けるヴィヴィオちゃんだったがイレイザーは本棚を粉々に破壊し埃を辺り一面に舞いあげた。

 これは……ハリーの技だろうな。何もこんな場面で撃たなくてもなぁ……。

 埃の奥から続々と現れるバリアジャケット姿の女性陣に思わずため息が零れる。

 決して変身シーンを見逃してことを嘆いているわけではない。

 

「よおーしっ! ヴィヴィ、そこどけっ!」

「ま、待ってください番長~っ!」

「そうだぞ、タヌキは損気ってよく言うだろ、ハリー」

「それを言うならタヌキじゃなくて短気だろ!」

 

 的確にツッコミを返しながらも砲撃を撃ち込もうとするハリー。

 ハリーを止めないと、無いとは思うがヴィヴィオちゃんまでこんがりと焼かれてしまう。

 そんなことになったらなのはさんが悲しむので俺は伝家の宝刀を抜くことにした。

 

「ガン―――」

 

「ところで、ハリー。お前、今日は―――白だったな」

 

「―――フレイムッ!」

 

「俺を標的にしたぁッ!?」

 

 魔女っ娘に向けて放とうとした腕を強引に捻じ曲げて的確に俺に向けて砲撃を発射してくるハリー。

 一瞬が永遠のように感じられ走馬灯が脳裏を駆け抜ける……。

 ということはなく予想の範囲内だったので全力で横に飛んで避けることに成功した。

 

「ちっ……次は殺す、非殺傷で殺す」

「ハリー、出来れば俺に聞こえないように言ってくれ。後、非殺傷でどうやって殺す気だ」

「死ぬまで殺すだけだ」

「うわ、確かにショック死しそうだな」

 

 軽く笑いながら俺は話すが、ハリーの目はマジなので背中が汗でベットリとしてきて気持ち悪い。後、ロリジークが俺の腿をつねってきていて地味に痛い。

 これが大人状態なら恐らく俺の腿の肉はさよならしているところだっただろう。

 

「大人しくしていただきます」

 

 あれ、いつのまにかアインハルトちゃんとルーテシアが魔女っ娘を取り押さえている。

 居ないと思ったらしっかりといいとこ取りをしていたのか。成長したな……妹よ。

 

「…ッ! 今、お兄ちゃんに褒められたような気がします」

 

 ……色々な意味で成長したなアインハルトちゃん。

 と、半ば現実逃避をしているとヴィクターとコロナちゃんが現れる。

 

「ジーク! 無事ですか!? リヒターに何かされませんでしたか!」

「あれ、なんで俺が黒幕扱いされているんだ? 俺はどちらかというと被害者なんだが」

「ジーク、どこですか! 早くわたくしの胸に飛び込んできてちょうだい!」

「聞けよ」

 

 血走った目でジークを探すヴィクターには俺の声は届かないらしい。

 それとコロナちゃんが『ヴィク×ジーク? いや、ジーク×ヴィクもあり?』となにやらブツブツ呟いているのは聞かなかったことにしたい。

 きっとあの子もストレスが溜まっているんだろう。うん。

 

「ジーク、その姿は……」

「え、えーとな。これは魔女っこにやられてもーて―――」

「天使ですわ! ファビアさんでしたか? ありがとうございます。この恩は一生忘れませんわ!」

「何を言っとるん!? あ、後そんなに撫でんといて髪が崩れるわ」

「大丈夫よ。崩れた髪はわたくしが整えてあげますから。そうすることでさらにジークを堪能……ふふふふふ」

「だ、誰か助けてやー!」

 

 どうやらロリジークの姿が何かの線に触れたらしくガッチリと腕でホールドして逃げられなくして撫でまわしている。

 そのホールドの鉄壁さたるや、先祖の雷帝にも全く引けを取らないだろう。

 むしろ限定的な状況なら軽く超えてしまいそうだ。

 

「……これはどういうこと?」

「安心して、私も分からないから」

 

 場が混沌とする中、魔女っ娘改めファビアちゃんがポカンとした表情で呟く。

 ルーテシアがその肩をポンと叩いて慰めているのが印象的だ。

 やはり全力でぶつかり合えば仲良しというなのはさんの教えは正しかったようだ。

 これが青春…ッ!

 

「ちょっと違うんやないかなぁ……」

「あ、はやてさん」

「出遅れてる間に一件落着ってことでええんかな?」

 

 何やら黒い翼を生やした状態のはやてさんが遅れて登場する。

 そのままファビアちゃんの元に飛んでいき頭を人撫でして持ち前のおかん力を見せつける。

 

「後でお話聞かせてな」

 

 そうだな、お話を……OHANASHI?

 まさか、大人が幼女に対して肉体言語で語り合おうというのかはやてさんは。

 いかん、これは流石に止めなければファビアちゃんが闇堕ちしてしまう。

 

「はやてさん、待ってください。ほら、タヌキは損気といいますし」

「誰がタヌキやー!」

 

 後で知ったがはやてさんはタヌキと呼ばれているらしい。

 凄く納得してしまった俺はきっと間違っていないと思うんだ。

 




おまけ~ある朝目が覚めると小動物になっていたリヒター・続~


 あの後色々あってなぜか高町家で厄介になることに俺こと猫リヒター。
 まあ、考えてみると一番魔法に詳しそうななのはさんとフェイトさんがいる高町家があの中ではベストだったのは否定できない。
 幸運だったと思うべきだろう。

「ニャーン(神よお助け下さい)」
「ヴィヴィオその子どうしたの?」
「ねえママ、この子飼っていい?」

 幼女に飼われる……なのはさんに飼われる……響きがエロいな。
 いや、今はとにかく元に戻るのが先だ。
 なのはさん、どうか俺の正体に気づいてください。

「ちゃんとお世話できるなら飼ってもいいよ」
「ホント!? やったー!」
「……ニャウ(誰も気づいてくれない)」

 いじけてソファーの上で丸まると二人からなでなでされる。
 ……べ、別にこの家の子に本気でなりたいなんて思っていないんだからな!

「ニャーン♪」
「あはは、気持ちよさそうだね」
「やっぱり可愛いー!」

 ち、違うこれは猫の体が勝手に服従ポーズを取ってしまうだけなんだ。
 決して心の底から服従したわけじゃない。

「そうだ、ヴィヴィオ。お風呂わいてるよ」
「分かった。この子と一緒に入って来るね」
「ニャ!? (ファッ!?)」

 不味い、このままでは幼女とお風呂に入るロリコンの変態に認定されてしまう。
 淫獣なんて不名誉なあだ名なんてつけられたくない!
 必死にもがいて抵抗してみるがヴィヴィオちゃんの撫でテクで骨抜きにされてしまう。

「ニャ、ニャウー……(海のリヒター、一生の不覚……)」
「水が怖いのかなぁ?」
「こういう時は気合でなんとかなるよ、ヴィヴィオ」
「そうだね、ママ!」

 誰かこの親子を止めてください。

「ただいま~。あれ、二人共何しているの?」
「あ、フェイトママ。今日からこの子飼う事にしたんだよ!」

 もう諦めの境地でダラリとヴィヴィオちゃんの腕からぶら下がりながらフェイトさんを見る。
 どうせ、この人も俺の事を分かってくれるわけ―――


「え、その子リヒターじゃないの?」


 ―――あなたが女神か。

 その後、事情が伝わり無事に人間の姿に戻してもらった俺はフェイトさんに何故わかったのか聞いてみた。
 するとフェイトさんは軽くウィンクをしながら当然のように答えてくれた。


「分かるよ、お母さんだもの」


 そうだ、きっとこの方は母は母でも聖母(マリア)なのだ。
 神に聖母(マリア)にジーザス……この御恩を返すために本気で高町教でも作ろうかと思案する俺だった。



「そう言えば、あの時上げた錠剤……動物になる薬だった気がする。……でもならなかったから気のせいかな」



 因みになのはさんに聞いてみたが原因は未だに分からないとさ。


【完】
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