DARK SOULS VRMMO(続けてみた) 作:キサラギ職員
だれかサインを拾ってやってください
――古い時代
世界はまだ分かたれず、霧に覆われ
灰色の岩と大樹と、朽ちぬ古竜ばかりがあった
だが、いつかはじめての火がおこり
火と共に差異がもたらされた
熱と冷たさと、生と死と、そして光と闇と
そして、闇より生まれた幾匹かが
火に惹かれ、王のソウルを見出した
最初の死者、ニト
イザリスの魔女と、混沌の娘たち
太陽の光の王グウィンと、彼の騎士たち
――そして、誰も知らぬ小人
それらは王の力を得、古竜に戦いを挑んだ
グウィンの雷が、岩のウロコを貫き
魔女の炎は嵐となり
死の瘴気がニトによって解き放たれた
そして、ウロコのない白竜、シースの裏切りにより、遂に古竜は敗れた
火の時代のはじまりだ
だが、やがて火は消え、暗闇だけが残る
今や、火はまさに消えかけ
人の世には届かず、夜ばかりが続き
人の中に、呪われたダークリングが現れはじめていた…
という世界観を基にしたオンラインゲームの発表は世界を熱狂の渦に叩き込んでいた。大手ゲーム会社といくつかの会社が手を組んで制作したそれは、現時点における常識たる電脳世界上で繰り広げられるダークファンタジーであった。近い未来。脳を改造して電脳世界へアクセスすることで無限大の情報を利用できるシステムを活用したリアルで血の匂い漂う薄暗い世界での戦い。ゲームでありながら現実と変わりないリアリティを持った世界での大冒険。βテストでいくつかの致命的なバグが発見されたが、のちの製品版では修正された。
多くのプレイヤーが参加を決めて電脳世界へとダイブした。
ところが、北の不死院というチュートリアルステージを越した後、待っていたのは謎の声による脅迫であった。
―――すでに君たちの電脳はハックしており、命令ひとつで精神防壁を逆流させて植物人間にしてやることも容易いと。精神防壁とは、電脳世界へダイブするにあたって精神の核となる情報などを外部アクセスから遮断する機能であり、生命維持にもかかわるため必要とあれば危機を焼きシャットダウンすることもある。犯人はこれを逆手に取ったのである。
主人公は、友人らと驚愕していたが、自分自身のリアルタイム映像を見せられ呻いた。未来の世界では電脳で仕事をするのが当たり前であり、食事排泄はすべて機械がやってくれる。寝たきりのまま目覚めなくてもだれも咎めない。仮に警察が動いたとしたら、そのときすでに参加者の脳は腐っている。
犯人はいくつかの条件を提示した。
人間性がゼロの状態でしばらくしたら理性を失った亡者と化す。人間性は時間経過とともに燃え尽きる。まさに単純明快。多少違いはあれど世界観に忠実な設定である。人間性、そしてソウル。これらを奪い合いながらゴールを目指せというのだ。ゴールさえすれば解放しようと口にした。彼らは一様にゴールなど知らなかった。βテストでは北の不死院だけが公開されていたからである。
『そんなバカなことがあるはずがない』。
何人かが、テスト時とは異なりあまりに巨大で神殿のような火継ぎの祭祀場で犯人を罵った。刹那彼らの脳は、脳を守るはずだった機能の逆流によって破壊された。データだけが吸い出され瞬く間に亡者と化すと周囲の人間に向かい襲いかかった。
あるプレイヤーが酷く切り付けられのけぞった。ロングソードを構えた元プレイヤーは止めと大振りの攻撃を仕掛けたが、横から呪術師の姿をした男性が割って入り盾を振った。プログラムの強制により攻撃が停止させられ、よろめく。パリィ。男性がすかさず腹部に斧を突き立て切り捨てた。他の亡者も寄ってたかって嬲り殺しにされた。
犯人は拍手をすると、全員にアイテムを送信した。
オンラインで必須のアイテムの数々。ゲームのために使用条件などが緩められた侵入あるいは協力用のもの。その他こまごまとしたもの。
そして、人間性。
場にいる多くの者たちが次々と自分の世界に送られていった。全身にオーラがまとわりついて別の世界へと強制的に送還されていく。
友人、あるいはもっと親しいかもしれないものの姿を確認した『あなた』は必死で抵抗したが、むなしく終わった。
ダークソウルはわいわいと大人数で群れて行動できるゲームではない。多くて三人が原則である。よって各々の世界へと送られていくのだ。
人間性の奪い合い。あるいは殺し合い。
人間は、誰一人として同じ考えを持っていない。協力か、裏切りか、策略か……。
今、ソウルが試されようとしている。
『あなた』が目を覚ますと、そこは北の不死院だった。
メニューを開きログインを探すが見つからない。ソフトウェアとは異なる階層を走るOSを開こうとすると除外された。これでは電脳から出ることができない。
『あなた』が一歩を進めると、突如風景が一変した。
素性を決めよ。
どうやら犯人は人間性が1しかないというのにダークソウルの初見殺しである不死院をプレイさせようとしているらしかった。
『あなた』は、メニューを操作して数値を入力し始めた。
『あなた』の素性と、名前は……。