DARK SOULS VRMMO(続けてみた)   作:キサラギ職員

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続いた

 

 ダークソウルはFPSに近いゲームと言われている。

 多くのRPGがひたすら永延ストーリーを追いかけてドロップアイテムの為に粘りまくるのに対し、ダークソウルには終わりが決められている。追加ストーリーなどもあると言うが基本的には火を継ぐことを目的としているのだ。ボスを倒せば終了。次の周回に進むこととなっている。言わばオフラインゲームをオンラインゲームにしたようなシステムである。貴重なドロップアイテムや課金アイテムを一切除外している(追加ステージ分は例外的として)のもオリジナリティがあると評価されている。あるのは腕前だけである。

 対人戦にキリがなく奥深いのも特徴の一つである。PVPが推奨されるいくつかのシステムとアイテムとステージがあることからも対人戦が重視されているといえるだろう。モーションが決まりきっていたり当たり判定が決まっているゲームと違い、多くの武器に独自のモーションは存在せず、勝手に振り回すことができる。武器と武器の鬩ぎ合い。狙撃に闇討ちなんでもござれの自由度の高さもこのゲームの特徴といえるだろう。

 そしてもっとも大きい特徴といえるのが、『死んで覚える』という難易度の高さである。いくらレベルを上げようが落ちれば死に、トラップに挟まれて死に、背後を取られバックスタブで死亡する。死んで死んで覚えるという単純明快な仕組みを持っているのがダークソウルであり―――デスゲームにおける最大の障害とも言える。

 彼は、素性設定をどうするかを悩みに悩んだ。オーソドックスな騎士や戦士もいいだろう。魔術師もいい。呪術師も正解だ。一番やってはいけないのは『持たざるもの』だが、初期保有スキルが魅力的だという事前情報がある。

 ――スキルとは、キャラクターの差別化の為に新たに導入された要素である。

 たとえば素性『戦士』には『乱闘』というスキルがある。複数戦闘時に防御力を補正するスキルである。

 たとえば素性『騎士』には『騎士の誇り』というスキルがある。一対一に限り攻撃力を補正するスキルである。

 たとえば素性『放浪者』には『探究』というスキルがある。アイテムを拾う際に個数が増える可能性を保有する。

 たとえば素性『盗賊』には『窃盗』というスキルがある。NPCやPCからアイテムをかすめ取るスキルである。

 たとえば素性『山賊』には『山の民』というスキルがある。苔や草などの効力を高めるスキルである。

 たとえば素性『狩人』には『狩猟』というスキルがある。非人間型に限り攻撃力を補正するスキルである。

 たとえば素性『魔術師』には『ソウルの結晶』というスキルがある。ソウルの濃いエリアならば魔術に補正がかかるスキルである。

 たとえば素性『呪術師』には『火への憧憬』というスキルがある。火が近くにあるならば攻撃力に補正がかかるスキルである。

 たとえば素性『聖職者』には『白い炎の加護』というスキルがある。僅かながら体力が回復していくスキルである。

 たとえば素性『持たざるもの』には『故も知らぬもの』というスキルがある。MOBから攻撃される可能性を低下させるスキルである。

 またこれらのスキルの他にも様々なスキルが用意されており、例えば人を助けるためにアイテムをあげたとか、身代わりになった、崖から蹴落としたなど、行動によって評価基準が存在しており、個別にスキルが与えられる仕組みとなっている。

 ともあれ素性は一度決めたら変えられないので慎重に選ばなくてはならない。

 彼は散々悩んだ挙句、聖職者にした。聖職者はどのゲームでも回復系を使いこなす職業だ。デスゲームでは慎重にクリアするべきと考えたのだ。

 てぃろりん♪

 間抜けな音と共に勝手にキャラメイクが終了した。黒髪。平均よりも細いことがコンプレックスな瞳。どこにでもいる平均的な日本人の容姿。つまり彼である。

 「なるほど。キャラメイクは一切なしでやれということかよ」

 電脳世界に入るにあたっては個人認証に外見を用いることがある。そのデータをクラックしたのか、外部装置で読み込んだのか、いずれにせよ情報が筒抜けになっているらしい。自分がデスゲームに巻き込まれたのだという絶望感がひしひしと伝わってくる。

 データを読み込む画面が空間を支配した。

 数秒後、ディジタルな破片が足元から渦巻くように発生すると風景をそして自分の装備品を実体化させていく。十秒とかからずに風景が変わった。古い牢獄。鼠と骸骨が同居する狭い空間にいた。

 上から何やら落ちてくると地面に転がった。上を仰いでみれば、騎士の姿があり、視線が合ったところで消えた。天井に大穴が空いていたのだ。騎士はそこから鍵を投げ入れたらしい。

 ここまではチュートリアル。βテストで経験済みだったので驚くことはなかったが、自分の姿を見て驚いた。

 「装備が初めからある。サービスってことか? 運営の癖に生意気だ」

 聖職者の鎧とメイスと盾にタリスマンが既に装備されていたのである。触ってみたりメイスを振ってみたりして感触を確かめる。βテストだと半裸からのスタートだった。さすがに序盤で全滅してほしくはないだろうから装備品を最初から支給していたということか。

 そして彼は、人間性のストックが2しかないのをメニューを空間に開いて確認した。現在は亡者。生身に戻るのに一消費。篝火に捧げるのに一つ。ではだめだ。人間性を失った状態&亡者だと時間制限で強制的に死ぬのだ。一つはもっておかなくては。

 βテストでは果敢にデーモンに挑みかかって死亡。頭上からの致命の一撃で攻略した。今回も同じように行くかどうか。

 「いや……これは運営の罠だろうな。すんなりいくわけがない」

 彼はそのように呟くと慎重に行くことにした。生死がかかっているのだ。慎重でありすぎることなどない。石橋を叩いて壊すやり方こそ正しい。ヒロイックな活躍は二の次だ。

 ふと彼は、自分の家族である姉がどうしているかを思った。姉はキチガイ染みたゲーマーでありダークソウルのβテストにも応募していた。ゲームばかりやって家族仲が険悪になっていたとはいえ家族である。もしいたら手を貸してやらなければならない。

 彼は他の友人らが参加している可能性を頭から追い出していた。考えたくない。現実逃避である。

 「よし。始めるとしますか!」

 聖職者の姿をした彼はメニューを閉じると、やっとの思いで牢屋の鍵を開けて、外への第一歩を踏み出したのである。

 

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