真庭がいるかもしれないことを知った。
修練所に笑い声が響く。
「ウヒャヒャ、ドーモー!虚刀流とその他の皆さんww!」
髪が二本の角の様に逆立っていて、腕に鎖を巻いている細身の青年が現れた。
クラウスが構える、俺も『鈴蘭』の型で構えた。
「貴様何者だ!」
青年は、あいもかわらず笑い続ける。
ひたすら、人をバカにしたように笑い続けた。
「別にお前らに名乗る義理はねーよww、でも俺様はサービス精神旺盛だから名乗ってあげよう、俺様の名は真庭蝙蝠ってんだよ!」
そういいながら、青年は体のどこに隠していたのかわからない程の量の小刀を口から吹き出した。
クラウスは全部避けることができたが、俺は何発か受けてしまった。
「先代と言っても、明確には違うが、受け継いだ手裏剣砲に改良に改良を重ねた、進化型手裏剣砲、その名も“刀々鉄砲”の御味はどうだい、虚刀流!」
毒でも塗ってあったのか、掠った所の感覚が麻痺してきた。
左右の腕に力が入らなくなってきた。
両足に力が入らなくなり、支えることができなくなり、前に倒れた。
意識も朦朧とする、視界もぼやけてきた。
(ここで、死ぬのか、それもアリだ、俺がこんな力がを手に入れたところでたかが人間、化物にでもならない限り、俺に勝ち目などないのだから…)
諦めの感情に負けて、俺は自分の意識を手放そうとしたが、
それよりも、別の感情がこみ上げてきた。
(しかしここで死んでもいいのか?本当にそれでいいのか?原作には程遠いが、せめて漫画に描写されたところまで、生きようしないといけないのではないか?)
憤怒ではなく、残念な気持ちでいっぱいになった。
折角の二度目の命を、強制的にだが与えられたのだから全力で生きていかないと。
戦国時代だから、何時死ぬかわからない世の中だから、死ぬのが早いか遅いかの違いだからって生を諦めるな!
気合で、目をあける、そこには傷だらけのクラウスが立っていた。
肩で息をしていて、如何にも苦しそうに立っていた。
「ク、クラウス、お前はどうしてそこまでして俺を守ろうとするんだ。」
今この場に、いるのは、俺とクラウスだけだ。
毒で動けなくなっている、俺を放って行けば、こんなに傷だらけになることもなかったはずなのに、何故俺を守っているのか、俺は理由が知りたいから問いた。
「困っているから助ける、それだけでは不満か?」
血まみれになりながらも、まだ余裕だという様子で笑顔で答えた。
ただ、困っているから助けるという単純な答えに、俺は唖然とした。
こいつは馬鹿なのか、単なるお人好しなのか、考えてしまう程に。
でも、答えはただ一つ、これがこいつの生き方だからということに落ち着いた。
麻痺が消えてきたようで、四肢の自由が戻ってきた。
這いつくばっている状態から、まだ麻痺が残っている両足で震えながらも立った。
前には、少し息切れはしているが、高笑いをしている青年がいる。
俺の横には、疲労で倒れた青年がいる。
「ウヒヒ、その生意気な奴は歯応えがなかったなぁ、でも虚刀流、お前は、少しは楽しませてくれるだろうなぁ!」
小刀を片手で持って突っ込んできた。
それを持っている腕を掴み、後ろへ流す。
そして、その状態の腕を、両方の肘で固定し、そのままコテの原理でへし折る!
メキッっと、軽快な音がなる。
でも、油断はできない、相手は仮にも真庭蝙蝠、ということは、
「アアア!痛い!痛いよ!聞いちゃいねぇぞ、こんなの!」
へんな方向へ曲がった片腕を押さえながら、蝙蝠は叫ぶ。
そして、一瞬蝙蝠の全身がいろんな方向に曲がったように見えたら、そこには
「だがしかし!俺には、これがあったんだよ!進化型忍法骨肉細工、その名も“骨肉変体”!骨格や肉質を変えるだけでなく、傷の治癒もできるようにしてやったぜ!」
あの野郎つかいやがったか、アレは原作だと、勘で破られたけど、俺にはできないぞ。
だがしかし、何故、俺に化ける、化けるならクラウスや、オリヴィエの方がいいのに……
そこから、先は、察しの通り、俺が勝っちゃうわけだけどなぁ。
だって、虚刀流、刀一切使えないし、それに突っ込んできたのはいいけど、小刀すっぽ抜けて、転けた挙句に、ついでに丁度、俺の目の前で転けたから、顎蹴って気絶させた。
だけど、ここで思い出した、敵は一人だったか、否もう一人はどこにいる。
「兄貴ー、ちょっとそれはダメでしょJK!?」
そう言って木からおりてきたのは、黒髪のポニーテールで、犬の耳みたいな飾りがついているバンダナを巻いて、蝙蝠みたいに、片腕にだけ鎖を巻いている少女だった。
「あ、君が虚刀流かー、全く、こんな餓鬼にやられるなんて、兄貴も弱すぎでしょワロスワロス」
少女は地面に着くと同時に、全く、表情を変えずに、人を罵倒した。
そして、何か鋭い金属の物体を投げてきた。
それを、蹴りで叩きおとす。
「君、僕が誰か気になっているようだね、その不思議そうな顔に免じて教えてあげよう、僕は心が広いからね。僕の名前は真庭狼、そこでぶっ倒れている、愚兄の賢妹だよ。」
狼?聞いたことがないなぁ、もしかして、この世界オリジナルのか。
俺は、両手を前に付き、まるでクラウチングスタートのような構えをした
少女は、両手に小刀を逆手で構える。
お互いの隙をうかがいあいながら、ジリジリと間合いを広げていく。
「先手必勝!」
先に動き出したのは、俺からだった。
前のめりの状態から、一気に間合いを詰めて、スピードに任せて手刀で突く。
感触はない、それどころか何処にも姿が見当たらなかった。
「ふふ、愚かな刀さん、何をしているのかな、僕はこっちだよ?」
後ろを振り向く、そこに少女の姿はあった。
人を馬鹿にしたような、笑みを浮かべながら、、こっちを見ていた。
(まっすぐ進んだはずだ、それにあのスピードを避けることはできないはず!?)
「ふふ、では次は僕だね。」
狼の名に、まったく違和感のない素早さで小刀を振るってくる。
でも、一筋も当たることがなかった。
まるで、当てることが目的ではないように。
何回も何十回も切りかかってくるが、一太刀も当たらない。
「真庭流忍法狼々倍々はどうだい?虚刀流?」
忍術?そんなの一体何時の間に使っていた?
だって、俺はさっきから何も変化はない、そして狼も何も変化は見当たらない。
ヒュンヒュンと風切りがただ聞こえる。
そのうち、風切が聞こえなくなる、狼の小刀を振るう速度も遅くなる。
やがて、その手が止まった、でも少女は歩を止めない。
微かに風の音が聞こえる、ヒューヒューと風の音が聞こえる。
やがて、その音も、消える。
何かに遮られたように、突如消えた。
少女は、歩を止めず、ただ笑顔のまま、こっちに向かってくる。
俺は、怖くなって、少女に、蹴りをいれようと突っ込んだ、その瞬間、手の皮が切れた。
「虚刀流?君は馬鹿か?僕は忍法使っているんだよ?それに、いつ僕が刀を振るのを止めた?」
よく見ると、彼女の姿は何処か揺らめいていた。
「僕はずっと刀を振っている、君が僕が刀を振るのを止めたと思った瞬間も一度も止めることなく振るっていり。」
さらによく見る、彼女の体が稀にまるで金属のように光っているのを見た。
「ここで、君を殺すのは、惜しいと僕は思っている。だから、ここで一つ提案をしよう。」
「なんだ?」
手からの出血を圧迫して止血しながら、俺は話にのった。
「君がここから出て、そして僕達の下へ下ることだよ。そうしたら、君の命も奪わないし、もうここには手出しはしないよ。」
「それは、信用していいのか?」
少女は、あいもかわらずずっと笑みをを浮かべたまま答えた。
「ああ、信頼してもいいよ。」
ここには、恩がある、見ず知らずも俺を助けてくれた恩がある。
「少し、時間をくれないか?」
少女は、少し首を傾けながら、腕を組み考え始めた。
しばらく、時が経つとハッとしたような表情になる。
その後、すぐに口の端をあげて、ニヤッと笑った。
「別にいいよ、期限は明日の朝までね。賢明な判断を待ってるよん♪」
そう言った後直ぐに、俺の隣に倒れていた、蝙蝠を掴んで、走り去っていった。
俺の中では、ぐるぐると不安が渦巻いていた。
少年は戦いに身を預けた。
そして、その身に降りそいだのは選択。
少年はどう歩む。
さぁ、始めようか、新たな人の物語を
次回 ふざけんなよ!クラウス!byトオヤ
それにて、今回は一旦閉幕とさせていただきます