IS―再生の在り方   作:時語り

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中国!参上

クラス対抗戦。

春に行われるIS学園の催しの一つで、各クラスのクラス代表による総当たり戦。

参加する学年は一年生のみ。

ほとんど新人戦のような催しだ。

一学年にクラスは六組まであるので、試合は合計十五試合。

これを第一から第三アリーナで五試合ずつ消化する。

これまではこれを一日で行っていたが、今年からルールが変更になる。

 

「という噂があるんだ」

 

ある日の昼食時、イチカはいつものメンバーで食堂にて昼食を摂っている。

その最中に、自販機で買ったカシスカツオ出汁を飲みながら、クラスメイトから聞いた噂を口にした。

 

「本当に変更されるのでしょうか?」

「それについて、三日後に生徒会が概要変更の説明会を開くらしい」

 

マドカの質問に、話を振ったイチカが答える。

 

「いやそれ、内容変更は確定だよね? 噂じゃなくて、本当の話にたった今なったよね?」

 

思わずツッコミを入れたシャルロットの言う通り、生徒会による説明の時点で、既に噂ではない。

話は学園中に広まっているのか、どう形式が変わるのかとあっちこっちの席で話題になっている。

バトルロワイヤル形式。

トーナメント形式。

制限時間付きでシールドエネルギーの残量による判定勝ち有りの試合。

様々な憶測が飛び交い、それがまた捻じ曲がって新しい憶測を生んでいた。

 

「発案者がお姉ちゃんだから、凄く不安」

 

憶測を聞いている簪は、発案者の姉に対して不安を抱いていた。

 

「だよねぇ。お嬢様なら、すっごく突拍子も無い形式も簡単に思い浮かびそうだし」

 

そのせいでお姉ちゃんが苦労しているし、というのは本音の弁だ。

ちなみに本音はいつの間にか生徒会に所属しているので、説明会に関する仕事があるはず。

その辺を尋ねると、虚が刀奈の所業で阿修羅になっているので、昼食ついでに逃げてきたそうだ。

 

「楯無さん、あなたの勇姿は忘れない」

「勝手に殺さないでよ!」

 

いつの間にか背後にいた刀奈と虚。

二人の手には取ってきた昼食がある。

 

「生きていましたか」

「当たり前よ! こんな事で死んでたまるもんですかっ! まだイチカと式も挙げてないし、初夜も過ごしていないのに!」

 

このすぐ後、いつもの騒動になったのは言うまでもない。

 

同じ日の放課後、いつも通りマドカ達と帰ろうと支度をしていると、携帯にメールが届いた。

誰からだろうかと思いながらメールを開くと、そこに書かれていた内容に笑みを浮かべる。

すぐさま携帯をしまって教室を飛び出し、廊下で待っていたマドカ達を連れて校門へと向かう。

 

「イチカ、どうしたのさ?」

 

いきなり付いて来いと言われ、何がどうなっているのか理解していないマドカ達。

その気持ちを代弁するかのようにシャルロットが尋ねると、イチカはある人物を見つけ、その人物を指差す。

 

「あいつからメールが届いたんだ」

 

誰の事かと目を凝らすと、携帯片手に校門の所でソワソワしているツインテールの少女、凰鈴音がいた。

 

「鈴じゃないか!」

 

一年と少し前に空港で見送った友人で恋のライバルを見つけ、マドカが声を上げる。

すると向こうも気付いたのか、猛烈な勢いで駆け寄ってきた。

 

「やっ……ほおぉぉぉぉぉぉっ!」

 

エコーの効いた声を上げながら駆け寄り、イチカ達の集団へと飛び込む。

受け止めたマドカを中心に簪、本音、シャルロットと久々の再会を味わう。

 

「うわぁ、本当に鈴だ!」

「当たり前でしょ! 私は私よ!」

「元気そうでよかった」

「あんたもね、簪!」

「リンリン……背、縮んだ?」

「リンリン言うな! それと本音は毎回そのギャグをやらなきゃ気がすまないの!?」

 

シャルロットと簪はともかく、冗談と分かっていながらも本音の発言に少々怒る。

そしてお待ちかねのイチカとの再会は。

 

「鈴……」

「イチカ……」

 

見つめ合う二人の間を静寂が支配しようとしていたが。

 

「とおうりゃあぁぁぁぁっ!」

 

見詰め合っていたかと思った次の瞬間、イチカの拳が鈴に向かう。

だが鈴はこれを受け流しながら体を回転させ、肘打ちを叩き込む。

寸でのところでイチカにガードされたものの、構わず次々と攻撃を繰り出す。

それらを全て避けるか受け止めるかしたイチカは、鈴渾身の一撃を弾いて高くジャンプする。

 

「イチカ! 適当に右パンチ!」

 

そして気を込めた右拳を適当に振り抜くと、拳状の気が放たれる。

鈴はそれを避けようとするが避けきれず、直撃して地にひれ伏した。

 

「安心しろ、加減はしておいたぞ」

 

着地したイチカがそう言うと、土煙の向こうからダメージでフラつく鈴が姿を現した。

 

「あうぅぅ……。やっぱりまだまだ敵わないわね」

 

残念そうな表情をしながら、鈴は俯く。

前に出会った時に鈴が中国拳法を齧っていると聞き、暇があれば二人は手合わせしていた。

勿論、結果はイチカの全戦全勝。

負けず嫌いな鈴は中国に帰る際、次に会う時までに鍛えてくると言い残した。

そしてISの訓練をする傍ら、元中国代表候補生だった中国拳法の達人に連絡を取ってもらった。

もっとも、その人が日本に行く前に軽く教えてくれた人だと知った時は、双方とも驚いていたが。

以来、その人物からISと中国拳法両方を教わり、研鑽を積んで今日の再会で激突した。

完敗という結果だったが。

 

「そんな事はないぞ。最初の肘打ちは良い一撃だったぞ」

「普通に受け止められたけどね」

 

よほど悔しかったのか、鈴はふてくされた表情をしている。

 

「そりゃあ、父さんに比べれば超がつくほど緩い一撃だったからな」

「あんなドチートな筋肉ダルマと比べるな!」

 

ちょうどその頃、仕事でマフィアを潰していたラカンがくしゃみをする。

その後ろには、物理的に体のあっちこっちを壊された黒スーツの男が大勢転がっていた。

 

「まぁ、だけどなんだ。ようこそIS学園へ、鈴」

 

改めて笑顔で手を差し出すと、鈴は照れてそっぽを向きながら手を握る。

 

「ん、あ、ありがと」

 

戸惑いつつも想い人と手を握る誘惑に勝てず、握手を交わす。

なんとも鈴らしい反応に、遠巻きに見ているマドカ達がニヤつく。

それに気付いた鈴がマドカ達を追い掛け回したため、手続きが事務室の閉まるギリギリになってしまった。

 

「はぁ、危なかったわね……」

 

どうにか間に合った事に安堵する鈴。

もしも手続きが明日になっていたら編入がその翌日になるため、所属国である中国政府に謝罪せねばならなかった。

 

「国家代表候補生は大変なんだな」

「当然でしょ! 企業代表に比べれば責任も期待も大きいし、面倒な書類に目を通して、何枚もの書類にサインして、延々と注意事項を伝えられて」

 

後半からはほとんど愚痴になっている。

日本の代表候補生である簪は気持ちが分かるのか、うんうんと頷いている。

 

「にしてもイチカは本当に常識外れに強いわね。ISいらないんじゃないの?」

「まぁ、確かに気を使えばISも破壊できるけど、今の世の中的に乗らないってのは難しいだろ。データ取らせろって声もあるし」

 

何せ世界でたった二人の男性IS操縦者だ。

一人でも充分だと思うが、データは多いにこしたことはない。

後ろ盾になってくれている白き翼のIS開発のためだと思えば、データを取られても苦ではない。

ちなみにイチカが呟いた破壊できるという点は、既にここにいる全員が知っている事なので、誰もツッコミを入れない。

 

「第一、破壊できないことはないけど、色々と問題があるしなぁ」

 

破壊できるとは言っても、人が乗った状態では簡単には破壊できない。

壊した事によって生命維持や絶対防御が作動しなくなったら、搭乗者が危険になる。

如何に悪人だったとしても、ISを壊したせいで死なれては問題になる時もある。

さらに言えば、破壊しても良い理由が必要になる。

多少ならともかく、ボロボロになるまで破壊してしまえば、ISの所有先やコアの所有国から色々と言われてしまう可能性がある。

 

「他にもコアが損傷したらどうするんだ、とか言われるし」

 

なので、赤き翼では仕事の契約時、ISとの戦闘になった場合は破壊してもいいかを確認し、万が一にもコアが損傷しても責任は取れないという念書にサインをもらっている。

 

「それに空中戦になったらさすがにキツイぞ。虚空瞬動があるとはいえな」

「虚空瞬動? 何それ」

 

聞き覚えない技名に簪が首を傾げる。

同様に鈴と本音も首を傾げる。

 

「そっか、三人は見たことが無かったな」

 

一緒に修行をしているマドカとシャルロットは、何度か見たことがある。

本人達はまだ瞬動も不完全なので、そこまではできないが。

 

「虚空瞬動ってのは、こうやってな!」

 

突如ジャンプしたかと思うと、何も無い空中を蹴って移動をするイチカ。

まるでゲームの二段ジャンプのように飛び上がると、そのままジグザグ軌道で上昇。

さらに空中から降りてくる時も、一直線に落下してきたと思ったら寸前で停止するように空中を蹴り、二回宙返りをしながら着地した。

 

「何も無い空中を蹴っての瞬動の事を言うんだ。父さん達の業界の達人の間じゃ、空中戦に必須だぜ」

「いやいやいや! 生身で空中戦って訳が分かんないから!」

 

ポカンと見上げていた三人の中で、真っ先に復帰した鈴がツッコミを入れる。

 

「もう本当にイッチーは人外になっていくねぇ」

「何を言うか。俺が人外なら父さん達はどうなるんだ」

「あれはもう、バグキャラかチートキャラだよ……」

 

簪の一言で、赤き翼の何人かが一斉にくしゃみをした。

 

「まぁ、そういう訳で空中戦じゃISの方がまだ有利だよ」

「まだ、なんだ……」

 

いずれは追い越すつもりなのかと、その場の誰もが思った。

 

「そういえばリンリンはどこのクラス?」

「だからリンリン言うなって! えっと、さっき受付にいた人は二組だって言ってたけど」

 

このメンバーの中に、二組所属はいない。

よって、鈴もイチカと簪と同様に一人だけ別クラスとなった。

あくまで、このグループ内での話だが。

 

「二組のクラス代表って誰だっけ?」

「私の事前調査によれば、ティナ・ハミルトンという生徒らしい」

 

シャルロットの疑問にマドカが生徒手帳のメモ欄を開いて答える。

何のための事前調査なのだろうか。

 

「クラス代表って?」

 

状況を理解していない鈴の質問に、寮への道すがらクラス代表戦の事を教える。

ついでにクラス代表の役割や、代表戦のため三日後に説明会があることも。

 

「へぇ、そんなのがあるんだ」

「興味無いのか?」

 

鈴なら食いつきそうな話題なのに、何故か反応が薄い。

てっきり、自分がそいつと代表を変わって出る、とか言い出すかとイチカ達は思っていた。

すると鈴は溜め息を吐いて。

 

「さすがに初っ端から横槍入れてクラスで浮きたくないからね。アンタらも想像してみなさいよ、編入生がいきなり代表代われとか言ったらどう思うか」

 

想像してみて、確かにあまりいい印象は受けない。

まるで目立ちたがりが目立ちたいため、深く考えず行動しているように思える。

小学校時代にクラスで浮いて冬也グループのいじめの標的になっただけあって、そういう所には敏感なようだ。

 

「そういう訳で今回は観戦と応援で我慢しとくわ。アンタらは頑張りなさいよ、イチカ、簪」

 

そう言うと、到着した寮での手続きのため管理室へ走る鈴。

この場はこれで終わったのだが、夕食時に金髪の少女と一緒にいるところへマドカと共に相席を申し出ると、何故か苦笑いを浮かべていた。

 

「はっ? 二組のクラス代表になった?」

 

苦笑いの理由を尋ねると、鈴から返ってきたのは二組のクラス代表になったという内容だった。

なんでも、寮で同室になったのが件のティナ・ハミルトン。

彼女は鈴が同じ二組で、しかも国家代表候補生で専用機持ちと聞くと、代表を代わってくれと迫ってきた。

二組ではこれといった候補者や適任者がおらず、入試時の成績で教師が指名したらしい。

しかし二組で一番の入試成績を誇るティナも、どこかの代表という訳でもない海外から来た一人の生徒。

他のクラスのクラス代表の話を聞いて、とても自信が無かったらしい。

そこへ鈴が来てくれたので、頼み込んで承諾を得て担任に連絡して変更の許可をもらったということだ。

 

「なるほどな。そんなに自信なかったの?」

 

鈴と一緒に食事をしていた金髪の少女へ話しかけるイチカ。

彼女が元二組のクラス代表だったティナ・ハミルトンである。

小柄な鈴に比べ身長もあるし、胸は圧倒的に勝るほど目立っている。

 

「それはそうデスヨ! 一組は織斑センセイの弟で世界初の男性操縦者、しかも専用機も与えられるみたいデスシ!」

 

若干片言が混じった喋り方で、自信の無い理由を説明する。

冬也に専用機が与えられると初めて聞いたイチカは、マドカに視線を向ける。

するとマドカは憎らしそうに小さく頷いた。

どうやら本当のことのようだ。

 

「三組は企業代表で同じく織斑先生の弟で世界初の男性操縦者、シカモ専用機持ちのイチカサン。四組は日本の代表候補生で、コノカタも専用機持ち! 五組と六組も、専用機はありませんケド国家代表候補生デスヨ!」

 

さほどよそのクラスの代表を気にしていなかったイチカは、これらの情報に数回頷く。

これに鈴が二組の代表になったので、何かしらの代表でないのは冬也だけという事になった。

 

「という訳で凰サン! クラス代表と食堂のスイーツ半年間食べ放題券の獲得はあなたに託しマス!」

 

クラス代表はともかく、もう一方は完全に自身の欲望も混じっている。

優勝したクラス代表のクラスにはそういう副賞があるらしいので、イチカもクラスで獲得してほしいと頼まれている。

 

「まぁ、やるだけやるわよ。イチカや簪も出るから、優勝できなくても恨まないでね」

 

ほとんど押し付けられた形なので、半ば投げやりに応える鈴。

しかしティナからすれば、代わってもらえただけでも充分だった。

男性操縦者という点は関係無いが、どこかしらの代表でもない彼女は本当に自信がなかったようだ。

代表でないのは冬也も同じだが。

 

「となると、鈴とも戦うのか。楽しみにしているぞ」

「多分敵わないと思うけど、精一杯やらせてもらうわ」

 

微笑みあって静かに闘志を燃やし合う二人。

そこへ近づく気配に、イチカとマドカが舌打ちをした。

 

「へぇ、やる気だけはあるみたいだね。精々低レベルな戦いをしないようにな」

 

明らかに見下した目線と物言いで割り込む冬也。

隣にいる箒と冬也の腰巾着数名も、イチカとマドカを睨んでいる。

すると冬也は鈴に気付き、鼻で笑う。

 

「なんだよ、暴君鈴じゃないか。いつ来たんだよ。こんな暴力女とつるんでいるなんて、やっぱりゴミ溜めに帰った方がいいじゃないのか?」

 

冬也の言い分と、腰巾着達の下品な笑い方に鈴が下唇を噛む。

あの頃に先に仕掛けてきたのは常に冬也側であって、鈴から手を出した事は一度も無い。

それにも関わらず、毎回返り討ちにあっては全部鈴の責任にしようとしていた。

自分は後ろで腰巾着達が成敗されるのを見ていただけなのに、まるで被害者のように装って。

だが、いつも反冬也派達の証言で虚言だと立証されていたので、鈴が無実の罪を背負ったことは無い。

 

「ちょっとアナタ――」

「やめろ、ハミルトン。この馬鹿には何を言っても無駄だ」

 

言い返そうとするティナをマドカが制する。

その際の言い分に今度は箒が噛み付く。

 

「貴様! 今何と言った!」

「馬鹿を馬鹿と言っただけだ」

「ふざけるな!」

 

怒り狂った箒は何故か肩に掛けていた竹刀袋から木刀を取り出す。

周りで見ていた生徒の一部は、不穏な空気に悲鳴が上がりそうになっている。

そして怒りに身を任せた箒が木刀を振り上げようとした時。

 

「ついでに言わせてもらうと、後ろに気をつけな」

 

イチカが呟いた一言で冬也達は振り向く。

そこには夕食を手にした刀奈の姿。

虚と簪、さらに簪と同室の谷本と共に、こっちへ向かっているのが見えた。

まだこちらのやり取りには気付いていないが、このまま近づかれれば気付かれる。

そう察した冬也達は、先日の昼休みの二の舞にはなるまいと引き下がる。

そそくさと木刀をしまい、忌々しげにイチカ達を睨んでその場を立ち去った。

 

「……何デスカ、あの人達ハ」

 

幻滅した目で冬也を見ているティナが呟く。

 

「俺の遺伝子学上の双子の兄と、篠ノ之束の妹と、腰巾着一同」

 

食事をしながら端的に述べた一刀の説明にティナが驚く。

 

「えっ。あの木刀の人ハ、篠ノ之ハカセの妹なんデスカ?」

「束さんと違って平気で弱いもの虐めするし、何をやっても自分は悪くないと言い張るけどね」

 

幼い頃にそれを体験したイチカの弁は説得力がある。

束と一緒に遊んでいる所へ、男なら剣道をしろと引っ張っていき、無理矢理稽古をつけようとした。

当時は武道に関して素人だったイチカは何も出来ず、ただ攻撃を受けるのみ。

怪我をすれば軟弱だとか、それでも男かと、一回も謝ることなく怒るだけ。

途中で束や両親が止めに入らなければ、大怪我をしていたであろう事も何度かあった。

そして何より、彼女は強くて賢い冬也に心酔し、あれこそが真の男だと言って恋心を抱いている。

どんな事をやろうが、強さと賢さを兼ね備える冬也がやることは、全て正しいのだと思い込んで。

 

「その話は初めて聞いたわね」

 

途中から合流して話を聞いていた刀奈がそう言って、殺気の籠もった目を箒に向ける。

 

「兄様、あの女の物理的な排除の許可を」

「やめろ、マドカ。楯無さんと簪も殺気を抑えて。谷本さんとハミルトンさんが怯えているから」

 

殺気に慣れていない谷本とティナは、刀奈の放つ殺気に小動物のように震えている。

それを指摘されて気付いた刀奈は、すぐに殺気を抑えて二人に謝る。

 

「ごめんなさいね。イチカの奥方としてついね」

「What!? イチカサンと生徒会長サン、ご結婚されているんデスカッ!?」

「していない! ていうか、現段階で日本の法律じゃできん!」

 

ティナの見せる反応にイチカが素早く突っ込む。

 

「そうだよ! それにイチカの伴侶は私!」

「兄様には本妻の私が既にいると、何度言ったらわかる!」

 

そしていつものように簪とマドカが自分の立場を主張する。

さらに今回は鈴もいるので。

 

「何言っているのよ、イチカの正妻は私だって」

 

こちらも自称の立場を述べて参戦。

既に慣れている虚は気にするなと谷本とティナに声を掛け、黙々と食事をする。

一刀も半分諦め混じりに食事を継続。

これの状況を一度経験し、そういうものなんだと順応した谷本も食事を続ける。

初経験のティナだけは、困惑してどうするべきか迷っていた。

ちなみに先ほどの冬也達とのやり取りは、見ていた周囲の生徒達によって学園に広まった。

先日の昼休みの件も合わせ、彼らの支持率はクラスでも急落していった。

 

 

おまけ

 

まだ鈴達が言い争っている間に、イチカの携帯にメールが届く。

誰からだと尋ねる虚に友人の弾ですと答え、会わせた事が無かったのを思い出す。

そこで、こんな奴だと再会時に皆で撮った写真を見せた。

それを見た虚は。

 

「イチカさん、弾さんというのはこの赤髪の人なんですね?」

「そうですけど、何か?」

「……してください」

 

虚には珍しく、小声で何か言ってきた。

聞き取れなかったので、もう一度言ってくれと伝えると。

 

「この方、紹介してください!」

 

真っ赤な顔になって弾を紹介して欲しいと言い出した。

これを聞いた鈴達も言い合いを止め、虚の方を向いて呆然としていた。

恋愛に興味無さそうだった虚の行動に驚いて。

そんな中、刀奈だけは。

 

「虚ちゃんにもとうとう春が訪れるのね」

 

と、昆布出汁マンゴーというジュースを啜って呟いた。

ちなみに鈴もチャレンジ精神から、上級者向けのマスカットフィーバーブラックコーヒー割りを飲み、一口でトイレに駆け込んだ。

 

 

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