IS―再生の在り方   作:時語り

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深まる疑問

限定トーナメント中に起きたトラブルも無事に収束し、トーナメントそのものは初戦だけやって幕引きとなることとなった。

残る試合は限定トーナメントにおける数試合だけで、事態が収集してすぐに試合は再開された。

ちなみに結果はというと。

 

第四試合

 

二年 サラ・ウェルキン

  VS

一年 イチカ・ラカン

 

事前にセシリアから情報を聞いていたサラだが、やはり実物の瞬動術や放電、イチカの体術に対応しきれずイチカの勝利。

 

 

第五試合

 

一年 更識簪

  VS

二年 フォルテ・サファイア

 

IS操作の技術はほぼ互角だったが、瞬動や分身を駆使する簪が途中から流れをものして勝利。

なお、分身を見た途端に海外から来た生徒と来賓が、いっせいに騒ぎだしていた。

 

 

第六試合

 

一年 マドカ・ラカン

  VS

一年 鳳鈴音

 

両者はげしい戦闘を繰り広げたが、気の扱いの上手さで僅かにマドカが上回り勝利。

だた、アリーナ内を凍らせるほど冷凍武器を撃ちまくったため、罰としてマドカは次の試合までの間に氷結箇所の除去作業に追われた。

 

 

第七試合

 

三年 ダリル・ケイシー

  VS

一年 ココネ・ファティマ・ローザ

 

長期戦で粘り勝つしかないとココネも頑張ったが、ここは三年生であるケイシーが一日の長を見せ勝利をもぎ取った。

 

 

このような結果を持って、学年別トーナメントと限定トーナメントは終了となった。

その後、IS学園は緊急職員会議を開き、今回の事件を国際IS委員会へ報告することにした。

前回は居合わせたのが教職員と生徒だけだったが、今回は各国からの来賓が来ていたのが決め手になった。

さすがに国や企業の重要人物を危険に合わせたかもしれないと考えると、黙っているわけにはいかなかった。

緘口令を敷いたとしても、外部から来た人達の口から伝わる可能性も考慮しての処置だった。

これにより、暴走した白式は委員会から派遣された調査員が来るまでIS学園に回収され、パイロットの冬也は改良に使用したPCの提出と事情徴収を受ける運びとなった。

 

「という訳だ。藤島、白式と使用したPCを提出しろ」

「……分かった」

 

不機嫌そうな冬也だったが、さすがに国際IS委員会の決定には逆らえず素直に提出した。

その翌日、国際IS委員会の調査員十数名ほどがIS学園へやって来た。

 

「国際IS委員会本部より派遣されました。調査員のプリームム・アーウェルンクスです」

「日本支部より派遣されました、調査員の高音・D・グッドマンです」

「お、同じく調査員の佐倉愛衣と申します」

「同じく調査員で技術者の飴屋一空です」

 

出迎えた学園長の轡木十蔵と、表向きの学園長をしている妻に、代表者の四名が身分証明書を提示しながら自己紹介をする。

 

「遠い所をご足労くださり、ありがとうございます。早速ですが、こちらがお伝えした件のISとPCになります」

 

同席していた千冬が厳重に鍵を掛けたアタッシュケースを開け、回収していた白式とPCを提出する。

それらを受け取ったプリームムは、二人に必要事項を伝える。

 

「確かにお預かりしました。解析をしたいと思いますので、作業室を一室お貸しいただけますか? それとパイロットの藤島冬也、及び当日の責任者である織斑千冬さんと取り押さえた教職員、対戦相手のラウラ・ボーデヴィッヒさんに事情聴取をしたいのですが」

 

これを承知した轡木十蔵の指示で、千冬は当日の関係者の呼び出しをする。

その間にプリームムは他の調査員達に指示を出す。

 

「では飴屋君、白式とPCの解析は任せます。高音さんと佐倉さんは私と分担して事情聴取を」

「わかりました」

「了解です」

「お任せあれ」

 

それぞれに数名の助手を付けた上で、調査は始まった。

調査員達の姿を教室から見ていた生徒達は、休み時間になると早速それをネタにお喋りをする。

イチカのいる三組も例外に漏れず、どうなるかが騒がれている。

 

「まさかプリームムさんが来ているとはな」

 

クラスメイト達が騒いでいる時に見かけた顔見知りの存在に、イチカはちょっとだけ驚いた。

 

「ラカン君の知っている人がいたの?」

「プリームムさんっていって、国際IS委員会の本部のお偉いさんだよ。何度か顔を合わせたことがある」

 

そんな人物と知り合いなのかと、話を聞いていたクラスメイト達はざわめく。

 

「どどど、どうやって知り合ったの?」

「白き翼の役員のフェイトさんの一番上のお兄さんなんだ。年末年始とかにお年玉貰った事もあったっけ」

 

普通なら会える機会さえ、一生に一度あるか分からない相手からのお年玉。

イチカにとっては普通のこととなっているが、周囲のクラスメイト達からすれば、どれだけ凄い相手からのお年玉なのかという気分だった。

 

「一番上ってことは、他にも?」

 

さりげない問いかけに、イチカはアーウェルンクス兄弟の現状を説明する。

長男のプリームムは国際IS委員会本部の幹部級。

次男のセクンドゥムは何名かと組んで傭兵団を設立し、赤き翼ほどではないが活躍中。

三男のフェイトは白き翼の役員。

四男のクァルトゥムは現役の軍人で軍隊格闘の達人。

五男のクゥィントゥムはカフェを開業。

末っ子で長女のセクストゥムは白き翼の社長秘書の一人。

 

「何か凄い兄弟なんですけど!?」

「だよなぁ。俺も初めて聞いた時はそう思ったし」

 

しかも兄弟全員がハイスペックの持ち主なので、できないことなどほぼ無いに等しい。

そんな兄弟の長男がどんな判断を下すのか、流れに身を任せるしかないイチカは遠い目をした。

一方のプリームム達は、一通りの事情聴取を終えて作業室にいる飴屋一空の下を訪れていた。

 

「飴屋君、解析の方はどうだ」

「そうですね、ほぼ報告の通りです。確かに学園外部から白式に送り込まれた形跡が、僅かですが残っています」

 

彼らの受けていた報告は、学園外部から自動制御プログラムのようなものが組み込まれたというもの。

しかもそれが禁止されているVTシステムという、強制戦闘プログラムに酷似しているので、より調査は厳重に行われている。

 

「いやいや、大したものですよ。VTシステムより操縦者への負荷が格段に減っている上、一度きりとはいえシールドエネルギー回復機能とか。その分、戦闘力は大したことありませんけど」

 

手際よくキーボードを叩く一空の報告に高音が口を挟む。

 

「飴屋さん、感心している場合ですか。こんなものが世界中のISに外部から組み込まれて暴走し出したら、パニックになりますよ」

「まあまあ落ち着いて。多分それは無いよ、見てご覧」

 

一空があるプログラムを表示させ、それの説明を始める。

 

「これを見る限り、どうやらIS搭乗者以外の人間は攻撃しないように設定されているみたいなんだ」

 

その説明を聞いて三人は驚いた。

彼らは今回の事件を、ISを利用した新たなテロ行為と考えていた。

だが、本当にテロが目的ならば、わざわざ人を攻撃しないように設定する必要は無い。

しかもどうやら、乗っ取った機体の搭乗者への負荷も計測しており、限界に達したら制圧されていなくとも自壊するようになっていた。

 

「ここまで解析するのは大変でしたけど、その甲斐はありましたよ」

「プリームムさん、今回の犯人の目的は何なんでしょうか?」

 

不安そうな表情の愛衣がプリームムに尋ねるが、彼も明確な答えは出せていない。

その中で、ある可能性が頭に浮かんだ。

 

「ひょっとして犯人の今回の目的は、データを収集すること……なのか?」

「えっ?」

「自分が組んだ強制制御システムが正常なIS相手にどれだけ戦えるのか、どれだけ操縦者の負荷になるのか、試すことにあるんだとしたら」

 

プリームムが口にする予測を聞いた高音の表情が強張る。

 

「待ってください。ではこのシステムは、ISと戦う事を前提として組まれているという事なのですか?」

 

それを聞いて愛衣と一空だけでなく、一緒に調査をしている調査員達の顔色が変わる。

もしもその予測が本当なら、相手はISに挑むための準備している事になる。

現時点において最強とも言える、ISという存在に。

 

「これは思ったより、大事に発展する可能性があるな」

「どうしますか?」

「厳重な警戒が必要になるかもしれない。ともかく、上に報告を。白式とPCも詳しく解析するため、もうしばらく預かれるよう話をつけてもらってくれ」

 

深刻な事態を想定しての指示に、すぐさま高音は国際IS委員会日本支部へ連絡を取る。

白式とPCの件についても報告すると、そちらは委員会の方から開発元の倉持技研に連絡すると返答が来た。

さすがに委員会の方から言われては相手も断れないだろう。

平行して愛衣もプリームムも名前で委員会の本部へ連絡を取り、おおまかな報告をし、一空は作業室を片付けるように部下達へ指示を出している。

 

「よし、今日はこれで撤収だ。飴屋君は戻ったら解析の続きを。高音さんと佐倉さんは、聴取の内容を報告書にまとめて提出を。できるだけ迅速にね」

「「わかりました」」

「了解です」

 

撤収の旨を学園のトップ二人に伝えると、プリームム達は証拠物件となる白式とPCの持ち出し許可を得て撤収した。

彼らが引き上げたIS学園に平穏な時間が戻るものの、約一名は非常に苛立っていた。

 

「くそっ!」

 

行き場の無い怒りをぶつけるように、自室のベッドに何度も拳を振り下ろす。

先日のトーナメントでの出来事により、白式とPCを押収されたことに怒り心頭になっている。

誰も暴走が冬也のせいだとは言っていないが、冬也自身はあんな事になって恥を掻いたと思っている。

加えてラウラとの試合内容があまりにも一方的だったので、余計に苛立っている。

 

「あんっの眼帯女! AICはともかく、最後は変な技なんか使いやがって!」

 

殴るたびに軋むベッドの上で、つい先ほどまでの出来事を思い出す。

まるで犯罪者のように事情聴取を受け、専用機とPCを押収され、数日間の自室待機を言い渡された。

少ないながらもいた取り巻きは、同室で幼馴染の箒を除いて離れていき、藤島家からもあまり家名を汚すなと電話を受けた。

ちなみに取り巻き達は、掌を返すようにイチカ側に付こうとしたが、調子に乗るなと周囲の冷たい視線を受けてハブられている。

 

「落ち着け冬也。あんなのは勘違い女が格好つけただけだ」

 

どうやら箒の中では、ラウラは眼帯を付けて格好良いと思い込んでいる痛い系らしい。

 

「おまけに俺がカスタムした白式まで持って行きやがって。もっと改良しようと思っていたのに!」

 

箒の言葉を聞き流し、落ち着くこと無くベッドを連打する。

他にも完敗した要素はあるのに、彼の頭の中には白式のスペックのせいだという考えしかない。

そこへ、開発元の倉持技研のお偉いさんから電話が掛かってきた。

 

「もしもし」

『藤島君だね。今回の件は色々と大変――』

「余計なお世話だ! それよりも、白式をもっと強くするにはどうすればいい!」

 

横柄で一方的な言い方に、電話口の向こうでお偉いさんはムッとする。

だが、向こうとしても二人しかいない男性操縦者に見限られる訳にはいかない。

もう一人には自分達以上の規模を持つ白き翼が付いているので、横槍は入れられないのだから。

大人として冷静な対応をすべく、深呼吸して心を落ち着けて返事をする。

 

『それに関しては、現在の白式のデータがないとなんとも……。返還されたら、一度こっちに持って来てください』

 

至極当然の返事だが、それすらも気に入らなかった冬也は舌打ちをしながら了解した。

そして一方的に電話を切り、ベッドに寝転ぶ。

 

「まったく、どいつもこいつも」

「大丈夫だ冬也。お前は悪くないのだから、すぐに白式も戻ってくる」

 

これに関しては箒の意見は正しかった。

既に冬也が何かした訳ではないのは証明されている。

回収されたのは、あくまでより詳しく解析するためだ。

 

「当たり前だ! というか、誰なんだ。俺の白式にあんなのを入れたのは」

 

最初はイチカ達が自分を陥れる為にやったのではと勘ぐった。

そこで押収される前にPCの記録を調べ、組み込まれた日時のイチカ達の行動を、自室待機中の自分に代わって箒に調べてもらった。

しかし、当日イチカ達はグラウンドの片隅でで修行している姿を、多数の生徒に目撃されていた。

修行に参加していない本音も、生徒会室で仕事をしていた事が判明。

これによってイチカ達がシロだと分かると、犯人がイチカ達でなかった事と推理がふりだしに戻った事で、余計に苛立つのだった。

 

「絶対に見つけてぶっ飛ばしてやる」

 

探す当てもないのに、怒りの表情でそう呟いた。

その一方で束の方はというと。

 

「あぁん、もう! どうやったら束さんでも分からないほど、痕跡を残さず消せるのさ!」

 

千冬からの頼みで嫌々ながらも白式とPCのデータをこっそり解析していたが、完全に行き詰っていた。

どう調べても痕跡は残っておらず、どこの誰がシステムを送り込んだのが分からない。

ただ、分かっている事もあった。

 

「前と同じ、束さんのとは別のコアネットワークを使っているから、チャチャゼロのコントロールを奪った奴と同じなのは間違いない」

 

しかし、その相手がどうしても掴めない。

 

「いったい、どうなっているのさ!」

(……まるで、束様に痕跡が調べられるのを分かった上で、綿密に計画を練っていたような事件ですね)

 

頭を抱えて唸る束の傍に控えて紅茶を淹れながら、クロエはそう思った。

そうでなければ、製作者である束を出し抜く事などできないと考えて。

 

(けれど、それほどの技術があるならISに対抗する物を作っても同じ事。どうして犯人には、ISでなければならないのでしょう)

 

クロエの頭に浮かんだ疑問に答えられるのは、犯人だけである。

 

「もういい! 調べるのやめて、ちーちゃんから報酬に貰ったいっくん写真の鑑賞会にしよっ!」

「束様、なんですかその写真とは。聞いていませんよ。晩御飯は束様の好きな物を作りますから、見せてください!」

 

束による捜査が放棄されていたちょうどその頃、IS学園では職員会議が開かれていた。

集められたのは一年生の担任と副担任ばかり。

というのも、議題が先に控えている林間学校についてだからだ。

 

「実は毎年利用している旅館が改装工事のため、今年は利用できません」

 

表向きの学園長である轡木十蔵の妻が、集まってもらった理由を告げる。

 

「なので、今年はさほど離れていない場所に建つ、こちらの旅館を利用する事になりました」

 

代わりの旅館に関するパンフレットを、全員に配布し目を通させる。

既に旅館側とも話はついており、必要な部屋は確保してあるそうだ。

ただ、既に予約の入っている二組の一般客は断れないので、そこだけは了承してほしいと伝えられた。

 

「どういうお客さんなんですか?」

「休養を兼ねて釣りに来る男性客三名と、旅館の上客の女性客一名です。どちらも女将さんの知り合いだそうで。男性客の部屋は生徒達の部屋とは階が違いますし、教職員の部屋を階段前に用意するそうです」

 

一般客、特に男性客対策は万全という訳だ。

 

「そういう訳で、悪いですけどよろしくお願いします」

 

学園長からの要請に教員達は快く了解する。

そんな教員達の手元にある旅館のパンフレットには、仙鏡館と書かれていた。

 

 

おまけ

 

束には複数の身を隠す秘密研究所が存在している。

他にも光学迷彩をほどこした空中研究所や、町の地下にこっそり作った隠れ家も。

そして現在束は空中研究所にて。

 

「いっくんハアハア」

 

千冬から調査の報酬に受け取ったイチカの写真を見て、鼻血を垂らしていた。

しかも自作なのか、イチカ抱き枕まで抱きながら。

 

「束様、ティッシュをどうぞ」

 

一緒に見ているクロエの鼻には、既にティッシュが詰められている。

 

「あぁ、ありがとう。でもいっくん、いい体になったなぁ」

 

現在クロエが見ているのは、修行後にグラウンド脇の蛇口で頭に水を浴び終えた姿。

服が濡れないように配慮したのか、上半身裸で。

結果、水も滴る良い半裸男となっていた。

写真の隅には、鼻を押さえて蹲るマドカとシャルロットが小さく写りこんでいる。

ラカンやその仲間に鍛えられた肉体が野外で水に濡れた姿は、一目見た瞬間から束とクロエの鼻から出血をさせた。

 

「束様、いいことを思いつきました。これを使ってイチカ様抱き枕の第二弾を作りましょう」

「何それくーちゃん天才! じゃあ束さんはさっそく生地にプリントするから、裁縫の方はよろしくね」

「お任せください!」

 

彼女達の私物にはイチカの写真入りグッズが増えてきていた。

 

 

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