IS―再生の在り方   作:時語り

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プロローグ 元亡国&シャルロット編

 

 

元亡国編

 

ある日のアジトでの事だった。

亡国機業の最後の砦の研究所を潰して、赤き翼のメンバー5人が帰ってきた。

一仕事終えて満足気な赤き翼のリーダー、ナギ。

元捜査官の経歴を持つタバコの似合う男、ガトウ。

黒いロープに身を包んだ仮面の男、デュナミス。

若干幸薄そうな雰囲気を醸し出す剣士、詠春。

そして元貴族だと言っている老紳士、ヘルマン。

仕事に向かった無事に全員が帰ってきたのだが、他にも何人か連れていた。

 

「ガトウさん、そちらの人達は?」

 

最後に入ってきたガトウの後に続く二人の女性。

さらにその女性の後ろには、フードで顔を隠している少年か少女か分からない人物がいた。

 

「そういえば、イチカは会った事がなかったな。金髪の方はスコール。元俺の部下で、今は仲間だ」

「初めましてイチカ君。私の名前はスコール、君が来る前から亡国機業に潜入して、情報をガトウさん達に渡していたの」

 

にっこりと笑いながら、結構ハードな事を言われた。

ガトウはどこかの国の元捜査官だと聞いていたが、部下だった人が赤き翼にいるとは知らなかった。

しかも宿敵の亡国機業に内通者として潜入し、こちらに情報を流していたとは。

 

「どうりで、残党の集まる場所が次々判明するわけだ」

 

お陰でこうして最後の拠点を潰し、残党退治も完了した。

これでもう亡国機業が復活する事は無い。

 

「ちなみに夫婦だったりするわ」

「えぇぇぇっ! ガトウさん、奥さんを潜入捜査に使ったんですか?」

「違う、違う。無事に任務を果たせたら、籍を入れようって約束しただけだ」

 

冷静に話しているようだが、ガトウは少し照れていた。

 

「ふぅん。それで、そこの二人は?」

 

改めて注目は、残る二人へ向けられる。

オレンジの髪のロングヘアーの女性は、注目されるのが気に入らないのか、居心地の悪そうな表情をする。

その女性の影に隠れて顔を隠している小柄な人物は、フードの裾を引っ張ってしきりに顔を隠そうとしている。

 

「手前の彼女はオータム。亡国機業が兵士に育てるため、幼い頃に工作員によって誘拐された子よ」

 

紹介をされたオータムは、恥しいのか何かが気にくわないのか浮かない表情をする。

 

「どうしたのよ、オータム。あなたの求めていた自由が手に入ったのよ」

「いやさ、実際に自由になると実感が湧かないというか……」

 

ようやく手に入った自由だが、彼女は腕を組んで難しそうな表情をしている。

 

「これからゆっくり噛み締めればいいわよ」

「そういうものか?」

「えぇ。だから胸の内を打ち明けてくれた時のように、自由になりたいって泣かなくてもいいのよ」

「泣いてねぇ!」

 

そんな事があったのかと、周りはよりオータムに注目する。

余計に注目を集めたオータムは、忌々しさの中に照れを見せながら適当な椅子に座る。

その際に脚を組んだのだが、長ズボンを穿いているので変な期待はできない。

 

「で、そっちの子はなんじゃ?」

 

ナギの奥さんで赤き翼のメンバー、女剣士兼事務経理担当のアリカが尋ねる。

するとスコールとオータムは、若干表情が曇る。

 

「彼女は……亡国機業の実験で生まれた子よ」

 

スコールの告げた内容に、室内の空気が一気に重くなる。

特に少女と分かったフードの子は、居心地が悪そうに縮こまっている。

たった今、スコールが告げた意味をイチカも含めて誰もが知っている。

亡国機業は優秀な兵士を作るため、運動能力や知能に優れた人物達のDNAを分析していた。

さらにはその親族、特に両親を拉致し、DNAを解析してより優秀な人間を作る遺伝子研究をしていた。

成功した例が無いと報告を受けていたが、人を生み出すことには成功していたようだ。

ドイツ軍でも試験管ベビーという、似たような事をしていると聞いていたが、さすがに拉致してまでの研究はやっていない。

 

「名前は?」

「……ない。番号で呼ばれていた」

 

同じ目線に屈んだアリカが尋ねると、少女は初めて口を開いた。

とてもヘビーな内容だったが。

囚人かよと、思わず呟きたくなるほど。

 

「私は勝手にマドカって呼ばせてもらっているわ」

 

重苦しい空気を払うためか、スコールがフォローを入れる。

 

「マドカか。じゃあ、お嬢ちゃんの名前はマドカに決まりだな!」

 

ナギがリーダー権限で少女の名前をマドカに決める。

しかし少女は何の反応も見せず、相変わらずフードで顔を隠している。

 

「おいおい嬢ちゃん、せめて顔くらいは見せてくれよ」

 

いつまでも顔を見せようとしない少女を見かねたラカンがフードを剥ぎ取る。

その寸前にスコールとオータムが止めようとしたが、既に遅かった。

フードの下から現れたその顔は。

 

「千冬……姉……?」

 

イチカの姉の千冬そっくりの顔だった。

髪の色と瞳の色がグレーという点は違うが、顔の作りはほとんど似ている。

それを耳にした少女は再びフードを被り、顔を隠してしまった。

 

「スコール、ひょっとしてこの子は」

 

頷いたスコールがテーブルの上に資料を広げる。

それには亡国機業がリストアップした優秀な人物のデータがある。

その中に、織斑千冬と冬也のデータもあった。

優秀だという評判を日本の構成員が小耳に挟み、調査した上で対象としてリストアップされたようだ。

データ解析に使用した物には、髪の毛や血液が記載されている。

 

「そこで、織斑千冬及び織斑冬也のDNAデータをより強いものにできないかと、織斑夫妻を拉致して遺伝子情報を解析して作られた子よ。生まれた後、早く育てるためにあそこの開発した成長促進剤を投与されて、副作用で髪と瞳の色が少し抜けちゃたけどね。今はイチカ君と同い年くらいかしら?」

 

スコールの説明を聞いてイチカの脳裏に両親の記憶が過ぎる。

数少ない味方だった両親。

ある日突然いなくなり、そのまま行方不明。

そして怪しい研究をしている機関で、その遺伝子情報から生み出された少女が目の前にいる。

それらから、イチカは最悪の状況を思い浮かべた。

 

「あの……俺の両――織斑夫妻は?」

 

ラカンとテオドラの手前、両親とは言い辛いイチカは言い方を変えて尋ねる。

別にラカンもテオドラも気にしていないのだが、イチカなりのけじめらしい。

 

「……ごめんなさい」

 

スコールのその一言で全てを悟った。

さらに資料の続きを見つけると、解析対象夫妻死亡のため断念と記載されている。

いつかまた、どこかで会えるかもという淡い希望は消え去った。

するとマドカが震えた声で喋りだした。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい。私が、私が生まれたからあなたのご両親が……」

 

声だけでなく、体まで震えだしたマドカ。

どうやら彼女にとっても遺伝子的な両親が死んだのは、相当なショックだったようだ。

ただでさえ、亡国機業によって厳しい訓練漬けの日々を強制的に送らされていた。

幸いにも優秀な成績を収めていたそうだが、そうでなかった子はどこかへ連れて行かれ、帰って来なかった。

その中には当然、地獄の中でも友人になれた子達も含まれていた。

加えて自分の生い立ちと、両親と呼べる二人の間の本当の子供の存在。

マドカは、自分が生まれた為にイチカの両親を犠牲にしてしまった。

そう考えているために、フードを取ろうとしなかったのだろう。

 

「別に君のせいじゃないよ。悪いのは亡国機業だよ」

「分かってる。でも、そうでないと私は自分自身が分からなくなる……」

 

マドカの言葉を聞いて、室内にいる全員が理解した。

彼女は織斑夫妻の死が自分にあり、本当の家族に恨まれていると思い込んでいる。

そうしないと自分の存在意義を失ってしまうから。

亡国機業で兵士になるためだけの日々が終わり、亡国機業もほぼ完全に無くなった。

存在意義を失いかけているマドカは、自分が生き残っているのは織斑夫妻の本当の両親に恨まれる為だと思い込むことで、自身の存在意義を保ち続けている。

 

「自分が分からなくなる、ねぇ」

 

カップを手にしたラカンが向かいのソファに座り、マドカへ視線を向ける。

 

「嬢ちゃん。その年で自分が分からなくなる、なんてのは勘違いだぜ。俺からすれば、自分を分かっていないだけだ」

 

いつもの根拠の無い自信の眼差しをマドカへ向ける。

マドカは相変わらずフードの裾を握り、顔を隠したまま俯いている。

 

「だったら、あなたはどうなの。もしもあなたが存在の真実を突きつけられ、存在の意味を失ったら!」

 

強い口調での問い掛けにも、ラカンは飄々としながら答える。

 

「はっ、なんだその程度。真実? 意味? そんな言葉、俺の生には何の関係もねぇさ」

「っ!?」

「俺は俺でしかねぇ。例え俺が人形や幻想のような存在だとしても、俺が思うがまま、俺の生を進み続ける。ただそれだけだ」

 

返ってきた答えにマドカはフードの下で口をパクパクさせている。

ずっと悩んでいる事に対し、何の関係も無いと言い切った事に驚いて。

 

「父さんが初めていいこと言った」

「うおぉい! 初めてかよ!」

 

思わず口にしたイチカの感想に突っ込むラカン。

途端に辺りの重苦しい空気は消え去り、赤き翼メンバーから笑みが零れる。

そんな周りの空気とラカンの言った事に思う所があったのか、オータムの口元にも笑みが浮かぶ。

 

「それで、マドカ。あなたはどうしたいの?」

「私は……」

 

スコールに改められて問いかけられ、マドカは考え込む。

数回、イチカとスコールに目を向ける。

血縁上の繋がり、亡国機業内での唯一の味方。

色々と悩みながら考え抜いた返答は。

 

「私は私として生きたい! 暗い世界じゃなくて、明るい世界で笑って生きたいです!」

 

顔を上げた拍子にフードが落ちる。

そこから現れた目には決意が籠もっている。

 

「よし、分かった! お主はたった今からマドカ・ラカンじゃ!」

「ぶうぅぅぅっ!」

 

テオドラの発言にイチカは飲みかけの紅茶を吹いた。

吹いた全てがラカンに掛かったが、ラカン以外は誰も気にしていない。

こうして、予期せずしてイチカに妹ができたのだった。

 

おまけ

 

新しい家族としてラカン家に迎えられたマドカ。

そのマドカは。

 

「おい、なんでここにいるんだ!」

「? 兄妹とはこうするものだと、母様に教わったのですが」

 

朝にイチカが起きると毎回のようにベッドに潜り込んでいたり。

 

「兄様! お背中流します!」

「だあぁぁぁぁっ! そんな格好で入って来るなあぁぁぁ!」

 

風呂に入っていれば背中を流そうと、全裸で突撃してきたり。

 

「私の夢は兄様の本妻になることです!」

「なんでそうなった!」

「母様に借りた日本の漫画から推測するに、血の繋がっていない兄妹というのは、結婚フラグが立っているものだからです!」

 

偏見と勘違い満載の知識で行動したりと、毎日のようにアジトに笑いを提供してくれた。

ただ、訓練の日々のせいで勉強が身についておらず、学校に通うまでの間に猛勉強が必要となった。

さらに、両親とマドカの事を写真付きで千冬にメールで知らせたところ、あまりの衝撃で千冬は飲んでいたビールを天井に届くほどの勢いで吹き出したのだった。

 

 

シャルロット編

 

たった一人の家族のお母さんが病気で死んだ。

引き取り手はお母さんを愛人として囲っておきながら、僕が生まれてからは一度も顔を出さない父になるだろう。

 

「……ここで一人暮らししたいな」

 

父の下に行けば、父との間に子供のいない正妻の人がいる。

その人にとって僕は、目の敵や邪魔者以外の何物でもないだろう。

今後の事に不安を抱えていると、ふとお母さんとの約束を思い出す。

 

「そうだ、お母さんの友達に連絡しなくちゃ」

 

お母さんが息を引き取る前に、自分が死んだらこの連絡先に伝えて欲しいと頼まれた。

誰の連絡先かと尋ねると、お母さんの大事な友達よ、と言っていた。

僕はお母さんとの約束を果たすため、連絡先に電話を掛けた。

電話に出た男の人にお母さんが死んだと伝えると、悲しそうな声で分かったとだけ言っていた。

すぐに電話は切れたが、相手のお友達も悲しいのだろうと、この時の僕は深く気にとめなかった。

 

お母さんが亡くなった翌日、父の使いという人達がやってきた。

僕を引き取るのと、IS適性の高い僕をテストパイロットにするために。

父がIS世界シェア三位のデュノア社の社長だという話は、お母さんが以前に教えてくれた。

自分が愛人だという事も、涙ながらに全部語っていた。

愛人の子だから、きっと僕は引き取り先で正妻の人に疎まれるだろう。

前にも心配していた事を改めて心配しながら荷物を纏めていると、誰かが尋ねてきた。

 

「はい」

 

チャイムの音を聞いて、僕はリビングで待っている父の使いの人の横を通り、扉を開ける。

するとそこには、タバコを銜えた男性と金髪の女性、カバンを持ったスーツ姿の男性がいた。

 

「どちら様ですか?」

「初めまして、お嬢ちゃん。俺はガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグ。君が電話してくれた、お母さんの友達だ」

 

お母さんの友達だというタバコの男性が、頭を下げながら僕に微笑む。

その声は確かに、あの時の電話に出ていた男の人の声だった。

 

「は、初めまして。シャルロットと申します」

「そうか、君がシャルロットか。実は今日は、とても大事な話をしに来たんだ」

 

大事な話というので、とりあえずは上がってもらった。

リビングにいた会社の人達をどうしようかと迷っていたら、金髪の女性が彼らは誰かと尋ねてきた。

正直に全部教えると、ちょうどいいと言って同席をお願いしていた。

会社の人達は首を捻りつつも了解して、全員が席に着いた。

 

「それで、大事な話ってなんですか?」

 

僕がガトウさんに尋ねると、金髪の女性から驚きの答えが返ってきた。

 

「あなたのお母さんの遺言で、シャルロットちゃんは私達が引き取ることになったのよ」

 

これを聞いた僕は、目が点になった。

会社の人達も聞いていないぞと動揺している。

すると、控えていたスーツ姿の男性がカバンを開けながら、説明を始めた。

 

「私、弁護士のゲーデルと申します。亡くなられたアイリスさんの遺言状を預かっております」

 

よく見ると、ゲーデルと名乗った男性のスーツには弁護士バッチがある。

そのゲーデルさんが、カバンから一通の封筒を取り出した。

 

「こちらがその遺言状です。なお、これは法的に認められたものですので、あしからず」

 

そう言って、遺言状を開封して遺言状の内容を読み出した。

内容は、自分が死んだら元上司のガトウさんか、友人のスコールさんに僕を引き取ってもらうという事。

これはガトウさんも、その妻となったスコールさんも了承済みらしい。

ただし、もしもスコールさんとガトウさんが何かしらの事情で引き取れなくなった場合は、父に引き取らせるという内容。

突然の事で会社の人達は慌てふためき、僕は口を開けてポカンとしていた。

 

「というわけで、よろしくねシャルロットちゃん」

「は、はい!」

 

ガトウさんの隣にいる金髪の女性が、僕に話しかけてくる。

おそらくこの人が、お母さんの友達でガトウさんの奥さんのスコールさんなのだろう。

 

「そういうわけですので、どうかお引取りを」

 

さっきまで優しい表情だったスコールさんが、強い口調で会社の人達に切り出す。

突然の事態に対処できない会社の人達は、逆らわずに車で去って行った。

この日から僕は、新しいお義父さんとお義母さんの下、シャルロット・ヴァンデンバーグになった。

 

 

ガトウSIDE

 

これであいつとの約束は果たした。

数ヶ月前にかかってきた、あいつからの電話。

 

自分は病気で長くない。

お金や家はどうなってもいいが、心残りは娘のシャルロットだけ。

そんな相談を元部下から受けた俺は、良ければ俺が引き取ると答えた。

あいつと友人で、当時はまだ籍を入れる前だったスコールも、これに乗ってくれた。

俺はすぐにゲーデルにフランスでの弁護士資格を持っているかを確認し、現地へ行ってもらった。

そして法的に有効な遺言状を作り、戻ってきた。

できれば俺は、それが必要なくなるくらい回復してくれる事を祈った。

だが、あいつは逝ってしまった。

 

俺とスコールはゲーデルに連絡を取り、すぐに一緒にフランスへ飛んだ。

お互いにいい年だから、子供の望みは薄いと思っていた。

それが、あいつの娘を引き取って養子にすることとなった。

あいつの家でゲーデルがシャルロットの父親の部下に説明している間、俺は思い出していた。

俺とスコールとあいつの三人でつるんでいた、捜査官時代の事を。

二人に同時に想いを告げられ、スコールの手を取った日の事を。

 

安心しろ、アイリス。

あの日の期待に添えなかった分、お前の娘は俺達で立派に育ててやる。

だから、安心して眠ってくれ。

 

SIDE OUT

 

 

「っていうのが、僕がガトウさんとスコールさんに引き取られた経緯だよ」

「へぇ。いきなり、娘連れて来たって言ったときは驚いたけど、そういう事だったのか」

 

赤き翼のアジトでの、新たに住人になったシャルロットとイチカの会話。

シャルロットが加わった経緯を聞いたイチカは、納得したように数回頷く。

当初はデュノア社から何かあるかと思いきや、厄介者払いできたと言わんばかりに何もなかった。

 

「いやぁ、でも驚いたよ。お母さんが元フランス警察の捜査官だったなんて」

「ガトウさんとスコールさんも元捜査官だったらしいからな。どこの国かまでは知らなかったけど、フランスだったのか」

 

二人で仲良く会話していると、マドカが菓子の入った箱を持ってきた。

 

「兄様! シャルロット! 詠春殿から八つ橋をいただきました。一緒に食べましょう!」

 

閉鎖的な暮らしをしてきたマドカは、やけにお菓子類に食いつく。

先日もスイーツ食べ放題のチラシを手に、シャルロットを誘ったほどだ。

編入したクラス内でも、スイーツ情報といえばマドカという地位を確立し、女子の人気者になっている。

 

「わぁ、これが八つ橋! 京都名物!」

 

目の前に置かれた八つ橋を前にシャルロットの目が輝く。

どうも彼女は京都だの富士山だの、日本名所の名前に弱いようだ。

いつか詠春さんの案内で京都に行こうと言った際は、これ以上ないくらい目を輝かせていた。

 

「じゃあ、お茶を淹れてくるか」

「兄様、熱い緑茶をお願いします!」

 

お茶を淹れに行くイチカと注文をつけるマドカ。

まだ不慣れな事が多い生活だが、シャルロットの日々は充実していた。

母親との暮らしとはまた違う楽しい日々。

新しい両親もよくしてくれて、学校ではイチカやマドカが分からない事をフォローしてくれる。

特にイチカは日本語やこっちでの生活について、詳しく説明してくれた。

イチカやマドカの修行を見て、シャルロットも一緒に修行をするようになった。

気はまだまだ使えないが、身体能力が向上しているのは実感している。

そしてイチカへの想いが日々大きくなっていることも。

 

(お母さん、僕は大丈夫だからね)

 

心の中でそう呟き、お土産片手に訪ねてきた刀奈、簪、虚、本音と共に今日も楽しい一日を過ごすのだった。

 

 

おまけ

 

中性的な外見をしているシャルロットは、男女問わずクラスの人気者となった。

ところがある日。

 

「ちょっ、これ何っ!?」

 

漫研所属の女生徒が執筆した、数冊の薄い本。

男体化したシャルロットとイチカのBL物。

男装してまでイチカのいる男子校に追いかけてきた物。

そして男装シャルロットとマドカの百合物。

それを偶然発見したシャルロットは、ちょっとだけ腐女子というものが恐ろしくなった。

 

 

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