ドイツから帰国して一年と少しが経過した中三の冬休み。
昨年受験生だった刀奈は見事IS学園に入学し、現在は虚と共に学園の寮で生活している。
代わって受験生になったイチカ達は、修行と勉強を必死で両立させながら受験に備えていた。
そんなある日、イチカはシャルロット、マドカ、簪に本音と共に寒空の下、ある企業へ向かっていた。
その企業の名は白き翼。
赤き翼のアリカとテオドラが、以前に仕事で知り合った雪広財閥の協力を得て創立した、雪広財閥傘下のIS企業。
ISの登場に伴って創立され、競技とは別にISによる人命救助、災害対策を目的に、IS業界に参入。
第二世代機アリアドネーの開発と量産をきっかけに、見事ISの世界シェアで五本の指に入るまでになった。
現在は第三世代機を開発しつつ、アリアドネーを救助活動、災害救援等に対応できるよう日々研究している。
さらに企業アピールのため、企業同士によるIS競技大会にも参加。
主力のアリアドネーも、こうした大会での活躍を通して注目を浴びた。
肝心の人命救助等に使うISだが、開発は進んでいるものの、ISに関する法律の問題で日の目を見られていない。
また、雪広財閥からの要望で日本に本社と研究所を建てるため、赤き翼の拠点も即座に日本へ移した。
それがイチカとラカンの出会いの切っ掛けになったのだから、人生とは分からない。
「やぁ。よく来ましたね、皆さん」
イチカ達が白き翼の研究所に入ると、二十代の若き社長、ネギ・スプリングフィールドが声を掛けてきた。
創設者のアリカとテオドラは赤き翼に集中するため、数年前に経営からは手を引き、後継ぎとしてアリカの息子のネギが社長に就任した。
「こんにちは、ネギさん」
あいさつを返したイチカの目の前で、テストパイロットによるアリアドネーの訓練が行われている。
今回の実験は、高所火災の消火を仮定した訓練。
はしご車でも届かない高所に飛行して行き、消火活動を行うという流れだ。
『訓練開始!』
開発部主任、葉加瀬聡美の合図で三体の消火用アリアドネーが飛行。
訓練場の中で起きている火災に対し、消火活動を行う。
テストパイロット達は一人目が水、もう一人が消化剤、もう一人が消化液を噴出する。
部屋に設置されているモニターには、放水状態でのアリアドネーへの負担が表示され、白衣を着た研究者達が忙しくデータ取りをしている。
「前より負担が減っているんじゃないですか?」
モニターを見ながらイチカが指摘するが。
「そうだね。でも、相変わらず運べる量に限度があるのが痛いよ」
目下の問題は、水や消化剤といったものの運搬。
今回は予め背中にタンクを搭載し、そこから伸びたホースで消火訓練を行っている。
「前に量子変換したタンクを後付装備に入れたら、っていう話があったらしいですね」
「そっちはそっちで、水とか消化剤の量子変換が大変でね」
志が大きい分、技術的障害も大きいようだ。
「工事用はそういうのが無くてさほど難しくないから、すぐできたんだけどネ」
ネギの隣にいた開発部の責任者の超鈴音が、開発済みの作業用装備に目を向ける。
そこにあるのは、重機が入れない場所での作業を目的としている、IS用の作業パーツ。
他には、高速移動での運搬や負傷者の搬送を目的としたパーツが開発中となっている。
最も、こちらもISに関する法律の関係で、表舞台に出る予定は今のところ無いが。
「ところでネギさん、今日の実験は?」
「うん。この訓練が終わってからだから、よろしく」
イチカがISに乗れると束に言われて二年。
イチカはラカンを通じて白き翼を紹介され、ここで密かに訓練を積み重ねている。
束立会いの下で行われた初起動の時は、やはり実験に参加していた全員が驚いた。
世界初の男性IS操縦者の姿をその目で見たのだから。
その後、社長のネギとCEOの雪広あやかによって厳重に口止め。
万が一世間にバレた時に備え、密かに企業代表としての手続きを進めている。
後はそうなった際に、イチカが契約書にサインをすれば完了だ。
さらに、名だけの企業代表では困るので、ISに関する学習と訓練も積んでいる。
訓練にはシャルロットとマドカも参加し、三人で訓練に励んでいる。
ちなみにシャルロットとマドカはIS適正値の高さから、既に企業代表として登録が行われている。
簪は現在日本の代表候補生として登録されているので、企業代表にはなれない。
だが、専用機の開発を白き翼に依頼しているため、イチカ達と共に何度か顔を出している。
本音はパイロットや代表ではなく、整備士として勉強するため、一緒に訪れて整備の勉強に励んでいる。
「社長、今日使ってもらう機体の用意ができました」
ぶっきらぼうな口調で報告を行う、開発部副主任の長谷川千雨。
彼女が主にイチカ達の訓練データを取っていたりする。
「ありがとうございます、千雨さん。じゃあ皆さん、準備をしてください」
『はい』
指示に従い、準備に移るイチカ達。
更衣室でISスーツに着替え、訓練場へ向かう。
するとそこには。
「ハロハロー! 皆のアイドルでいっくんの妻、篠ノ之束だよ!」
「同じく妾のクロエ・クロニクルです」
世界中から逃げ回っている束がいた。
彼女はイチカがISを初起動させて以来、イチカが来る日には必ず姿を現すようになった。
それこそ、どうやって来社日を知ったのだろうかと思うほどの正確さで。
イチカの起動データを取るため、前触れも無しに現れては、クロエと共に待ち構えている。
しかも毎回のように、火に油を注ぐような事を言い放つ。
そして今回も騒ぎ出す、イチカと共にやってきた少女達。
「何を言っているんですか! 兄様には本妻の私がいます!」
「違うよ! イチカの奥さんは僕です!」
「イ、イチカのはは、伴侶は、私!」
「うるさい、マドちゃんに僕っ子にくるりんメガネ! いっくんは束さんのだい!」
「私は愛人でいいから、安心してね、イッチー」
束と出くわすたびに行われる、この言い争い。
それぞれが勝手に望むイチカとの関係を口にしている。
とりあえず束さんのメガネには多少かなったのか、外見だけは覚えてもらえたようだ。
ちなみに他には、刀奈は奥方、ラウラは嫁、蘭は女房、鈴は正妻を、それぞれが自称している。
呼称が違うだけで意味は全員同じだが。
「相変わらずモテてますね、イチカ君」
「はは、ははは……」
先ほどまで消火用アリアドネーを動かしていたテストパイロット、桜咲刹那の言葉に虚ろな笑いを漏らすイチカ。
「まぁ、いつもの事だな」
「いやはや、何度見ても昔の拙者達と社長の関係みたいでござるな」
同じくテストパイロットの龍宮真名と長瀬楓。
彼女達は言い争う四人と止めようとするイチカに、昔の自分達を重ねる。
ネギと彼女達がかつてどんな関係があったのかは、本人達のみぞ知る。
「……おい、訓練始めねぇのか?」
千雨からの指摘で、ようやく喧嘩が収まる。
直後、束は不敵な笑みを浮かべた。
「ふっふっふっ、実は今日は凄い物を用意してきたんだ! ごらんあれ!」
胸元に手を突っ込み、谷間から取り出した何かのスイッチ。
色々突っ込みたい周りを無視してそれを押すと、どこからともなくコンテナが現れた。
「これが、束さんがコアから作った第四世代のIS、いっくん達に送る専用機だ!」
開いたコンテナから姿を現す四体の機体。
全身装甲型の白に近い薄紫色の機体。
透き通るような水色の機体。
頭部に何故か猫耳のような物がある灰色の機体。
そして各所に改造を施してあるアリアドネー。
「えっ、専用機? 第四世代? しかもコアから作った!?」
「そうです。未発表段階とはいえイチカさん、マドカさん、シャルロットさんは企業代表ですし、簪さんは日本の代表候補生。専用機を持っていても不思議ではないかと」
突然現れた専用機を前に、呆気に取られるイチカ達。
特に第四世代は、まだ机上の空論程度しかない。
なにせ、各国がようやく第三世代に着手したばかりなのだから。
クロエからの説明に頷いているものの、完全に生返事だ。
「で、でも。私の専用機は白き翼で開発を」
「それも含めて篠ノ之博士に頼んだんですよ。前回来たときに、相応の報酬を渡してね。快く引き受けてくれました。まさかコアから作った上に、第四世代とは思いませんでしたけど」
後からやってきたネギの発言の一部に、イチカは首を傾げる。
いかに報酬をもらっても、束にとってどうでもいい存在のネギの頼みを引き受けるのかと。
すると、ネギの隣にいる社長秘書、絡操茶々丸とセクストゥム・アーウェルンクスが報酬の説明をする。
「こちらがその報酬の品になります」
「ジャック・ラカン様、テオドラ・ラカン様が監修した、「イチカ・ラカン 秘蔵写真集EX」です」
そんな物の存在を知ったイチカは、叫ばずにはいられなかった。
「何を渡しているんですかあぁぁぁぁぁぁっ!」
「ちなみに篠ノ之博士の要望で観賞用、保管用、予備用、キス用、添い寝用、[自主規制]用の六冊を渡しています」
イチカの叫びを流し、淡々と説明する茶々丸。
彼女が動揺する事はネギ関係以外には滅多にない。
「意味が分からん! というか、何だ、キス用と添い寝用って! ていうか、[自主規制]用は自重しろぉぉぉぉぉっ!」
二度に渡るイチカの叫び声が訓練場に響き渡った。
ちなみにキス用は、写真のイチカのキスする用、添い寝用は写真集を抱えて寝る用である。
「だってだって、束さんが知らない間のいっくんの写真集なんだよ? 上半身裸のやつや入浴シーンのもあるんだよ!?」
まるで貰うのが当たり前のような主張をしている束。
一部の内容を暴露した事で、イチカは頭を抱えた。
「あのバカ両親、何してくれて――」
「それ、僕も欲しいです!」
「私にもください!」
「はいはぁい、私もぉ」
「兄様の写真集なら言い値でも買います!」
「束様、聞いていませんよ! 後で見せてください!」
便乗するマドカ達に、イチカはがっくりと膝を着いた。
その間に取り出された写真集の競りが行われ、実家が金持ちの簪が見事に落札した。
勿論、溜めたお小遣いから出せる金額で。
「ドンマイ」
同情してくれたのは、千雨唯一人であった。
若干(?)の紆余曲折を経て、ようやく専用機の説明が始まる。
機体がコンテナから下ろされ、それぞれの持ち主の下へ運ばれる。
「まずはいっくんの専用機、「雷天大壮」ね」
名前が紹介され、スペックデータが表示される。
戦闘スタイルとしては高速近接格闘型。
直接の殴る蹴るを可能にし、気の使用にも耐えられる構造になっている。
動きやすさを考えてあるので関節部が弱そうだが、その分しっかりした材質で耐久性を確保。
ある技を使う事を考慮し、脚の付け根辺りにポケットのような箇所もある。
さらに瞬動のような動きにも感知センサーが反応できるよう、特殊な構造をしている。
「実はこれ、束さんが新たに開発したダブルコアシステムを利用しているんだ」
「ダブルコアって……。これ、コアが二個あるんですか!?」
束以外には決して作れず複製できないISのコア。
それが二つも搭載されていると聞き、ネギや超達も注目する。
「だって、そうしないと処理速度が追いつかないんだもん」
確かに以前、アリアドネーで瞬動をやった際、イチカが乗った機体の感知センサーは処理が追いつけずエラーを起こしていた。
「ひょっとして、他の機体にも?」
「うぅん、これだけ。だって他の子、いっくんみたいな瞬動使えないでしょ? なのに、コアを二つ付けても宝の持ち腐れだよ」
その通りの指摘にマドカとシャルロットと簪が黙る。
教わってある程度はできるようになったものの、まだまだ荒く拙い瞬動しかできない。
実際、前の訓練でアリアドネーの感知センサーが反応できていた。
「武器は近接武器が二種類だけですか」
表示されている武器は、近接戦闘用の剣が二本。
漆黒の剣、グラビティブレード。
同じく漆黒に染まった刀、ひな。
どちらの剣にも特殊な能力が備わっており、状況に応じて使い分けることができる。
「うん。だから遠距離武器の代わりに、こんな機能を付けておいたよ」
表示されたのは帯電、放電能力。
全身または一部に雷を帯電させ、殴打と電撃攻撃を組み合わせられるようになっている。
また、雷そのものを放電して相手を攻撃する事も可能なようだ。
通常の装甲だと帯電の際、搭乗者の安全の為に絶対防御が発動するが、全身装甲で全身帯電を可能にしたことで、絶対防御の発動を封じ込めた。
「なるほど、これは面白いですね」
「でしょでしょ? このために全身装甲型にしたんだよ。普通の状態じゃ、絶対防御が反応しちゃうんだもん」
おそらくは装甲の無い部分から感電する恐れがあるからだろう、というのが束の推測だ。
「それと放電回数には限度がある上、あまり遠距離に放つと雷が分散して威力が落ちるから気をつけてね」
話を聞き、これと遠当てを組み合わせれば、中距離戦闘も充分に可能と判断するイチカ。
その上、雷なので防御が難しい。
帯電で拳や蹴りに纏わせての攻撃も可能らしく、割と応用範囲が広い。
回数や威力の分散がどの程度なのか、実際に使ってみないと分からない問題点は多々浮上しそうだが。
「続いてマドちゃんの専用機、その名も「氷の女王」だよ!」
表示されたスペックデータを見るに、主に中遠距離を得意とした射撃型。
近接武器は日本刀のような反りのある形状の剣、「夕凪」が一本。
そして特徴的なのは、射撃武器の内容。
「冷凍弾に超低温プラズマレーザー、ブリザードライフル? 冷凍兵器ばかりなんですね」
「そうだよ。ここの消火用のパーツ見て思いついたからね」
エヘンと胸を張る束に対し、ネギはこういう消火方法があったかとデータを読み返す。
冷凍ならエネルギーの変換で可能なので、量子変換も水や消化剤よりずっとやり易い。
早速、超と葉加瀬に連絡を取って設計と開発を頼んだ。
「さらにこの胸部には、アブソリュートゼロっていう冷凍兵器があるんだよ!」
そう言って、束は威力実験の映像を見せ始める。
取り付けされる前のアブソリュートゼロから、エネルギー弾が放たれる。
命中した巨大な鉄の塊は一瞬で全体が凍り付き、クロエがそれを指先で軽く押すと粉々になって崩壊した。
この映像を見ていた一同は、あまりの威力に唖然とする。
「ただね、あまりの威力で一発撃ったらしばらく間は撃てないんだ」
「連射はできない、まさに切り札って事ですね」
これだけの威力があれば、それも仕方ないと言える。
寧ろ、こんなものを連射できるほうが怖い。
「次は金髪僕っ子! 君の専用機は、名づけて「空とび猫」!」
「そ、空とび猫?」
ひょっとして頭部の猫耳は、そのために付けているのかと誰もが疑う。
しかし、機体そのものは主に中遠距離に特化した高機動射撃型。
近接武器には両刃の剣、建御雷。
それと射撃武器、「七色の銃」二丁とそれ用の多彩な種類の弾丸。
通常の弾丸、氷の女王と同じ冷凍弾、ジャミング弾に煙幕弾等々。
状況に応じて使い分けられる弾薬が多数登録されている。
「凄い……。それにビーム兵器も」
特にシャルロットが注目したのは、超遠距離攻撃用ビーム兵器「二一三丸式サテライト」。
最大出力で撃てば多少のバリアなど簡単に撃ち抜けるほどの威力が出せる。
しかもビームそのものも、拡散式や連射式に切り替えられるので使い勝手がいい。
威力がありすぎて使いどころが難しいという難点もあるが。
「器用な金髪僕っ子に合わせて、多彩な種類を揃えてみました!」
「その分、トップスピードが若干欠けていますね」
「スピードそのものよりも、機動性を重視したからね」
トップスピードは他の三体に劣るものの、小回りでは負けていない。
これで動き回りながら、多彩な弾丸やビームで攻撃。
掻い潜って近づいても剣術が待っている。
さらに、こちらの機体にもイチカの「雷天大壮」と同じポケットのようなスペースがある。
「単体でも戦えますけど、どちらかというと支援型ですね」
「そういう事。じゃあ最後は、くるりんメガネ! アリアドネーブラストカスタムだよ!」
最後の最後で普通っぽい感じなので、簪は少しがっかりする。
「やけに普通な感じですね」
「仕方ないじゃん。[自主規制]用を貰う条件が、一体はアリアドネーの改造版にしてほしい、だったからね。でも、中身はしっかり第四世代だよ!」
イチカ達の視線がネギに向けられるが、当のネギはニコニコと微笑んでいるだけ。
さすがは若くとも社長だけに、抜け目がない。
「マルチロックオン式のミサイル、山嵐。薙刀武器、夢現。連射式荷電粒子砲、春雷……」
「さらに盾が二種類。防御力重視の中距離戦闘型かな?」
スペックデータを見る限りは、防御しつつ薙刀とミサイルで攻撃が基本。
しかし、束が作った機体がその程度のはずがなかった。
よく見ると、二種類の盾のところにも何かが表示されている。
「ねぇねぇ、この盾、何か仕込みがされているよ?」
本音の指摘に、待ってましたとばかりに束が説明する。
「そうだよ。実弾を撃てる「ガトリングシールド」と、レーザーを撃てる「ブラスターシールド」!」
「相手の近接武器を受け止めると同時に撃つと、効果的と思われます」
クロエからの補足説明に、全員がその状況を思い浮かべる。
相手が振り下ろしてきた近接武器を盾で受け止め、同時に取っ手のところのトリガーを引いてガトリングかレーザーを発射する。
「……初見でこのカウンターは対応できないだろうな」
間違いなくダメージ必至のカウンター。
盾に仕込んでいる分、防御しながらの撃ち合いにも利用が可能だ。
大きさもさほど大きくないので、いざとなれば盾で直接相手を殴打することもできる。
「割と使い勝手いいかもな」
「うん。さすがは篠ノ之博士」
褒め言葉を聞いた束は自慢気に胸を張る。
貧乳派の簪とマドカが、その際に揺れた胸を恨めしく睨む。
「さぁさぁ、まずはフォーマットとフィッティングをやっちゃおうか」
そんな事など露知らず、束は作業を開始するのだった。
「はい、楽にしていてね。すぐ終わるから」
目にも止まらぬ速さで作業を進めていく束に、同じ技術者の千雨は目を離せない。
何かしら盗み取れるものがあるはずだと、必死に目をこらす。
最も、早すぎて目で追うことすら難しいのだが。
「これをこうして、そんでこれで。はい、終わり!」
仕上げのエンターを押すと、全員のISが起動し、それぞれで動きだす。
早速試運転を兼ねたデータ取りを開始すると、一層スペックの高さが窺えた。
「うお、マジだ! 連続瞬動でも感知センサーが反応できてる!」
「いける。この「夕凪」なら、詠春さんに教わった技も使える」
「へぇ、弾倉を使いきらなくても弾丸の切り替えができるんだ」
「なにこれ。通常のアリアドネーとは比較にならない。これが第四世代」
スピード、パワー、反応速度。
どれをとってもこれまでとは比べ物にならないほどの高性能。
ただし、どの機体も拡張領域が喰われてしまっている。
これが喰われてしまっていると、他に新たな武器を追加することができない。
なのでこの四体には新たな武器を開発しても、搭載することが不可能。
それでも第四世代の機体とあって、データを取っている解析班は目を輝かせながら仕事をこなしている。
「これが第四世代ですか……。篠ノ之博士、第四世代のデータのお礼にコレもどうぞ」
ネギが差し出したのは、PC用の外付けHD。
「ん? 何それ」
「先日の写真集とは別の、「イチカ・ラカン 成長動画 これがお前の歩んだ道」です。Ver.1からVer.7まである大長編がこれに入っています」
勿論、ラカンとテオドラが撮影、編集したものだ。
何かの交渉用にと取っておいたが、第四世代のデータが貰えるのなら安いものだ。
「なにそれktkr! 束さんには神が付いている! もう貰ったからね、返さないからね!」
「束様! 後でコピーデータをください!」
奪うようにHDを受け取り、胸の谷間に押し込んで隠す束。
後にコピーデータを入手したクロエは、歓喜の声を上げた。
そうとも知らずに訓練を終えた四人は、待機状態のISを身に着けて戻ってきた。
「戻りました。あれ? 束さんとクロエさんは?」
「なんかねぇ、急用ができたって言って帰っちゃった」
本音からの説明に、何があったのだろうと首を傾げる。
その急用とは当然、件のHDの動画の鑑賞会だ。
「皆さん、ご苦労様です。専用機は登録とかがあるので、こっちで一時預かります。後日、取りに来てください」
ネギからの説明に全員がISを差し出す。
こうして、普段通りの訓練の一日は終わった。
だが、この数日後世界に激震が走った。
世界初の男性IS操縦者、藤島冬也が現れたからである。
おまけ
後で確認したところ、今回支給された四機は全て拡張領域が埋まっていた。
どうにも、武装だったり単一能力で領域を使いきってしまっているようだった。
どんな単一能力かは不明だが、領域を使いきっているのだから相当なものだと思われる。