剣を片手に野望を胸に1から始める塔攻略! 作:久遠/kuon
今回はちょっと前より暗めですねー。次からはまたテンションが戻ってると思うので説明回気分で読んでくださいw
-AM9:30-【エターナルフィフティーン ギルドルーム】
『アキナとソウカは湿原を一気に突破し、現在は雪山へと向かうため湿原3のボスを討伐しようとしているところだ。』
「カズキさん何書いてるんですか?」
「ああ、アキナか。日記みたいなものだよ」
「日記ですか……?」
「こう見えてカズキは色んな顔持ってるからな、つい忘れる時があるんだってさ」
「わっ! ソウカさん居たんですか!?」
「うん、ちょっと本を借りに来てたんだ」
カズキの部屋は仮にもマスターということで他の部屋はワンルームなのだが、書庫が備え付けられていた。
「一体何の本ですか?」
「大昔の人が描いたモンスター図鑑だってさ。やっぱり敵を知ることは大事だと思うし、この人すっごい絵が上手くて読みやすいんだよ。それになんか片手剣の使い手だったらしくてモンスターごとの立ち回りも結構載っててさ。嫁らしい女性への愚痴が多いのが難点だけど」
「ソウカさんも勉強なんてするんですね……」
「それ、おれじゃなかったら刺されてるかもよ?」
うんうん、と勝手に納得するアキナにきっちりツッコミを入れる。
「ソウカさんって時々甘いですよねー」
全くもって失礼だった。
カズキも近くで話されて書けなくなったのか、古めかしい羽ペンを机に投げ出して背もたれに寄りかかって話に参加する。
「それについては同感だな。にしてもアキナもソウカも随分と仲良くなったな。イクリプス討伐もまた二人で行くのか?」
「同感しないでくれよっ! アキナ一人じゃ荷が重すぎると思うしな」
「ふぅん。なら気をつけろよ。イクリプスは遠距離技が特徴的だが、突進攻撃も同じくらいに強力だ。特にその図鑑の作者は相手が突っ込むのに合わせて斬り伏せる技が得意だったからその辺の注意があまり書かれてない。庇おうとしてまとめて貫かれる、なんてマヌケするなよ?」
「わ、分かったぜ。いやに詳しいな。この……アレン・アーノルドとかいうやつについて」
かなり古い書物のようで表紙の文字はかすれてしまってとても読みにくい。
少なくとも三桁単位の年数は前の話だと思うんだけど。
「おれの師匠が会ったことあるらしくてなぁ。よく聞いたものだよ。そいつの剣技」
「ええ!?カズキの師匠って何歳!?っていうかレンのカズキにオリの剣技教える意味って……」
「その辺は良く分からなかったけどな! とりあえず二十人総会議の時間だから行くよ。出ていく時は鍵閉めてくれよ」
「二十人総会議……こんなやつでも8chの代表なんだもんなぁ……」
「二十人総会議って1〜20までのchの代表が集まって色々と情報交換する場のことですよね?」
「ああ、そうだよ。『円卓』なんて似合わない言葉で呼ぼうとするやつもいるけどな」
カズキが机の上に広げていた日記を畳んで脇に抱えて部屋を出る。
「『円卓』かぁ…。一回見てみたいものです」
「そうだな……少なくとも19人の凄い奴が一度に集まるんだもんな……!」
目を輝かせたアキナと顔を見合わせてニッと笑う。
「ちゃっかりおれを勘定から抜くなよ……まったく」
はぁ、とため息を吐いたカズキが手を振ってギルドホームから歩き去っていく。
本当は『円卓』はあまり見せたいものではない。面倒なやつが目白押しだからだ。
-AM9:50-【廃棄された闘技場】
ガヤガヤとそれぞれのchの代表一人が円型に二十人座って開始を待っている。
上から見て1chと20chの代表を縦に向かい合うように置くと、10chと11chの代表が横に向かい合う形だ。
「……」
「なぁなぁカズキ〜。どうなん? 最近の景気はっ!」
「…………」
「うちはね〜なかなか賑わってきてん! 新進気鋭の若手達がどっさり入ってくれて、もうほんまに忙しいわぁ〜」
「………………」
「あぁん、釣れないわねぇ! カ・ズ・キ♪」
「あぁー! もううるっせぇなー! 耳元で気持ち悪い声出すなよオカマ野郎!」
「やっと反応してくれたわぁン」
語尾に常にハートマークでも付けてそうなこのなよなよした男は3ch代表のカルナファン・ディーチェ。周りにはカルナと呼ばせている。ギルド【ソドムの讃歌】のギルマスをやっている。一癖も二癖もあるギルメンを多く抱えている。
ちなみにこの男、やたら高身長なので背負った豪弓が小さく見えてしまう。同じ師匠の元で同じ系統の職を選んでしまったことが運の尽きだと言える。
「お前ら見てると修行時代を思い出すぜ」
10chの席を挟んで左に座る頬のこけた目の細い赤髪の男が苦笑しながら言う。
あいつは12ch代表の【ブレイクベアー】のギルマスことメジュード。ギルド名のベアーは『熊』と『担う』の意味を込めたらしい。破壊を担う熊。ギルマスもモンクだから脳筋ギルドだ。
「あのばあさんまだ現役やってんのかね?」
「いやぁどうだろうな、おれらが指導されてた時も相当な年だったはずだが……引退する図が全く目に浮かばない」
それも確かにな、とメジュードも頷く。
「静かにしてくれっ!! 10時になったのでここに『円卓』の開催を宣言する!」
「ほら、1chのクソ真面目さんの司会だ。さっさと座れ」
上からしなだれかかってくるカルナを引き剥がす。
「あらぁ、ロミオとジュリエットなのねェ」
「もうそれで良いからさっさと席に着いてくれ……」
1ch代表はカナト。腰に短剣を二本挿した軍服のような格好をしている。ギルド【悪鬼正伐】のマスターを務めている。いかにもリーダー格、という男だ。あいつも同じ師匠の元修行をした身。この総会議で集まる奴の半数近くが師匠の指導を受けていた過去を持つ。
カナトが席に着いた代表者達を見回す。
「……やはり10chは来なかったか」
「いつものことね」
カナトの隣に座る2ch代表の【ウィッチパーティ】ギルマス、ナタネが言う。
「そろそろ代わりを探すべきじゃないかしら」
「いや……10chはあいつが言わないと全員に行き渡らない可能性がある。あとでおれが直接会って今日の会議内容は伝えよう」
「ギルドに入ってすらいないのにとんでもない影響力よね……」
「まったくだ。では改めて始めるぞ。まずは今月のイベントについてだ。やはりハロウィンが近いのでハロウィンイベを行うのが妥当だろう。他に意見のあるものは居るか?」
誰も手を挙げることは無かった。十月はこれといったイベントは特に無いしな。
「ではハロウィンイベントで決定しよう。クエストの方はおれが受付人と相談して作っておこう。マップの装飾はいつも通り13chに頼んで大丈夫か?」
「ええ、私たちに任せてください」
少し遠くからよく通る凛とした声で少女が答える。
13ch代表の【ブラフマー】のギルメン、ノーラだ。【ブラフマー】は職人気質の者が多くて真面目なのはノーラくらいだ。こういう集まりには大抵ノーラが来る。
「では、モンスターの確保は……ベレ。貴殿に頼むしかないようだな」
カナトが無表情を創って言う。
ベレは20ch代表。【テスタクト3302】というギルドのギルマスだ。だがこのギルドのギルメンを見た者はおらず、募集しているところも誰も見たことがない。それでいて20chへの影響力は高い。
そして何より異質なのが『新種のモンスターを確保する』技能と『元々野生のモンスターに装飾を施し、ある程度言うことを聞かせる』技能に長けている。
他のギルドもそれなりに特徴はあってもここまで異様なモノは見たことも聞いたこともない。
「ええ、任せてちょうだい」
「他に何か各chから報告はあるか?」
ベレから目を背け、早々に別の話題へと持っていく。
その話題に対しおれがスッと手を挙げて発言する。
「うちのギルドで、モンスターが以前に比べ強くなっている報告が上がっているのだが」
「了解した。他のchはどうだ?」
どこの代表も顔を見合わせて様々な反応を返す。
だが同意する意見は出ないようだ。
「……他のchでは変わらないようだな。すまないが引き続き観察を続けてくれ」
「はいはい、了解」
集まった時にまず話題にされなかった時点で察していたがやはりそうか……。
そしてその後特に話題も出ることはなく月に一度の総会議が終了した。
かつて人と人が争い、武器を交えていたこの闘技場から人々が次々に退出していく。
「8chも大変そうね。危機感を感じるほどならアヤメちゃん預かってあげようか? んー? 少なくとも二つ名を持たないギルマスの元よりうちの方が断然マシだと思うけど〜?」
闘技場から出ようとしたところでナタネに捕まってしまった。
「アヤメ自身が嫌だと言ってるんだ。構うな」
「ならギルマス自ら説得してくれな〜い?」
「お前はアヤメが欲しいんじゃなくて二つ名持ちのマジシャンを集めたいだけだろ。良い加減にしてくれ」
「あら、随分なこと言うわねぇ、まあ今日は諦めといてあげるわ」
すい、とナタネが離れたのを見てさっさと退出する。
面倒なのに絡まれたあとは人をからかうのが一番だ。帰ったらソウカでもいじめて遊ぼう。
そう心に誓って、いつもの拠点へ帰るために浮遊感に身を任せる。
次の投稿は決まってません、ツイッターで進捗を書くかもです〜