さんさんと輝く太陽。
箱庭学園の一室、太陽のあたる暖かいデスクの上でゆったりとコーヒーを啜りながら、今日も手元の書類や監視カメラをつらつらと眺める。いたって普通な学園における事務の現場がそこにはあった。・・・後ろに広げられた布団を除いて。
新聞を膝にひろげて片手にコーヒー、片手に書類を持つその男は、身長は日本人離れした大柄でありながら引き締まった身体をジャージに包み穏やかに手元を眺めている。
一方、布団の中には制服に身を包んだ小柄な少女が妙なアイマスクをつけながらまくらを抱きしめゴロゴロしていた。
「太刀洗・・・埃がたつから、せめて転がるのをやめてもらえないか?」
「うん~?それは掃除機をかけるべきだね~」
「お前が布団をどかすというなら一考してはみよう」
「じゃあ諦めるべきだね~」
そうかい、と短くつぶやきコーヒーを啜る彼。短いやり取りをかわした後、彼女はまくらに顔をうずめて静かに寝息を立てる。
さきほど身を起こしたからか掛け布団がずれているのを見ると彼は軽くため息を立て椅子から腰を上げて、彼女の元に近づくとそっと布団を掛け直す。
そうして自分はまた椅子にすわりデスクに向かって、コーヒーを啜りながら書類に目を通し始める。この一ヶ月以上続いている奇妙な日常をかみしめながら、かれは口元をわずかに歪めるのであった。
『僕が君に世界を与えてあげるよ』
『もう二度と君を裏切らない、そんな素敵な世界をさ』
あの日、あの夜。遠い日ではあるがいくら拭っても消えないあの夏の夜。
あのとき手を延ばしてきた奇妙な少女に思いを馳せる。長くあってはいないが何れ時が再会に導いてくれるだろう、と。そうして彼はまた、今の自分の生活を噛みしめるのである。
彼は只の用務員。箱庭学園における一介の用務員にすぎない。
過去に世界に裏切られた男は、この時を通じてなにを得るのか。なにに為るのか。
これは少しかわったある意味での学園生活の物語である。