投下いたします。
明くる日。
765プロダクション。
アイドル業界では言わずと知れた大御所である。
絶対的な知名度を誇っているにもかかわらず、ここの事務所は昔のままなのは謎である。
13名ものアイドルを抱え、全員がトップアイドルふさわしい器といっても過言ではないだろう。
そんな彼女たちをサポートしているのがプロデューサーである愛原一心である。
彼女たちのサポートをほぼたった一人でこなしている。
なので業界では伝説級のプロデューサーとして噂になっている、正にアイドルマスターだ。
事実、愛原の手腕は噂にたがわぬものである。
今日も合同ライブのすり合わせのために朝一からとあるプロデューサーと会う約束してたりする。
今日も忙しい朝を迎える。
「おはようございまーす! 」
「「おはようございます、プロデューサー! 」」
所属するアイドルのうち数名がすでに事務所にきているようだった。
愛原は彼女たちと挨拶をかわすとデスクへと向かう。
「おはようございます、プロデューサーさん」
「おはようございます、音無さん」
彼女は765プロの事務員、音無小鳥である。
仕事の腕はなかなかのものだがたまにうっかりしてしまうことも。
容姿に関しても20代とは思えないほど、可愛いらしいという言葉が似合ってしまう。
そんな彼女は妄想癖があるとかないとか。
「やあ諸君、おはよう」
「あ、社長! おはようございます! 」
彼が765プロの社長である。
961プロの社長以外の社長のしゃべり方が似ているのは社長だからである。
「どうだね、調子は? 」
「ええ! みんな頑張ってくれていますし、絶好調ですよ! 」
「うむ、そうか! 今日は合同ライブの打合せだろう? えっと、確かキュートプロとの」
「そうなんですよ。もうしばらくしたらこちらにいらっしゃいますね」
「そうか。うまくいきそうかね? アイドルの子達の調子も考えて、どうだね? 」
「ええ、うまくやれると思いますよ! みんなよくやってくれていますし、集中していますね」
「そうかそうか! それは良かった! 」
するとまた一人アイドルが事務所にやってきたようだ。
「おはようございますぅ! 」
「ああ、おはよう。雪歩! 」
「あっプロデューサー!おはようございますぅ! 」
「うん? どうやら、萩原君も調子を取り戻したみたいだね! 少し心配していたんだが、前よりもなんだか生き生きしているように見えるし、どうやら取り越し苦労だったみたいだね」
「あはは、おかげさまで」
「うむ、キミはやはり実に素晴らしいプロデューサーだね! 改めてそう思うよ! 一体萩原君にどんな魔法をかけてあげたんだい? 」
「あー。雪歩の調子が良くなったのは僕の功績じゃあないんですよ」
ここで自分だと言わなかったのは、愛原のプロデューサーとしてのプライドであろうか。
はたまた愚直なまでの誠実さの表れなのかは定かではない。
だが、こればかりは嘘をいう訳にもいかない。
「ん? キミじゃないとすると、アイドルの子達同士で解決したのかね? 」
「いえ、そういうわけでもないんです」
「では一体」
「それはですね……」
愛原は昨日あった出来事について話した。
萩原雪歩のこと榊のこと、そして榊をプロデューサーとして雇い、一緒にやっていきたいという旨も伝えた。
最初はちょっとした嫉妬を覚えていたのだが、今は純粋に榊のプロデューサーとしてどうなっていくのかというのを見てみたいと、そう思ったのだ。
「ほほう、キミがそこまで言うのだからきっと素晴らしい逸材なのだろうね、キミと同じく」
「僕の目があてになるかはわかりかねますが、少なくとも彼には十分、素質はあると思います」
「そうか。いやぁ、ついにキミもティンを会得したか……」
「はい? 」
「いやいや、こちらの話だよ」
「もし仮にそういった事態になれば社長、許可いただけますか? 」
「もちろんだよ、なにせキミからの滅多にない頼み事だ。全力でサポートさせてもらうよ」
「ありがとうございます! 」
こうして、愛原の願いは快く聞き入れられた。
これで正式に榊を迎える準備はできたのだ。
そこに、事務所の呼び鈴を鳴らす音が響き渡った。
「はいー」
「キュートプロのプロデューサーでーす! 」
今日の予定にある来訪者がどうやら来たようだ。
この来訪者がまた事態をややこしくするトラブルメーカーであるとはまだ誰も知らない。