夢の中で私が目を覚ますと、そこはふかふかの布団の中でした。
そこはまるで、「千と千尋の神隠し」に出てくるような、和風の旅館と思われる場所です。
窓には格子がかかっておりますし、障子と襖で仕切られておりました。
私はそんな場所で目が覚め、そして「水道の元栓を開けなければならない」という使命感がぼんやりと心の中にあり、その言葉を実行するために部屋を靴下のまま出て行きます。
さあ元栓は何処だろう? 中か、それとも外か。
耳には風で草木が擦れる音と、カラカラと風車が風に吹かれて回る音がずうっと聴こえておりました。
さあ何処だ。目的地も分からぬままに彷徨いていれば、年嵩の男に呼び止められました。
「何処へ行くんだい?」
彼は一つだけの目を瞬かせて尋ねてきます。
「水の元栓を開けなければなりません」
「それならば此方ではなく、下に降りなければならない。ほら、彼処だ」
男が格子の嵌った窓を指差して言いました。
私がやれ何処か、と覗き込めばそこには中庭が広がっておりました。中庭の真ん中には昔ながらの手漕ぎ式の水道があるのが見えました。その近くに、栓のようなものも一緒にあります。
「ありがとうございます」
礼をしても、そこにはもう誰もおりませんでした。
私のいる場所は二階のようでしたので、ぐるりと一周しながら階段を見つけ、降りていきます。
建物はどうやら「ロ」の字となっていて、真ん中が吹き抜けて中庭になっているようでした。
下に降りて、さて今度は中庭の入り口や何処からと探していると、チョロチョロとなにやら水音がします。
水の元栓は閉まっているのに何故か、と私は其方へ向かいました。
その部屋は長方形になっていて、そんなに広くはありません。一歩入ると、一段高くなった場所があり、そこには草が生い茂っております。
けれど、私はこれを見た途端、「ここは前に住んでた場所だ」と思い浮かべました。
また、「時間の流れは早いなあ」などと感慨に耽り、再び水音を辿って奥の扉を覗き込みました。
手洗いになっているらしきそこでは、便器に真っ白な水がとくとくと溜まっておりますが、不思議と溢れることはありません。
なんだ、これか……と納得した私は再び中庭へ降りる道を探すことにしました。
ぐるりと一周しながら、やっと中庭への入り口を見つけ、やはり靴下のまま土を踏みしめ私は急ぎ足に庭の真ん中へと歩を進めます。
「これだ」
と、言って栓を開けました。
すると、そのすぐあとに背後から「ありがと」と可愛らしい女の子の声が聴こえて振り返りました。
そこにいたのは小学生か、もしくは中学生に成り立てくらいの女の子でした。
風に揺れる赤いリボンと、その手に持った風車がカラカラと音を立てているのが印象的で、不思議とその顔を思い出すことはできません。
カラカラカラ、カラカラカラ、ピタリ
回っていた風車が突然止まります。
そこで、私は目が覚めたのです。
こちらではお久しぶりでございます。
またもや不思議な夢を見たので、小説にいたしました。