『お使い』
今考えればなぜそんなことをしていたのかは分からないが、夢だからと片付けられるだろう。私は夢の中で、夢だと気がつけない人間である。
私はその夜、歩いて二十分もかかる学校への通り道を歩いていた。本当に良く考えれば分かることなのだが、夜にお使いに借り出されることも普通はないし、そもそも、歩いて五分もかからない場所に店があったからだ。
だというのに、そのときの私は買い物を頼まれた。ただそれ一身でマンションと学校の壁の間の細い道を歩いていた。ビクビクとしていたようにも思う。
ふと、背後からザリザリと砂を踏みしめる足音がすることに気がついた。
ビクついていた私は盛大に肩を震わせ勢いついて背後を振り返った。
そこにいたのは包丁らしきものを持った黒い人物。
気がついてすぐ逃げ出したがあちらも当然追いかけてきて、私に迫った。そして、凶刃がすぐ傍まで迫って私はそこで目が覚めた。
暫く通学路を通るのにビクついていたのは言うまでもない。
『帰宅』
わりと最近の話である。
所変わって上の夢から数年後、学校も変わり昔住んでいた持ち家に戻ってきて少し経ったときのこと。
私は帰宅していた。不思議と、このときは第三者視点で自分を見ていたはずなのにやはりそれが夢だとは気がつけなかった。
玄関の鍵を開ける場面には自分の手元がきちんと目に入り、何事もなく家に入っていく自分。しかし、その背後。駐車場に真っ黒い影が視界に写った。
そしてそこで私は目を覚ました。
この夢はかなりリアルで、テストを終えて帰って来た安堵感すらもあった。
勿論、暫く家に帰るときに振り返る癖がついたが、それよりも怖かったのは終わったと思っていたテストが終わっていなかったことだ。
『たい焼き』
目が覚めると家中が煙だらけだった。
緊急事態かもしれないのに暢気にも私は煙が来ているであろう部屋に向かい、扉を開けた。
そこでは、両親が網でたい焼きを焼いていた。
納得して私はまた寝て、目が覚めた。
『卵』
そこは白い廊下だった。病的なまでに白い廊下に、瞬くこともなく出力を落として暗いオレンジ色になった蛍光灯の光。ぽつぽつと存在する大きな卵。
そこを私は恍惚とした笑みを浮かべながら歩いていた。握りこぶしにし、両手を顔の前に添えて惹かれるように廊下を進む。その吐息は甘く、誰もいないその場所に喜びを感じているようだった。その場でやることやり始めてしまいそうなほどの歓喜と恍惚。ときどき武者震いするかのように立ち止まり、ひたすら真っ直ぐの廊下を進んでいく。脇にある諸部屋は無視して進む。
とある部屋の前で完全に立ち止まり震える手で取っ手を引く。中はどうやら手術室のようで、椅子のようなものが置かれたり、血のついたメスが置かれていたり、少し荒れているだけだ。私は喜んで手術台の上に座り、目を閉じた。
次に目を覚ましたとき、私はまた白い廊下にいた。
少し変わっていることがあるとすれば、ダチョウのそれよりもなお大きな卵が点々とオブジェのようにあることだろうか。
すぐ傍にある手術室を通り過ぎ、また歩き出す。顔は貼り付けたように愉悦か、恍惚の表情をしたままで、手の先程の位置のまま。廊下を最奥まで進み、また私は扉に手をかけた。
中に入ると、先程までとは比べ物にならないほどの数の卵がその部屋にはあった。
私はそれを見て満面の笑みを浮かべ、部屋の中央にある一層大きな卵に近寄った。すかさずしゃがみこみ、頬を卵の表面に当て、両手で抱きこみ、撫でた。それを暖めるように。ひたすら愛おしそうに。我が子を愛でるように。
ひっそりと、その暗い部屋で私は妖しく笑った。
その後、巨大卵以外の卵が割れて犬が生まれ、私は大歓喜した。
・お使いと帰宅
かなりリアルな夢なのですが、シチュエーションを考えるとどこかおかしいところの目立つ夢ですね。リアル故に正夢になるのではないかとかなりビビっていました。
・たい焼き
私が無知なわけじゃないですよ?
・卵
オチはシリアスブレイク。私が無知ってわけじゃな(略)
親に話したときも犬ってどうやって産まれるか知ってるよね、と心配されました。なぜだ。多分ゆめにっき派生の見すぎだと思います。でも正直言うと卵だらけの病院って、おもしろくないですか?(ゆめにっき的に)