不死人と蓬莱人【完結】   作:溶けた氷砂糖

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東方二次創作の華、弾幕ごっこに挑戦してみました(書いたとは言っていない)


ようこそ紅魔館へ

 迂闊だった。自分の間抜けさに反吐が出る。ヤツフサは死にはしないだろうけど、変な輩に絡まれればもっと酷い目に遭うかもしれない。そもそも文があんな速さで目の前を通り過ぎなければ、あいつを手放すこともなかったのだ。あの烏天狗今度出会ったら焼き鳥にしてやろう。だけど今はその前に、面倒臭い奴を相手にしなければならない。

「あーっ、と。なんつーか悪かった?」

 なんて言いながらほとんど悪びれてないのは、さっきまで宵闇妖怪と弾幕ごっこをしていた霧雨魔理沙だ。白黒の魔法使い衣装に箒に跨ったその姿は見間違えようがない。

 一応、間に割って入ったマスタースパークは流れ弾のようだが、はいそうですかと快く許せるのなら私はすぐにでもヤツフサを探しに行っているだろう。だけど今は出来ない。理由は、目の前の魔法使いがやる気満々だから、不幸に不幸が重なってこっちもイライラしているから、こんな状態でヤツフサに会えば傷つけてしまうかもしれないから。臨戦態勢を取ると、魔理沙もミニ八卦炉を構える。

「アンタと弾幕ごっこするのは随分と久しぶりだな。あの肝試しのとき以来か」

「そうね。でも悪いけど、即効で終わらせる!」

「おいおい、私が先に言おうしてたこと言うなよ。何をそんな慌ててるんだ?」

「アンタには関係ないわ」

「ふうん、蓬莱人が慌てるほどのもの。きっととんでもないお宝だな!」

 魔理沙が星の形をした弾幕を飛ばす。当てることは狙ってない、ばら撒いて足を止めさせるための弾幕。こちらも弾幕を張って応戦するが、

「初めっから全力で行くぜ。恋符『マスタースパーク』!」

 ミニ八卦炉を両手で押さえて構え、星の弾幕によって誘導された私の方を向いて魔理沙が高らかに宣言する。魔理沙の十八番であり、私とヤツフサを分断したスペルカード。極太の熱と光の奔流が私に向かって放たれる。完全に避けられそうな空間はない。どこへ動いても必ず掠り傷は負うように星型の弾幕は計算されていた。前に戦った時よりも随分強くなっているらしい。だけど、こちらも手を抜いている暇はない。避けることを諦めて、反対に放たれたレーザーに飛び込む。自分の体が飲み込まれて視界が消える。

「なんか呆気なく終わっちまったな。それだけ私が強くなったってこと・・・・・・」

 違和感に気付いたらしい魔理沙が動こうとするのが分かる。だけど遅い。私はむりやり遡ったマスタースパークから飛び出して体当たりする。『パゼストバイフェニックス』の応用。魔理沙のスペルカードも参考にした即興の大技。直撃こそしなかったが、魔理沙の体勢は大きく崩れ、落下しそうになるのを持ち直した。まだやるというのなら容赦はしない。

「やってくれるぜ! だったらこっちはこれだ!」

 今度は別のスペルカードを宣言した魔理沙の周囲に五つの光球が浮かび、それぞれからレーザーが不規則に動きながら発射される。さっきのマスタースパークとの大きさは比べるまでもないが、五つ全てに気を付けなければならないのは少し骨が折れる。

 恋符『ノンディレクショナルレーザー』。マスタースパーク程のド派手さや火力は無いけれど、魔理沙の視界が開けるせいで同じ手は使えない。面倒臭さはこっちの方が上かもしれないわね。だけど、変に反撃を狙わなければ避けるのは簡単だけれど。

「これで終わりと思うなよ!」

「増えた!?」

 光球が更に二つに分裂する。それに伴ってレーザーの量も倍に増えた。更に星型の弾幕も撒き散らして密度が一気に高くなる。前言撤回しよう。これは本気にならないと避けれない。隙を狙うどころか当たらないようにするだけで精一杯になる。

「くっ!」

 死角から星弾がぶつかってくる。レーザーに挟まれて、上手く身動きが取れない。このままでは押し切られる。こっちもスペルカードを宣言した。

「『インペリシャブルシューティング』」

 自分の体が燃えて灰になり、残った魂を限りなく自然に近づけることで相手の弾幕をすり抜ける。そして、魂だけの状態を保ったまま一方的に相手に撃つ。私のスペルカードの中でも最高峰のカードで、出来れば普段は使いたくないカードだ。一歩間違えれば自然に吸収されて脱出が酷く面倒になるし、何よりこっちから一方的に攻撃するなんて弾幕ごっことして美しくない。

「うわっ、ちょっと!」

 魔理沙はそれを見るやすぐにスペルカードの発動を中止して回避に専念し始める。そういえば初めて会った時に、夢想天生を使ってきた霊夢に対しても使ったっけ。魔理沙はその時に見ていたから覚えていたのだろう。だからといってそう簡単に攻略できるものじゃない。絶えず迫ってくる弾幕に目に見え動きが鈍くなっていく。

「す、ストップ! 待った! 降参!」

 撃とうとしていた弾幕を直前で掻き消す。避け疲れて肩で息をしている魔理沙にもう続行の意思はないようだった。体を元に戻して、魔理沙のとこまで降りていく。

「いきなり容赦が無さすぎるぜ。弾幕すり抜けて突撃とかありかよ」 

「こっちには時間がないの、ヤツフサを早く探さないと」

「ヤツフサ? ペットの名前か?」

 魔理沙が首を傾げる。そういえば私と八雲紫以外はまだヤツフサのことを知らないんだっけ。

「違うわよ。知り合い、さっき落ちていった」

「こっから? うへぇ、ミンチよりひでえや」

「生きていることは確かだから問題ないわ」

 問題は何処に居るのか分からないこと。この広い幻想郷じゃ手掛かりも無しに見つけることはほぼ不可能だ。それが出来そうな人間を私は一人しか知らない。

「博麗神社に行くなら付いてくぜ。どうせ私も寄るつもりだったしな」

「まだ何も言ってないわよ」

「落ちたって言っても、何処にいるのか見当もつかないんだろ? 私なら霊夢のとこに行くね」

 私と魔理沙で考えることはほとんど同じらしい。霊夢の勘は当たる。協力を漕ぎ着ければ格段に見つかる確率は高くなる。

「そうと決まれば善は急げだ!」

「本泥棒が良く言うわね」

「私は借りてるだけだぜ?」

 ここまで清々しく開き直られると、返す言葉もなくなる。私はそもそも本を持っていないから被害に遭ったことはないけど、紅魔館の司書なんかは可哀想だ。

 魔理沙は既に博麗神社の方へと箒を向けている。早くヤツフサを見つけないといけないな、と思いながら私も神社に向かって飛んだ。

 

 

 どうやらベッドの上に寝かされているらしい。腕の火傷が消えているということは、あの高さから落ちてしっかり死んでたみたいだ。で、復活して目が覚めない内に保護或いは誘拐されたと考えるのが妥当だろう。この待遇ならたぶん前者。部屋には俺以外だれも居ないが、拘束されているわけではないし。周りの調度品とかは結構高そうだから、金持ちが気紛れに助けてくれたといったところか。

「あら、お目覚めになりましたか」

 勝手に外に出るのも危ないし、起き上がったままぼうっとしていたら、丁寧に三回ノックされてドアが開いた。妹紅よりも銀色っぽい髪の女の子だ。メイド服を来ているってことはここの家主に仕えているのだろう。スカートが短いのは主人の趣味だろうか。長い派の俺とは趣味が合わなさそうだ。

「ええ、ここは?」

「お嬢様から貴方が目覚めたらお連れするようにと命じられています。この屋敷もお嬢様が自ら説明すると仰っています」

 フリーのホラーゲームの冒頭と勘違いしそうになるくらい凄い怪しい。本音を言えば付いていきたくはないのだけれど、行かないという選択肢は未実装のようだ。大人しく案内されることにしよう。

 廊下に出てまず驚いたのは、想像していたよりも広いことだ。幻想郷の建物であることは間違いないが、こんなに広そうな建物は見た覚えがない。そういえば、紅魔館というのはメイドの能力で見た目よりも広くなっているんだったか。目の前に人間っぽいメイドが居るし、もしかしたらここが紅魔館なのかもしれない。だとしたら、この屋敷の主人は吸血鬼。それも俺と妹紅が出会うことを予言した相手ということになる。俺の能力についても何か知っているかもしれない。妹紅の前で聞くのは難しいと感じていたからむしろ好都合だ。

 羽がついた子供メイドが飛んでいる横をミニスカメイドに先導されて進んでいく。どこの大広間に案内されるかと思ったが、目的地は案外小さな個室だった。小さな、といってもあくまで想定していたよりは、ってことなので俺の元家よりも大きな部屋だ。促されて部屋の中に入ると、水色の髪を持った、妹紅やメイドよりも一回り小さい女の子が豪華な椅子に座っていた。着ている服や雰囲気もあるのか、まったく違和感がない。女の子は威厳を持って口を開いた。

「ようこそ若丘八房。私がこの紅魔館の主、レミリア・スカーレットよ」

 椅子に足を組んだ威厳のある声の幼女。ミスマッチもいいとこなのにそれを封じ込めるだけの気迫が彼女にはある。だからちょっとからかってみたくなった。

「いえ、俺の名前は冴月麟ですけど」

「へ?」

 威厳が一瞬で崩壊した。漸く年相応(見た目)の表情になり、しばらく目を丸くしていたが、こっちがからかっていたことにすぐ気付いたようだ。

「貴方、麟って雰囲気じゃないわよ。名を騙るなんてどういうつもりかしら」

「いや、こっちだけ一方的に知られているのもアンフェアだなと思っただけだ」

 実際には知らないというわけじゃないけれど、吸血鬼であり、俺に関する予言をした、の二つしか知らないのだからあまり違いはないだろう。

「私も貴方のことは八雲紫から聞いた程度のことしか知らないわ」

「じゃあなんであんな予言が出来たんだ」

「予言じゃないわ。運命よ」

 メイドが一人だけ話についてこれずに眉を潜めている。むしろここまで顔に出すのを我慢できているのは凄い方だろうか。と思っていたら、レミリアがメイドに対して説明を始めた。意図して説明するように頼んでいたらしい。

「私にはこの男が外の世界から幻想郷にやってくる運命が見えた。だから八雲紫に教えた。それだけよ」

 俺が聞いた話とは少し違う。妹紅に関する部分だけ語られていないのだ。なぜ隠すのかは分からないが、わざわざ目配せまでされたので口裏を合わせておこう。メイドは完全に納得って訳じゃないみたいだが、主人の言葉は絶対って考えてるっぽいな。しかしそこまで顔に出していいのかよ。

「いいのよ。私にとっては咲夜は家族も同然だわ」

 レミリアが言った。俺も十分顔に出してしまっていたようだ。あとメイドの名前は咲夜っていうのか。咲夜もレミリアの言葉に「私は従者です」なんて言って否定こそしているものの満更では無さそうだ。最初の印象ほど恐ろしい場所でもないのかもしれない。しかし、今はとりあえず妹紅と合流するのが先決だろう。

「それじゃお世話になりました。お礼は後日持ってくるんで今日はこれで」

「待ちなさい」

 善は急げ。背を向けて帰ろうとした俺に後ろから声がかけられる。そういえば屋敷の構造分からないし見送ってくれるんだろうか。

「貴方のせいで私は今不機嫌なの。何事も無く返すわけにはいかないわね」

「俺のせいで?」

「貴方、空から落ちてきたでしょう。周りに音が響いてお嬢様のティータイムの邪魔になったのよ」

 訳の分からない俺に咲夜が耳打ちしてくれた。確かに申し訳ないとは思うが、じゃあどうしろと。

「難しいことじゃないわ。ちょっとの時間、私の妹の遊び相手になってくれればそれでいい」

「お嬢様!?」

 咲夜が何に驚いているのかは知らないが、俺は妹紅を探しに行かないとならないんだが。

「あの蓬莱人ならどうせ紅魔館に来るわ。それまでの間よ」

「それならまあ別に構わんか」

「・・・・・・はあ」

 なんで俺こんなに呆れられているのか。これがわからない。

 レミリアに案内されたのは下へと続く階段。感覚的には地下室っぽい感じの部屋。ドアを開けた瞬間俺だけが放り投げられて思い切り閉められた。鍵のかかる音もする。

「貴方はだあれ?」

 そして、地下室の中に居たのはレミリアとはまったく違う金色の髪の女の子。そう年の離れていない姉妹なのか。ていうか日本なのに金髪率高いな。少女は背中についた宝石の飾り物、たぶん翼をぱたぱたと振って首を傾げた。完全にロリコンホイホイである。別に俺はそこまでじゃないけど、どちらかっつーと巨乳派だし。

「君の姉に言われて遊び相手になりに来たんだよ」

 それを聞くと少女は無邪気に笑う。可愛らしい見た目だけど、どこかゾッとする。無邪気ゆえの残酷さが表面に出ているような錯覚。

「私フランドール。貴方は?」

「俺は若丘八房」

「そう。ヤツフサ」

 今の一言で部屋の空気が一気に下がったような気がする。どこかなんてもんじゃない。彼女の全てが狂っていると全身が教えてくれる。

「たくさん遊びましょ?」

 俺の体が破裂した。

 意識が戻ったときには既にフランドールの意識は別のぬいぐるみに移っていた。なるほど、咲夜に呆れられていたのはこれが原因か。原理なんてどうでもいいが、これでは命が幾つあっても足りない。痛みはないけど痛かったという感覚が残っていて気持ち悪い。やっぱり死に慣れといた方が良かった。完全に後悔している。だけど、一度引き受けた仕事を放り投げる訳にもいかないか。今なら突然の死押し売りセールだし。

「フランドール、あまり人に暴力しちゃいけないだろ」

 俺の復活に気付いたフランドールが振り返った。驚きプラス困惑、隠し味に狂気。そんな表情だ。

「なんで生きてるの?」

「その問をされたのは二度目だなあ。同じように返すなら、不死身だからってことになるけど」

「へえ、じゃあ沢山壊せるのね」

「暴力はダメだと言ったつもりなんだけどな」

「暴力じゃないよ。だって」

 手を俺の方に向けて、何かを掴むジェスチャーをする。そうすると、俺の体の中にも異物が入り込んであるような感覚がして。

「きゅっとしてドカーン」

 の合図と共に再び弾けた。不思議なことにまだ意思がある。視界は血で霞み、生きていることはできないけど死んでいく感覚が鋭敏に感じ取られる。二回とも破裂したことから、たぶん内側から壊す的な能力だろう。物騒なものだと思いながら、二回目の死の意識も途切れた。

 




フランちゃん可愛いよね
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