デスゲームでも俺の青春ラブコメはまちがっている。   作:修羅場フラグ

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こんにちは、修羅場フラグです

だいぶ遅くなりましたね

すいません

その代わり、分量的にはいつもの2倍くらいあるのでね、はい


4話 終焉への第一歩(後編)

第一層のボス《インファング・ザ・コボルトロード》と戦い始めて、20分ほどの時間が経過した。未だ、死者は〇人。ここまでの戦い、俺やキリト、Asunaは一度もボスに攻撃していないというのにあと少しでHPゲージが赤に突入するところまで来ている。今更、ディアベルのリーダーシップは言うまでもないが、一人一人の個々のレベルが高いことも、この戦いの安定感を生んでいるのだろう。

 

確かキリトが道中ボスのHPゲージが赤に突入すると、武器を変えるとかなんとか。

 

でもこの戦い、俺がボスに攻撃することはなさそうだな...

よきかなよきかな

 

×××

 

下っ端作業にも慣れてきたのか、センチネルと戦いながらでも、横目でボスを見ることが出来るくらいの余裕が出来てきた。

 

見ると、ちょうどボスのHPが赤に染まったところで、パーティー全体がトドメに取り掛かろうと.....ディアベル?お前何してんだ?

 

「下がれ!俺が出る!!」

 

さっきまでずっと後ろで指示を出していたディアベルが、いきなりボスの前に出てきて、ソードスキルのモーションに入る。

 

そんなことに全く気にした様子もなく、コボルトロードが轟然と吠え、ゆるく湾曲した右手の刃を高々と.........ん?

 

HPゲージが赤に突入したら武器を斧から、曲刀(タルワール)に持ち替える、というのがキリトから教えてもらった情報だった。

 

だが、持ち替えるまではいい。でも.......あの曲刀、少し幅が......狭いような........

 

「だ......ダメだ、下がれ!!全力で後ろへ跳べーーーーッ!!!」

 

キリトの悲痛な叫びも虚しく、コボルトロードは俺がまったく見たことのないソードスキルのモーションに入っていた。

 

あのスキルは...!?

そしてあの武器の形.........タルワールよりも細く、長い。そしてあの剣の独特な光沢は.....?あれは...鉄、か?あの長さで鉄と言えば....刀?間違いねぇ、刀だ!!

 

もう発動しているソードスキル、しかも初見ともなると、回避するのはほぼ不可能...

 

その見たことのないソードスキルは、無慈悲にもディアベルのHPを吹っ飛ばした。

 

キリトがディアベルの元へ向かったが、結局間に合わなかったみたいだ...

 

どうする。ディアベルの死は、俺の様なそこら辺にいるプレイヤーとは訳が違う。このデスゲームが始まって以来初めての、ゲーム解放への希望の第一歩目のリーダーに自ら名乗りを上げた、なんなら英雄と言ってもいい。そのくらい、今の攻略組、いやこれからの攻略にも必要不可欠な存在が、ボス戦での初めての死者。こに事実がどれほどまでに大きいかは言うまでもないだろう。

 

なら、今の俺は...この瞬間この状況で、いったい何をすべきなんだ?

 

×××

 

うわああああ、というような叫び声ーーーあるいは悲鳴がボス部屋を満たす。レイドメンバーのほぼ全員が、己の武器を縋るように握りしめ、両目を見開いている。だが誰も動こうとしない。否、誰も動けない。リーダーが真っ先に倒れる、いや死ぬという状況が余りに想定外で、どうすべきなのか判断できないのだ。

 

ディアベルのパーティーメンバーや、ディアベルを慕っていた者はもちろんだが、今やあのキリトまで...いや、キリトは迷っている、と言ってもいいだろうか。βテスターであるキリト(口で聞いたことはないが、今までの行動から推測)はリーダーを失ったこの状況で、何をするのが最善かを考えているんだと思う。

 

だが俺は、キリトがどんな指示をしようが俺には関係ない。状況こそ最悪だが、ボスのHPは赤、あと少しで倒せるところまで追い込んでいる。一ヶ月。一ヶ月だぞ?こんなに時間を掛けて、ボス部屋まで辿り着き、そしてボスも....こんな状況で撤退しろって言うのか?たとえ俺以外のやつがいなくなったとしても、俺はこのチャンスを逃す訳にはいかない。

 

「ふぅ」

 

俺は短く息を吐いて、覚悟を決める。

 

よし...行くぞ、獣人の王よ

 

×××

 

「お前ら!よく聞け!!今から俺がボスを倒す。俺が戦ってる間、センチネルが湧いてくる。だから、お前ら四十人で仲良く雑魚狩りをしとけ!わかったな!!!」

 

「なっ!?」

 

俺は今まで、前線で戦っていたプレイヤーの前に仁王立ちをして叫ぶ。

 

ふぅ、さしぶりに大声出したぜ...これが現実世

界なら喉やってるかもな...

 

キバオウのアホ顔を拝みながら、俺はゆっくりとボスの前に立つ。

 

これで逃げられないぞ...(俺が)あぁ、なんかいきなり怖くなってきた...

 

「グルァァァァァァァ!!」

 

コボルトロードは俺に向かって、「これからお前をグツグツのシチューにしてやる」と殺人宣告?をしているかの様な雄叫びをして、右手に持つ大きな刀を振り上げ...この光、ソードスキルか!?

 

技名は分からないが、紫の光は右から左への水平斬り。俺は思いっきり、コボルトロードの股の下に滑り込み、回避する。流石にゼロ距離での攻撃は出来ないだろうという判断はどうやら正解だった様だ。

 

そのまま、ソードスキル後で硬直状態のコボルトロードのガラ空きの背中に回り、細剣スキル《アヴォーヴ》をお見舞いする。

 

コボルトロードが一瞬怯んだ後、思いっきり飛んだ。ディアベルを葬ったやつか...!

 

コボルトロードは、柱と柱を飛び回って攻撃の機会を伺っている。

 

くそッ、どのタイミングで攻撃してくるか全然わかんねぇ。

 

「グアァァ!!!」

 

来たッ!俺は、一番モーションが少ない《リニアー》を発動しようと武器を構えると、俺の目の前に現れた黒い影が、ボスの攻撃を力一杯跳ね返した。

 

「スイッチ!!」

 

その黒い影が叫びと、待機してたであろう少女が、赤いマントをたびかせながら全速力で駆け込み、思わず見惚れてしまいそうに美しい《リニアー》でガラ空きの腹を攻撃する。

 

いきなりの出来事でただただ立ち尽くしていた俺にその黒い影が近づいてきた。

 

「一人でやろうとするなよ、一応パーティーメンバーなんだからさ」

 

それだけ言い残し、キリトはボスへと向かっていった。

 

大きなお世話だ。さっきまで別個で戦ってくせによく言うぜ。

 

まぁいい、無事にボスを倒せたら礼の一つでも言ってやろう。

 

×××

 

結果から言うと、ボスには勝利した。

キリトの力強いながらも的確な剣技、Asunaの圧倒的な速さで繰り出させる技の数々、そして俺は....うん、頑張った。八幡すごくがんばった。

 

だってあいつら強すぎるんだもん。レベル的にはあんま変わんないはずなんだがな...

 

ボスは倒した。それはいい。問題はその後だ。キリトとアスナ....と俺が、ボスを反撃の隙も与えないほどボッコした後、当然だが主の居ないこのだたっぴろい部屋中に歓声が上がり、ナイスファイト。よっ名剣士!といったようなキリトやアスナを賛美する声まで聞こえた。

 

だが、喜びに包まれていた箱を潰した男がいた。このデスゲーム最初のリーダーであり、最初のボス戦犠牲者であるディアベルのパーティーメンバーが叫ぶように言った。何故あの時ディアベルさんを助けなかったんだ、と。

 

その男と残り4人のパーティーメンバーは、顔をくしゃくしゃにして、キリトを睨む。

 

すると、周りの連中までもがキリトのことを不審に思い始めたのか、コソコソと話し出した。

 

そんな中、状況打破を狙ったのであろうキリトが厨二全開で他のプレイヤーに挑発混じりの言葉を残し、誰も踏み入れた事のない第二層への階段に向かおうとした瞬間、

 

「テメェ、ちょっと待てよ!」

 

ちょっと待てよ、という言葉に少し顔が緩んだ俺をよそにディアベルのパーティーメンバーの一人がキリトの肩を掴んだ。

 

なんだ、とキリトは歩みを止めその男を睨む。

 

男は、憎しみの目を。キリトは憐れみじみた目を。一触即発の空気が部屋全体を包んだ。

 

ただ、その光景を見る事しか出来ない俺は、他のプレイヤーの様にただ黙って立ち尽くしていた。

 

先に口を開いたのはディアベルの仲間の方だった。

 

「責任とれよ.....」

 

「何?」

 

「責任取れっていってるんだ!!」

 

しーんと静寂がボス部屋を支配した。Asunaが止めに掛かろうとしたが、それは坊主の黒マッチョに止められて、誰も二人に近づこうとはしなかった。

 

「どうやって?」

 

キリトは渇いた口調でそう言った。男は歯軋りを立て、唾を飛ばすかの勢いでキリトに喰らいかかる。

 

「ディアベルさんはもう戻らない!それは理由はどうであれ受け入れなければならない!!でも....せめてもの報いとしてそのLAボーナスだけを置いていけ!」

 

「なぜ」

 

さっきからこいつ疑問詞でしか喋ってねぇーじゃねーか、というツッコミは心の奥底にしまい込み、頭を思考の海に沈める。あの男の言うことは、まったくもって無茶苦茶だがディアベルに対しての手向けの花として持っておきたいという気持ちもまぁ、わからんこともない...と思う。だが、ここでそのアイテムを渡してしまえばこれから先ボス戦で死んでしまったプレイヤー一人一人に与えなくてはならなくなってしまう。そして、キリトの方は.....まぁ、これからの攻略、そしてアインクラッド全体の士気を落とさないための憎悪(ヘイト)を受け持つやつが誰かは必要だという判断で自らあんま役回りを演じようとしているのだろう。それを自ら進んで行おうとしている心意気は認めるが、見たところによるとキリトは...高校.....いや、中学生か?そんな奴にこんな役を押し付けるのは、とてもリスキーなことで、それにいつキリトの精神が破綻するかもわからん。たぶんこいつは攻略に関して、大きな鍵となる存在になる。だからこいつをこんなことで失う可能性があると思うと余りにも惜しい。ならばどうするか.....

 

「ディアベルさんの形見にするからに決まってんだろ!もしお前がそれを渡さないとしたら.....力尽くでも渡してもらうぞ....!!」

 

そう言い、男は自らの剣に手を掛けた。キリトの方も、一瞬で距離を開け、いつでも背中に掛かっている重そうな片手直剣を抜くことができるように戦闘態勢に入った。

 

後ろの方で、他のパーティーメンバーであろうプレイヤーたちが、リンドさん!!、と叫んでいた。

 

あの男はリンドって言うのか....いや、今はそんなことどうでもいい。考えろ...キリトだけにプレイヤーの憎悪(ヘイト)を押し付けずに、そしてリンドとかいう男たちLAアタックボーナスアイテムを与えずにすむ方法を.....

 

×××

 

「その役、俺にやらせてくれないか」

 

ここにいる全プレイヤーの全視線が真ん中で対峙している二人に集まっていた中、思わぬところからの発言で二人を見ていたプレイヤーだけではなく、キリトやリンドまでもが俺に視線を向けた。こんな多人数同時に見られる、ということが幼稚園の劇以来だったのもあり、心の中はだいぶキョドリまくりだったが、それをなんとか取り繕い言葉を続ける。

 

「いやー、ね?俺もディアベルさんが死んで、とても悲しかったんですよ...だから、少なからずこいつには恨みがあったりなかったり。というか、アンタじゃこいつには勝てない。自分でもわかってんだろ」

 

リンドは眼を一瞬大きく開け、下を向き小さな声で言った。

 

そんなことは....と

 

「なら、お前は...お前なら勝てるというのか?」

 

俺の肩を掴んでいる腕は確かに震えていて、生まれた初めて大切な仲間を失った者の悲痛な叫びを身に染みるように感じた。

 

「あぁ、勝てる」

 

即答した。勝てる保証なんて微塵も無いのだが、今はこう言うしかないと思った。俺の言葉を聞いて、キリトは思いっきり睨んでくる。怖いなぁー、ちびっちゃうなぁー

 

俺が最初に、戦う、と言ったときにはリンドの顔は不安の二文字が眼に見えて書いてあったのだが、勝つことに絶対的な自信(ハッタリ)を見せる俺の姿を見て、そして何より本当は自分はキリトに勝てないことを悟っていたのだろう。リンドは俺の右肩を重たく掴み何も書いていない大理石の板を見て、悔しさが確かに籠った声音で言った。

 

 

「なら....頼んだ....ディアベルさんの仇を取ってくれ...!!」

 

おいおい、その言い方だと今から俺がキリトを殺すみたいじゃねぇーか。冗談じゃねぇ。

 

「わかった」

 

俺はキリトの7、8m離れたぐらいのところに立ち、右手でウインドウを表示しデュエルメニューから《初撃決着モード》を選び、対戦相手にKiritoを選択した。

 

決闘(デュエル)をしたのはこれで初めてだから知らなかった。俺とキリトの間に一分間の準備期間をカウントしている大きな文字が現れることを。ぼーっとそれを見ていると、キリトは背中に掛かっている鞘から剣を抜き出した後、おい、と低い声で吐き捨てるように俺に言った。

 

視線をキリトに向ける。

 

「どういうつもりだ、ハチマン」

 

「少し、お前の猿芝居にも飽きてきてな」

俺の言葉に一瞬、目を大きく見開いた後、キリトは小さく舌打ちをした。

 

それから、俺とキリトは言葉を交わすこともなく、ただデュエル開始の合図を待つばかりだった。どこからか耳障りな呼吸音や布と布が擦れ合う音が静寂に包まれた俺を突き刺す。それを振り払うように一回軽く目を瞑り、短いため息を吐く。

 

それから約十五秒後、デュエル開始を報せるアラームが部屋中に鳴り響いた。

 




今度もこれくらい遅くなりそうです

次はこの作品のメインヒロインのサチを出すつもりです

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