Fate/EXTRA 太陽狐と月兎   作:淡雪エリヤ

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因みに筆者はCCCのみ既プレイで無印EXTRAは漫画と二次小説のみの知識です。
SNは全ルートプレイ済み(レアルタ)


Fate/EXTRA 太陽狐と月兎
プロローグ


月で兎が出会ったのは一匹の狐だった。

 

時を忘れて、兎ーー少年は狐ーー少女の着物姿に懐かしさを憶えながら見惚れていた。

そして少年は自分の本当の故郷へと思いを馳せる。

それは仕方のない事だ。

この世界において少年の故郷ーー日本と言う国はもう存在しないのだから

 

 

/////////////

 

 

「はぁ…ほんと、しょうもない」

 

月海原学園の校舎の一角で白い髪をした少年は一人嘆息した。

 

「む、すまないな。俺としても副会長ばかりに任せっきりの状況をどうにかしたいと思っているのだが、なにぶん生徒会のメンバーが足りていなくてな。

庶務でも居てくれれば負担を減らせるのだが」

 

その嘆息は隣に居たもう一人の生徒に聞こえていたようだ。

 

「あぁいや、すまない一成。そういうつもりで言った訳じゃ無いんだ」

 

嘆息に反応した生徒の正体は、月海原学園生徒会会長、柳洞一成。

寺の子供で真面目な性格、悪く言ってしまえば堅物。学園のアイドルとも言える女生徒を目の敵にしている事から、まことしやかに同性愛者(ホモ)ではないかと噂されている。

因みに噂の発生源は白い髪の少年なのだが、それを知る者は少ない。

 

「まぁ確かに庶務どころか会計も書記もいないこの状況は、些か問題があるとは思うけどな」

 

そもそも、そんな状態なのに生徒会として活動させている学校側がおかしいのだが……。

生徒会の会計や書記は別に最初から居なかったわけでは無い。

会計も書記も突然、私服で学校に来たかと思えば授業中に訳のわからない事を言ってどっかに行ってしまったのだ。

二人とも真面目な性格だったので流石にその奇行には驚きを隠せなかったが、それ故に居なくなった二人が何か事件に巻き込まれたのではないかと心配ではあった。

とは言え、仕事を全て押し付けて消えて行ったのは恨みがましい事である。

消えるなら仕事を終わらせてから消えろ、それが白い髪の少年の本音だった。

 

「よし、終わったぞ一成」

 

「おお、流石は副会長殿。こちらはあと少し掛かりそうだ。

待たせるのも悪い、先に帰ってくれて構わんぞ」

 

「ん……そうだな、お言葉に甘えるとするか。じゃあまた明日な一成」

 

「うむ、ではなライルスフィール」

 

白い髪の少年ーーライルスフィール・フォン・アインツベルンは生徒会室から出ると今朝の出来事を思い返していた。

 

クラスメイトであり生徒会会計の生徒が一時間目の授業が始まってすぐに起こした奇行についてだ。

いきなり席を立ったかと思うとブツブツと独り言を呟いて教室から出ていったのだ。

その独り言の一部が隣の席に座っていたライルには聞こえていた。

 

「下らない予選だった、か……あぁ成る程ね。でも、俺にとっては、そうでも無かったよ」

 

ライルがそう言い終わると、世界がほんの少しノイズを生み出す。

 

「ちょっと長居し過ぎたかな」

 

しかしライルは焦る事もなく、ただゆっくりと足を進めた。

 

「あら、まだ居たんですか。この愚図は」

 

歩いて少しした所でライルに向って罵倒が飛んでくる。

声の主はライルと同じ白い髪をした少女だった。

 

「挨拶でもしてから行こうと思って来たんだけどな……最後まで相変わらずだな、お前は」

 

「それは殊勝な心掛けですね。わざわざ私に罵られにくるとは、相当のマゾとしか言いようがありません」

 

「いや、別に罵られに来た訳じゃねぇよ。はぁ……頑張れくらいは言ってくれると思ったんだけどな」

 

「何故、私が有象無象の中の1人に向ってそんな事を言わなければならないのですか?」

 

「ま、それもそうか。じゃ、そろそろ間に合わなくなるし行くよ」

 

「えぇ、では」

 

少しでも長く校舎に残って居たかったが為にゆっくりとしていた歩みだったが、とある壁の前に着くと遂にライルの足は止まる。

ライルは壁に向かって一歩踏み出す。

ライルが瞬きをすると、そこは既に校舎の面影が何一つ無かった。

その事に少し名残惜しさを感じながらもライルは前へと歩み出す。

 

『ようこそ、新たなマスター候補よ』

 

虚構の空から声が響いたが、ライルはその声を無視して周りを見渡した。

そして自分の傍らに人形のような物があった。

 

「成る程、サーヴァントの代理役と言う事かな。

それにしても人形とは皮肉だな」

 

操り人形を暗示させるそれにライルは気分を悪くする。

 

「でも、俺は爺さんの操り人形になるつもりはないね」

 

まるで決意するかのように、裏切りの言葉を口にする。

 

「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。

繰り返す都度に五度。

ただ、満たされる刻を破却する。

告げるーー」

 

この月において、そのような呪文は不要な物ではあったが、一応自分を造り出した祖父へ最後の義理立てのつもりでライルは唱える。

 

「――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。

汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ」

 

と言うのは建前で、ただ単に一度は恥ずかしげもなく唱えてみたかったのだ。

 

そうして少年は出会う。

 

「サーヴァント、キャスター召喚に応じ参りました。

問います。貴方が私のマスターですか?」

 

運命の星の中で……

 

 

/////////////

 

 

ライルスフィール・フォン・アインツベルン。

マナの消失した世界で造られたアインツベルン最後のホムンクルス。

アインツベルンは本来、魔力無しでホムンクルスを造り出す手段を持っていなかったのだが、アトラス院に出来て自分達に出来ぬ筈が無いと対抗心を持ち、魔術師の嫌う科学の力までをも使いホムンクルスを造り出したのだ。

しかし、そうして生まれたが故なのか、或いは別の理由があるのか、はたまた理由など無くただの偶然なのか……生まれたホムンクルスには前世の記憶があった。

故にライルはホムンクルスとして生まれた土地であるドイツではなく、前世で暮らしていた日本を謂わば心の故郷としていた。

死んでしまった時の記憶は辛い物ではあるが、辛い思い出と同じくらい幸せな思い出もあるのだ。

だからこそ、日本にーー故郷に帰りたいと願っていたが、しかしこの世界に日本という国は存在しない。

正確に言えば、日本と呼ばれる地域は、あるにはあるのだが。

しかしそこは、もはや国としての機能が失われ、住民は西欧へと逃げて行った。

言うならば、日本は中身の無い器。

そんな不幸も幸福も無い空っぽな場所に行った所でどうにもならないのは目に見えていた。

それに、そもそもライルがアインツベルンのホムンクルスとして生まれた時点で行動の自由など無かった。

アインツベルンがホムンクルスを造った理由は、なにもアトラス院への対抗心からだけではないのだ。

造り出したのには、ちゃんと目的がある。

言わずもがな、聖杯だ。

アインツベルンから失われた。延いては、この世界から失われた神秘を取り戻す、それがアインツベルンのーー否、旧魔術師達の悲願だ。

そして、それを成すが為には聖杯を手にするしか無い。

たから、聖杯を手に入れる為にアインツベルンは最強のマスターとしてホムンクルスを造った。

それがライルスフィール・フォン・アインツベルンその人である。

かくして、ライルは聖杯戦争が行われる地ーー月へと送られた。

 

誰にも伝えることは無かった自分だけの願いを秘めて……。

 

 

\\\\\\\\\\\\\

 

 

「ーー貴方が私のマスターですか?」

 

キャスターは問いかける。

しかし、目の前の少年から返事は無い。

契約や魔力供給のラインは目の前の少年に繋がっているので彼がマスターで間違い無いのだろう。

返事が無いと言うことは、自分のマスターは聖杯戦争の知識がない素人という可能性を考えられる。

だが、素人にしては魔力供給の量が多い、と言うよりムーンセルに制限されてはいるものの今の自分の力が完全に出せる程の充分な魔力供給なのだ。

そもそもこの月にいる時点で素人の筈が無いのは分かりきっている事なのだが。

 

(まぁ、ステータスに関しては私がキャパシティーの低いキャスタークラスだからってのもあるんでしょうけどねぇ)

 

そこまで考えて気づく。

少年はキャスターの事をまじまじと見つめていたのだ。

視線からは男性特有の卑しさを感じないので、大して不快な気分にはならなかった。

 

(しかしまぁ観察されるがままと言うのも気に食いませんし、観察し返しましょう)

 

観察と言っても外見を観察した所で容姿ーーつまりは、見て呉れしか知る事が出来ないだろう。

だからキャスターが観察するのは内面、文字通り"魂"を観るのだ。

そうして驚く。

少年の魂が不自然なくらい綺麗だった事に

 

(魂を弄った跡がありますね。イケタマなのはイケタマなんですが……整形イケタマは私的にNGです。

男なら素の自分で勝負しろってんですよ!)

 

ライルの魂は元々、平凡な物であった、それこそ凡百の人間に紛れても明確な違いが分からない程に。

アインツベルンのホムンクルスとして生まれたが故にそれに相応しい魂へと弄られたのだ。

キャスターからしてみれば、弄られた魂はどんな不細工な魂よりも不快な物であった。

 

そうして互いに見つめあっている時間にようやく終わりがきた。

突然、鋼と鋼を打ちつけ合うような音が響いたのだ、それもすぐそばで。

その音で少年は我に返ったようだ。

キャスターは音の正体を探ると。

人形が少年を攻撃しようと暴れていた。

しかし、その魔の手は見えない壁に阻まれ届く事は無かった。

キャスターも我に返り、最初の問いを改めて問いかける。

 

「貴方が私のマスターですか?」

 

(この問いにも応えないようでしたら、ね。)

 

「え、あ、あぁすみません。俺……僕が貴女のマスターです」

 

そうして、ようやく二人の目と目が合う。

 

(夫としては不満がありますがマスターとしては合格でしょうか。

まぁ政略結婚とでも思えばなんとかなりますかね。望まぬ相手だろうと尽くす、それも良き妻の条件です!)

 

「早速だけどキャスター、後ろの煩いのをどうにかしてくれ」

 

「畏まりました、御主人様」

 

キャスターはマスターに不満があったが、しかしそこは恋に恋する少女、例え好きになれないとしても尽くすと決めていたのだ。

 

「え? 今なんて…」

 

しかし、そんな事をライルは知る由もない。

だから、キャスターの言葉で頭の中が混乱し始めた。

 

「魔力供給は十全、私の力をご覧あれ!」

 

それに気づいていないキャスターは人形(エネミー)に向って走り出す。

全力の力がある今なら、何だって出来るような気がした。

それこそ、素手で人形を倒すくらいわけも無いと。

なので得意の呪術ではなく、久しぶりに身体を動かしたかったキャスターは拳を振り上げ、そしてーー

 

「…ごふっ!」

 

ーー人形に殴り飛ばされた。

 

「ちょっ⁉︎」

 

その光景にライルの混乱は増すばかりだった。

しかし事は単純だ、それはーーキャスターは所詮、魔術師(キャスター)だと言う事だ。

 

それが、最強のマスターと最弱のサーヴァントの出会い。

 




クラス:キャスター
真名:???
身長:163cm/体重:49kg
属性:中立・悪
イメージカラー:桃色
ステータス
筋力:E
耐久:E
俊敏:B
魔力:A+
幸運:A
宝具:B

主人公であるライルの容姿は外典のホムンクルスのイメージです。
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