アリーナの中、暗号鍵を探そうと探索をしている途中。
坂道になっている道の上にアサシンと柳桐一成は待ち構えていた。
「思わぬ決勝になったな副会長殿」
「いやいや、まだ三回戦でしょ会長殿」
「然り、だが俺にとっては決勝のようなものでな、ライルスフィールお前さえ倒せば優勝したようなものだ。ならば実質決勝と言っても差し支えないだろう」
「その評価は嬉しいけどね。残念ながらお前は銀メダルで終わりだ」
「銀メダル?ふむ随分と古い例えだな」
そういえばこの世界のこの時代に五輪はもうやっていないんだったか?
まぁいい
「話は程々に、そこで待ち構えるという事は戦おうって事だろ?」
「まさしく、話が早くて助かる」
「アサシンのサーヴァントなのに真っ直ぐ待ち構えているのは逆に怪しいんだけどね」
まぁ俺の知識が間違っていなければ、あのアサシンが不意打ちをするタイプじゃないのは知っているのだが
むしろ伝説によればあのアサシンが戦った相手の方が不意打ちをしそうだ。
まぁ目の前のアサシンは本物の佐々木小次郎ではないらしいのだけど、それは置いといて
それでもこっちが相手の事を知らないフリをするのは、こちらの情報アドバンテージが無いと思わせるため。
こちらが対策を練っていないと思わせて油断させるというのが目的だ。
「確かに私の剣は邪道ではあるが、しかしやってきた事と言えば棒振りだけなのでね」
「まぁ確かに忍者には見えないね、それなら出来るだけ距離をとってくださいキャスター」
「では始めるとするかライルスフィール。行くぞアサシン」
「承知したマスター殿。アサシンのサーヴァント、佐々木小次郎。いざ参らん」
「な!?」
ライルは忘れていた、アサシンは自分の名を全く隠すつもりのないサーヴァントだったと言う事を。
実態としては本人ではなく、佐々木小次郎と言う名を与えられた無名の剣士なのだが
そして気づいていないフリは全く意味をなさなくなった。
(余程佐々木小次郎と言う名を与えられたのが嬉しかったのか名乗りたがりめ……)
心の中で愚痴る。
「キャスター予定変更はなし、離れて攻撃を!」
キャスターはいつものように元気に返事をすると、呪符を投げた
「なるほど」
しかし呪符は効果を発揮する前に斬り落とされていた。
「速い……」
ライルは熱心なゲームファンと言う訳でも無かったのでステータス確認と言う要素を全く見ていなかった為、知らない事があった。
あのゲームにおいて、アサシン佐々木小次郎の敏捷性はランサークーフーリンをも上回るステータスを誇っている。
単純な動作の速さがあれば移動速度も遅くない事は自明の理。
普段は柳桐寺の山門に縛り付けられているからその能力は埋もれていたに過ぎない。
そしてその速さを用いてアサシンは距離を詰めてきた。
「キャスター術と鏡で同時に攻撃を!」
それでもライルは直ぐに対処を考える。
もともと想定外の事が起こるのは想定済みだ。
情報アドバンテージが無ければ必ずしも勝てない訳ではない。
前回の戦いも、結局真名を暴く事なく勝てたのだ。
「流石に斬れぬか、ならば」
術を発動する前に符が斬られるのなら、斬られる事のない鏡で攻撃すればいい。
しかし、アサシンの対応も早かった。
鏡の攻撃を弾き、刃を切り返し直ぐに呪符を斬り落とした。
「キャスター氷の術を」
「恐らく更なる物量で来るぞ気を付けろアサシン」
一成にこちらの意図を察される。
氷の呪術による物理的な攻撃を弾き斬れないほど大量に放つ。
呪符が間合いに入る前に氷の呪術を発動し待機させ同時に射出する。
しかし驚くことに、かなりの物量の氷を素早い手数で全て切り刻まれる。
だが先ほどと違う点が一つ。
流石の物量にアサシンは攻撃に転じる事が出来ていない。
キャスターもキャスターとて有効打を与える事が出来ず、ジリ貧なのだが。
今ここでライル自身が攻撃を行えば有効打を与える事はできるだろうが、出来ればそれは避けたかった。
それを見せるのはまだ早い。
決戦まで取っておくべきだろう。
「ふむ、埒があかぬな。それならば」
マスターである一成が何か動き出そうとするが……
『セラフより警告≫アリーナ内でのマスター同士の戦いは禁止されています』
「む、もうそんな時間なのだな」
『戦闘を強制終了します』
「何か仕掛けられる前に終わって良かったと言うべきかな」
「何を言うかライルスフィール。たとえ俺が何を仕掛けようとも簡単に対処出来ただろうに」
セラフが分断した壁越しにライル達は会話を始める。
「ここまで勝ち上がって来ているんだ、どうせ簡単に対処させるつもりはないだろ。それに俺も手札はなるべく伏せておきたいからな」
「ははは! 違いない。ん? どうしたアサシン笑っているが」
半透明の壁越しにアサシンがニヒルな笑みを浮かべているのを一成の指摘によりライルも気づく。
「いやなに、呪い師と試合うのは初めての経験でな、今まで一つの的ばかり斬っていた故に中々に新鮮だった。それに相手が見目麗しい女子であったのだから愉しくない筈なかろうて。そうは思わぬかマスター」
「ああいや、拙僧修行中ゆえそう言った話は……」
「嘘つけ、お前キャスターの事チラチラ見てたろ、俺だって気づいたわ。本人だって気づいてるぞ」
そう言ってライルはキャスターに視線を向ける。
「え、えぇまぁ視線は感じておりました」
戸惑いがちにキャスターは答えた。
「な! 戦っていたのだから、視線を向けるのはあたりまえだろう! 断じて卑しい気持ちなど」
「えぇ〜本当にござるかぁ〜?」
「なんなんだアサシン普段使いもしないござる口調で話しおって!」
その一成の反応にアサシンと共にライルは笑う。
「さてと、良い運動の後だ。私としては華を見ながら茶でも飲みたい気分よな。無論、華とはお前の事だが、どうかなキャスター、この後共に茶でも」
「え、嫌ですけど。気持ち悪い、早く帰りましょうご主人様」
ストレートだった。
遠慮しなくなったのはライルにだけではないようだ。
いや、元々こうだった気もしないでもない。
とまぁ、ひとしきり話し終えアリーナの探索を中断してマイルームへと帰った。
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「本当にとても仲がよろしいのですね」
マイルームでの最初の話題がそれだった。
一成との事だろう。
「まぁ予選の時一番長くいた男友達だったしね」
「伺ってはおりましたが、あれではまたお辛くなるだけでは……」
俺は一成に対して、戦っている相手……これから殺す相手だと分かっていながら、軽口を叩き、まるで仲良く遊んでいるかのように接していた。
「心配してくれてるのか、ありがとう。でもさ、どう接していようと別れは辛い。別れる前から辛気臭くなってたら時間が勿体ない」
それは、おそらく一成も同じ思いだったからこそ、成り立ったのだ。
「賛否両論だろうけど、友達相手だからこそ、最後までちゃんと友達でいたい」
今度こそは、とライルは小さく呟いた。
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「ヴォーパルの剣?」
目的もなく暇つぶしに廊下を歩いていたら、岸波さんに話しかけられた。
どうやらヴォーパルの剣を欲しているらしい。
「ジャバウォック退治でもするのか?」
岸波さんは少し驚いた様子を見せる。
どうやら本当にジャバウォックと戦うつもりらしい。
「なるほどね」
ヴォーパルの剣は確かジャバウォックの詩という鏡の国のアリスの一節に出てくる怪物ジャバウォックを倒すために使われた剣だったはずだ。
つまりあの少女の姿をしたサーヴァントはアリスという事なのだろう。
マスターと同じ姿をしていた事など引っかかる事はあるが、ライル自身が戦う訳でもないので深く考える事はしなかった。
「でも残念ながら、存在を知ってはいるけど入手法までは知らないかな。まぁレシピと材料さえあれば錬金出来ないことは無いだろうけど」
そうして会話は終わり岸波さんは礼を言って元来た道に戻っていった。
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アリーナ探索2日目
暗号鍵は思ったよりも早く見つける事が出来た。
しかし、それを見計らったかのように一成は現れた。
「なんだ、わざわざ暗号鍵を取るのを待っててくれたのか」
「いかにも、互いに決戦まで行けずに終わるなどと言う馬鹿らしい真似はしたくなかったのでな」
「なら自分の分の暗号鍵を取ったら直ぐに帰ればいいだろ」
「さもありなん。だがそれでは、詰まらんだろう」
「戦闘狂め」
「かもしれんな……では行くぞアサシン!」
「備えろキャスター!」
真っ直ぐキャスターに向かって走ってくるアサシン。
それに対してキャスターは炎の呪術を地面に向けて放つ。
「む……」
呪符を斬られる前に術を発動させる方法は前回行った事以外にもある。
呪符を斬れない或いは斬りづらい場所に放つ事だ。
直接相手に投げるだけが攻撃方法という訳ではない。
「炎天よ奔れ!」
複数の炎柱がアサシンの進路を塞ぐ。
それらを難なく躱し炎柱のない場所をすり抜けアサシンはキャスターの元まで辿り着く。
「氷天よ、砕け!」
しかし、それこそが狙いだ。
敢えて炎柱のない抜け道を作りそこに誘導し攻撃の道程を絞りあらかじめキャスターのカウンター呪術を用意しておく。
炎柱はそのための時間稼ぎでもある。
おそらく一度きりしか効かぬ戦法だろうが、一度でも効けばこちらのモノだ。
「ぐぬ……」
「お眠り下さい」
カウンター呪術によりスタン状態のアサシンへ連続攻撃が炸裂する。
「やはり、決戦まで取ってはおけぬか」
「その場を離れろキャスター!」
「もう遅い、捕らえた!」
一成の声と共にキャスターとアサシンの背後に壁の様な物が現れる
「どうやら結界の様でございます、ご主人様」
「つまり、戦うステージを狭めたって事か」
それにより、キャスターが動ける範囲は全てアサシンの間合いの中になる。
そして今度はアサシンからの連続攻撃がキャスターを襲う。
「防ぐ事に集中しながら氷天の準備を!」
「はい!」
そう返事はするもののアサシンの敏捷性に鏡一つでは対応仕切れず、キャスターも痛手を食らってしまう。
「キャスター、自分とアサシンの背後に術を!」
「呪相・氷天!」
そうする事によってキャスターとアサシンの背後に何本もの氷柱が出来上がる。
「そのまま続けて」
それによって動ける範囲はさらに狭くなっていく。
それはアサシンも同様。
「いかん! アサシンこれ以上氷柱を増やさせるな!」
「承知した!」
「流石に気づいたか、だがキャスター続けてくれ!」
ライルの狙いは、氷柱をいくつも立てアサシンが刀を満足に振るえないほど行動範囲を狭めるという事だ。
通常の刀であれば、刀を振るえないほど狭くしたらキャスター自身も満足に動けないくらい狭めないといけないが
アサシンの使う得物である物干し竿はアホみたいに長い刀であるために少し狭めるだけで十分なのでキャスターは問題なく動ける。
相手がステージを狭めたからこそ出来たそれを利用した対処法だ。
アサシンは増えていく氷柱の対処に攻撃の矛先を変えたので、まだ問題なく刀を振るう事は出来ているが
そのお陰でキャスター自身への攻撃は止んだ。
「地形を無理矢理変える術式とは、流石に驚いたな」
使い方によってはライルの『是、十二の試練』と同じような事も出来るという事だ。
手動で行う必要があるが、サーヴァントを守る壁を作る事も出来るという事でもある。
「正確には地形にオブジェクトを追加しただけだがな」
「なるほど、じゃ別にアリーナの壁と違って壊せない訳じゃないって事だな」
「然り、だがそんな暇はあるまい」
キャスターは氷柱を増やそうと、アサシンはそれを増やさせまいと他の行動に移す余裕はない。
「確かにな」
今のキャスターにそんな余裕はない。
ライルとしても決戦まで隠しておきたかったが、相手が隠し玉を出したのであればこっちも出すしかない。
「くはっ! だが攻撃出来るのはサーヴァントだけじゃないぜ」
「む! ライルスフィール何を」
「降霊再現」
ライルはいつも通りハルバードを錬金する。
「デッドライン・ハルバード!」
本物とは違い呪いではなく魔力を纏ったハルバード……斧槍を一成が作った壁に向かって投げつけた。
「キャスター黒天洞だ!」
「かしこまりました」
キャスターは自分の周りを漂っていた鏡を手に取ると己が使える最大の防御呪術を使う。
わざわざ術の名前で指示を出したのは、相手にキャスターの行動を悟らせないため。
アサシンが呪術に精通でもしていない限り、術の名前でこちらの行動を悟られる事は無いだろう。
そしてライルの企みは成功する。
ライルの投げたハルバードは一成の作った壁を貫き、その中の地面に突き刺さると、斧槍が纏っていた魔力は爆発を起こしたかのように拡散する。
「くっ……」
キャスターの呪術に警戒したアサシンは防御の態勢をとるのが少し遅れ、魔力の拡散攻撃をもろに受けてしまう。
「ふーー野を跳び回る子うさぎだと思ったのだがな。その実、猛虎の類であったか……」
『セラフより警告≫アリーナ内でのマスター同士の戦いは禁止されています』
タイミングが良いのか悪いのか
『戦闘を強制終了します』
あと少しでおそらくアサシンは倒せていただろう。
「続きは決戦でだな」
「今回は遅れを取ったが、次は負けん」
だが、こんな道半ばで決着が着くよりかは決戦まで持ち越した方が気分的に良かった為、ライルは惜しいと思う反面、安心していた。
「ライルスフィール、放課後の殺人鬼に気を付けろ」
「それって」
その言葉には覚えがあった。
予選の際に一人一人参加者が何者かに殺されるという事が何度かあった。
その犯人は掴めていないが、マスター達の間で放課後の殺人鬼という呼び名で警戒されている。
「また動き出したようだ。どうやら有力株を潰して回っているらしい」
「忠告どうも。一成も気を付けろよ」
「ふ、俺より先にお前の方が狙われるであろうがな」
そうしてお互いにリターンクリスタルを使い、この日のアリーナ探索は終了した。
ここから今まで以上に駆け足でエクストラ編は進むかもしれません。
三回戦は、次話かそのまた次話で終わらせるつもりです。
四回戦はさらに短いかも
作者のやる気の問題と言うよりかは元々三回戦四回戦に起こる出来事上、書くことが少なくて……
因みに全ての試合の対戦カードは全て決まってます。
あとはそれを文字におこせるかどうかの問題……