Fate/EXTRA 太陽狐と月兎   作:淡雪エリヤ

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輝く夢を見た。

 

神殿の中には大きな太陽が輝いていた。

 

人々はとても幸せそうに太陽へと尽くしている。

 

自分の為ではなく、誰が為の行動なのにどうして、そんなに幸せそうなのだろう、と太陽は疑問に思った。

 

そして幸せそうな人々が羨ましく思え、いつしか自分も何かの為に尽くしてみたいと、そんな想いを抱いた。

 

それは、ほんの少しの太陽の気まぐれ

 

 

 

 

「そういう事か……」

 

目を覚ましたライルは、未だに忘れていない夢を思い返して呟いた。

いつか見た眩しい夢。

幸せそうな少女が羨ましかったのだ。

自分の為にではなく、人に尽くしているのに幸せになった少女。

それはライルが生前に出来なかった事だったから。

 

「申し訳ございません。また起こしてしまいましたか?」

 

キャスターは畳まれた布団の横に正座していた。

 

「夢を……」

 

言いかけて、言葉を止めた。

 

「……いや、何でも。ただ普通に起きただけですから、気にしないで大丈夫です」

 

あの夢はキャスターの記憶なのだろうか?

はっきりと正体が分かっている訳ではないが、目星を付けていた真名が正しいのならば、その夢は想像している英霊の伝承とかけ離れていた。

 

「朝食に行きますか」

 

「はい、ご主人様」

 

ライルの言葉に従ってくれているキャスターであったが、夢に見た少女とは雰囲気が別人のモノのように感じた。

 

(いや、今はそんな事を考えている余裕はないか)

 

 

 

 

食事を終えたライル達はアリーナの中へと来ていた。

 

「すみません、キャスター」

 

「はい?」

 

ライルの唐突な謝罪にキャスターは疑問符を浮かべる。

 

「ライダーとの戦いの件を詳しく謝るのが遅れてしまいました」

 

そういえばとキャスターは思い出す。

マスターが謝罪をしていたが、その意味が分からず、戦闘の途中だった為に詳しく内容が聞けなかった事があった。

 

「あの戦いで貴女が数多く傷を負ってしまったのは僕の指示が悪かったからなので……」

 

「いえ、ご主人様そんな事はありません。現に貴方様の采配で私達は今ここにいるのですから」

 

「……ありがとう」

 

世辞の様なモノだと分かっているが、その言葉でライルの肩の荷は少し軽くなった。

 

「では暗号鍵を探しましょう」

 

話が終わり、アリーナの探索を始めようとしたその時。

キャスターの背後に高速で飛来してくる線が見えた。

 

「危ない!」

 

咄嗟にキャスターを庇う様にライルは線の軌道へと割り込んだ。

空間が割れる音がした。

是、十二の試練のストックがまた一つ減ったのだ。

いきなり不意打ちでそれだけの威力のある攻撃が飛んできたという事だ。

 

「今ので仕留められれば今回も楽に勝てたんだがなぁ。そう何度も上手く行くもんじゃないか」

 

ライル達から少し離れた場所に声の主は立っていた。

灰色の髪に燻し銀の様な色の鎧を身に纏った男。

ライル達の近くに突き刺さっていたのは、禍々しい黒色をした刃が括り付けられた槍。

 

「ランサー、仕掛けろ」

 

「はいよ、マスター」

 

ランサーと呼ばれたサーヴァントの陰にいたマスターの指示により、ランサーはライル達へと疾く迫りくる。

 

「キャスター! 出来るだけ反撃はせず、回避と防御に専念して下さい!」

 

「クハッ! それは良い、やり易くて助かるな小僧ぉ!」

 

地に刺さっていた槍が霧のように消えたかと思えば、いつの間にかランサーの手の内に収まっていた。

 

「私達に手の内を見せまいとした策なのだろうが、それならば、それでやりようがある。一気に仕留めろランサー」

 

「そう何度も使える物でもないだろうに……良いのかいマスター?」

 

「ここで仕留めれば問題は何もあるまい」

 

ユーリ・シュライツマン、昨日出会った対戦相手であるランサーを引き連れたマスター。

ライルとは対照的に自信に満ち溢れた顔でキャスターを仕留めろと指示をしたのだ。

それは自分のサーヴァントの力に対する絶対的な信頼を持っているという事に他ならない。

そして、それが根拠のない自信ではないというのが、是、十二の試練の守りを砕かれた事によって痛いほど分かっていた。

しかし、戦いは既に始まっている。

キャスターはライルの指示通り防御や回避に専念していた。

対するランサーは反撃がないのを良い事に、大振りな攻めの一点張り。

既に防御仕切れず、回避仕切れずいくつかキャスターへと決定的なものではないが有効打が決まってしまっていた。

それにライルは、焦りを感じて先ほどとは違う指示をキャスターに出す。

 

「キャスター! 一度だけ攻撃をしても良いので距離をとって下さい!」

 

「浅慮な、手の内を見せぬのなら。それを突き通すべきだったな。その手は、私達にとって好機でしかない」

 

「炎天よ、奔れ!」

 

「クハッ! 指示が分かりやす過ぎるな!」

 

キャスターの放った札により発生した炎をランサーは槍の一振りで斬り伏せた。

ランサーは全くの無傷だったが、ライルの指示通りキャスターはランサーから離れる事が出来た。

しかし……

 

「今の貴様らは、一枚の葉を狙うよりも容易い。刺し穿て我が友より奪いし呪怨の刃、復讐に狂う(デッドライン)--」

 

キャスターが離れた隙にランサーは槍を投げる構えをとっていた。

離れているのにランサーの槍の放つ威圧的な雰囲気、圧倒的な力をひしひしと感じる。

是、十二の試練を破った一撃と同等かそれ以上の攻撃が来る。

ヤバい、そう感じた時は既に遅く。

 

「ーー略奪せし黄金の財(ノートゥング)!!」

 

槍はランサーの手から放たれた。

赤く、黒く、暗く、それでいて鮮明な光を刃の切っ先に集めた槍が真っ直ぐに線を描くようにキャスターへと飛んでゆく。

 

「きゃ、キャスター!!」

 

自分へと放たれた訳ではないのに、まるで目前に死が迫るかのような感覚に身体が震える。

狙われたキャスターは自分以上の恐怖を味わっているだろうというのに、偽りの名を叫ぶ事しかライルには出来なかった。

走ってキャスターの前に行っても間に合わない。

いや、例え走れば間に合ったとしても足が固まって動けなかったのだ。

この一撃にキャスターは耐えられないだろう。

いくら無敵の守りを自分が持っていようとも、判断のミスで、実力の差で、こんなにもいきなり、呆気なく、敗退してしまうのか……

負ける事への……死への恐怖。

死を一度経験した事があるライルは、その恐怖や苦しみを誰よりも知っている。

蘇る死の記憶、燃えている故郷とまともに呼吸が出来ない苦しみ。

 

「ぅ…っ……」

 

アリーナに大きな音が鳴り響くが、眼前の死に気を取られたライルは気づかない。

 

『セラフより警告≫アリーナ内でのマスター同士の戦いは禁止されています』

 

「クソが! 間に合え!」

 

『戦闘を強制終了します』

 

槍は、キャスターから一メートルくらいの距離に出現した壁に激突し衝撃波を生じさせながら地に落ちていった。

ライルはそれに気付かず両の膝と手を地につけながら震えていた。

 

「クハッ! 運が良いじゃねえか小僧。やはり一撃目でやれなかったのが痛手だった」

 

「どうやら浅慮だったのは君だけではなく私もだったか。無駄撃ちどころか、真名への道筋を示してしまった。名を知られるのも時間の問題か」

 

ユーリとランサーの会話の内容さえライルの耳には入ってこなかった。

 

「明確な弱点があるアイツと違って俺のような三流英霊の名がバレたくらいじゃ大した痛手でもないだろ」

 

「ヒントになるような事を口走るな」

 

自失しているライルと違って、キャスターは相手の会話を聞いていた。

 

(何が三流英霊だっていうんですか……)

 

キャスターには直接当たらなかったが、槍の一撃が並の英霊が出せるような力でない事は分かる。

先の戦いでライダーが最後に放った本気の一撃以上の威力は確実にあった。

そして、それは不意打ちで放たれた一撃目の時も同じだ。

つまり恐ろしいのは、戦いが始まる前に宝具の真名解放を行なった点だ。

戦うために、戦いに勝つために宝具を使ったのではなく、こちらを殺すためだけに宝具を使ったという事に他ならない。

 

「仮に俺がアイツのように弱点があったとして、この主従に負けると思うか?」

 

ランサーの言にユーリはライルへと目を向ける。

そして目を細めて口を開いた。

 

「ランサー、確かにその通りではあるが……いや、もはや何も言うまい」

 

「ならば俺が言おう。マスターの言う通り相手のマスターは大した事がない。そして俺らはサーヴァントの方を警戒したが、それも杞憂だった。ただマスターに従っているだけで己が信念を感じないんだからなぁ、キャスターよ」

 

「………」

 

信念、己がマスターも相手のマスターに指摘されていたモノ。

まさか自分まで相手のサーヴァントに指摘されると、キャスターは露ほどにも思っていなかった。

正直なところ、心の何処かでキャスターは負けても良いと思っていた。

あの暗黒イケモン程ではないがキャスターはマスターを好いてはいなかった。

それは整形イケ魂だから、という理由ではない。

たまに見る、自分の過去を思い出させるような記憶の残滓……。

負けてしまえば次のマスターに出逢う事が出来るし、何より……あの夢を見なくて済むのだ。

 

「さて、この壁の所為で探索も続けられそうにない。ランサー一度戻るぞ」

 

「はいよ。クハッ! その前に……キャスターよ、小僧が倒れているがそのままで良いのか?」

 

「っ……ご主人様!」

 

ランサーの言う通り、ライルはうつ伏せになって倒れてしまっていた。

キャスターが主へと駆け寄り、様子を見ると気を失っているようだった。

キャスターはそっとライルを抱き抱えると、急いでアリーナの外へと向かった。

あくまで心の何処かで負けても良いと思ってしまっているだけであって、心の底から負けたいと思っている訳ではない。

基本は、主人に仕え良妻であろうとキャスター自身は思っているのだ。

 

 

 

 

苦しい夢を見た。

 

幸せの終わり、失落の始まりの夢。

 

少女が仕えた、最愛の人が病に伏せた。

 

大丈夫だろうか、少女は自分の事のように、否、自分の事以上に男の事が心配で気が気ではなかった。

 

病をうつさぬようにと気遣われ男に逢えない日が続き、夜も寝れない日が続いた。

 

そんなある日の事だった。

 

少女はふと見た鏡に写る己の姿が異様さに驚く。

 

頭には獣の如き見てくれの耳が生えていたのだ。

 

人とはかけ離れたその姿を隠すように少女も部屋から出る事がなくなった。

 

しかし、それを隠し切る事ができずその姿は間も無く現れた一人の男により暴かれてしまう。

 

その異形こそ下手人である証だ、と現れた男は言った。

 

最愛の人物が病に倒れたのは自分の仕業だと言われたのだ。

 

否定の声は掻き消され、少女はその場を追われた。

 

そうして少女は……

 

月を見上げて、独り……涙を零す。

 

 

 

 

「ここは……」

 

ライルが目を覚ますと、そこはカーテンで区切られたベッドの上だった。

そこが保健室だとライルはすぐに察した。

何故、自分は保健室にいるのだろうか。

 

「ご主人様!」

 

「……っ!?」

 

目の前の少女の姿にライルは驚く。

目覚める前の記憶は思い出せないが、夢で見た光景は鮮明に覚えていた。

 

「君はどうして……」

 

「はい?」

 

キャスターの漏らした疑問の声でライルは我に帰る。

 

「あ、いや……すみません、此処まで運んで貰って……」

 

少しして、ライルは思い出す。

ランサーの宝具の一撃とその後の己が顛末。

それがどんなに無様だったものか。

夢の内容に、対戦相手の事に、自身の力不足に、一回戦の心残り。

考えるべき事が多すぎて、寝起きの頭では何一つ処理仕切れないと考えたライルは、起き上がった体の力を抜き、再び頭を枕に落とした。

 

「ご主人様?」

 

こちらを覗き込むキャスターの顔を見ながら、月を見上げた夜の記憶を重ねた。







まだまだ続く主人公下げ
最強のマスターとは何だったのか
(性能だけは)最強のマスター(ただし使いこなせてない)
見切り発車で書いていたり、物語先へ先へと進めようとした結果キャスターの扱いが雑になっているのが大問題。
トワイス版キャスターから早く軌道修正しなくては、って事で何話かに分けてやるつもりだった内容を詰め込んじゃってます。

そうでもしないとCCC編への分岐となる予定の四回戦までにキャスターが主人公にデレる気がしない……
何で一目惚れじゃないキャスターを書こうと思ったんだこの作者。
エクステラやって色んな意味で思ったけどご主人様至上主義だから可愛いんだろキャスターは!(過去の自分を全否定)
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