東京秘封倶楽部   作:雨守学

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信濃町の信者達

「よし、今日は勝ったわ」

銀座のカフェ。

蓮子との約束にはまだ一時間以上早いけれど、またケーキを食べ損ねるのは嫌だしね。

「どのケーキを食べようかしら?」

メニューには様々なケーキが書かれている。

どれもこれもありきたりな感じだけれど、何でもかんでもオリジナルを主張されるよりは、こう言ったものの方が馴染みやすいし、息も長い。

思い出の味っていうのは、こういう平凡な物に言われてきたのだろう。

「すみません、これとこれを下さいな」

 

ケーキを待つ間、ぼんやりと窓の外を眺めていた。

すると、遠くで蓮子が歩きながら、キョロキョロと街並みを眺めていた。

「何やってるのかしら?」

蓮子はこちらへは近づかず、反対の方へと歩いて、角に消えた。

「?」

 

ケーキを二つ食べ終わり、紅茶を飲みながら蓮子を待った。

それにしても、客が誰も来ない。

もうお昼近いというのに。

普通なら、主婦たちがお喋り場として、こういうカフェに来てもおかしくない。

この銀座でそれがないってことは、この店、相当よ。

……。

それにしても、蓮子、遅いわね。

さっき、近くにいたのに。

まさか、迷ったなんてことはないわよね?

そう思い、連絡しようとした時、カフェの扉が勢いよく開いた。

「ごめんごめん。ちょっと寝坊しちゃってさ……って、あー! そのケーキ、それ私の分でしょ!?」

「そうよ。あまりにも遅いから、食べちゃった」

この前の仕返しよ。

「さて、行くわよ」

「ちょっと待ってよ! ケーキ……」

「時間がない。そうでしょ?」

「ぐぬぬ……」

鼻高々にカフェを出た。

ざまみろよ。

 

「そう言えば、さっき何してたのよ?」

「さっきって?」

「カフェから見てたわ。キョロキョロしてたの」

「キョロキョロ?」

「ほら、この辺りで」

「うん? してないけど……」

「なにとぼけてるのよ? 私、ちゃんと見てたのよ?」

「だから、何を?」

「だから……」

???

「……もういいわ。とにかく、寝坊とか言って、本当は銀座に着いてたんでしょ? それで遅れるなんて……」

「寝坊したのは本当だけど……。え? どういうこと? 何が言いたいの?」

「だから……!」

「……あー、分かった。つまりこういうことでしょ? 私とそっくりな人を見て、私だと思い込んでる」

「え?」

「私がメリーに隠し事なんかするわけないよ。寝坊したのは本当だよ。だから急いでカフェに向かった。ほら」

蓮子が帽子を脱ぐと、ビヨンという擬音が今にも聞こえてきそうなくらい、勢いよく髪が跳ねた。

「髪をセットする余裕もなかったんだよ」

私の見間違い?

いや、にしては似すぎていた。

服の感じ。

帽子。

雰囲気。

「ほら、紫がメリーに似てるように、私に似た人がこの東京にもいたんじゃない?」

確かに。

でも、信じられないくらい似ていた。

兄弟でもあそこまで似ないだろうと言うほどに。

「そういう訳だからさ、疑いは晴れたかな?」

「寝坊したことには変わりはないけれどもね」

「ごめんねって」

 

新宿区信濃町。

宗教で栄えたこの町で今最大の宗教と言えば……。

「すみません。貴女たち、雨守教って知ってる?」

「あ~……知ってるけれど、興味ないので……」

「そんなこと言わないで……あ……」

勧誘はこれでもう三度目だ。

逆にこの町を歩いているのだから、信者だと思わないのかしら?

「やっぱりこうなるじゃない。よりによってどうして信濃町なのよ」

「噂を聞いたんだ」

「噂?」

「どうやら、雨守愛(まなみ)の幽霊が現れるらしい」

「雨守教のステマなんじゃなくて?」

「私もそう思ったんだけれど、その雨守愛の幽霊が言うんだって。「雨守教なんて解散しなさい。気味が悪い。」って」

「何よそれ?」

「さあ? まあ、雨守教は雨守愛が望んで作ったものではないしね」

「雨守教に反対する宗教の策略とかじゃないの?」

「いや、最初に情報を配信したのが雨守教なんだってさ。それから雨守教は、純粋な信者が解散を唱えていて、政治目的の為に利用している保守派の信者と対立しているんだって」

「なら、さっきの勧誘は保守派の信者かしら?」

「そうでもないみたい。純粋信者は人を集めて、解散するために圧力をかけるつもりらしい」

「解散するために人を集めるって、なんだかわけが分からないわね」

「今や世界中にも信者がいるからねぇ。ただ「解散します」じゃあ、すまないんでしょ」

「宗教も大変ねぇ。それで? 今日はその幽霊を探すって?」

「というよりも、幽霊が発生しているという状況がおかしいと思わない?」

「……なるほどね」

一瞬、おかしくないと思った自分が居た。

谷中の事もあるし。

でも、それを認めてしまったら、私は人間から離れてしまう気がして、発言を留まった。

「さて、またネコとかいないかな~」

蓮子は路地裏とか、溝などを覗きこんだ。

「流石に谷中のように簡単には見つからないと思うのだけれど」

「そうでもありませんよ」

女の声。

また勧誘?

そう思って振り向くと、誰もいない。

「……気のせいかしら?」

前を振り向くと、蓮子がいなかった。

「蓮子?」

 

電話にも出ない。

電話に出んわ。

「……ぷふっ」

って、笑ってる場合じゃない。

完全に蓮子とはぐれてしまった。

探すにしても、こんな広い町で、しかも勧誘も多いし。

まさか、勧誘に乗ったとか?

いやいや、そんなことは……。

まさか、連れ去られて、変な儀式に参加させられているとか?

「ど、どうしよう……。警察かしら……」

一人オロオロしていると、電話が鳴った。

蓮子からだ。

「蓮子!?」

『……』

「もしもし? あれ? 蓮子?」

『……助……けて……』

「え……」

血が一気に冷えてゆくのを感じた。

まさか……本当に……?

「蓮子! い、今どこよ!?」

『助けて……メリー……』

ヤバい。

ヤバいヤバいヤバい。

え?

え?

えぇ!?

「れれれ、蓮子……私……どうすればいい……!?」

私は泣きそうだった。

久しぶりのピンチ。

真怪とかそういう類だったらどうにかなったかもしれないけど、これは現実の事件。

……それもおかしな話だけれど。

『メ……リー……』

「な、なに!?」

『う……』

「う?」

『うし……』

「牛……!? 牛がどうしたのよ!? ヒンドゥー教!?」

『ぶふっ……そ、そうじゃなくてさ……後ろ、後ろ……』

「へ?」

後ろを向いた瞬間、視界が闇に包まれた。

あ……そっか……。

私も……捕まったのね……。

 

「メリー、メリー!」

「ううん……」

目を開けると、そこは白い部屋で、私は白いベッドに寝かされていた。

どうやら気を失ったらしい。

「はっ……蓮子!?」

「メリー、大丈夫?」

「こっちのセリフよ! ここはどこなの!? 私たち捕まってしまったの!? 雨守教の仕業!? ヒンドゥー教!?」

「あー……あのさ……」

その時、扉が開いて、真っ白な服を着た一人の女性が現れた。

「やりすぎちゃいましたか?」

一目で分かった。

雨守愛だ。

「どういうこと……? まさか……死後の世界……?」

「ここは真怪郷だよ」

「へ?」

「こちらは雨守愛さん。本物だよ」

「本物です」

「ど、どうも……」

真怪郷?

でも、どうして雨守愛が……。

「脅かしてごめんなさい。蓮子さんを菫子さんと間違えてしまいまして……」

「え?」

「どうやら宇佐見菫子がここに来たみたい。私とそっくりなんだってさ」

「えぇ、一年前でしょうか……。また来たのかと思って、驚かせようとしたのですけれど……。どうやら人違いだったみたいです」

宇佐見菫子。

その名をまた聞くことになろうとは。

蓮子のそっくりさんなのね。

「……それより、助けてってどういうことよ?」

「あー……それは……」

蓮子が助けを求めるように雨守愛を見た。

「……もしかして、私を驚かせようとしたわけ?」

「いやぁ……まさか気絶するとは思ってなくてさ……。あはは……」

「蓮子!」

「ごめんなさい!」

 

愛さんに連れられ、私たちはこれまた真っ白な廊下を歩いた。

どうやらここは教会の中らしかった。

「ふん……」

「メリー、機嫌直してよ~。後でケーキ奢るからさ~」

「絶対許さない!」

「ごめんなさいメリーさん」

「愛さんは悪くないわ。悪いのは蓮子よ」

「ごめんって~……」

「ふん……。それにしても、まさかあの雨守愛が真怪だったとは思ってもみなかったわ」

「生きている頃は人間だったんです。ただどういう訳か、死んでしまってからは、幽霊として真怪郷で暮らすことになってしまったのです」

「やっぱり幽霊だったのね」

愛さんの足元は白い服で隠れて見えなかったが、歩くとき、明らかに足を動かしていないように見えた。

こう、ホバーリングしているような……。

「人間も真怪になり得る。これは重要な情報だよ、メリー」

蓮子は無視無視。

「それにしても、どうして幽霊として雨守教の前に?」

「ご存じの通り、雨守教は私が作ったものではないのです。小さな組織として活動していれば良かったのですが、どうやら世界中に広まっているようでして……。宗教は大きくなれば大きくなるほど、思想の解釈や在り方について争いが起きます。だから、今の内から止めなくてはと……」

「そういうことだったのね」

「だったらもっと早く止めていればよかったんじゃないの? こんなに大きくなる前にさぁ」

「知らなかったんです。雨守教の存在もなにもかも。一年前に菫子さんが来た時に、教えてくれて……」

宇佐見菫子。

そこでもその名が出るのね。

「何者なの? その宇佐見菫子は……。谷中でもその名を聞いたわ」

「彼女はサンジェルマン伯爵と同じで、どんな時間でも同じ姿をしているようです。もしかしたら、タイムトラベラーとかその類なのかも知れません。それと……菫子さんは井上教の過激派……いえ、過激教とでも言いましょうか。その過激教に目をつけられているようなのです」

「井上教?」

「あ……ご存じないですか?」

井上教。

なんだかイジメでありそうなフレーズだわ。

「この真怪郷において、最もポピュラーな宗教です。この教会も、井上教の教会なんですよ」

 

しばらく歩いていると、大きく開けた場所に出た。

「ここがお祈りをする場所です。こんなに広くても、お祈りの時には、満員になってしまうんですよ」

「そうなの」

ステンドガラスから光が漏れて、凄くきれい。

ただ、ステンドグラスには車とか変な鳥とかが描かれていて、何をコンセプトにしているのか全く分からない。

そして、正面には井上円了の肖像画がドデカく吊るされていて、その下には、何故か十字架に磔にされた井上円了の像があった。

「……なんというか、色々と凄いわね」

「言いたいことは分かります。私も井上教に入って、ここの管理を任せられましたが、メリーさんと同じ気持ちでしたよ」

他にも、小さな赤の鳥居が壁際に並べられていたり、天井に注連縄が吊るされていたり、千手観音が寝っ転がっている仏像もあった。

「井上教は、真怪郷を創ってくださった井上円了を愛する宗教なのです。今では人間を愛する宗教にもなりましたが。なので、人間の真似をして、この教会を作ったのです」

「だからなのね、こんなに無茶苦茶なのは」

「真怪たちは人間と接する機会がほぼありません。私のように、幽霊になった者は別ですが……。なので、想像で人間の文化を真似るしかないのです。でも、人間も同じなんですよ? お化け屋敷とか漫画などで、妖怪とか幽霊とか描いていますけれど、それも私たちから見たらおかしなものなのです」

 

それから教会の中を紹介してもらった。

大理石で出来ている賽銭箱。

人間を食べないと誓った牛の銅像。

唯物論を唱える小野篁の絵。

なるほど、めちゃくちゃだけれど、面白い。

井上教の人には失礼かもしれないけれど、博物館に来た気分だ。

だけれど、私が一番気になってたのはそれらではなく、蓮子の事だった。

あれから一言も喋っていない。

もしかして、私が無視するものだから、拗ねちゃった?

いやいや、蓮子に限ってそんなことはないだろう。

ケーキ食べなかったし、お腹でも空いているのかもしれない。

 

「そう言えば、さっき宇佐見菫子が井上教の過激派に狙われているとか言ってたけれど、井上教にも過激派がいるのねぇ」

「えぇ……。井上教は井上円了を愛する宗教……故に人間を愛する宗教にもなるのですが、過激派の解釈は少し違うのです」

真怪郷においても、そういうことがあるのね。

それほどに真怪郷では井上教が浸透しているのだろう。

「過激派の解釈は……井上円了が真怪たちを人間から守ったので、人間は敵というのです」

なるほど、確かにそうとも捉えることが出来るかもしれない。

「菫子さんは、過激派と接触してしまったようでして、そこで争ってしまったようです。宇佐見菫子さんは超能力が使えるらしいので、それを使って……」

本当に胡散臭いわね、宇佐見菫子。

でも、これだけ情報が共通しているということは、やはり本当なのだろう。

一体何者なのよ。

「そうだ。菫子さんにはいらないと言われたのですが、お二人にはこれを渡しておきます」

そう言うと、ポケットから半透明の丸い石を取り出した。

濁ったビー玉みたい。

「これは真怪の石です。これを持っていれば、人間とバレることはありません」

こんな物でねぇ……。

にわかに信じがたいけれど。

「井上教の過激派……過激教に会った時に、人間だと、何をされるか分かりません。ですので、これは肌身離さずお持ちください」

「ありがとう」

「私たちは人間を愛しています。これからも、幽霊の姿ではありますけれど、陰ながら貴女方をお守りいたします」

その時、ステンドガラスからオレンジ色の光が射した。

そして、大きな鐘が何度も鳴り響いた。

「そろそろ時間ですね。この鐘が108回鳴るまでに、向こうの扉からお帰りください。また、お会いできる日を楽しみにしております」

 

扉を出ると、夕日が私たちの目を焼いた。

鐘の音も、もう聞こえない。

「解散反対!」

「雨守教を残せー!」

声の方を振り向くと、保守派の人たちが建物に向かって叫んでいた。

宗教だろうが何だろうが、人間はどうして一つのものでなければ納得しないのだろう。

「こうでなければならない」とか「こうであるべきだ」というものに、どうしてとらわれるのだろうか。

井上教は過激派とそうでない派で分かれてはいるけれど、どっちがどうであるべきだという争いはしていなかった。

それに、人間の真似ごとというゴチャゴチャした仏像などのオンパレードでも、真怪たちは納得して、色んなものを受け入れ、信じている。

人間もそういった「他人の考え方を認める」ということが大切なのかもしれない。

それが無い限り、争いというものは一生無くならないだろう。

……なんてね。

 

帰り道、私たちはダンマリしていた。

なんというか、私が怒っている体だから、私からは話しかけにくいし、蓮子も何故か話しかけられないようだった。

私が無視すると分かっているから話しかけないのかしら?

うーん、そろそろ許してあげないと、本格的に喧嘩してるみたいになってしまう。

そんなことを考えていると、蓮子が私の裾を掴んで止まった。

蓮子の方を見ると、泣いていた。

驚いた。

蓮子の泣き顔を見たのは、幻想郷へ行くのを止められた時以来じゃないかしら?

「ひっ……ひっ……」

「れ、蓮子……?」

「無視……ひっ……しないで……。私……悪かった……から……ひっ……」

「蓮子……」

なんだかこっちも泣きそうになる。

そんなつもりはなかったのに、そこまで傷ついていただなんて。

「……馬鹿ね。何泣いてるのよ……」

「だって……もうメリーと話せなくなっちゃうかもって……友達じゃ……なくなて……ひっ……うあああ……」

鼻水を垂らしながら蓮子は大泣きし始めた。

まさか蓮子がこんなに泣くなんて。

初めて見た。

そんな蓮子の泣き顔に、私の胸は締め付けられて、それに耐えられなくなって、ボロボロと泣いてしまった。

「ばかぁ……。友達やめるわけないじゃない……うぅぅ……」

どうして女ってこんなに涙もろいのかしら。

同情に弱いというか。

でも、なんだか気持ちがいい。

今まで喧嘩もしなかったし、本当の気持ちをぶつけるのが恥ずかしくて、言葉に出さなかった。

だから、こうやって本当の気持ちをぶつけて、泣くのも悪くない。

泣き止むまで、夕日は私たちを照らし続けた。

 

星空の中、私たちは手を繋ぎながら歩いていた。

「ひっ……ひっ……」

「大丈夫?」

「う……ん……ひっ……」

泣き止んでも、蓮子のしゃっくりは止まらなかった。

そういうタイプなのね。

「ごめんね……メリー……」

「ううん……。私も悪かったわ……」

「メリー……うあああ……」

また泣いてしまった。

これは完全に泣き止むまで時間がかかりそうだ。

「蓮子、家に来る? 落ち着くまでいればいいわ。なんなら泊まってもいいし」

「う……うん……ひっ……うあああ……」

返事する時は泣き止むところが、なんだか子供の泣き方そっくりね。

 

「はい、ココア。砂糖たくさん入れたわよ」

「ありが……ひっ……とう……」

何度も擦ったのか、蓮子の目は赤くなっていた。

「メリー……」

「ん?」

「お願いがあるの……」

「なに?」

「ぎゅって……ひっ……してくれない……?」

「へ?」

「駄目かなぁ……」

また泣きそうになったので、急いで抱きしめた。

「これでいい?」

「うん……」

本当、蓮子の体って小さい。

ちゃんと食べてるのか怪しいくらい、肉付が少なくて、体が硬く感じる。

時々するしゃっくりで、体がびくってなるのが少し面白い。

「メリーの体って……ひっ……柔らかいよね……」

「どういう意味かしら?」

太ってるって事?

まぁちょっとは認めはするけれど、口で言う?

放してやろうかしら。

「安心するって……ひっ……事。悲しい時……こうしてもいいかな……」

「いいわよ。だけどもう、二人でいる時は、悲しい思いはさせないわ」

「メリー……」

「ね?」

「……聖母だ。メリー教作ろうかな……」

「やめてよ……。気味が悪いわ」

そう言うと、蓮子は笑った。

やっぱり蓮子は笑った顔が一番だわ。

……泣いた顔もなかなかだけれどもね。

「もう放していいかしら?」

「……」

「蓮子?」

泣き疲れたのか、安心したのか、蓮子は寝てしまった。

すぅすぅという寝息が耳元でしてこそばゆい。

「ふふ、お休み蓮子」

たまにはこういう日があってもいいのかもしれない。

本当、たまにだけれどね。

 

蓮子をベッドに寝かせてから、私もソファーに寝転がった。

「真怪の石ねぇ……」

本当、濁ったビー玉にしか見えない。

これを持っているだけで人間に見られないっていうのは、真怪を相手にした時だけなのかしら?

そう言えば、宇佐見菫子はこれを断ったとか言っていたけれど、どうしてかしら?

超能力があるから?

蓮子にそっくりな宇佐見菫子。

そう、そっくりな……。

「あ……!」

そうだ。

あのカフェから見えた蓮子。

いや、正確には蓮子ではなかったあの人。

あの人も蓮子にそっくりだった。

まさか……もしかして……。

「……いや、考え過ぎか。そんな偶然あるわけないし……」

そうは言っては見たものの、どこか核心に迫るものを感じた。

宇佐見菫子。

真怪郷を行き来できて、超能力を使えて、井上教……過激教に狙われていて、サンジェルマンで、タイムトラベラーで……。

「……ないわね」

考えるのも馬鹿らしく感じて、目を瞑った。

蓮子の寝息が聞こえる。

それにつられて、私もすぐに眠りについた。

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