スズ・クラネルという少女の物語   作:へたペン
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ほんの少しだけ、喜びを分かち合うお話。


Chapter05『喜びの分かち合い方』

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 スズ・クラネル
力:h136⇒147  耐久:g238⇒241 器用:g210⇒212
敏捷:h120⇒132 魔力:e497⇒e490

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【ソル】
・追加詠唱による効果変動。
・雷属性。
・第一の唄ソル『雷よ。』
・第二の唄ソルガ『雷よ。敵を貫け。』
・第三の唄ミョルニル・ソルガ『雷よ。粉砕せよ。』
・第四の唄アスピダ・ソルガ『雷よ。邪気を払う盾となれ。』
・第五の唄カルディア・フィリ・ソルガ:『雷よ。想いを届け給え。』
・第七の唄キニイェティコ・スキリ・ソルガ『雷よ。獲物を追い立てろ。』
・第八の唄ヴィング・ソルガ『雷よ。吹き荒れろ。我は武器を振るう者なり。』
 追加解放式『解き放て雷。』

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 リリのおかげでベルはバックパックを背負わずにすみ、スズもまた武具の持ち歩きや魔石回収用のバックを置いてきたことで実に快適な動きが出来た。

 なんだかんだでお昼にジャガ丸くんの店に通えるのは、かさばる魔石をバックに余裕があるうちに地上に戻るので、そのついでという意味合いも大きかった。

 魔石やドロップアイテムの回収に加え、怪物(モンスター)の死骸を戦闘の邪魔にならない場所にてきぱきと運んでくれるリリのおかげで快適に狩りが出来る。
 さらにスズはリリが買ってきてくれた5000ヴァリスの耐熱グローブを付けたおかげで、リリのアドバイス通り【付着魔法(エンチャント)】をしながら武器が振るえるようになり、右手に剣、左手にディフェンダーを持ち、金色の光に包まれた武器でキラーアントの装甲もすっぱりと切断していく。

 接近戦ばかりしているが【付着魔法(エンチャント)】中に他の【魔法】が撃てないという訳ではない。
 しっかり金色の光に包まれながらも【ソル】でパープルモスを倒している。
 魔法の威力は底上げされていないように見えるが、身体能力向上だけで十分すぎる能力で、何よりも金色の光を身にまとうスズの姿は神秘的で神々しい。
 さらにオーラを身にまとってパワーアップ。しかも制限時間付とベルの男心をくすぐる実にカッコいい仕様で羨ましく思えた。

「スズ様! 後30秒です!」
「ありがとう、りっちゃん! それまでに全滅させるよ!」

 ただし欠点がない訳ではない。
 この【付着魔法(エンチャント)】で自己強化する【ヴィング・ソルガ】は制限時間を超えると解除されてしまうだけではなく、18秒間だけだが【魔法】が一切使えなくなってしまうのだ。

 スズが【ヴィング・ソルガ】を連続使用しようとした時にそれが判明し、リリと共に考察した結果『複雑すぎる術式に脳がオーバーヒートして、使用時間の十分の一秒ほど冷却時間(クールタイム)が必要』というベルにはよくわからない結論に至った。

 ベル一人でも十分無双出来る戦力に加えて、時間制限があるとはいえスズもベルと同等の近接能力を手に入れたことで、戦闘は当然ながら何事もなく終わる。

「スズ様、精神力(マインド)にまだ余裕はありますか?」
「うん。まだ大丈夫だけど、【ヴィング・ソルガ】は一番消費が大きいから少し節約するね」

「スズ様とベル様なら【付着魔法(エンチャント)】に頼らなくても、七階層で十分すぎるほど戦えます。節約してくださると異常事態(イレギュラー)に遭遇した時に余裕を持って対処出来るので、リリとしても嬉しいですね。ですが、最後に確信を得たいので【付着魔法(エンチャント)】を使って、すぐに解除していただけないでしょうか。これで冷却時間(クールタイム)が発動時間十分の一なのか、固定なのかがわかりますから」

「私も気になっていたところだから大丈夫だよ。でも、ちょっと離れていてね。【解呪式】じゃなくて、【追加解放式】って補足にあったから、もしかしたらだけど攻撃範囲があるかもしれないし、少し離れててね?」

「わかりました。ベル様、リリと共にこちらへ」
 リリがベルの手を引いて、スズから50Mほど離れた位置まで連れて行く。

「え、そんなに離れることないと思うんだけど……」
「スズ様は自覚がおありのようですが、お二人の強さは規格外なのです」
「でも僕より強いLV.1の冒険者は沢山いるよね?」

「確かにいますが、普通の冒険者様は一ヶ月で【基本アビリティ】がHに達していれば良い方です。Gに達していたらものすごく才能のある冒険者様なんですよ? さらに言いますと、オラリオに滞在するほとんどの冒険者がLV.1でくすぶり、ここ7階層や、8から10階層より下層に下りることなく生涯を終えることがほとんどです。お亡くなりになって生涯を終える冒険者様もおりますが、成長が伸び悩んで先に進むことが出来ない冒険者様がほとんどなんですよ。それも4人以上のパーティーを組んでいながらです。ベル様の人外魔境を基準に考えないでください!」

 ベルはその人外魔境出身ではないが、成長速度がおかしいのは自分自身も感じていたので、口を挟める個所が一切なかった。
 もうすぐ敏捷がBになると言ったら、きっとリリもエイナも立ち眩みを起こしてしまうのだろうなということは、スズの成長速度と見比べて承知はしている。

 理解はしているのだが、恋い焦がれているアイズ・ヴァレンシュタインを追い越して、大切なものを全部守るにはまだ程遠いので、やっぱり僕はまだまだだな、とベルの憧れは止まることを知らない。


「それじゃあ、りっちゃん。今から【付着魔法(エンチャント)】するからカウントお願いね?」
「はい。もしもスズ様のお近くに怪物(モンスター)が出現したら実験は中止して、無理をせず合流してください!」
「うん。いつも心配してくれてありがとう、りっちゃん!」
 スズは笑顔でリリに手を振ると、ベルの手を握ったままだったリリの手に少し力が入るのが感じられた。

 大きな声でお礼を言われたのが少し照れ臭かったのだろうか。
 ベルがリリの様子を見守っていることにも気づかず、リリは真っ直ぐスズのことを見つめている。

「【雷よ。吹き荒れろ。我は武器を振るう者なり。第八の唄ヴィング・ソルガ】」

 金色の光がスズの体から溢れ出しバチバチとスパークした。

「【解き放て雷】」

 その言葉と共に、文字通り雷は解き放たれる。
 あふれ出る金色の光が勢いよく四散し、スズの周りの床や壁、天井に炸裂していく。
 威力は見た限りでは【ソル】程度であるものの、その有効範囲はスズの周囲半径5Mといったところだろうか。
 過剰に離れておいて言うのもなんだが、中々の広範囲だとリリは思った。

「【雷よ】【雷よ】【雷よ】【雷よ】【雷よ】【雷よ】【雷よ】【雷よ】【雷よ】【雷よ】」

 冷却時間(クールタイム)を確かめる為にスズが何度も基本術式を唱えるが、やはり【ソル】が発動するのは【付着魔法(エンチャント)】が解除されてから18秒後だった。
 【付着魔法(エンチャント)】持続時間を変えられない現状ではこれ以上検証できないので、一先ず冷却時間(クールタイム)は18秒固定だと思っておいた方がいいだろう。

「お疲れ様です、スズ様。派手な解除の仕方でしたが、体に異常はありませんか?」
「うん。ただ何度か【ヴィング・ソルガ】を使ってわかったけど、冷却時間(クールタイム)中はなんだかすごく体が熱くなって汗がすごいよ。いつも以上に動き回っているせいだと思ってたんだけど、動かなくてもすごく暑くて……鎧脱ぎたくなっちゃう……」
 よほど暑いのだろうか、スズの額からぽたぽたと汗が地面に滴り落ちている。

「ダンジョン内なのでそれは我慢してください。濡れタオルで顔や首を拭うだけでずいぶんと楽になるはずです。リリはスズ様のお世話をするので、少しの間ベル様お一人でお守りいただけないでしょうか?」
「大丈夫だよ。二人には指一本触れさせないから」
「ええ、ベル様のこと頼りにしてますよ。ささ、スズ様。濡れタオルです」
「ありがとう、りっちゃん」
 リリがスズを座らせて、水筒に入れている水をタオルに掛けて、それでスズの顔の汗を拭ってあげる。

「気持ちいい」
「息は切らせていないようですが、疲労や精神力(マインド)の方……体感でいいので何か変化はありませんか? いつもより消費が激しかったり、全力疾走をしたような疲労感や体のダルさなどがありましたら、遠慮せずに言ってください」
「暑いって感じたこと以外はいつも通りかな。ただ暑さで気付かないうちに参っちゃわないように気を付けた方がいいかもしれないね」

「そうですね。少なくとも冷却時間(クールタイム)が終わったからといって連続使用しないようにお気を付けください。寿命を縮めるなどのデメリットではありませんが、スズ様が懸念しているとおり熱中症に掛かられる恐れがあります。次回から水を多めにご用意いたしますので、使用戦闘後に頭から水を被るのもいいかもしれませんね」

「私や『アンティーク』は水を被っても大丈夫だけど、鎧や髪飾り大丈夫かな?」

「仮にも精霊の力が掛かった『アンティーク』ですから、体以外の部分も保護してくれると思いますよ。一度冷やせばその『無駄な家庭セット』が所持者を快適に生活させようと常温を保ってくれるはずなので、熱もすぐ引くかと思われます。ただ、逆に言うとそんな『無駄な家庭セット』を装備しているにも関わらず、熱気を抑えられていないので、【付着魔法(エンチャント)】を使用する際は必ずコートとリボンを身につけた状態で発動してください。『無駄な家庭セット』のおかげでスズ様の体温上昇が、その程度に抑えられている可能性が大きいです。決して『無駄なアンティークセット』を外して試そうなどとは思わないでください。スズ様が使用しているものは、武器を熱して使用者に火傷を負わせるほどの【付着魔法(エンチャント)】なんです。命を懸けてまで試すことではありません。くれぐれも自分の身を大事にしてください」

 ベルがスズとリリを守るために、キラーアントやニードルラビットを倒している間も話は続いている。

「やっぱりリリはすごいね。僕じゃそんな的確にアドバイスしてあげられないよ」
「一人で7階層の怪物(モンスター)を会話しながら倒せる余裕があられるベル様に言われても、嫌味にしか聞こえませんよ?」
「ご、ごめんリリ! そんなつもりじゃないよ! 本当にすごいなって思って…本当にごめん!」
「いえ、ベル様がお優しいことは十分理解できています。ベル様があまりに無自覚なので少しからかってみただけですのでご安心下さい」
 謝るベルを見て可笑しそうにクスクスとリリは笑みをこぼす。

「そろそろお昼だね。りっちゃん、ルームの真ん中でお昼にしよう」
 いつもはジャガ丸くんの露店に行くのだが、今日は丸一日リリに付き合おうと思っていたので、スズがお弁当を作って来たのだ。
 商店街の人達にはあらかじめダンジョンでお弁当を広げることを昨日の夕方の内にスズが伝えているので、突然ジャガ丸くんの露店に来なくなったと騒ぎになることはないだろう。

 スズは背負っていたバックパック、元はベルが使っていたものだが、そこからビニールシートと三人分の弁当箱を取り出して、不意打ちを受けないように広いルームの中央に陣取った。

「バックパックを背負っていたのはそういう理由でしたか。飲み物と非常食くらいリリがご用意してますよ?」
「りっちゃんとベルに私のお弁当食べてもらいたくて。ただのサンドイッチだけど、非常食よりは味気あると思うよ?」

 お弁当の中身は、砂糖を入れてかき混ぜてほぐしながら熱したジャラジャラ卵、スライスしたキュウリに千切りにしたキャベツ、燻製肉のスライス、それらをマヨネーズとケチャップで味付けをしてパンで挟んだ大きめのサンドイッチが、一つの弁当箱に4つ詰められていた。

「いつもこんな手の込んだものを食べているんですか?」
「ご飯は冒険の準備と同じくらい大切だよ。ご飯食べないといざって時に力出せないから、お金掛けなくても美味しいもの食べられるように毎日頑張ってるよ。私のつくったものを神様とベルに美味しく食べてもらって、少しでも元気になってもらえたら嬉しいかなって。だからりっちゃんにも美味しく食べてもらえたら嬉しいんだけど、お口に合うかな?」

 スズのその言葉に、おそるおそるといった感じにサンドイッチをつまみ、口元まで持っていき、しばらくじっとそれを見つめている。
 そんなリリの様子をベルとスズは、美味しく食べてもらえるかなとドキドキと見守っていた。

「そんなに見つめられていると恥ずかしいです。ちゃんとリリも食べますから!」
 リリが頬を赤めながらかぷり、と小さくかぶりついた後、目を見開いて、もう一度だけかぷりとサンドイッチにかぶりつく。



「美味しい……です」



 リリは本当にそう思った。
 ただそんな一言で喜んでハイタッチをかわすベルとスズの姿を見て、リリは生まれて初めて、食事が楽しいものと感じられた。

 初めて感じる食事の幸せに、リリは『神酒(ソーマ)』以上とも思える『幸せ』という酔いに浸りそうになって、思わず涙が出そうになるがぐっと堪える。

 こんな簡単なことで幸せに酔えるのに、なんで【ソーマ・ファミリア】はあんなにも醜く互いに争い、つぶし合い、他人に迷惑を掛けるのか。
 何でいつか必ず迷惑を掛けるとわかっていながら、幸せに浸ろうとしているのか、何でリリは【ソーマ・ファミリア】なんかの親を持ったのか。
 昨日から続く酔い止めの劇薬が頭を冷ます。

 リリは酔いすぎないように気を付けながら、胸を締め付けられながら、お猪口一杯分のささやかな幸せを楽しむのだった。


§


 夕暮れ時、地上に戻らずに暴れに暴れた本日の稼ぎは34000ヴァリスと恐ろしい額になっていた。
 公衆施設のシャワーを利用した後、ギルドの換金所から受け取ったそのあまりの額に三人は目を丸くしてしまう。

「「やああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」」

 ついついベルとリリはその額に興奮して人目を気にせずに飛び跳ねてしまった。
 昨日もものすごい金額を稼いでいたが、その倍の額だ。
 スズは20000ヴァリス以上は稼げるかもとさらっと言っていたが、そこからさらに10000ヴァリス追加である。
 スズは課金窓口に多く渡しすぎてないか確認を取っているが、間違いなくこの額で合っているので受け取っても大丈夫だと鑑定士が微笑ましいものを見るような笑顔を作る。

「ベル! りっちゃん! 計算間違ってないって! さすがにここまで劇的に上がるなんて予想外だよ! これもりっちゃんのおかげだよ、ありがとうりっちゃん!」

「馬鹿言っちゃいけないです、スズ様! 前にも言いましたが本来5人パーティーが一日に稼げる金額は25000ヴァリスくらいです。つまり、スズ様とベル様はお二人で彼らをしのぐ働きをしたことになりますっ! 特に攻伐特化(スコアラー)であられるベル様のご活躍はそれはもうお一人で20000ヴァリスは稼ぐ勢いでした!」

「いやあ、ほら、兎もおだてりゃ木に登るって言うじゃない! それだよ、それ!」
「ベル様が何を言いたいのかリリには全くわかりませんが、取りあえず便乗しときます! ベル様とスズ様すごい! まだ上を目指せますよ!!」
「褒めすぎだよリリぃ!」
「ベルとりっちゃんのおかげだよ。これからもみんなで頑張ろうねッ!」
 さすがに窓口前は邪魔になるのでやらないが、換金所から離れた通路の隅で三人で「いぇーい」とテンションに任せてハイタッチをした。

「それじゃあ今日のりっちゃんのお給料だよ」
「やっぱり躊躇なく半分渡すんですね。ありがたく頂戴しているリリが言うのもなんですが、お二人はもう少し常識と物欲というものを知った方がいいと思います。リリはお二人のことが危なっかしくて見ていられませんよ」
「ご、ごめん。でも、ほら。リリが心配してくれてるし大丈夫かなって思うんだけど」
「ベル様のそういうところが常識がないと言っているんです! お二人は本当にお人好し過ぎますよ……」
 リリにまた大きくため息をつかれてしまった。

「ところでリリ。今日の予定はどうかな? もしよかったら沢山稼げたし、僕達の神様も呼んでリリの歓迎パーティーをやりたいんだけど」
「……いえ、リリは」



「遠慮しないんでもいいんだよ、りっちゃん。りっちゃんはここにいていいんだよ?」



 突然スズがぎゅっとリリの手を両手で優しく握りしめた。
「りっちゃんが何を迷ってるのか私にはわからないけど、私はこれからもりっちゃんと一緒に冒険したいから、遠慮しないでくれると嬉しいな。理由は言わなくていいし、隠し事してても、後ろめたいこと考えてても、私はりっちゃんのこと嫌いになんてならないから。りっちゃんの歓迎パーティーを私がやりたいの。ダメ、かな?」

「スズ様が、やりたい?」
「うん。りっちゃんが笑ってくれたら私も嬉しいから。私のワガママ聞いてくれたら嬉しいなって」
 結局それは相手のことを思っての行動でしかないのに、それをスズは自分のワガママだと言い張る。

「……スズ様がなされたいのでしたら、これもサポーターの仕事の一つです。ただし、リリはお酒を飲めませんからね?」
「うん。ありがとうりっちゃん!」
 あまりに嬉しかったのか、スズはリリに飛びついて、勢い余ってリリは押し倒されてしまった。

 会って二日目で飛びつくなんて馴れ馴れしいにも程があるのに不思議と嫌ではない。
 リリはそれをとても温かく感じた。

「ごめんねりっちゃん! 大丈夫!?」
「リリは大丈夫で――――スズ様! ロングコートがありえないくらいめくれて丸見えになっていますよっ!!」
「スパッツ穿いてるから大丈夫だよ?」
「首を傾げてないで早くどいて直してください! 回りの冒険者様が皆スズ様のことを凝視していますから!」
「? えっと……ごめんね、りっちゃん。重かったよね?」
「だからそこじゃありません!」

 スズがどいていてめくれ上がってしまったロングコートをさっさと直した。その間にリリは「透けてた」「見えた」とひそひそ話をする男冒険者達を睨みつけると、男たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
 おそらくスズのはしゃぎ声に釣られて集まってきた男達、それに加えてなぜかギルド内まで嗅ぎ付けてきた男神もいたが、そういう者達なのでスズの味方である限りは、サポーターのくせにと因縁づけられることはないだろう。

 つけた瞬間に回りから簀巻きにされる。
 そう思って『白猫』をリリにとっての安全地帯として選んだのだから。
 それにしても、無自覚とは恐ろしいものだ。

 シャワー室で見たが、あんな薄くて体にフィットするスパッツで見えても大丈夫だと本気で信じているのだろうか。
 はっきりと教えてあげた方がいいかもしれないが、それはそれで『見守る会』から楽しみを奪う結果になって、ないとは思うが『敵』として見られそうで怖い。

「スズ様は無警戒すぎです」
「嬉しかったからつい……怒ってる?」
「遠まわしに言っても気づかないスズ様に呆れているだけです」
 あまりの的外れなスズの回答に、リリはもう何度目になるかもかわからない大きな溜め息をついてしまう。

 こんな見ているだけでハラハラしてしまうような常識を知らないお人好しに、常識を教え込むまでは一緒に居てもバチは当たらないだろう。
 そう自分自身に言い訳をして、スズとベルに手を取られながら夕暮れの街を歩くのだった。




体にぴっちりフィットした黒スパッツ。
汗を掻こうものならそこからにじみ出るエロスは計り知れない、と暑さに頭を沸騰させながら思う今日この頃でした。