スズ・クラネルという少女の物語   作:へたペン
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頑張って甘えてみるお話。

【WARNING】【WARNING】【WARNING】【WARNING】

 【注意】
限界が近づくとカラータイマーが点滅します。

【WARNING】【WARNING】【WARNING】【WARNING】


Chapter09『甘え方(中級編)前編』

 柔らかくて温かいぬくもりに包まれてベルは目を覚ました。
 また寂しかったのかなと思いながら状況を確認してみると、今回はベッドに連れ込まれたのではなくスズがベルの眠っているソファーに侵入してきたようだ。

 スズがベルの体の上に乗っかりギュッと縋り付くようにベルの体を抱きしめて胸に顔を埋めている。
 怖い夢でも見てしまったのだろうか。
 相変わらず密着されると胸が高まり頬を赤く染めてしまうベルだが、スズはまだ子供だし両親を亡くしていると聞いているので寂しくなって温もりを求めてしまうのは仕方のないことだとベルは頭で理解できている。

 だからベルはいつも通り邪念を振り払い「しょうがないな」と頬を緩ませて眠っているスズの頭を優しく撫でてあげた。

「ん……」

 スズが身動ぎをしてぎゅっとベルを抱きしめる腕に少し力が入る。
 純粋に可愛いなと思った。

 女性に免疫のない初心なベルはまだ気恥ずかしさが残っているものの、ベルにとってスズは可愛い妹なのだ。
 不意なことが無い限りしっかり妹として接してあげられていることにベルはほっと出来た。
 今日は【英雄願望(アルゴノゥト)】が大人しくしてくれているので、抱き心地のいい最上級の抱き枕である甘えん坊な妹に慌てふためくことなく接してあげることが出来る。


 そう思っていたのもつかの間、身動ぎするスズの下半身がちょうどベルの下半身を刺激し、その不意打ちのせいで事前にキャンセルする暇もなく【英雄願望(アルゴノゥト)】が蓄力(チャージ)を開始した。


(台無しだよ! 兄失格だよ! 僕の安らいだ心を返してよッ!? )
 そう叫びたい気持ちをぐっと我慢して【英雄願望(アルゴノゥト)】をキャンセルする。

 妹として接することが出来ていて安心していたところにこれだ。
 【英雄願望(アルゴノゥト)】は空気を読んでもらいたい。
 いや、【英雄願望(アルゴノゥト)】が発動していなくてもこの状態は不味い。
 【英雄願望(アルゴノゥト)】発動と同時に硬くなってしまったベルの『得物』が位置的におそらくスズの大切なところに押し当たっている。

 妹相手に硬くなるのも不味いが当たっている個所が何よりも不味い。
 否応なく女性として意識してしまう。【英雄願望(アルゴノゥト)】の発動とキャンセルが先ほどから繰り返されており、毛布から漏れる光が部屋がちかちかと点滅している。

 【英雄願望(アルゴノゥト)】は行動への蓄力(チャージ)実行権である為、キャンセルしてすぐに発動されると蓄力(チャージ)している行動を起こすまで身動き一つとれなくなってしまう。
 この場合蓄力(チャージ)している行動とは何だろう。
 カンガエチャイケナイ。

 ベルはキャンセルの一瞬の間を使って少しずつ離脱を試みているのだが、前回と同じくスズはしっかり抱きついていて離してくれそうにない。
 それどころか自分が動こうとするとベルの『得物』が刺激されて余計に【英雄願望(アルゴノゥト)】が自己主張をしてしまう。


『イクのだ、ベルよ』


 そんな祖父の声で幻聴が聞こえてくるほど今のベルはいっぱいいっぱいだった。
 胸の鼓動と共に点滅が早くなっていく。
 見られたら非常に不味い状態だ。
 『ナニをやっているんだい、ベル君』とヘスティアには怒られてスズに近づかせてもらえなくなるかもしれないし、スズも流石にこうまで自己主張している【英雄願望(アルゴノゥト)】を見れば察してしまうだろう。

 スズを起こさず刺激せず離脱するか、もしくは気合でスズを起こしてもいいから緊急離脱を試みるしか道はない。



『寝込みを襲えぇーい!!』



 頭の中の祖父が叫ぶ。
 しかしその隣で頬を膨らますアイズが居て、激怒するヘスティアまでいる。
 これはいくらなんでも多勢に無勢だ。
 心から慕っている祖父と同じくベルの中で大きな存在である二人がストッパーになっているのだから、祖父に行動を後押しされようとも大切な妹の寝こみを襲うなんて出来る訳がない。


『ベル。男だったらハーレムだ! これは英雄になるための長く険しい道だ! 起きない程度に肌をおさわりするくらいいいじゃろ!? 寝こみを襲わずしていつ悪戯をするっ!! チューくらいせんかっ!! 儂はお前をそんな子に育てた覚えはないぞっ!!』


 頭の中の祖父がキスや寝間着の中に手を突っ込むくらい問題ないと倫理の欠片もないことを訴えかけてくる。
 それなのになぜかものすごく魅力的な提案に感じてしまった自分が情けなくて、慌ててそんな邪念を振り払う為に頭の中でスズの姿を探す。

 スズが嫌がることなんて絶対に自分はしない。
 何があってもしない。
 だからスズが嫌がっている姿を想像すればこの衝動は確実に緊急停止して冷めてくれるはずだ。







『恥ずかしくてもベルが嬉しいなら我慢、するよ?』







 そうでした、そんなこと言ってました。
 『ここから先はぁ、聖戦なりぃぃっ!!』と脳内の祖父が巨大化して剣を携えたアイズと壮絶なる最終決戦を繰り広げる。
 ヘスティアはその戦いについて行けずにクレーターでくの字になりながら『すまない、ベル君……。『ヤムチャった』よ……』と力尽きてしまっていた。
 意味はよくわからないが倫理の支え部分だったヘスティアが脳内から退場してしまったのは痛い。
 しかもベルの中で絶対無敵な筈のアイズが巨大な祖父に押され始めていた。
 これは不味いと助けに向かうが脳内の自分も弱く一撃でやられてしまう。
 実に情けない。


 それでも、こんな弱くて情けなくても、一番恥ずかしいことは『何も決められずに動けないでいること』だと教えてくれたのも祖父だ。
 その教えは祖父が居なくなってからもずっとベルの心で生き続けている。
 惚れた女の子達の為なら男は英雄だってなんだってなれるって言ってくれたのは祖父なのだ。
 大きなことを成し遂げれば喜んでくれると言ってくれて、それをいつまでも誇りに思うと言ってくれたのは祖父ではないか。

 幼い頃ゴブリンにボコボコにされて祖父に助けてもらった時も、『よく耐えた。胸を張れ』と褒めてくれて、『カッコ良かったぞ』と言ってくれた。
 あんなに情けない自分のことを『自慢の孫だ』と言ってくれたのだ。

 大切な妹の為にここで立ち止まる訳にはいかない。
 実際は進まないようにしている訳だが細かいことはどうでもいい。
 とにかくスズは守らないといけない大切な女の子なのだ。







 ――――――――お願いだから、いなくならないで――――――――







 そう泣きながら何かに謝り続けたスズを見て、絶対に取りこぼさないように強くなりたいとベルは願った。

 その想いは間違いなんかじゃない。
 初めから『女の子に好かれる為に英雄に憧れた』訳じゃなくて『大好きな人の為に英雄に憧れた』のだ。
 だから、温もりを求めている妹に欲情するのなんて間違っている。
 スズが自分のことを兄でいて欲しいと思っている限りベルは兄で居続けようと自分自身に誓ったのだ。

 結局振出しに戻って【英雄願望(アルゴノゥト)】はその光を収める。
 勝手に発動するのは本当に止めてもらいたいところだ。
 本格的に誤発動対策で【英雄願望(アルゴノゥト)】の特訓をした方がいいかもしれない。

 特訓内容はひたすら股関節中心部の『得物』に対して【英雄願望(アルゴノゥト)】の蓄力(チャージ)とキャンセルを繰り返し行い慣れることだろうか。
 とても嫌な特訓方法である。
 間違いなく他者から見たら変質者として見られるだろう。
 少なくとも自分はそんな人物に近づきたくない。
 先ほどまでの自分がまさに『得物』を点滅させていた訳で首をくくりたくなってくるが、とにかく何でもいいからスズに欲情するよう後押しをしてくる【英雄願望(アルゴノゥト)】に対して何らかの対策は必要である。


「……ベル……おはよう……」
 とにかくスズやヘスティアが起きる前に収めることが出来たのは不幸中の幸いだろう。
「おはよう、スズ。また一緒に寝たくなっちゃったの?」
 昨日はスズは更新中に寝てしまったことを伝えて、何かを隠すようにヘスティアは「ボクも今日は疲れたから寝るよ」と話を強引に打ち切りスズを抱きしめながらベッドに横になっていた。

 おそらくジャガ丸くんの店で起きた『突然スズが怯えだす』事態に陥ってしまったのだろう。
 スクハが聞かないでと言っていたので『自分だけ蚊帳の外』だとか『力になってあげられなくて自分の無力さを嘆く』ことはしない。
 言葉はなくてもしっかりスズはベルを頼って温もりを求めてくれた。

 なら何も聞かずに温もりを与えてあげるのがいいかなとベルは思っている。
 自分だって祖父がいなくなって悲しいけど、そのことに気を使われるよりも一緒に頑張ってくれたり笑ってくれた方が嬉しい。
 だからいつも通り兄としてスズと向き合ってあげるのが一番だ。

「……うん。よく覚えてないけど……怖い夢、見ちゃって。ごめんね、またびっくりさせちゃった……かな?」
「すごくビックリしたよ。その、えっと、恥ずかしいけど……僕も嫌じゃないから」

 そう言ってあげるとどこか安心したようにスズは口元を緩めてから、少し頬を赤らめてどこか迷った仕草をした。
 何だろうなとその仕草を見守っていると、またぴったりとスズがベルの胸に顔を埋めて身を任せて来たので、ベルは迷うことなくスズの頭を優しく撫でてあげる。

「大丈夫だよ。僕はどこにも行かないから。今日も一緒に頑張ろう、スズ」
「うん。ありがとう…ベル。今日も一緒に頑張ろうね」

 スズは体を起こしていつもの笑顔を浮かべて、ベルの体から降りて身支度をし始める。
 今日でアイズとの特訓も5日目。
 もうすぐ【ロキ・ファミリア】の遠征が始まって特訓も終わってしまうが特訓の成果は確実に【ステイタス】として表れている。
 アイズのおかげで敏捷と耐久がSの最大値である999に迫り、魔力以外もSに到達したのだ。

 この際全部999にしてもらう勢いで頑張ろうとベルは気合を入れた。

 いつも通りスズが身だしなみを整えている間にさっとベルは特訓と冒険の準備をすませて、スズが着替えられるように地下室から出て階段を登り祭壇の前にベルの為に置いた椅子に腰かけながら待つ。

 するとまだ夜明け前だというのにリリがひょっこりと教会の入り口から中の様子をうかがいベルの姿に気付くと中に入ってくる。

「おはようございます、ベル様。何とか『剣姫』との特訓に行かれる前に間に合ったようですね」
「おはよう、リリ。スズに何か用かな?」
「スズ様とベル様に、ですね。リリが下宿先でお世話になっている方が少し体調を崩してしまいまして。看病をしてあげたいので今日は一日お暇を頂きたいのですがよろしいでしょうか?」
「全然大丈夫だよ。お世話になってる人が体調崩しちゃったんだから元気な僕達のことよりそっちを優先してあげないと。僕達もお見舞い行こうか?」
「ありがとうございます。ですがお見舞いの方は大丈夫です。狭いノームの万事屋なので大人数で押しかけるとぎゅうぎゅうで動けなくなってしまいますのでごめんなさいです。お気持ちだけでリリはとても嬉しいですから」
 リリはそう苦笑した。

 要件が終わっても去らないところを見るとしっかりスズにも口伝えをしたいのだろう。
 スズが出てくるとそのことをしっかりと口伝えして、スズはリリにお見舞いの品としてリンゴを袋に詰めて渡す。

 それを遠慮することなくリリは受け取り嬉しそうにお礼を言っていいた。
 リリとスズが仲の良い友達になってくれて本当に嬉しく思う。

「それではベル様、スズ様。ダンジョンに潜るなら無理はなさらないでくださいね」
「心配してくれてありがとう。今日はアイズさんと相談して、特訓時間を延ばしてもらえるようなら特訓に集中しようかなって思うよ。スズもそれでいいかな?」
「うん。大丈夫だよ。シルさんにもお料理教えてあげたいし……。せっかくだから普段なかなか時間を割けないことに手を出してみたいな」
「これからもお弁当を受け取るのでしたら、ぜひリリの為にもそうしてください。あの味を思い出す度に吐き気が込み上げて来てスズ様の手料理が恋しくなっていますから」
「あれは……うん、シルさんが普通の物を作れるように頑張ってみるよ」

 その意見はベルも同意だ。
 あんな『物体X』をもしも毎日悪意なく手渡された日にはベル達の胃と心は壊滅的なダメージを負ってしまうかもしれない。
 スズの為にもシルの為にも……なによりも自分達が冒険者として生き残る為にもぜひともシルにはまともな料理を作ってもらえるようになってもらいたいものだ。

「それでは、明日もこれそうになければまたこの時間に顔を出しますので」
「うん。また明日ね、りっちゃん。早くノームさん元気になるといいね」
「また明日、リリ。寝不足でリリまで倒れないように気を付けてね」
「お気遣いありがとうございます。では、また明日です。スズ様、ベル様」
 リリが嬉しそうに笑って大きく手を振って去って行くのをベルとスズも笑顔で手を振り見送った。


§


 アイズは自分との特訓で日に日に強くなってくれているベルを嬉しく思う反面、手加減が上手く出来ずに毎度気絶させてしまうことを申し訳なく思ってしまっていた。

 やはり自分は教えるのは向いていないのではないかとへこんでしまうが、何度倒れても気絶させられても真っ直ぐ自分なんかの指導を受けてくれるベルのことを「すごいな」と正直に思う。

 どこまでも真っ直ぐに『大切な者を守る為』に強くなろうとするこの少年の力になってあげたいと毎日あーだこーだ特訓内容を考えているのだが、ベルが頑張って身につけてくれているだけで毎度毎度気絶させているのは教え方としては間違っている気がしてならない。

 気絶しているベルに膝枕をしてあげながら、ふとスズの特訓に付き合ってあげているレフィーヤの方に目をやってみる。

 LV.3のレフィーヤが杖を振るいそれをスズがさばくだけの作業。
 しっかりレフィーヤは手加減出来ているのでスズが攻撃をまともに受けたことは今のところ一度もない。
 スズの反撃がレフィーヤにあたるが、LV.3のレフィーヤがLV.1であるスズの模擬刀を食らってもダメージはない。
 見事に受け流されて体制を崩され尻餅をつかされてしまうことはあってもレフィーヤは無傷だ。

 あのような感じに攻撃の隙をついたり格上相手の体勢を崩す特訓をしてあげたいところなのだが、今のところアイズは一方的にベルを攻撃しているだけだ。
 ベルの白兵戦能力を上げる目的で特訓している筈なのに攻撃させてあげられていない。

 それでもベルは相手の隙を見抜くのが得意なのか反撃に転じてくれるときがあるのだが、その際につい力加減を間違えて【ステイタス】に頼った動きで攻撃をさばき反撃で気絶させてしまうのだ。
 同格なら確実に当てられるタイミングで攻めてきてくれているのに、それを軽くあしらってしまっている自分がいる。
 しっかり今のは良かったと褒めてあげたいところなのだが、さすがに気絶させられておいて褒めるのはベルを傷つけてしまうかもしれないので出来ない。ものを教えるというのは実に難しいということを実感してしまう。

 しかし、異様な光景をアイズは目にしてしまった。レフィーヤが加減しているとは思えない速度で振り降ろした杖をスズがLV.1程度の速度と力で受け流し、その勢いを利用されて完全に体制を崩されてレフィーヤの【ステイタス】では避けられない状況を作られてしまい、ダメージのない一撃がレフィーヤに決まる。

 後衛であるレフィーヤは前衛としての【ステイタス】はLV.2の上位前衛程度の能力であるが、それでもLV.2上位の【ステイタス】だ。
 身体の器が向上していないLV.1が見える速度なのだろうか。
 いや、見えているからこそ短期間とはいえミノタウロスの猛攻を受け流せていたのだろう。

 体がついて行けずに長時間受け流し続けることは無理だったがスズはLV.2以上の攻撃速度を見えている。
 これは間違いない。
 なら、どこまでの速度なら目で捕えられるのかが気になった。
 ベルには少し悪いなと思い眉を顰めながらも気になったらどうしても知りたくなってしまいベルの頭を地面に下ろして立ち上がる。

「白猫ちゃん、レフィーヤ……少し、いい?」
 二人が訓練を中断してアイズに注目するのを確認した後、LV.6の速度で13回全力で素振りをしてデスペレートを鞘に納めた。
 剣圧で風が巻き起こり突風がレフィーヤとスズの髪を揺らし、突然のことにきょとんと二人が不思議そうにアイズのことを見つめている。

「……今、私が何回攻撃したか、見えた?」
 常人なら見えない。
 LV.2でも見えずに鞘から剣を抜いたかもわからない速度だった自信がアイズにはあった。

「えっと……4回、でしょうか?」
「12回ですよね。いきなりどうしたんですか?」
 前者がレフィーヤ、後者がスズだ。
 1回分カウントを間違えているが、唐突にやっても12回は確実に見られている。
 LV.1の身体能力の域を超えていないスズがだ。

 普段本気を出していないだけなのだろうか。
 それとも、身体能力が追い付いていないだけで『魂』だけが既にLV.6の域に達していて見えてしまっているのだろうか。

 どちらにしても本来ならありえないことだ。
 子供のスズがこれなら『レスクヴァの里』の大人の能力はどれほどのものなのだろう。
 そして『黒竜討伐』の目標目安はどの程度の能力なのだろうか。

 聞くのが怖かった。

 それでも聞かなければいけない。
 最近ベルを夢中で特訓していて忘れていたが、急成長する強さの秘密を知る打算もあって特訓に誘ったのだ。
 ここで聞かずしていつ聞く。
 アイズは二人に悟られないよう息を飲んで心を落ち着かせる。

「……白猫ちゃんの里は……『レスクヴァの里』は……一体レベルいくつの冒険者なら『黒竜』を倒せると思って、鍛錬を積んでいるの?」
 
「そうですね……。防壁と身体能力向上補助ありなら人類の枠を超えたLV.8の冒険者が6人。LV.10の冒険者なら単独で討伐可能だとお母様は見てました。なので人類の限界であるLV.7を超えた超英雄を目指して頑張ってましたね。それ以下の戦力だともっと数を揃えなければいけないのに加えて犠牲が多く出てしまいますから」

 LV.6にようやくなれたアイズには気の遠くなるような数値だった。
 そもそも迷宮都市(オラリオ)最強とされるオッタルのLV.7だ。
 犠牲を出さずに討伐するにはそれより上のLV.8を6人。
 それも【魔法】での補助つきでだ。

 LV.6を100人揃える方がまだ現実味がある戦力だがそれでも犠牲が出てしまうだろう。
 アイズが全く手の届かないところに『黒竜』はいた。

「スズさん……『レスクヴァの里』にその超英雄と呼ばれる方は……」

「さすがに到達できた人はいないですよ。過去最大でもLV.6級が限界ですね。LV.3からLV.4くらいの力を持った人達がうちの里でも一流の戦士扱いです。だから……ただ一人『恩恵』を受けた私が目指さないといけないのはLV.10です。単独で『黒竜』を倒せるくらい私は強くなりたいです。まだLV.1ですけど……いつか絶対にLV.10になって……。私の代で『黒竜』を討伐します。それが今の目標ですね」

 それでも誰一人辿り着いていない域をスズは真っ直ぐと見つめていた。
 やっぱりこの兄妹は心が強いなとアイズは思った。

「私も、目指すよ。LV.10。誰もなったことのない、LV.8を遥かに超えた先を……」
「アイズさんに目指されたら先に『黒竜』を倒されてしまいますよ」
「なら……一緒に、倒せばいい」
 その言葉にスズはまたきょとんとして嬉しそうに笑ってくれた。

「そうですね……。ベルにアイズさん、レフィーヤさん、ティオナさん、ティオネさん、ベートさん。みんなで『黒竜』を倒すのも悪くないですね。リヴェリア様も合わせた8人のLV.8ならかなり安定する筈ですし。お言葉に甘えて挑む時は声を掛けさせて頂きますね」
「え、わ、私も入ってるんですか!? 無理ですよっ!! 私なんかがそんなフィンさんやガレスさんを差し置いてメインメンバーなんて無理ですっ!!」
「……私も、レフィーヤと一緒がいい。フィンやガレスも合わせて、皆で戦いたい」
「やります! 私も頑張りますっ!」

 夢物語だけど、きっとみんなで辿り着ければどんな困難だって乗り越えられる。
 『レスクヴァの里』が『神の恩恵』を頼らずにその域を目指し続けていたのだ。
 『神の恩恵』に頼っているのだからそのくらい目指さずに何を目指す。
 まだ見ない未知の領域にアイズは期待を膨らませるのだった。




点滅させながらも、しっかり自分を見つめることが出来るベル君。
情けなくても、カッコ悪くっても、しっかり大切な人の為に動けるベル君はとても強いと思います。ずいぶん原作と比べて心身ともに成長加速している模様。

LV7の先にある超英雄。強さの自己解釈が入っておりますが、ランクアップする度に人は神に近づいて行くことと、オッタルさんが今のところ最高レベルなので、この作品での人類最高レベルは7となります。
限界を超えるとLV8になり徐々に人の身でありながら少しずつ神格化していくことでしょう。
TRPG『ソード・ワールド』の人類ではどうにもできない相手と戦う為の超英雄ポイントを参考としております。

そして一度話数を超えてしまったので13話で納めなくてもいいかなと、この章は少し長くなるかもしれませんがご了承ください。