記憶と彼女   作:LiaLiA

1 / 2
どうもリアです

最初の投稿はかなりごちゃってたんで
今回新しいお話に挑戦です

拙い文章ですが温かい目で見守ってやってください


あの時の記憶とあの時の彼女

4月、それは学生たちにとって、

いや、いろいろな社会に生きる人にとって

大きな転機になる場合が多い。

 

働く部署が変わったり、転勤や転校などもあるかもしれない。

 

そう、八剱奏はまさにその場所に立っていた。

 

親の転勤で住み慣れた土地を離れ、

電車に揺られてこの新天地に足を踏み入れるのである。

 

期待に胸を膨らませ、不安に頭を悩ませ、

今日を迎えたのである。

 

そう、八剱にとってこれはただの転校ではない。

今までとは劇的に違う環境下におかれるからである。

 

「なんていったって、一人で寮生活だからな...」

 

今まで、家で親のすねをかじりながら生きてきたが、

それも今日でおしまい、自分だけの生活が始まるのである。

 

出発する前には父と母は大いに慌てふためき、

あれもったか?これはいらないのか?

と、とても世話を焼くのである。

 

まったく心配性だな、と思う反面、

少しうれしくもあったりした。

 

 

─電車に揺られて1時間、車内にアナウンスが流れた。

 

「次は、亜桜学園入口、亜桜学園入口、ドアから手を放してお待ちください」

 

特徴のある車掌さんの声が聞こえる。

遂にやってきたのである。

 

「亜桜学園入口、亜桜学園入口、お出口は右側です」

 

プシューッと扉の開く音がして

車内に風が流れ込んできた。

 

「さて、行くか。」

 

スクールバックの手持ちを握った少年は、そう一言つぶやくと、

まだ見ぬ場所への一歩を踏み出したのであった。

 

 

 

「御堂高校から来ました、八剱奏です。一年間よろしくお願いします。」

 

簡単な自己紹介の後、恒例の拍手喝采。

 

「八剱くんは来たばかりだから、わからないこと教えてあげてねー!」

 

「はーい」

 

「じゃ、八剱くんの席は窓際の後ろから三番目、宮坂の隣で」

 

「あ、はぁ...」

ちらっとお隣さんになるであろうという人に目を向けると、見覚えのある顔だった。

入学説明会の時に生徒会長と名乗り、校内説明をしていた宮坂由奈...とかいう人だった気がする。

 

そう、確か三年生のあの...

 

”三年生...?”

 

「いや先生あの人って三年生なんじゃ」

「あぁ、ここの学校はね、クラス分けは実は学年単位の分割じゃないんですよ。」

 

「え、それじゃあどういう...」

「入学説明会の時に説明されなかったんですか...?まあいっか」

「いや、きいてなかった...かもしれませんね...」

 

「簡単に説明するとこうだね。この学校の学年は”入学試験成績”で振り分けられるんですよ。」

「ほうほう...それで?」

 

「この学校の入学試験は5教科500点満点だってことはしってるかな?」

「そのようでしたね」

 

「八剱くんは自分の入学試験の点数を知っているかな?」

「自己採点ならしましたが...」

 

「まあ簡単に言ってしまえば君は、入学試験を満点通過している。」

クラス内にどよめきが起こる。

 

「あー、自己採点あってたのか...」

 

先生は、うんうんと頷き

 

「まあつまり、君は主席で入学しています。と言っても、宮坂も満点合格だから年は違えど同率なんですけどね」

「じゃあつまりこの教室は...」

「そう、成績優秀者の塊です!」

 

正直うわ、と思ってしまった。

成績優秀者ばかりとなると、お堅い人たちが多そうだ。

 

「お堅い人ばっかなのか?とか思ってるかもしれませんが、そんなこともありませんよ」

「なんでわかったんですか...」

「大体いつも言われるからです」

「さいですか...」

 

「ちなみに君は何とも思ってないようですが、満点合格者はこの学校ではまだ二人目です。」

「そうなんですか」

「なので自信持ってくださいね!でも気は抜いちゃだめですよ?」

 

そういうと推定150㎝弱の身長のロリ教師はニコッと笑った。

 

「じゃ、八剱くんも席についてください!質問攻めの間に授業開始寸前になってしまいました」

 

椅子を引いて席に座る。

すかさずちょんちょんと背中をつつかれた。

 

「ん?」

「どーも、後ろの席の八坂だよん!よろしくね八剱くん」

「あ、お...おう、よろしく...」

 

おかしい、ここ成績優秀者の塊じゃないのか。

 

おかしいのは、どこからどう見ても

不良にしか見えないことである

 

金髪にピアス、かなり整った端正な顔立ち。

これぞイケメンやんちゃボーイ...なのか?

 

「あ、俺のことはみんな「やっち」とかって呼んでるから、そう呼んでくれても構わないぜ!」

「りょ、了解した。俺は...あだ名とかないな」

「そうだな...つるぎ、でどうだ?」

 

「まあなんでもいいよ、よろしくな、八坂」

「こちらこそよろしくつるぎん!」

 

なんかゆるキャラっぽくなっている名前であった。

 

 

 

「1時間目の授業が終わったな...」

「自己紹介の授業って一番面白くないんだよねん...」

「ほんとだよ...」

 

「あら、私的にはなかなかに有意義だと思うのだけれど」

すたすたと宮坂生徒会長様が歩み寄ってきてそういった。

 

「あ、会長...」

「会長ってのは何とも違和感があるわ...普通に名前で由奈でいいわよ」

 

なかなかにレベル高いですよ会長様...

 

「じゃあ...えっと...由奈...さん?」

 

そういうと会長は案外かわいらしい顔でニコッと笑った。

 

今までの学校には普通レベルの女子しかいなかったからか、

純粋な八剱くんの心臓がドキンと鳴った

 

「(かわいい)」

 

「...い...おーい...」

 

「(ボケー)」

 

「おいってば!つるぎん!」

 

「八!俺はいったい何を!?」

「宮坂っちに見惚れてかたまってたんだよん...」

 

「え!いや、あ、その、これはあれなんです!そういうわけでは!」

 

「落ち着きなさい八剱くん、言語がめちゃくちゃよ...」

 

「...すいません」

 

「まったく...つるぎんは...」

 

「う、うるさい!こんなきれいな人だったら見惚れるにきまって...ハッ!」

 

「あ、あのね八剱くん、その、そういうのは面と向かっていわれると少し...」

由奈はうつむいて少し頬を赤く染めた

 

「「「(((反則でしょ)))」」」

 

クラスの男子のほとんどがそう思ってしまった。

 

「そ、そういえばね、八剱くん」

 

「は、はい、なんでしょう」

 

「理事長直々の命令なんだけど、その、君の世話役に私が任命されてしまってね...」

 

「は」←八剱くん(純粋)

「は」←八坂くん(こう見えて純粋)

 

「「はぁあああああああああああああああああ!?!?」」

 

「え、あれですか、これはスムーズな会話をしようという由奈さんなりの配慮ですかそうですよねはいすいません不純なことなんて微塵も考えてませんただのジョークですよね」

 

「いや、ここにほら...」

 

そこにはでっかく”理事会通知書 宮坂由奈 八剱奏の世話係に任命する (大きなハンコ)”

 

「...」

無言で頭を下げる。そうこれこそJapanese DOGEZA☆

 

「ちなみに世話役といっても大したことはしないそうよ、その、お、同じ部屋に住むくらいで...」

 

オナジヘヤニスム?ハハハ、ボクノアタマモイカレタカ、ハハハ

 

「どっからどこが冗談でしょうね?」

「どこも冗談ではないし、理事長も方針を変える気はなさそうね...」

 

いや僕が生徒会長と!?いやこれはいろいろ大丈夫なのか!?

なんていうか彼女もできたことないだろう僕がこんなきれいな先輩と!?

理性持つ自信無いですけどいいですよねぐへへ

いや生徒会長と同棲とかマジですか何ですかこれ夢ですか

ほっぺつねろうかなさあ夢よさめろやっべえいってえほっぺた痛いよ夢じゃありませんでした

ほんとサーセンっした!!!!!

 

「そ、そんなに嫌なの...?」

「いやじゃないです、マジでうれしいっす夢かと思うくらいに!」

 

「そう?ならよかった...」

 

「(さあ理性が飛ばないように頑張らなければ...)」

 

「じゃあ今日からあなたの部屋に行くわね。学校が終わったら校門の前で待っていてね」

 

「了解です!」

 

「つ、つるぎんが...別次元の生物に...」

 

「八坂、俺はこの学校に来てよかったよ(キリ」

 

 

「じゃあ私は仕事があるのでもういくわね。”奏”は学校終わったらちゃんと校門前に来てね...!」

「りょ、了解です!」

 

あれ、いま心なしか名前を呼ばれた気がする...

気のせいかな...

 

そしてクラス中では男子どもが何やら肩を抱き合って泣いているのである。

 

「...?」

 

「そりゃそうだぜ、つるぎん。宮坂っちは男子どもから”天使”って呼ばれてるくらいだからねん」

 

「おれはそんなひとと...」

 

「まあ、そんなに長くない青春を精一杯謳歌するんだぞ、

 

つるぎん!」

 

「が、がんばるよ...」

 

そう、僕の青春は、この学園生活は、ここから始まるんだ。

理事長の都合だけで一つ屋根の下に暮らすことになった女の子とともに。

 

これから待っていることを想像するだけで、胸がいっぱいになった

今を楽しもうと、心に誓ったのである。

 

 

 

「由奈さん!お待たせしました~」

「あら、私も今来たところよ」

 

「それでは寮のほうへ行ってみますか~!」

「そうね」

 

「~♪」

 

「そういえばあなたはなぜこの学校に...?」

 

おっとこの質問は案外重苦しい話になっちまうんだが...まあ一緒に住むんだし話しておくべきだよな...

 

「父親の転勤、が理由です。”表向きは”」

「表裏があるの?」

 

「ちょっと重くなっちゃいますけど、大丈夫でしょうか?」

「ええ、問題ないわ」

「それでは...」

 

できたら思い出したくもない事実である

 

僕は高校1年生の夏休み、仲の良かった奴らとプールに行こうとしてた”らしいんだ”

曲がり角をまがって、手前の角を曲がれば到着!というところ

超炎天下がつらくて早くプールに入るために

ノーブレーキでまがったらしい。

 

運悪く、いつもは通りの少ないその道で、トラックが走ってきた。

間一髪で直撃は避けたが、頭を強く打ち、意識を失ったらしい。

 

目覚めた病院、覚えていたのはおぼろげな誰かの顔だけだった。

 

つまり”らしい”でしかその時のことを話せないようになってしまったのである。

 

お見舞いに来てくれた人の名前だって覚えてないのだ。

 

つらく悲しい現実が、小さな少年の肩にのしかかった瞬間であった。

 

「...とまあこんなことで...って」

「あなた...そんな...」

 

おやまあ会長が涙を流して...

 

「で、でもいまは普通に幸せな生活ができてますし...」

「そうなの...?」

 

「そ、そりゃあ、こんなきれいな人と一つ屋根の下とか、幸福以外の何なんですか...」

 

「ふぇっ!」

 

「(また無意識に...)す、すいません!」

 

「むー...」

 

こんな調子じゃ嫌われてしまいそうだ...

 

そんな話をしている間に、新しい寝床となる場所にやってきた。

 

「いや...あの...。」

 

「?どうしたのかしら」

 

「で、でかくないですか、部屋」

 

「理事長が、二人暮らしなら大きい部屋じゃないとね!!!っていって大きな部屋を用意してくれたわ。」

 

「(なんでこう極端なんだろう...)」

 

「気に入らないのかしら...?」

 

「い、いえ、こんな豪華な場所、住み慣れてもいないもので...」

 

「まあいいわ、とりあえず部屋と荷物をどうにかしましょうか。」

 

「そうですね。じゃあここの部屋に入ろうかな...ってあれ?」

 

「どうしたの?」

 

「いやあ、一人分のベットにしてはやけに大きいなと」

 

「それもそうね...まあ、部屋に見合うサイズということでしょう。ほかの部屋も見て回りましょうか。」

 

「そうですね、あ、荷物ここに」

 

「じゃあいきますか。」

 

 

 

「...」

「...」

 

おかしい

どう考えてもおかしい

何がおかしいって?

 

この部屋は家具家電冷暖房完備と言っていた。

それなのに...それなのに...

 

「どうしてベットのある部屋が一つしかないんだああああああ!!!!!」

 

「お、おかしいわね。業者さんが勘違いでも...」

 

ファサ...

 

「なんでだー...ってなんだこれ」

 

「あら、理事長からの手紙のようね。どれどれ...」

 

「あ、僕も...って由奈さん?」

 

会長が何やら手紙をもって赤面しながらうつむいてプルプル震えている。

おっとこれは嫌な予感...

なのに悪い気がしないのはなぜだろう...

 

「...えーっと、お手紙拝見いたしまぁーす...」

 

ここに書かれていたことは

 

『やあ、部屋は気に入ってくれたかな。通常の生活には困らないように設備はしっかり整えてあるよ』

 

うむ、たしかにその通り。

 

『なにか足りないものがあれば何なりと行ってくれ、できる限り用意しよう』

 

あら良心的

 

『あとベットの件だが』

 

...お?

 

『そのベッド、特注品で一個しかつくれなかったから、二人で一緒に寝てくれ!もちろんわざとじゃないぞ☆』

 

ほうほう...って

 

『八剱くん、滾る若さに身を任せずに、きちんと手順を踏んでから不純なことをするように。教育者としてその辺はしっかりしておかなければな!』

 

ってオィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!

どさくさに紛れて何言っちゃってんのこの人!

教育者語っといてモロ”不純”とか言っちゃってるじゃねえかあああああ!

 

「あ、あの...由奈さん?このくらいのこと気になさらずに...」

 

「あ...あぅあぅ...ふ、不純な...」

 

だめだこりゃ

 

 

 

 

「さて、大体片付きましたかね」

「そうね...それにしても少し疲れたわ...」

「休憩がてら、お昼でも食べますか??」

 

「そうしましょうか。近くにいいお店があるわ、そこに行きましょう」

「はい!」

 

 

─レストラン─

 

「へぇ~、おしゃれなお店ですね」

「でしょう?私の行きつけの店なの」

 

「なにをたべようかなっと...」

 

「おーい!」

 

「ん?」

「あ、あれは...」

 

「つるぎんこんなところでどうしたのー!!って、なんだデートか...」

 

「「なっ!」」

ほう、ハモった

 

「ややや八坂くん、これはデートじゃなくてでしゅね...」

 

噛んでる会長もかわいい

 

「さっき部屋に入ったばっかで飯がなくてだな...」

「あー!なるほどね」

 

そういうと八坂が耳元で

「(宮坂っち...落とせそう?)」

 

「は、はぁあああ!?」

 

会長だけ”?”という顔をしているが

 

「(そ、それ由奈さんにきこえたらどうするんだよ!)」

「(へ~、由奈さんなんて下の名前で呼んじゃって~)」

 

「(お前わかったうえで言ってるだろ!!!)」

 

「(ばれた?まあとりあえずなんだが...)」

 

「(うん?)」

 

「(宮坂っちは、男嫌いで有名なんだ。それなのにこんなに深くかかわっていやな顔一つしないなんてな...脈あり?)」

 

「(う、うるさい!飯が来たからもう終わりだ終わり!)」

 

「(はいはい、わかったよ、じゃあまた明日学校でな)」

 

「(はいはい)」

 

というと八坂は走って行ってしまった

 

「何を話していたのかしら」

 

「いえ!特にそんな大事なことは!」

 

「そうなの?その割には滝のような汗だけど」

 

「いやぁー!日本はあついなあああ!」

 

「冷房効きすぎってところじゃないかしら...少し寒いわ」

 

「あ、そうなんですか!?上着使います?」

 

「ふぇっ!?う、上着!?だだだ大丈夫よ!」

 

「?そうですか?」

 

「うん...」

 

そのあとはくだらない話をしながら、ご飯を食べ終えた。

 

 

 

「ふぁあああ、ただいまあ~」

 

「ふぅ、つかれたわね...」

 

「生活用品もあらかたそろってよかったですね」

 

「そうね。明日からは自炊だから」

 

「えーっと、とにかくお風呂に入りますか...汗も流したいですし」

 

「お、お風呂!?は、入るの!?わ、わかったわ...」

 

「由奈さん先入ります?」

 

「い、いえ。私は後から...」

 

「そうですか?じゃあお先失礼します」

 

─風呂─

 

「ふぅ...生き返る...」

それにしてもこの風呂はなんてでかいんだろう...

その辺の浴場くらいはありそうだ

 

「これなら会長とはいっても...はっ!」

いけない、なんて不純な妄想を...

 

「でもなんでかな...」

そう、ずっと疑問に思っていることがあった。

それは確信には程遠く、あり得るはずがないのに。

 

「由奈さん、どっかであったことがあると思うんだよな...」

会長と初めて話した時、とても昔に一度会っていたような

そんな感覚が頭をよぎっていた。

 

「はぁ~...」

 

コンコン

 

「はーい」

「お、お湯加減はどうかしら?」

 

「ばっちりですよー」

 

「そ、そう...じゃあ...」

 

「え?」

 

ガラガラッ!

 

「!?!?!?!?!?!?!?」

 

「わ、私も入るわね...」

 

「え!?いや由奈さん!?あの!?なぜ!?」

 

「え、だってあなたが”風呂でも入りますか”って...」

 

「あっ...」

 

つまり会長は”(ふたりで)風呂でも入りますか”と解釈したということに...

 

「って!これはまずいですよ!さすがにお風呂は!」

 

「も、もうはいっちゃったんだからぁ...」

 

「んあああああああ!」

 

「せ、背中とかながそうか...?」

 

「ふぇっ!いいいいいんですか!?!?」

 

「特別よ...前向いて...」

 

ここから先はご想像にお任せします...

 

 

「ふぅ...まさか一緒に入るとは...」

 

「私の勘違いね...ごめんなさい...」

 

会長、すごくショックのご様子...

 

「どうしようどうしようこのままじゃお嫁にいけないどうしよう裸をみられていやバスタオルあったし...」

 

「あのー、由奈さん?」

 

呼びかけた途端、はっと顔を上げて

 

「そうだ!見られたんだったら相応の責任を取ってもらわなくてはね!」

 

会長の顔が心なしか赤い

 

「せ、責任!?」

 

「そうよ!私と結婚を!」

 

あれぇー、完全にのぼせてるかこれ

 

「いやいや、そんな!僕たち今日あったばっかっですし!」

 

「いいえ!問題ないわ!しかももっと前から私たちは会って...」

 

「え?いまなんて?」

 

会長の顔が一転、青ざめている。

これは何か隠しているのだろうか。

 

「いや...それは、その...」

 

「なにか、隠してます?」

 

「ひゃうっ!そ、それはちがくて...」

 

ここであることを思い出す。

会長を見た時の懐かしい感情

どこかで会ったことのある感じ

 

そういえば家を出る前に

「あそこにはお前の元幼馴染がいる。まあ、覚えてなどいないだろうがな」

 

「まさか...」

そう思った瞬間、頭にズキンと痛みが走る

「うっ...」

 

「ど、どうしたの?」

 

「なにか...思い出せそう...公園...ゆ...ゆ...な...」

 

「え...」

 

「わかりました...由奈さん...今少し...思い出したみたいです...」

 

「え...え...」

 

「由奈さん...隠し事って...僕のことをホントは知ってるんじゃないですか...?」

 

「あの、それは...」

 

「脳裏に浮かんできた、きっと記憶をなくす前の僕がずっと憧れていた、近所のきれいな女の子...」

 

そう、つまりこういうことなんだ。

やっと、会長に、いや由奈さんに感じていた感情が分かった。

 

「あの子の名前は、ユナといった...漢字はわからないけどたしかに」

 

そう、今も変わっていないのである。

このきれいな黒い髪も、茶色みを帯びた濁りない瞳も

 

「由奈さん...いや、呼び方は、由奈だっけ...」

「は、はい」

 

「僕といつも遊んでくれた、あの時の由奈なんだよね」

 

「思い出してしまった以上は...話すしかないのよね...」

 

「覚えてることだけ、話してください」

 

「あれはね...」

 

それから1時間ほど由奈の話を聞いて思い出したんだ。

鮮明ではないけど、僕の瞳に映る可憐な彼女を。

大好きだったあの子を。

 

「由奈さん、いや、由奈...」

 

「はい...」

 

「今まで忘れててごめんな...また会えて本当に良かった」

 

「私も...だよ...奏...」

 

思い出せてよかった。

 

「まさか好きだった人のことまで忘れるなんて...」

 

「奏...あの...口に...出てる...」

 

「あ」

 

え?何やってんの俺

バカなの俺

久々に会ってこんなこと言うとか昔話も大概にしろよ俺

 

「あのね、奏。私、奏が来た時からほんとは気づいてたんだよ」

 

「そうなのか...」

 

「記憶喪失のことだって、知ってるよ」

 

「じゃあなんで...」

 

「怖かったからかな...思い出したら、離れちゃうのかもって...」

 

「まさかそんなことあるわけ...」

 

だって、と由奈は遮るように言った。

 

「あなたと会えない時でも、忘れちゃったって知った時でも...ずっと奏のこと、好きだったからだよ...」

 

「え...」

 

「あの時からずっと、好きだもん...写真も飾って、毎日思い出してたもん」

 

「そうだったのか...」

 

「覚えてない子からいきなり好きって言われても困るよね、ごめんね。」

 

「いや...」

 

もう奏は自分の気持には気づいていた

 

「記憶が少し戻った時な、いろんな感覚や思い出とかも全部流れ込んできたよ」

 

「うん...」

 

「昔俺が、由奈に抱いてた感情のこともね」

 

「...!」

 

「確かに、すごい時間たってるし、待たせもしちゃったよな」

 

「うん...ずっと待ってた...」

 

俺は息を吸った

きちんと流れ込んできたこの気持ちを伝えるために。

 

「俺もずっと、好きだったよ」

 

「...!!」

 

由奈はその大きな瞳から大粒の涙をこぼしていた。

大人びた昼の様子とは全然違って。

 

そう、いつもよりずっと綺麗だった

 

泣いている由奈を抱き寄せた。

2時間くらいずっとそうしていた。

 

涙を流している由奈は、あの時と同じ顔をしていた。

 

 

─二時間後─

 

「もう大丈夫か?」

 

「うん...」

 

「由奈の気持ちわかってよかったよ」

 

「私も覚えててもらえてうれしかったよ」

 

「じゃあ改めて」

 

「はい」

 

さてきちんと言おう

まるでラブコメ小説みたいな感じだな

悪くないかな、これも

 

「由奈、好きです。俺と付き合ってください。」

 

由奈は頬を赤くして、頷いた

「こちらこそ。大好き、奏!」

 

彼女の笑った顔は、すごく綺麗で、眩しかった。

 

 

 

さあ、明日は学校二日目、由奈との楽しい学園生活の

幕開けとなった。

これからどんな未来が待っているのか。

それを考えるだけで俺の心はとても躍っていた。

 

...ちなみに感情が流れ込んできたことで、一人称が「俺」に代わっていることは

由奈に指摘されるまで気付かなかったのである...

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。