プロローグの続きです。
「うっ・・・ぁ・・」
あの警鐘は正しかった。
本を開いた瞬間、何かが頭の中に流れ込む感覚に襲われる。
いや、実際におびただしい量の何かが入り込んできている。
(これは・・数式?)
辛うじてわかるのは何かの計算式であることだけ。
逆に言えばIQ300の人間ですらこれが数式であることしか分からないということ。
明らかに人間の手によって作られた本ではない。
そもそも現代の科学ではこんな事は不可能だ。意図も不明だ。
(じゃあ、一体何が・・・)
そこまで考えたところで、流石の有香里も脳内の許容範囲を遥かに超える情報量に吐き気がしてきた。
気持ちが悪い。
立っていたくない。
頭が破裂しそうだ。
思わずその場にへたり込み、両手で頭を抑える。
蓮子を呼ぼうとするも、出るのは嗚咽のみで言葉が出ない。違う、出せないのだ。私の体に何かしらの制限がかかっている。
「ぐぅ・・ああぁああアアああ嗚呼ああぁあああっ!!!」
今度は尋常ではない痛みがやってきた。
頭に太い釘を何本も同時に打ち付けられているような痛みに、思わず絶叫する。
耐えられない、耐えられるわけがない。
このままでは・・っ
不意に、意識が遠のいていく。
ありがたい。これで一時の痛みから逃れられる。
あっさりと有香里は自分の意識を手放す。
気の狂うような痛みに、有香里の体が無意識にとった策は至極単純であった。
◆
宇佐見蓮子は焦っていた。
共に本を読みに来た友人が、気が狂ったように叫んで気絶してしまったのだ。
自分は別の場所にいたので有香里が正確に何をしていたのかは分からない。
だが、本を開いたのは確かである。倒れた有香里の傍らには、
当たり前だが、自分も手に取ろうとは思わない。
有香里は頭を抑えて絶叫していた。
つまり、何かしらのトラブルから殴られたかもしくは、頭で処理しきれないほどの事態が発生したかである。
有香里の頭に打撲痕は無い。つまり、後者の確率が極めて高い。
後者であった場合は私ではどうにもならない。
私を遥かに超える頭脳の持ち主が処理出来ない問題だ。
私なら狂死する自信がある。
ではどうするか。
救急車はもう呼んだ。後五分もすれば到着するだろう。
後は有香里の傍で声を掛け続けるしか思いつかない。
情けない話だ。友人の危機に何も出来ないのか。
悔しさで涙が零れそうになるが、堪える。
有香里の方が辛いのだ。自分が泣いてどうする。
「有香里、大丈夫よ。私が守るから。」
しっかりと手を握り、震える声で有香里に話しかける。
「ごめんね、こんなことしかできなくて。」
駄目だ。堪えられそうにもない。
蓮子の涙が有香里の頬に一滴、落ちた。
うーん、なかなかうまい引きが思いつかないです。