――時の偽政者、聖徳太子こと豊聡耳神子はうんざりしていた。
欲望と言う名の煩悩。
自慢の耳から聴こえてくるのはそんな物ばかりだった。
欲があるのは悪いとは言わない。
それは人間の性なのだから。
世の中からそれを無くせば、たちまち全てが崩壊するだろう。
どれだけ満たされた人間であろうとも、欲が無くなることは有り得ない。
欲望無くして繁栄無し。
欲を失った人間は、砂で作られた塔の如く脆く、崩れやすい。
欲がある事は寧ろ向上心があることと同義なのだ。
だが、最近はその欲が汚すぎる。
自分に謁見してくる役人共の考える事は金と権力。
それだけならまだ分かる。
私が最も嫌悪しているのは、己の欲の為に手段を選ばない輩だ。
表向きは誠実そうでも、裏側は汚れきった者などざらだ。
故に、うんざりしているのだ。
幸い、今日は特に謁見等の予定はない。
1日は影武者に任せて、お忍びで市を見に来ていた。
特に目的も意味も無い。
ただ、何となく何かがある予感がしたのだ。
私の予感は結構当たる。
そして、その予感は当たっていた。
◆
あの獣達の件から約十日、様々試した結果あまり変化は見られなかったので、自分が何処へ飛ばされたのか確認しようと、山を降りた。
かなりの山奥に居たのだが、流石と言わざるを得ない身体能力のお陰で、僅か1日で里のようなところに出られた。
そして愕然とした。
竪穴式住居が辺りに点々と建っているだけなのだ。
最初はそういった歴史博物館的な施設に出たのかと疑ったが、少し探索すると、明らかに生活をしている形跡がある。
これまで見たものは全てが幻覚だった可能性も否めないが、
まさか時間すら超越しているとは思わなかった。
私がいた年は20■■年だ。
住人の服装からしてここは飛鳥時代か奈良時代。
最低でも約1500年程遡っていることになる。
あいつの恐ろしさに、改めて背筋が寒くなった。
しかし、これはいい機会ではないか?
あいつが出来たのなら私にも時間を超えることが出来るかもしれない。
そして、何故かは知らないが、出来るという確信があった。
元の時代に帰る希望は小さいがある。
余談だが、流石に1000年以上前のことになると、現代科学でも起こったことを正確に解き明かすのは至難の業だ。
事実、わかっていない事だらけである。
ならば、いま、この場にいる私が解明してやろう。
まずはこの時代に食べていたものから調べよう。
市場のようなところもあったし、そこへ行こうか。
心底嬉しそうな様子で、少女は人が集まっている場所へと足を向けた。
帰ったら、蓮子にも教えてあげよう。
楽しくなりそうだ。
「あれ、私の服装って大丈夫かな?ま、いっか。」
悪い意味で文字数ギリギリだよ・・・
さーせん(土下寝)