デジモンアドベンチャー リライト   作:早野 ひろかづ

1 / 4


本編前の前座的な話です。



プロローグ

 空はとても青く澄んでいる。

 夏の太陽は、地上に蠢くものに光を浴びせてくる。

 暑くてとても作業などは出来ない。

 

 夏休みとはすばらしいもんだ。

 俺はそんなことを考えながら窓の景色を眺めている。

 

 

 

 俺は大学のサークル仲間(軽音部)と夏の旅行に来た。

 学校のミニライブが結構受けたので、打ち上げしようと先輩が言い始めたのがきっかけだ。

 その後、どうせなら皆で旅行に行こうという結論に至ったのだ。

 後輩二人と俺と先輩、合計四人で金をためて。

 

「やっぱこういうのはいいな!!」

「それさっきも言ってません?」

「……聞き飽きた」

 

 先輩の今日何度目かのセリフに後輩二人が突っ込みを入れる。

 今まで何回と見たこの光景。

 

 皆飽きないのかな、と思いながら俺はまた窓の外を見る。

 

「退屈なんですか?」

 

 声をかけられた。

 

 この子は後輩の鶴巻 るなだ。

 こいつはかなり饒舌でサークルのムードメーカー的な奴だ。

 

「そう見えたかな?」

「せっかくの旅行なんですからもっと笑いましょうよ!」

 

 自分では分からなかったが、退屈そうにしていたらしい。

 

「なんなら添い寝してあげましょうか?」

「いや、必要ないし」

 

 いきなりなんてこと言うんだお前は!

 

「なんだそれ超うらやましいんだけど!!」

 

 先輩も加わってきた!

 勝手に仲良く寝とけばいいじゃんよ!

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 もう夜になった。

 どっと疲れた気がする……。

 こういう時はさっさと寝るに限る。

 

 そんなこんなで俺は今、布団を敷いている。

 まったく、誰も敷こうとしないなんて。

 自分の位自分で敷こうよ……。

 

「先輩……」

 

 声の聞こえた方に顔を向ける。

 そこには、るなの姿があった。

 

「どうかしたのか? てか先輩と真由香は?」

「お兄ちゃんとマカちゃんはお土産買ってくるって」

 

 あいつら人に布団敷かせといてお買い物かよ……。

 ちなみに、先輩はるなの兄貴で、真由香はあんまりしゃべらない後輩だ。

 

「それでね……、少し、話したいことが……」

 

 爆発。

 

 ドンともいう破裂音が、鼓膜を破らんばかりの轟音とも言える音が、聞こえた。

 

「なに!?」

 

 次に火災警報器が鳴るのが聞こえてくる。

 室温が急に上がってきたような気がした。

 まさかこれって……。

 

「火事?」

 

 俺の予想は当たっていた。

 焦げ臭い匂いがこちらの部屋まできた!

 このままでは死んでしまう!

 

「先輩……」

「大丈夫だ、落ち着け」

 

 自分にも言い聞かせるようにそう言った。

 汗で全身がべたついてきた。

 

「とりあえず、ドアを開けて早く逃げないと……」

 

 まだ外に出るのは間に合うかもしれない。

 

「うそ!?」

「どうした!」

「ドアが開かないんです!」

 

 俺が代わりドアを開けようとする。

 ガチャガチャと音は立てどもビクともしない。

 

 いくらドアを開けようとしても、一向に開く気配がない。

 たぶん、ドアの前をなにかが塞いでしまっているのだろう。

 

「煙が……」

 

 そうこうしてるうちに、煙が部屋に入ってきた。

 炎も近くまで来たようだ。ドアノブを熱くて触れなくなった。

 

 ここは四階だが、幸い、窓から二階建ての建物が見える。

 恐らく、飛び移れる。頭さえ打たなければ生きてるだろう。

 

「先輩? なにをする気ですか?」

「るな、バスルームで水を溜めろ」

 

 るなに飛び降りろなんて言えるわけがない。

 それなら、水の中にいる方がいい。

 

「それとハンカチ濡らして口に当てて、あとできるだけ低い姿勢でいろ」

「……はい」

 

 とりあえずはこれでいい。

 早く消防車が来てくれないかと願う。

 

 何もできない自分に腹が立つ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 あれからどれだけの時間が経っただろうか。

 確認するのも怖くてできない。

 浴槽に水は溜まった。その中にるなを入らせた。

 

 俺たちはどうしたらいいのか分からないままここにいる。

 飛び降りてみようとも思ったが、るなに止められた。

 

 だから今、俺たちは浴槽に浸かっている。

 これが最善であると思ったからだ。

 だが、これが本当に最善なのか。

 そんな考えが、頭から離れてくれない。

 

 

 

 

 

 何故だ?

 

 

 

 

 

 何か見落としてないか?

 

 

 

 

 でも、じゃあ、どうしたらいいんだ。

 

 

 

 

 

 これ以上いい方法あるのか?

 

 

 

 

 

 飛び降りたらいいのか?

 

 

 

 

 

 それは大きな賭けだ。

 

 

 

 

 

 もしかしたら、頭でも打ったら死ぬだろう。

 

 

 

 

 

 俺のけいさんが間違っていたら?

 

 

 

 

 

 きめられない。

 

 

 

 

 

 きまらない。

 

 

 

 

 

 だれか、おれに、こたえを、おしえてくれ。

 

 

 

 

 

 せいかいを……。

 

 

 

 

 せめて……。

 

 

 

 

 

 るなだけでも……。

 

 

 

 

 

 たすけて……やって……く……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。