デジモンアドベンチャー リライト   作:早野 ひろかづ

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できるだけアニメみたいなサブタイトルを付けたいなって思ってました。
上手くいかないんですけどね。


第三話 急襲! クワガーモン

 

「デジタルモンスター?」

 

 彼らは、デジタルモンスター。通称デジモン。

 この世界の、デジタルワールドの住人。

 

 もちろん、ここにいる七人の子供たちは知らない。

 俺だけが知っていることだ。

 

「ぼく、コロモン」

「ツノモンです……」

 

 デジモン達の自己紹介が始まった。

 やはり、それぞれ喋り方や振る舞いなんかがアニメの時と同じだ。

 といっても、あんまり覚えてないけど……。

 

「オレは八神太一。お台場小学校の五年生だ」

 

 ここらへんも多分、同じだと思う。

 全部覚えているわけじゃないし、今となっては確認のしようがないけど……。

 

 こうなるんだったらもっとアニメ見とけばよかった。

 

「それで、こっちが同じクラスの拓斗」

「宮島拓斗。よろしく」

 

 俺が居ても話がちゃんと進んでいく。

 このことに少し驚いてしまう。

 

 一人増えた程度じゃ問題ないのか?

 だったらあまり気にしなくてもいいのか?

 

 いやいや、冷静になるんだ俺。

 油断してたら意外とアッサリ死んじゃうような世界だぞ……。

 

 もしも太一達と別行動なんてしたら……。

 

 ……よし! できる限りアニメに忠実に行動しよう!

 そうすれば、きっと安全だ!

 

 

 二回も死にたくないわ! 

 

 

「これで全員だっけ?」

「待って……。確かもう一人……」

 

 俺が一人悶々としている間に、話は進んだみたいらしい。

 なんか一人足りないんだとかなんとか。

 

「ミミさんが! 太刀川ミミさんが居ません!」

 

 そうそう、ミミちゃんだ!

 あれ? ミミちゃんって何年生だっけ……。

 三年生だったかな?

 

「そうだ、四年生のミミ君だ!」

 

 四年生だった……。

 主要人物の学年も忘れるなんて……。

 

 ま、まぁあれだ。五年生以外とはまったくと言っていいほど面識がないし、同然なんだけどね!

 

 ……これからがとても不安になった――。

 

「きゃああ!」

 

 そのとき、女の子の悲鳴が聞こえてきた。

 たぶんミミちゃんだ!

 

「行ってみよう!」

 

 俺達は悲鳴のした方角に向けて走り出した。

 

 あれ?

 皆、足速くないか?

 

 俺はすぐに最後尾になってしまった。

 

「ミミちゃん!」

 

 彼女は泣きながらこちらに駆け込んだ。

 

 その後ろからはガサガサと木々が強く揺れ、倒れていく。

 この独特な鳴き声には聞き覚えがある。

 

 間違いない――。

 

「クワガーモンだ!」

 

 クワガーモンはこちらに向かってくる。

 

「うわぁぁ!」

 

 クワガーモンは俺たちの頭上を飛んで行った。

 その風はすさまじく、尻もちをつくところだった……。

 

「ミミ、大丈夫?」

「タネモン……」

 

 どうやら全員、無事らしい

 

 それにしても、実物はかなり怖い。

 想像以上に生き物っぽくて、不気味だった。

 

 奴が飛んで行った後にはスッパリと切れている木々が残っていた。

 あのハサミ、とんでもなく鋭いらしい。

 

 当たったらヤバイ!

 

「また来るぞ!」

 

 クワガーモンが戻ってきた。

 とにかく、逃げないと!

 

「クカカカ!」

 

 振り返れば、独特な鳴き声と共にあいつが追いかける!

 こんな事なら、もっと走る練習しとけばよかった!

 

「伏せろ!」

 

 ヤマトの合図で一斉に伏せると、あいつがすぐ上を通過した。

 旋回はすぐに出来ないようで、木を伐りながらそのまま飛んで行ってしまった。

 

「な、何なんだこれは!? 一体ここはどういう所なんだ!?」

「またくる!」

 

 泣き言を言ってる暇はない。

 クワガーモンがまたこっちに飛んで来る。

 また、逃げないと!

 

「くそっ! あんな奴にやられてたまるか!」

「太一、無理よ!」

「そうだ! 俺達には何の武器もないんだぞ!」

 

 ここは二人の方が正しい。

 今のままでは勝ち目はない。

 

「ここは逃げるしか!」

 

 また俺たちは逃げる。

 しかし、クワガーモンは少しずつ距離を詰めてくる。

 追いつかれるのも時間の問題だ……。

 

「あっ!」

 

 逃げ続けてしばらくたったが、もう逃げられない。

 目の前に崖が迫って来たからだ。

 

「こっちはダメだ! 別の道を探すんだ!」

「別の道って……!?」

 

 今から別の道を探す時間なんてない。

 それに奴はすぐ後ろに――。

 

「クカカカ!」

 

 羽音が聞こえるほど近くにやって来たあいつは、俺たちの頭上を通過した。

 伏せていたから大丈夫なのは分かっているんだが、かなり怖い。

 

 クワガーモンはそのまま飛んで行ってしまった。

 

「今のうちに……!」

 

 そう思っていた矢先。

 クワガーモンが方向転換を終え、太一に向かって飛んで来た!

 その速度はさっきよりも速い!

 

「タイチ!」

 

 コロモンがクワガーモンに向かって飛び込む。

 泡を吐きだしたが、それは奴に当たりはしなかった。

 

 コロモンは奴に弾き飛ばされてしまった。

 やはり幼年期じゃだめなのか……。

 

「コロモン!」

 

 クワガーモンはそのままこちらに突っ込んできた。

 このままじゃやられる!

 

「あぁ!」

 

 死んでしまうかも。そう考えてしまった時、クワガーモンは俺達を通り越して木に激突した。

 再び飛んでくる様子はなく、辺りは静まり返った。

 

「助かったのか……?」

「ピョコモン……」

 

 辺りを見渡すと目の前には倒れたデジモン達。

 恐らく、クワガーモンがこっちに飛んできた際に、泡を吐いて撃退したんだろう。

 

 しかし、彼らは幼年期だ。

 いくら大勢いるからと言っても、成熟期相手に無茶をし過ぎだ。

 皆ボロボロになってまで――。

 

「クカカカ!」

「なんだ!?」

 

 奴は木を押しのけながら帰ってきた。

 やはりこのままだとマズイな……。

 

 ハサミを鳴らし、クワガーモンはこちらに向かってくる。

 

「あいつ、まだ生きてやがった?」

 

 ドスン、ドスンと、一歩ずつ。距離を詰めてきている。

 

「くそ、このままじゃ……」

 

 皆が諦めかけたその時。

 

「いかなきゃ……」

「え……?」

「ぼくたちがいかなきゃ。ぼくたちが、戦わなきゃ、いけないんだ!」

「何言ってるんだよ!?」

 

 コロモンが戦おうと起き上がる。無論、それを太一は止める。

 しかし、戦おうとしているのはコロモンだけではなかった。

 

「そうや! ワイらはそのためにまっとったんや!」

「そんな……!?」

 

 一人、また一人と起き上がる。

 

「いくわ」

「無茶よ!」

 

 その目には諦めという言葉はないだろう。

 

「あなた達が束になっても、あいつに敵うはずないわ!」

 

 そうだ、きっと勝ち目はない。

 それでも、彼らは立ち向かう。

 

「でもいかなきゃ!」

「ぼくも!」

「おいらも!」

 

 自分のパートナーを守らなければという本能なのか。

 それとも……。

 

「タネモン……。あなたも?」

「うん……」

 

 遂にコロモン達は皆起き上がった。

 俺はこの時に幼年期である筈の彼らの後ろ姿がとても頼もしく思えた。

 

「いくぞ!」

 

 コロモンの言葉と共に、彼らは一斉に飛び込んだ!

 

「コロモーン!!」

 

 

 

 ――その瞬間、光が辺りを包んだ。

 

 

 

「コロモン進化!」

 

 それは進化の光だった。

 

「アグモン!」

 

 進化は一瞬だった。

 彼らは幼年期ではなく、成長期になった。

 

 

 クワガーモン、覚悟しろよ。

 さぁ、反撃開始といこうじゃないか……。

 

 

 

 完全に他力本願なわけだけども。

 

 

 

 

 


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