ハイスクール&パンツァー   作:鈴木大佐

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登場人物
鈴木正弘:大洗学園普通科Ⅱ類2年。
南本唯:普通科Ⅱ類2年。昨年も正弘と同じクラスだった。
西住みほ:正弘の古い友人。ワケアリで大洗学園に転校してきた。
武部沙織:普通科Ⅱ類2年。
五十鈴華:普通科Ⅱ類2年。
笹原孝治:普通科Ⅱ類2年。
清水七海:普通科Ⅱ類2年。




再会


 造船技術が発達した現代、人類は洋上に都市を建設するまでになった。

「学園艦」と称されるそれは航空母艦に酷似した外見をしており、飛行甲板に相当する位置に街が建設されている。

 学園艦は、その名の通り学校を中心として構成されている。街の中心に学校が存在し、住宅地、コンビニ、公園があり、山林まで人工的に整備されている。道路も整備されていて、普通に乗用車が走っているのだ。

 移動可能な洋上都市のため、住民の戸籍などはその学園艦が所属(母港としている)市町村の飛び地という扱いになっている。茨城県立大洗学園は茨城県大洗町の飛び地という扱いだ。

 学校の規模によって学園艦の大きさは大小さまざまであり、今では全長20キロメートルもある学園艦もあると聞く。比較的初期に建造された大洗学園は、学園艦の中では小さい部類に入るが、それでも全長八キロメートルある。そこに3万人以上の人々が生活している。

 大洗学園普通科の俺―――鈴木正弘もその3万人のうちの一人だ。

 季節は4月、そう俺は一つ学年が上がり2年生になる。

 今日は早めに起きた。早く学校に行くためだ。クラス分けの発表の掲示が行われている場所はいつも混むのだ。

 さっさと準備を済ませ自宅を出る。多くの生徒が寮で生活をしている中で、俺は一人暮らしをしている。3階建てのマンションだ。特に学生向けだとかそういうのではないのだが、ほとんどの部屋の住民が大洗学園の生徒。なぜ寮ではなくて一人暮らしなのかというと、門限やらいろんな規則に縛られるのが嫌だからだ。他の住民も同じ理由で住んでいるようだ。

「おはよう~。鈴木くん」

マンションを出たところで声を掛けられた。

「おー、おはよう南本さん」

声を掛けてきたのは南本(みなもと)(ゆい)だ。1年の時に同じクラスで、最初は話すことはなかったが、何度か席替えで隣の席になることがあり仲良くなった。

おっとりとして優しい性格。いつも俺の心を癒してくれる存在だ。確か男子生徒有志(?)による非公式の人気投票ではベスト8に入ってたはず。今では毎日学校で彼女に会うのは俺の楽しみの一つとなっている。かといって恋愛的な意味で好きといわれれば・・・・・・よく分からないんだよなあ。

「一緒のクラスになれるといいね」

「ああ、そうだな」

 おっといかん。また素っ気ない返事をしてしまった。南本と話すときはなんだか緊張してうまく話せないんだよなあ。本当はもっと話したいんだが。

 

「……」

 

「……」

 

 その後俺たちは何も話さぬまま校門の前まで来てしまった。

 くそーっ! 俺のバカ!! 南本絶対退屈してたよなぁ。話し上手じゃないとモテないと言うのに。上手く会話を続けられないのが俺の欠点なんだよなあ。

 学校までは徒歩で15分ほど。比較的近いほうだ。全長8キロメートルの大洗学園艦の中央に大洗学園は立っているが、学園艦の端に住んでいる者は徒歩で40分もかかるという。そういったやつらはほとんどが自転車で通学している。そして俺は今貴重な15分を無駄にしてしまった。

 すでに新クラスの掲示場所には多くの生徒が集まっていた。おいおい、まだ7時45分だぞ。普段ならみんなもっと遅く来るのだが、みんな俺と同じ事考えて来たのだろう。

 新たな教室に向かう生徒と入れ替わりながら俺たちは掲示板を見る。

「ええと…」

 見つけるのは難しくはなかった。

「2組…」

 昨年と同じクラスだ。

「……わたしも2組」

「えっ……!?」

マジか!? 俺はもう一度掲示板を見る。

「ホンマや!? やったなぁ!!」

いかんいかん。興奮しすぎて関西弁が出てしまった。南本もびっくりしている。

 まあ、今年も南本が一緒のクラスでほっとした。他の仲のいいやつも同じクラスだ。

「じゃあ、教室行こうか」

 さっそく2年2 組の教室へ向かう。

 2年1組の教室は高等部普通科棟3階にある。1年のときより2フロアー上だ。

 えっと、ここだな。

 教室の前に立つ。中からは話し声は聞こえない。

 …ということは、俺たちが一番乗りかな。

 

 がらっ

 

「えっ……?」

 ドアに手をかけたとき、いきなりドアが開いた。

「あっ……?」

 目の前にドアを開けた人の姿が現れる。

 

 女子だった。

 

「あれ……?」

 どこかで見たことがある。

 1年で同じクラスであった奴じゃない、去年他のクラスで見たことがあるわけでもない。しかしどこかで会ったような気がする―――

「……みほ…ちゃん……?」

 思わず出た言葉にその女子はぴくんと反応する。

「え……正弘くん……?」

 新学期が始まろうとしていた。

 

 

 

「なるほど……ね」

俺はよっこいせ、と椅子に腰かけた。ちょうど右には教室に一番乗りしていた女子、みほちゃん―――西住みほが座っている。

「もう『戦車道』はやりたくないと…」

「……うん」

俺が聞くと、みほはこくんと頷いた。

 

 西住みほ、彼女は俺の小さいころからの知り合いだ。

 大阪出身である俺だが、3歳頃から小学校3年までは親父仕事の都合で熊本に住んでいたことがあった。その時に出会ったのが西住みほであった。

  みほの家は「戦車道」と呼ばれる武道の家元であり、陸上自衛隊の戦車部隊に所属する俺の親父と交流があった。そのため俺は父に連れられて西住家にお邪魔することがよくあり、そこでみほと出会った。あまりはっきりとは覚えていないが、よく遊んだことは覚えている。戦車道の訓練を一緒にしたこともあった。

 小学校4年になり俺が大阪に戻ってからは年賀状のやりとりはしていたが、中学に上がるときに北海道へ引っ越してからは途切れてしまった。その後は一切連絡をとりあっていなかった。

 俺が彼女を見たのは去年のことだ。何となく見ていた戦車道の番組でみほが映っていたのだ。彼女は高校生戦車道の中では一番の実力を持ち、全国大会9連覇の実績を誇る黒森峰学園に進学していた。そして、みほの姉の西住まほが隊長を務める戦車道チームの副隊長を務めていた。

 そして、10連覇がかかった去年の大会で―――――

 うむ、俺もあまり思い出したくない。

 それで戦車道にトラウマを抱え、戦車道のないこの大洗学園に転校してきたのか。

 

「…………」

 みほはそれっきり黙ってしまった。俺も話しかける言葉がない。

「…………」

 うーん、これは気まずい。どうしたものか。

「ええと、鈴木くん・・・・・・」

「あ、ごめんごめん」

 おっといかん、南本を放置したままだった。

「俺がちっちゃい頃、熊本に住んでいたことがあるのは話したっけ?」

「うん、聞いたよ」

「そん時の友達だ」

 戦車道の話は伏せておこう。まあさっき聞かれてたけど。

「そーなんだぁ。えっと西住さんだっけ? わたし、南本唯っていいます。よろしくね」

「・・・えっと、よろしくお願いします!」

 みほがあわてて頭を下げる。おいおい大げさだなあ。昔からこんな感じだったが。

 

がらっ

 

 教室のドアが開いた。

 

「あれ?鈴木じゃない」

「……武部か」

 教室に入ってきたのは武部沙織と五十鈴華だ。

 武部は1年の時も同じクラスで女子の中では割と仲が良かった。明るく社交的で、やたらと色恋沙汰に興味がある。しかし自身は恋愛経験はない(らしい)という変わったやつだ。

 五十鈴も1年の時同じクラスであった。長く美しい黒髪が特徴でおしとやか。誰かが大和撫子とか言っていたがまさしくその言葉が当てはまる。実家が華道の家元で、花を生けるのが趣味だという。

武部は俺たちを一瞥するなりこう言った。

「南本さんもい一緒なんだ~。あれ? ねえねえそのコは? 鈴木の新しい彼女? って、これって修羅場!?」

 色校沙汰に敏感な武部が目を輝かして言う。

 何を言ってやがる。

 そもそも新しいってなんだ?俺は高校入ってから一度も彼女なんていたことねえよ。

「「ふぇっ?」」

 奇声を発したのはみほと南本だった。「彼女」という言葉に反応したのか、若干顔が赤くなっている。

「えと……ええと……」

「そんな……わたしが……鈴木くんと……!」

南本なんかかわいそうなくらいしどろもどろしている。

「冗談はよせ武部。ふたりが困ってるじゃないか」

「そうですよ沙織さん。初対面の人に失礼です」

 ナイスだ五十鈴。

「ああ、ごめんごめん。私、武部沙織っていうの。よろしくね」

 気を取り直して武部が言う。

「わたくしは五十鈴華と申します。よろしくお願いしますわ。ええと……」

「わ、わたし!に、西住みほっていいます!」

 がたんと席を立ちあがってみほが言う。その様子に武部と五十鈴は驚いたようだ。

「こ、こちらこそ……よろしくお願いしますっ!」

 みほが深々と頭を下げた。思わず俺たちも「お願いします」と頭を下げてしまう。

 しかしよかった。みほは引っ込み思案な性格だった。今はどうだか知らないが、さっきの様子からまだその性格は変わっていないようだ。社交的で誰とも仲良くなれる武部と友達になれば、その後も交友関係も広がるだろうし良かった。

 

 

 

 時刻は8時15分。教室の中に次々と生徒が入ってきた。俺はその中に知った顔を見つけて声をかける。

「笹原」

 一年時も同じクラスであった笹原孝治だ。

「…なんだ、鈴木か」

「なんだとはなんだ」

 新学期早々失礼な奴だ。

 笹原は俺のツッコミを無視し、教室の一点を見つめている。

「おい……」

 俺は笹原の横腹を小突く。

「なんだよ」

「よかったじゃないか」

「なっ……!」

 いつも冷静な笹原がいつになくあわてた様子になる。

「いつになったらいくのかな~?」

「お、お前に言う必要はないだろ!」

 笹原が見つめていたのは武部だ。1年の夏ごろから彼女に惚れているらしい。

「ま、期待してるよ」

 俺は笹原の肩をポンポンと叩き、自分の席に戻る。

「よっこいせ…っと」

「あれ?鈴木君じゃない」

「おう、清水か」

 俺の前の席に座っていたのは清水七海、こいつも1年の時同じクラスだった。このクラス、俺と同じクラスだったやつ多いな。

「今年もよろしくね」

「おう」

  清水は俺と同じ大阪出身だ。小学校4年から6年の間同じクラスであった。中学は違ったが割とメールをしたりとやり取りはしていた。彼女は勉強はできるほう だから、俺は大阪に母港がある大阪湾岸大付属高校に進学すると思っていた。だから、大洗に進学して彼女と同じクラスになったときは心底驚いた。

 しかし、武部や清水がいてくれてよかった。これなら新クラスにもすぐ馴染めそうだ。新学期早々これから始まる2年生の学園生活が楽しみだ。

 

 

 

 始業式で学園長の長い話を聞き、校内の掃除をし、新学期テストを受け、新しい教科書を回収し、ホームルームで自己紹介をし、なんとか初日を終えた。

「お前今年は必修選択科目どうするんだ?」

 帰り道。笹原は俺にそんなことを聞いてきた。

「必修か?そーだなー、去年は剣道だったから、今年もそーなるかな」

「戦車道は?」

「は?」

 こいつなんて言った?

「戦車道があったら履修するか?」

「まあ……すると思うけど」

 戦車道は好きだし、親父や兄弟の影響でやっていた。戦車道が履修できるのならやりたい。

「しかし大洗には戦車道はないんじゃ……」

「それが、生徒会の先輩の情報によると、どうやら復活するらしい」

「復活?」

「20年前に廃止になったらしい。それで、復活させるんだとよ」

 笹原は生徒会の役員をやっている。と言っても末端の専門委員とかいう役職らしいが。しかしそんな内部情報を俺なんかに言っても良いのだろうか。

「お前、戦車道やってたんだろ?」

「そうだが、お前はどうするんだ?」

「戦車道をやろうと思う」

「なら、俺もやろうかな」

 まさか、大洗で戦車道ができるなんて思ってもいなかった。一つばかり懸念事項があるが、今年の履修に関しては大丈夫だろう。

 だが―――――

 みほはどうするだろうか?

 




こんにちは、鈴木大佐です。
実は昨年パソコンが大破しまして旧作「ハイスクール&パンツァー」のデータがすべて吹っ飛んでしまいました。また日常生活の忙しさから再執筆作業も進まず、思い切って一からやり直すことにしました。といっても基本的には変わっておりません。登場人物が変わっただけです。
久しぶりに書いたので文章がおかしかったり、誤字があったりするところがありますがそこは指摘していただくとうれしいです。

スローペースの更新になると思いますがよろしくお願いします。
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