ハイスクール&パンツァー   作:鈴木大佐

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「捜索と戦車の洗車」前半のみんなが倉庫前に集合する場面で正弘と中村の会話シーンを加筆しました。

登場人物プロフィール(40Mトゥラン チーム)
清水(しみず)七海(ななみ)(車長)
身長:158cm,体重:51㎏,血液型:A型
スリーサイズ:81/57/83
誕生日:8月30日
出身:大阪府大阪市
クラス:普通科Ⅱ類2年2組
好きな戦車:九五式軽戦車

吉井(よしい)海翔(かいと)(操縦手)
身長:165cm,体重:54㎏,血液型:O型
誕生日:5月17日
出身:茨城県土浦市
クラス:普通科Ⅰ類2年3組(自動車部)
好きな戦車:ビッカースMBT

南本(みなもと)(ゆい)(砲手)
身長:157cm,体重:50㎏,血液型:O型
スリーサイズ:80/57/82
誕生日:6月15日
出身:千葉県千葉市
クラス:普通科Ⅱ類2年2組
好きな戦車:KV-2

笹原(ささはら)孝治(こうじ)(装填手)
身長:180cm,体重:67㎏,血液型:A型
誕生日:7月3日
出身:茨城県つくば市
クラス:普通科Ⅱ類2年2組
好きな戦車:74式戦車

佐倉(さくら)美咲(みさき)(通信手)
身長:145cm,体重:42㎏,血液型:O型
スリーサイズ:75/56/78
誕生日:3月27日
出身:東京都三鷹市
クラス:普通科Ⅱ類2年2組
好きな戦車:T-26 1933年型




いきなり実戦です!-後編-

 突然砲撃音がして近くの地面を吹っ飛ばす。俺は慌てて頭を引っ込めた。

「ふええええー、何なにっ!?」

 びっくりした優子が外が見えないにもかかわらず左右を見回す。中村もびっくりしたのか《M10パンター》ががくんと停止する。

「敵や! 総員戦闘用意!!」

 俺は再び頭を出し周りを見回す。周りは雑木林で隠れるにはちょうど良い。待ち伏せ(アンブッシュ)かと思ったが、その砲撃の(ぬし)は自ら姿を現した。

「《M3リー》、一年生チームか」

 全車両の中で唯一、砲を2門搭載しているのが《M3リー》の特徴だ。そこそこ強力な75ミリ砲を車体右側に限定旋回式で装備、上部の砲塔には37ミリ砲を装備している。アメリカ製戦車であるが、『リー』という愛称は第二次大戦中に供与を受けたイギリス軍によるもので、アメリカ型砲塔車輌が『リー』、イギリス型砲塔搭載型が『グラント』という愛称がつけられた。

その《M3リー》との距離は25メートルほど、角度は俺達の車輌に対してほぼ正面を向いている。M3の75ミリ砲は強力だが、《M10パンター》はその攻撃に十分耐えうる装甲を持っている。側面や後部を撃たれなければ大丈夫なはずだ。

「どうする、撃つ?」

 優子はもう照準口を覗き込み引き金に手を掛けている。

「おっきい三角の上に敵が入れば良いんだよね?」

《M10パンター》のようなドイツ系車輌の照準器内には、真ん中に大きな三角がありその両側に3つずつ小さい三角が並んでいて、これと『シュトリヒ』という単位を用いて相手との距離を計算する。相手戦車のサイズを覚えないといけないし、慣れないとこの計算は大変だが、今回は相手が至近距離だしこのままで良いだろう。

「オッケーや! 向こうが動かんうちに仕留めんぞ!!」

《M3リー》が75ミリ砲を発砲した。今度は《M10パンター》に命中し、衝撃によって狭い車内が大きい音とともに振動する。しかしパンターの80ミリの傾斜装甲は75ミリ弾をしっかりと弾いた。

「・・・・きゃっ!」

 上杉が小さな悲鳴とともに首をすくめる。砲弾の跳弾音など慣れてしまえばどうということはない。というかむしろ直撃じゃなくてよかったとホッとする音だが、初めての人はやっぱり怖いのだろう。俺も最初のうちは怖かった。

 そんな上杉を一瞥し俺はすぐに視線を《M3リー》に戻す。車体の揺れが収まるとすぐに命令を出した。

「撃て!」

 優子が引き金を引くと、《M10パンター》の70口径75ミリ戦車砲が火を噴く。主砲の口径はM3と同じ75ミリだがこっちの方がより長砲身で弾の初速も威力も段違いに高い。車体正面に直撃を受けた《M3リー》は大きく揺れ煙に包まれる。煙はすぐに晴れ、M3に戦闘不能を表す白旗がぴょこんと立つのが見えた。

「よし! 敵車輌撃破!」

「・・・・やった!」

 俺は照準器から顔を離しこっちを向いてきた優子とハイタッチを交わす。近距離とはいえ、初めて扱う砲を見事命中させた。優子を砲手にして正解だったかな。

 おっと、1輌撃破したくらいで喜んではいられない。まだ5輌の敵戦車がいるのだ。

「よし、この調子でいこう。周囲を警戒しつつ前進。上杉は次の弾の装填をお願い」

「了解っ!」

「分かったわ!」

《M10パンター》はすぐに移動を開始した。さっきから聞こえている砲声はだんだんと近づいてきている。戦闘音はこの辺りに集中してくるのでほかのチームが集まってくるかもしれない。断続的に聞こえてくる砲撃音のする方向を地図で確認すると、唯一橋のかかっている細長い沼地のあるエリアだ。遮蔽物はほとんどないので後から参戦すれば狙い撃ちできるかもしれない。

「よし、次の目的地は橋だ!」

「了解っ!」

《M10パンター》はスピードを上げ、撃破した《M3リー》のそばを通り過ぎ橋につながる道に入る。

 しかし、少し進んだ後、俺達は砲撃とは違う衝撃に襲われた。

「「うぉぉぉぉぉぉっ!?」」

「「きゃああああああ!?」」

 体がふわっと浮き上がり、そして重力によって自由落下する。

「いってぇ!」

 座席に思いっきり尻を打ちつけられる。戦車の座席は硬いのでものすごく痛い。

「おい鈴木っ! 全然前が見えねえぞ!」

「と、とりあえず停止!」

《M10パンター》はがくんと停止した。今度は前に吹っ飛ばされそうになる。

「なんやねん、もう」

 車体はまだ傾いている。どうやらかなりのガタガタ道に入ってしまったらしい。   「ちょっと外見るから待ってて」

 ハッチから頭を出し、下の様子を確認する。

「・・・・なんじゃこりゃ」

 目の前に伸びていたのは、わざとらしくガタガタにされた道だ。普通の車なら腹がつっかえて立ち往生してしまいそうだ。

「うわぁ、これはヒドいな」

 操縦席から頭を出した中村も困惑している。

「どうする? 行けそう?」

「うーん、ゆっくり行けば行けないことはないと思うけど・・・・」

 自動車部の中村も困った様子。さっきの衝撃を思い出せば走りたくはないだろう。

「まあ、見た感じあと100メートル位みたいだし。頭出しながらなら・・・・」

「じゃあそれで頼む。周りは俺が見張っとくから」

 俺は頭を引っ込めて、「もうちょっと揺れるから、何かにつかまっといて」とみんなに注意しておいた。さっきは大丈夫だったが、次飛び跳ねたときに頭とかぶつけたら大変だからな。

「・・・・行くぞ」

《M10パンター》が再び進み始める。相変わらずの不整地を何度も吹っ飛ばされそうにされながら何とか突破した。揺れが収まりとりあえずほっとする。この間に敵戦車が来ていたらひとたまりもなかったからな。襲撃がなくて本当に良かった。

「よっしゃ、サンキュー中村!」

「・・・・・・(ぐっ)」

 中村はこっちも向かずにただ親指を立ててすぐに操縦席に潜ってしまった。このかっこつけめ。

「・・・・よし、見えた!」

 俺の視界に4輌の戦車が入る。1輌はすぐ傍、2輌は橋を挟んで大きな池の対岸。そして1輌は橋の上にいた。対岸の2輌は既に白旗が上がっている。歴女の《Ⅲ号突撃砲》とバレー部の《八九式中戦車》だ。おそらく橋の上の《Ⅳ号戦車》か傍の《38(t)軽戦車》に撃破されたのだろう。

「優子! 砲を左に! まずは生徒会の38(t)をやるぞ!」

《M10パンター》の主砲が左に旋回する。しかし、照準を合わせる前に《38(t)軽戦車》は煙に包まれ白旗が上がった。《Ⅳ号戦車》が先に撃破したのだ。

「マジか! やっぱり右へ! 目標Ⅳ号!」

《Ⅳ号戦車》は橋を渡り終え、まっすぐこちらへ向かってくる。ここで臆せず向かってくるところはさすがみほといったところか。《Ⅳ号戦車》の短砲身75mm砲は《M10パンター》の正面装甲を撃ち抜く力はない。とすると、

「側面に回りこむ気やな・・・・させるか! 右斜め後ろに後退!」

「りょ、了解・・・・うぉう!?」

「「うわわわわ!?」

車内が激震し、金属の割れるような音がして《M10パンター》は停止する。ひ、被弾した!?

「う、動かねえぞ!」

 さっきの金属音・・・・まさか!

「畜生! 履帯をやられた! 」

「はやくて狙いが追いつかないよ~!」

「うわわ、来るぞ来るぞ!」

「何? どうなってるの!?」

 さっきので車内は大パニックに、《Ⅳ号戦車》は俺達に接近戦を仕掛けようと左右に小刻みに蛇行しながら向かってくる。あの動き、どう見ても素人の操縦じゃねえぞ!

「優子、砲を動かさないで! 照準そのまま、十分引きつけて照準口に相手が入ったら撃って!」

 捉えられなければ待てばいい。蛇行してるのだから絶対照準自分からに入るはず!

「えいっ!」

 優子が引き金を引いた。発砲による煙で一瞬Ⅳ号が見えなくなるが、Ⅳ号が停止しているのは見える。

「やった・・・・・・あれ?」

《Ⅳ号戦車》に白旗は上がっていなかった。よく見るとⅣ号の下の地面が深く抉れている。急ブレーキを掛けて回避したのだ。

急ブレーキによる回避は回避運動の基本だが、さっきのはめちゃくちゃ上手い。立派な車長と操縦手がいないと出来ない技だ。片方はみほとして、もう一人は誰だ?

「次弾、急いで!」

んな事を考えている暇はなかった。《Ⅳ号戦車》は再び動き出し、目前まで迫る。《Ⅳ号戦車》の砲塔が左に旋回している。俺達の右側に回り込む気だ。優子が砲を右に向けようとするが、間に合わない!

《Ⅳ号戦車》は《M10パンター》の右隣にぴたっと付き、停止した。

「・・・・来る!」

 車内がこれまでで一番の衝撃と轟音に見舞われ、《M10パンター》に白旗が立った。

 

 

 試合終了後、俺たちは唯一自走可能な《Ⅳ号戦車》の上に乗せてもらい、倉庫前に戻った。ほかのチームは歩いてきたとか。《40Mトゥラン》だけ所在が分からなかったのだが、合流してきた笹原達の話によれば、《Ⅳ号戦車》と突然正面から遭遇しすれ違った際、Ⅳ号の後ろからやってきた《Ⅲ号突撃砲》の攻撃を受け撃破されたそうな。

「みんなグッジョブベリーナイス!」

 ドロドロヘトヘトになって戻ってきた俺たち(まあ、俺たちはⅣ号に乗せてもらっていたが)を蝶野教官が出迎えてくれた。

「いきなりあそこまでガンガン動かせたらもう十分よ! 特にⅣ号のチーム。途中で動きが変わったわね。すごかったわ!」

 それには俺もびっくりした。なんせ途中で人員を補充してるんだもの。学年成績トップの冷泉(れいぜい)麻子(まこ)がいつの間にかしれっとⅣ号のチームに混ざっていた。あいつ最初はいなかったぞ。

「あとは日々、走行訓練と砲撃訓練に励むように。来週からは学校の先生が見てくれるけど、私もたまに覗きに来るから。分からないことがあったらメールしてね」

 あ、学校の先生で教官免許持ってる人いたのね。いったい誰だろう。

「気を付け!」

 疲れてヘナヘナになった俺たちの姿勢を、河嶋先輩が正す。

「今日はここまで。礼!」

「「ありがとうございました!!」」

 終了の挨拶。やっと終わった。自動車部はこれから戦車の回収に向かう。中村と吉井も大変だなあ。

「おい鈴木」

 帰ろうとする俺を中村が止める。

「なんや?」

「今日はお前にも手伝ってもらうぞ」

 は?

「え、マジで?」

「まじで。人が足りねえんだよ。少しは手伝ってくれ」

「わっかったよ。手伝ってやるよ」

 疲れてるから正直手伝いたくなかったのだが。断ったら悪いと思ったのでここは手伝うことにしよう。

 ということなので、

「優子、そういう訳だから先に帰っといて」

「わたしも手伝うよ」

「いや、優子は帰って晩飯よろしく。帰ってすぐ食べたいし」

「わかった。じゃあ、帰るときは連絡してね」

「おうわかった」

 優子は上杉たちとともに帰って行った。さて俺も行くか。日が落ちないうちにできるだけ回収しておきたい。暗くなってからの作業は危ないからな。

「おーい、鈴木。行くぞ」

 俺は自動車部の運転するトレーラーに乗り込み、再び山林に入った。

 

 

 

 

 

「じゃあ、これ必要な部品の注文書。よろしく!」

自動車部の部長、ナカジマさんから書類の束を受け取り、一通り目を通す。今日の練習試合で損傷した戦車の修復に必要な部品の注文書だ。損傷した戦車の修復にかかる費用は校内戦、対外戦で割合が変わるものの、連盟が一部(いや相当)費用を持ってくれる。そのため詳細な書類の提出が必要になるのだ。

「ありがとう。じゃあこれは生徒会に出しておくから」

「うん。私たちは明日までに走らせられるよう頑張ってみるよ」

 戦車を探した時といい、自動車部の整備能力は本当にすごいと思う。初めて扱うであろう戦車、しかも7両をたった6人で整備してしまうのだからもうプロレベルである。

自動車部に別れを告げ俺は書類を提出するために校舎へと向かう。もう下校時間は過ぎているので部活動をしていた生徒はとっくに帰宅していてグラウンドには誰もいない上、廊下の照明が消されているところもあるので、薄暗い外の風景と相まって結構怖い。

 照明の落とされた校舎内は外よりもはるかに暗く静かだ。お化けとかそういうのは信じていないのだが、この環境は気分が悪い。俺は足早に一般棟最上階の奥にある生徒会室に向かった。

 

「失礼しまーす」

 俺は恐る恐る生徒会室に入る。会長室には以前みほが生徒会に呼び出しを受けた時に入ったが生徒会室に入るのは初めてだ。こっちは生徒会役員が事務作業をなどを行う部屋であり一般教室6部屋分はあるだろう広さだ。

「失礼しまぁす?」

 もう一度声をかけてみたものの返事がない。部屋を見渡すが人気(ひとけ)はない。みんな帰ってしまったのだろうか。でも部屋の明かりはついているので誰かいるはずなのだが。

 明日出直そうかな。先輩にはメールで連絡入れておいて、自動車部にも明日出しておくと言っておこう。

 俺はそう思い踵を返そうとすると、

「あら? どなたかしら?」

 突然、背後から声をかけられ、俺は心臓が飛び跳ねそうになった。おかしい、背後にはさっきまで気配が無かったのに!

 俺は超信地旋回のごとく振り返る。入り口のそばに2人の女子が立っていた。役員の人だろうか。

「ごめんなさい。驚かせちゃったかしら」

 背の低いほうの女子がくすっと笑う。俺の反応がよほど面白かったらしい。

「えっと、戦車道の書類を出しに来たんですけど」

「ああ、それなら小山ね。ちょっとそこで待っててくれる? もうすぐ戻ってくると思うから」

 良かった、今日中に出せるのか。正直のところ、先輩たちに連絡するのが面倒くさいなと思ってたところだったのだ。

 俺は案内されたソファに座る。すると小さい方の女子が何故か俺の隣に座ってきた。もう一人は奥の部屋に消えていった。

「えっと、役員の人ですよね?」

「そうよ。私は3年2組の宮本(みやもと)凪紗(なぎさ)。あっちは同じクラスの水原(みすはら)美月(みつき)よ。私は会計、美月は書記をやっているわ」

 やっぱり先輩でしたか。もう見た感じで2年と3年の違いって分かるんだよな。雰囲気が全然違う。けど水原って、うちの水原さんと同じ苗字だな。

「俺は2年2組の鈴木正弘です」

「ふふ、知ってるわよ。鈴木くん」

 え?

「えっと、何で知ってるんですか?」

 すると彼女はにやりとして、

「ふふ、あなたに興味があるからよ」

 いきなり何言い出すんだこの人!? まだ出会って3分も経ってねえぞ。

 しかしよく見ると、この人めっちゃ美人だな。背は佐倉と同じくらいで結構小っちゃいけどなかなか『イイモノ』をお持ちでいらっしゃる。こっちは優子と同じくらいかな。背の低さもあってボリュームがある。

「あら、もしかしてあなたも同じだった?」

 まずい! 俺の不埒な視線が気付かれてしまったようだ。慌てて視線を明後日の方向へ吹っ飛ばす。

「い、いえ。そんなことは・・・・」

「そうね、あんな可愛い妹がいるものね」

「はい、まあ・・・・・・って、あれ?」

 何でこの人俺に妹がいるって知ってるんだ?

「なんで、妹がいるって知ってんですか?」

 すると彼女は今度はふふっと笑って、

「あなた、生徒会じゃ結構有名なのよ」

「マジですか」

 俺、何かやらかしただろうか。記憶にないのだが。

 俺がうーんと頭を抱えていると、もう一人の先輩、水原先輩がおぼんを持って戻ってきた。

「もう凪紗、あんまり鈴木くんをイジメちゃだめよ」

 あんたも俺のこと知ってるんかい! 俺ってもしかして本当に有名人なのか?

「えっと、なんで俺って有名なんです?」

 変な噂だと嫌だぞ本当。何か宮本先輩の表情見てると嫌な予感しかしない。

「そうね。本人にはちゃんと言っておいた方が良いわね」

 水原先輩が俺の前にお茶の入ったコップを置きながら言う。うん、変な噂は嫌だが気になる。水原先輩は反対側のソファに座って話し始めた。

「鈴木くん、今妹さんと一緒に住んでるよね?」

「はい、住んでますけど」

「うちの学校では不純異性交遊は禁止だから、男女生徒の同居はもちろんダメなの。一応兄妹とかは例外なんだけど、一応生徒会と先生とで会議をするの。形式的にね」

 そうか、生徒全員が寮生活をしているわけじゃない。俺みたいな一人暮らしも結構いる。そっちは寮と違って監視されていないから一応そうやってチェックしているんだな。ていうか俺の知らんところで学校でそんな会議が行われていたのか。

「なんか、照れますね」

「で、どうなの? 学校一の美少女との生活は」

「え?」

 宮本先輩が覗き込むようにして俺を見てくる。さっきからこの人一つ一つの動作が、エロい。

「いや、普通ですけど」

「なーんだ。つまらないわね」

 え、なんでがっかりするんですか? 先輩は俺に何を求めているんだ。

「凪紗、鈴木くんが困ってるでしょ」

 水原先輩、台詞と顔が一致してませんよ。めっちゃ楽しそうな顔してるじゃないですか。

 あー、小山先輩早く戻ってこないかなー。さっさと書類出して。帰りてー。

 ・・・・・・

「ごめんねー、遅くなっちゃった」

 ん? もしやこの声は・・・・

「おー、柚子おかえり」

 小山先輩が戻ってきた。これでやっと帰れる。

「こやませんぱい~」

「あら鈴木くん、どうしたの?」

「どうしたじゃないですよ。戦車の修理費の請求書持ってきたんです」

「あら、明日でも良かったのに。わざわざゴメンね」

 明日で良かったんかい。俺は書類を先輩に渡しながら心の中でツッこむ。

「じゃあ、俺もう帰りますんで」

 出されたお茶をぐびっと飲み干し、俺は生徒会室を出ようとする。するとちょうどポケットのなかからピコーンと音がする。

「校内で携帯はサイレントか電源オフよ。鈴木くん」

 宮本先輩が即座に注意してくる。さすが生徒会役員。

「・・・・すいません」

 おっかしいな。学校行くときはいつもサイレントにしてるはずなのに。ぼけっとしててアラームなるようにしてしまったのかな。

 さっきの通知音はトークアプリのものだ。俺はスマホの通知をサイレントにしてから通知を確認する。優子からだ。

 

 

 はやくかえってきて

 

 

「・・・・・・」

 句点も漢字変換もされていない文章。怖いなこれ。早く帰らないとまずいかも。

「ではこれで失礼します」

「愛する妹の催促かしら?」

「・・・・・・」

 俺は鼻の溜息で答える。変に答えるとまた何か言われそうだからな。

「あら、否定はしないのね」

「もう、宮本先輩は俺をおちょくって楽しいですか?」

「楽しいわよ」

 即答ですか。はいはいもう分かりましたよ。もう勝手になさって下さい。俺はもう本当に帰りますから。

「それでは、失礼しました!」

 俺はわざとらしく運動部員のような挨拶をして逃げるように生徒会室を後にした。

 

 

 

 

「そう言えば美月。あなた妹の話しなかったのね」

「忘れてたわ。でもいつか分かるでしょ」

「それもそうね。でも鈴木くん、可愛かったわ~」

「あなた本当に後輩の男の子ナンパするの好きよね。今回は本気で狙うの?」

「そうね。彼の事、気に入ったわ。まあ、妹という強敵付きだけど」

「もう恥ずかしい真似はしないでね。一緒にいるこっちが恥ずかしいから」

「分かってるわよ。あなたは私を何だと思ってるの?」

「年下好きの変態よ」

 




活動報告に本作における大洗学園について書いたものを投稿しておきました。良ければどうぞ。

また次回もよろしくお願いします。
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