「ひぃ!こ、こないで!こないでよ!!」
私の願いも届かず死の気配は私に向けて飛来する。
「あう!」
とうとう転んでしまった。
「い、いや…いやぁぁぁぁ!!」
「あああぁぁぁぁぁ!!?」
はあ、はあ、ゆ、夢?またあの夢なのね。
「え~りんほんとだってば信じてよ」
「はいはい信じてます。早く朝食食べちゃってください姫」
ああは言ってるけど絶対信じていない。
あの時、そう二日ほど前私はもこタンとの恒例の殺し合いをした五分後だった。あの時悲劇が起こった、私はもこタンを景気よく真っ二つにして気分よく永遠亭に帰るはずだった。
だけどそうはならなかった、いきなり私は殺されたんだ。振り返ったときは遅かった、何かが私を貫き地面を抉り取ったのだ。初めはもこタンの仕業かと思ったけど違った。もこタンの仕業だったら竹林が燃えることはあっても、引きちぎられたようにはならない。
竹林はまるで隕石が落ちたかのように荒れていた。
「というわけで、今日は私を襲った者を調査に行くわよ!」
「……お~」
「ちょっとイナバ!元気が足りないわよ、油断は即死を意味するもの知りなさい」
「だって姫が無理やり…仕事も途中だったし師匠に怒られる~」
まったくぐちぐちと文句を、従者なんだから姫の言葉にはイエス以外ないでしょ。
「私を殺したのはあなたかしら?」
「?ちがうのか~」
「姫…さっきからそんなストレート聞いてますが絶対答える相手なんていませんよ」
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「筍が必要なのよ」
「は?」
出会いがしらにいったいなんだ、パチュリーにしては言葉がめちゃくちゃだ。
「次試す魔法の材料に筍が必要なのよ、だから採ってきて」
「それは構わないが…いったいどんな魔法なんだ」
正直かなり気になる。魔法の触媒にするなら幻想郷には魔法の森に茸がたくさん生えている。
「筍の特徴を利用した魔法よ」
特徴ね、まあいい。ちょうど今日の夕食のメニューを考えていたところだ、今日は筍ずくしにしよう。
「それじゃあよろしく、籠は美鈴に渡すよう頼んでおいたから」
「了解した」
しかしタイミングの悪い、竹林は二日前に行ってきたばかりだったのに。
「相変わらず変化が激しい場所だ」
竹林はたった二日しかたっていないにも関わらず異常な竹の伸び方で姿を変貌させていた。
「しかしどれだけの筍が必要なんだ?美鈴の奴ちゃんとパチュリーの話聞いていたんだろうな」
美鈴から渡された籠は日本昔話に出てくる爺さんが持っているような巨大な籠だった。筍が百個くらいは入りそうだ。
「んん、意外に筍がない。竹はたくさんあるのに」
以外にも竹林には筍がなかった。竹林の入り口部分には結構あったが、俺がそこのを採ることは止めた。ここは人里の人間たちも採りに来る。それなら竹林の中に入っていける俺は奥で筍を採るべきだろう。
「十個くらいは採れたが…ほんとにこの籠いっぱいに必要となるとまだ全然足りないな」
どこか筍が多くありそうな場所は……そういえばあったな、つい最近筍が大量に出来てそうな場所が。
「……おお、あるある大量だ」
二日前妹紅と輝夜という人物が争った場所は竹が吹っ飛んでいたからな。普通なら竹が吹っ飛んだからって筍はすぐ生えてこないが、予想通りここは筍はすぐ生えてきていた。この竹林に張ってある結界が竹の成長を促す効果でも持っているのか?
「まあ理由はどうあれ筍は筍、これで籠いっぱいにもなるだろう」
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「ほらイナバ、私が言った通りじゃない。犯人は犯行現場に戻るって言ったでしょ」
「はあ、でもあの人筍を掘っているだけじゃ」
姫様に付き合うこと二時間、もうお師匠様に怒られることは確実なので開き直って姫様を殺したという人物を探していた。
「そういえば姫様、結局なんで殺られたんですか?ほら貫いたといっても武器の形状とか使用方法とかがわかれば犯人の特徴がわかるかもしれませんよ」
「そういわれもね、気付いて振り向いた瞬間に死んだからわからないのよね。クレーターが出来てたから武器があるかと思って調べてみたけど何にもなかったし」
「それじゃあその場の状況どうでしたか?焼けてたとかなぎ倒されてたとか」
「そういえば削岩機でも使ったみたいに地面が抉られてたわね」
抉られてる…そうなると飛来物は霊力や妖力弾じゃない、必ず固を持った物体になる。けど現場には何も落ちていなかったとなると……
「……驚いたわ」
「?なにがですか」
「イナバってそんな利口そうな表情できたのね」
いつもは永琳に泣かされてるばかりばかりなのにねと姫様は言う。私って他人から見るとそんな泣いてばかりいるのかな?
「ま、そんなことは犯人を見つけたら死なない程度にボコして聞けばいいだけよ」
「そうなのでしょうか」
そもそも姫様が気付かない位置から、姫様を殺すことができる人物を捕まえることなんてできるのだろうか。
そして現在につながる。姫様が犯人は現場に戻るのよといって駆け出し一人の人物を発見した。姫様は犯人といってるけど……
「さあイナバ、捕まえてきなさい」
「はい…ってええ!?私が行くんですか?」
「当たり前でしょ。私がいくより捕まえるのならあなたの能力はうってつけじゃない」
それはそうですけど。確かに相手を錯乱させてしまえば捕まえることはたやすい。錯乱したところに手刀を入れれば捕らえることはできるだろう。
「分かりました。行ってきます」
相手は筍採りに夢中だし危険なことはないだろう。
「――――!」
狂気を操る程度の能力を発動させ相手を幻惑させる。これで相手は動けないから後ろから手刀で終わりだ。ごめんなさい、できるだけ痛くないようにしますから。
「は!……うえ?」
あ、あれ、私どうなって、手…動かない、足…動かない、体…起こせない、首筋に一本の剣……あ、私死んだ。
「(ひ、姫様は)」
唯一動かせる首を姫様のいる方を向ける。
「(ってあの人いない!?逃げ足はやすぎです)」
「もう一人いるようだな」
って姫の存在もばれた!?しまった、私が視線を姫がいる方に向けちゃったから。
「…まあいい、どんな手を使ったかは知らないがこのあたりにはいないな」
いないってどこまで逃げたんですか姫!…はっもしかして永遠亭まで戻って助けを。姫の能力なら一瞬でこれるはず。
「………………」
こない!そもそも姫の力なら私を助けることもできた。それをしないで逃げた時点で助けを期待するのも間違いになるわけで
「さて、お祈りはすんだかな?」
そして私の命もこれまでに!!ああ、戦争が怖くてこっちに来たのに死に方がこんな戦争みたいな死に方なんて。
「……と普段は言いたいところだが、ここで殺しては筍に変な匂いがつく。見逃してやろう」
え、私助かるの?ありがとう筍!普段はじゃまっけだと思ったけど今日だけは感謝します。
「ただし、なぜ襲ったのかは教えてもらう。もし嘘をついていたら場所を移動し殺す」
「は、はいなんでも話します!話しますから見逃してください!」
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やれやれ、なんでこう面倒事が起きるんだ。いきなりの襲撃に反射的に行動をしてしまった、捕まえたのは頭から兎耳をはやした少女。状況は左手で相手の両手を封じ両足で相手の両足を地面に縫い付けそしておまけにいつの間に投影したのか莫耶を相手の喉元に突き付けてる。
すると少女が茂みの方を見る、仲間でもいるのかと思い確認してみたが誰もいない。視力を強化してみるとはるかかなたに二日前に射抜いた少女があせったように木に手をつけていた。どうやって移動したんだか、何か移動向きの能力でももっていたのか?
まいったな。姿は見られてないと思ったんだが見られたのか?もしそうなら確実に自業自得だ。このままこの少女を殺すことはできない。原因が相手ならまだしもこちらにあるんだ、まあ殺されるわけにもいかないから適当に襲撃の理由でも聞いて、放せばいいだろう。
「で、どうして俺を襲ったんだ…ええ」
「はい!鈴仙・優曇華院・イナバと申します!」
「そんな畏まらなくてもいい、それでは理由を聞かせてもらおう鈴仙」
「はい、実は……」
ふむふむ…なるほど、あらゆる偶然が重なり輝夜という少女を殺した俺がちょうど彼女らが来たタイミングでこの場所に戻ってきたと。……この運の悪さはどうにかならないものか。
「事情はわかった。それとこちらも失礼な行動をした、その分の対価を払おう」
「はぁ、あの…私助かるんですよね」
「ああ、もとより別に殺す気はない。別にこの対価を受け取る必要もないぞ」
「いちよう聞いておきます」
「では話そう。君たちが探していた犯人は俺で間違いない」
それを言うと彼女は驚いていた。まあ俺が逆の立場だったら俺でも驚く。
「あの、どうして姫を殺したんですか」
「理由か、成り行きだったからな。まあ藤原妹紅という人物を殺された仇討が一番適当だろうな。他に何か聞きたいことはあるか?」
「じゃあ興味本位なんですけど、姫をどうやって殺したんですか?」
姫はそれなりに強いはずなんですと鈴仙は言う。まあ完全な不意打ちだったからな、あれは一コンマレベルで反射しなければ避けられないからな。
「簡単だ数キロ離れた場所から狙撃しただけだ」
「数キロって、あなた人間ですか?」
「俺は人間じゃないぞ。英霊だ」
「英霊?」
「英霊とは……というわけだ」
「そうなんですか」
鈴仙はあまり理解できていなさそうだな。まあ理解するのは難しいからする必要はないな。
「それで他にはあるか」
「いえ大丈夫です。ありがとうございました」
「礼を言う必要はない。こちらの方が悪かったんだ、輝夜という人物にも謝っておいてくれ。わびとしてはなんだが何か依頼があれば無料でうけおう」
それをいい俺は竹林を後にした。筍は十分とったしここにもう用はない。彼女は俺が見えなくなるまでその場を動かなかったみたいだが。
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「ただ今戻りました」
無事切り抜けることができた。あの人が見た目よりいい人でよかった。
「え、鈴仙?お師匠様~鈴仙帰ってきたよ~」
「鈴仙、仕事をほっぽり出してどこに行ってたのかしら~」
帰って来ても地獄は続いたらしい。
「あ、あの…姫様と一緒に調査に」
「へ~調査、それならいい調査結果を得られたんでしょうね」
「あ、はい」
私は先ほどの男性から聞いたことを話した。ちゃっかり戻ってきていた姫様にも。
「へえ、そんな奴がいたのね」
「い、意外と反応薄いんですね」
姫様の性格からして相手に仕返ししにいくと思ったんだけど。
「何でそんなことをする必要があるのよ。私を殺せるほどの人物なのよ、何でも依頼できるってことはもこタンへの嫌がらせのバリエーションが増えるじゃない」
グフフとなにやらすごく嫌な笑いを浮かべる姫。妹紅さんも災難だなぁ。
「………………」
対照的に私の話を聞いた師匠は黙り込んでいた。
「あの師匠、どうかしましたか?」
「ウドンゲ、確かあなたその姫を殺した相手を英霊とか言ってたわよね」
「はいそうです」
だとしたらおかしいのよと師匠様はまた考え込んでしまった。
「イナバ、さっそく明日あなたがあったという人物を探してきなさい」
「明日ですか?でもどうやって」
「なによ、住んでる場所くらい聞いてないの?」
「すみません」
あの時は生き残れたことで嬉しくてそこまで気が回らなかった。
「いいわ、そのかたは私が探しましょう姫。私もウドンゲの話を聞いてその殿方に興味がわきましたわ」
師匠が他人に興味を持つ?なんか恐ろしい、あの人薬づけにならなければいいけど。
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