「山菜を採ってきなさい」
顔を合わせるなり唐突にレミリアに言われた。一週間くらい前にもこんなやり取りをしたきがする。
「いきなりだな、どうして山菜を採ってこなくちゃならないのか理由を聞かせてほしい」
「理由なんて特にないわよ、いいから行ってきなさい」
レミリアの我が儘にもなれたものだが要領を得ないのも珍しい。こういう場合俺への嫌がらせか、本当にただの気まぐれかの二択だ。おそらく今回は後者だろう。
「咲夜も来るのか?」
「はい、今回は私もご一緒します」
なぜなら咲夜もついてきているからだ。
「それで山菜を採ってこいと言われたが、どんな山菜がいいかの所望はあるのか?」
「今の時期だとふきのとうがあります。お嬢様はそれの天ぷらが好きなのでそれをメインに」
「わかった、それでどこに採りに行く?」
ふきのとうがある場所といったら博麗神社の方にある山か妖怪の山。リスクがあるが妖怪の山に行けば山菜は豊富にあるだろう。まあおすすめはしないが。
「妖怪の山に行こうと思います」
「正気か?」
「はい」
妖怪の山。その名の通り多くの妖怪が住む山。当然のごとく普通の人間は近寄らない。ここの妖怪の頂点は天魔、そしてその配下の天狗たちが山を支配しているといっても過言ではない。
山に棲む妖怪達は、人間や麓の妖怪とは別の社会を築いている。その元締めを天狗が行っており、山に立ち入ろうとする人間を哨戒天狗が追い払うことが主な仕事だろう。
昔は鬼もいたようだが今は地底にいってしまい地上に鬼はいない。
「わかった、覚悟はできているようだし咲夜は妖怪の山に入ったことはあるんだろう?」
「はい何度か」
よくよく考えれば咲夜に物理的に入れない場所は存在しない。時間を操る程度の能力で時を止めれば天狗に発見されることなく山に入ることができる。もし発見されたとしても、時を止めて逃げればいくら天狗が早くても逃げ切ることは可能だ。
「それじゃあ行くとしよう」
「あ、待ってくださいちゃんと籠を持たないと」
「……またそれか」
「はい。今日は男手もありますしたくさん採れそうですわ」
咲夜、初めて会ったときに比べて人を利用できるまで成長してくれて。俺は悲しいやら悔しいやら…
「昔は警戒して俺と会話もしなかったのに、今は俺を使いパシリするうちの一人に」
「昔の時は忘れましたわ」
時を操って思い出してほしいよ。
「とにかく行きましょう。日が落ちる前に戻らないといけませんから」
「了解」
今回は俺はお荷物だからな。侵入し物資を奪うことに置いて咲夜は幻想郷で一、二を争うレベルだろう。
ただし、一見無敵とも思える咲夜の能力にも弱点は存在する。第一に、咲夜は時を止めている間自分以外のものに害を与えることはできない。理屈として傷は時間が経過することによってつく。有機物であろうと無機物であろうとそれは同じだ。なので時を止めている以上傷をつけることはできないと俺は考えた。
第二に、咲夜はなんの代償もなしに能力を使用しているわけではない。連続で使用すればその付けとして疲労感が襲ってくるようだ。まあ、戦闘以外では疲労感が襲ってくるほどの連続使用をするわけではないのでこれはたいして問題ではないだろう。
第三に、咲夜は連続で時を止められない。これだけだと第二との矛盾が生じる。ここでの意味は、例えば時を止める→動かす→また止める、これを瞬間的に行うことができない。能力を使用するのに数秒のインターバルが必要なようだ。
実践ではこの数秒が命取りになることがある。数秒あれば剣なら十分相手を切り払える、槍なら全身の急所を突くことすら可能だろう。
これが俺がまとめた咲夜の能力の欠点だ。
まあ今回は戦闘になることもないだろうから関係ないけどな。
「……咲夜どうだ聞こえるか?」
「ええ、けど便利ねこのパスってやつ」
「本来は魔力がないとつなげないがな、パチュリーに感謝すべきだろう」
パチュリーは俺が教えた魔術を解析し新しい魔法に変えてしまった。このパスを繋げるすべは、パチュリー作の魔力がなくても使える魔法初級編として本にされてしまった。
このパスの効果は魔力の受け渡しなどではなくただ念話だけできるものだ。
「それじゃ山に入るぞ」
「了解」
俺たちは茂みに隠れつつ妖怪の山の敷居だと思われる空間に入り込んだ。
「アーチャーどうです?視界内に生き物はいますか」
「いや大丈夫だ、今のところ咲夜の周囲に生き物はいない」
俺と咲夜は役割を分けて行動を開始した。時間をとめ確実に天狗に見つかることなく咲夜が先行して山菜を採る。俺は千里眼のスキルを利用し咲夜の周囲を警戒する。
「戻ったわ」
「お疲れ、そろそろいいんじゃないか」
ふきのとうを筆頭に行者にんにく、アスパラガス、わさびなんかも採れた。他にもいろいろな種類の山菜が採れた。
「そうね、それにこれ以上は深く入れそうもないわ」
「何かあったのか?」
「ここから先の警備が今までの比じゃないことになってるのよ。哨戒天狗どころか鴉天狗までいたわ」
哨戒天狗だけならまだしも鴉天狗まで警備しているのはおかしい。普段鴉天狗は山の奥で何か作業をしているはずだ。それがこんなところを警備してるとなると何か特別なことでもやってるのか?
「そうか、それなら早く山を下りた方がいいな。咲夜は先に時を止めて紅魔館まで戻っていてくれ」
「わかったわ。それじゃ籠は私が持っていくわ」
「すまん、ついてきた意味がなかったな」
「そうでもないわ。それに最初から違和感もあったのよ。この山いつもはこんなに警備が固くないもの。普段は川の辺りまでは天狗なんていないんだけどね」
それだけ言うと咲夜は俺の目の前から姿を消した。よし、俺も急いでこの山を下りよう。
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「天魔様しゃんとしてください。今日は全部隊の視察があるんですよ」
「ああわかっているよ。まったくうるさいなお前は」
ああめんどくさい、なんで今日が部隊の視察の日なんだか。
「お言葉ですが、天魔様が視察を後回しにしたつけが溜りに溜った結果です」
聞こえない聞こえない、こんな面倒なこと私が出ていかなくてもお前ら大天狗でやればいいんだ。私には処理する書類がたくさんあるだ。
「そのたまってる書類も今までやらなかった分がたまっただけですがね。ちなみにたまった書類の山は天魔様専用貯蔵庫にたまっていますからね」
ちょ、そっこはたしか私のとっておきの酒が置いてあったはず!
「ええ、部下たちに大評判でした」
「表出ろやこら!!」
私が長年付け込んできた酒を下っ端どもにふるまっただ!?絶対ゆるさん、その羽引きちぎって蒸し焼きにしてくれるわ!
「別にかまいませんが、これからは私が行ってきた分の天魔様の仕事はご自分でなさってくださいね」
「すんませんした!!」
威厳?何それ食えるの?
「……なあシルク。なんでお前は私に厳しいんだ?」
「厳しくありません。だいたい天魔様はすぐ仕事を抜け出すから仕事がたまってですね……」
ああまた始まった、庶務仕事が有能だから側近にしたのに私に説教垂れる始末。どこかに私の言うことを何でも聞いて炊事選択なんでも御座れの万能生物いないかな?
「聞いてますか天魔様!」
「あ~はいはい聞いてますよ~……なあシルクよ」
「何ですか、仕事なら変わりませんよ。今日は絶対視察を行ってもらいますからね」
「それはもうあきらめたから。話聞いてくれよ」
「手短になら、時間がもう迫ってるんですから」
「私はな、仕事が嫌いなんだよ。うっとうしい鬼神が消えてくれてもう遊んで暮らせると思ったんだよ。けど結果はこれだ。毎日毎日仕事仕事、こんなはずじゃなかったんだ。私は隣に美女をはべらせて優雅な生活を送っているはずだったんだよ」
「すみません一言でお願いします」
「仕事したくないです」
「だまれこのクソニート」
なんとまあ、私ここのトップだよな。それが今たかが部下にクソニート扱いだよ。私いったいどうすればいいの?私なんか間違ったこといってる?皆だって私と同じこと思ってるに違いないよ。だから私の意見こそが正しくてこのクソ部下の言葉こそが間違ってるんだよ。
「戯言はそこまでにしてください。一週間仕事部屋に括り付け延々と仕事させますよ」
「すんません、体なら差し出すんで勘弁してください」
何度でもいう。威厳?なにそれ食えるの?
「あなたの爛れた体などいりません」
「なんてことを!?」
この絶世の美女に向かってなんて発言。大天狗の爺どもが何度迫ってきたと思ってんだ!初めて会った時のあの初心な反応はどこいった。昔なんて腕をからめただけで赤くなってたのに、今じゃ胸を押し当てても無反応。それどころか爛れた扱い!この数百年で君に何があった。
「確かに最初は綺麗な人だと思いました」
「でしょ、そうでしょ。私は絶世の美女でしょ」
腰まで伸びる美しい黒髪、整った顔立ち、男の目を引く大きな胸、くびれた腰、そしてお尻、このパーフェクトボディを持つ私の評価が低いわけは……
「はい、一週間くらいでただのクソニートだと分かりました」
「短いぃぃぃ!!」
私の威厳たった一週間!?一週間で意識されてる美女からクソニートまで評価おちたのかよ!
「さらに一週間で反面教師に最適な人だと分かりました」
「その一言は余計だよね!絶対私の心を折ろうとしてるよね」
もう天狗不信になりそう。
「さあ話は終わりです。早く来てください」
「あだだだだ!耳を引っ張るな耳を!」
どこかに私を大切にしてくれる人はいないの?今だったら優しい言葉一つで落ちる自信あるよ。こんな絶世の美女がバーゲンセールしてますよ~誰か買って~
「きっと三日で返品されますよ」
「五月蠅いわ!!」
私のクーリングオフ期間は十秒間よ!一秒でも過ぎたらたとえ震度7の地震がこようが動かないわ。
「その粘り強さを少しは仕事に活かしてください」
「え?なんで」
パァァン!!!パァァン!!
今日、部下に顔を平手打ちされました、しかも往復です。顔は止めなさい顔は!
「ほんともう、あなたは他人を幻滅させる天才ですね」
「そうでしょ!ようやく私の凄さがわかったようね」
あはっはっは!………褒められたのに…涙が出ちゃう。
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