東方赤弓兵   作:ライダ

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作者もビックリするほど長い天魔編まだ続きます。

お楽しみください。


脱走者と追跡者

「ハラショオォォ!!」

 

いかん、意味不明な言葉でた。やばいやばすぎる、何がやばいって捕まえていたはずの男がいない。

 

「天魔様!?なにかあったのですか」

 

「何でもない!何でもないから入って来るな!!」

 

今入ってこられたら死ぬほどまずい。

 

「しかし今妙な奇声を」

 

「ただの発声練習です。今私のマイブームなんだ」

 

この際少々の権威の失墜は大目に見よう。それよりもこのことをごまかすすべを模索するんだ。

 

「そうですか、それなら安心しました」

 

あれれ、何の疑いもなく受けいられたよ。少しは疑ったりしないの?

 

「天魔様だったらそれくらいやってそうですもんね」

 

おかしいな、部屋の中なのに雨が降ってるよ。しかもしょっぱい。

 

「ま、まあごまかせたんだから良しとしよう」

 

それよりも現状の打開策を見つけるべきだ。

 

ええと…結ばれた縄、何故か空いている私の非常脱出口、そして綺麗になった部屋。

 

「なんで部屋が綺麗になてるのかわからないけど、やっぱり侵入者がいない」

 

くっ、部屋に戻ったあの時達成感の余り男を抱き枕代わりにして寝たことが悪かったというのか。いや、そんなはずはない。だって私は欲望に従っただけだもの、妖怪は欲望に従って生きるもの、その生き方を貫いた私が悪いか?それは否、だんじて否。

 

それにあの侵入者の抱き心地の良さといったら、運んでる最中も何だか心地よかったけど抱いてみるとあらビックリ、とっても心地いいのです。その心地よさといったらもう、毎日抱き枕にして眠りたいほどです。ただ見た目がいただけない、何故か外見だけ見るととてもムカムカする。

 

「いや、そんな抱き心地を考察してる場合じゃない」

 

考えを戻そう、このことを正直に話したらどうなるだろう。

 

「ごめんちゃい、お昼寝してたら侵入者にがしちゃった」

 

「そうですか、それで」

 

「とっても抱き心地がよかったです」

 

「言いたいことはそれだけですか?」

 

「イヤダァァァ!!」

 

駄目だ、これは駄目だ。仕事部屋に縛り付けられ軟禁される未来しか見えない。

 

それじゃあ無視を決め込んだらどうだろう?

 

男が捕まる。どうやって逃げ出したか白状される。シルクに伝わる。私、マストダイ。

 

「ノォォォウ!!」

 

駄目だ、仮定が違うだけで結局未来は同じだ。

 

それじゃあ侵入者が見つからず逃げ切れることに賭ける?

 

侵入者がいないことに気付かれる。理由を問い詰められる。居眠りしてたことがばれる。私、マストダイ。

 

「アウトォォォ!!」

 

やばいスリーアウトだ。結局どれもこれも同じ未来につながる。

 

こうなれば残った手段はただ一つ。

 

「私自身が誰にも見つからずに捕縛する。これしかない!」

 

そう、これなら誰にも侵入者の逃亡が露呈することもない。そうと決まれば前は急げだ!山を下りられたらたまったもんじゃない。

 

「……天魔様いいですか。先ほど渡し忘れた書類が」

 

「………………」

 

「天魔様?」

 

「………………」

 

「…入りますよ。…………どこ行きやがったあの野郎!!」

 

前途多難な天魔の計画であった。前門の虎後門の狼、天魔の運命はいかに。

 

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「ちっ、後ろから大きな妖気。気付かれたか」

 

先ほど妖気が脹れあがり俺の体を貫くような視線を感じた。

 

「しかし妙だな、気配が一つしかない」

 

とてつもない力を内包した気配一つだけが俺を猛スピード追いかけてきている。まさかあの女が一人で追いかけてきているのか?

 

だがこれならまだ逃げられる可能性は十分ある。何故か追跡者は俺と似たような動きで俺を追ってきている、仲間に見つかりたくないのか?

 

「体面の問題か?まあトップが昼寝してて侵入者逃がしたなんて知られちゃまずいか」

 

まあ俺にとっては好都合だが、普通にやっては確実に追いつかれる。けど隠れながらなら追いつかれる確率は低い。問題があるとすれば、あの得体のしれない能力だ。

 

「ッッ!」

 

またか、またいきなり息が出来なくなった。だが警戒していれば問題ない、あの時は不意だったから行動不能になってしまったが来ると分かってれば耐えられる。幸い能力が使われるタイミングはだいたい読めた。

 

約半径三メートル、その範囲に見張りの天狗がいないときに能力を使ってくる。ならわざとこちらから敵に向かうよう動けばいい。それだけで能力発動回数も減るだろう、何せ相手は仲間に見つかっても駄目なのだから。

 

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やばい、めっさやばい。追いつけたわいいが全然距離がつまらない。最初は警備に見つからないよう動いてたのかすぐに追いついたのに。

 

「あの動き本当に人間?」

 

いくら私も見つからないよう動いてるといってもかなりの速度で移動してるのに追いつけない。なんで最高速度から直角で起動変えられたり、最低速度から最高速度まで加速できるの?

 

「それに能力も見切られてる」

 

さっきからピンポイントで能力発動場所を察知されてる。それどころか能力発動の誘導までされてる気がする。なんか手に取られてるようで気に食わない、周りに水素でも集めて吹っ飛ばしてやろうかしら。

 

いやそんなことしたらシルクにばれる。それどころか絶対仕事が増える。

 

厄介すぎる、こんな相手は鬼神ぶりだ。無駄に頭がキレるから能力も使えないし、私が追いきれない身体能力。あれ?もしかしてこれこそ私が求めていた人材?

 

なんか言うこと聞いてくれそうだし、頭もキレる、強い、三拍子そろってる。これで家事能力もあれば完璧だ。

 

「やば、そう考えたらテンション上がってきた。絶対捕まえよう、そして今度は言うこと聞くようちゃんと調教しよう」

 

もうシルクのような失敗はしない。あんな見る目のない男にはしない、というかこれ以上私の周りの男が私を苛めるなら私は完全に女に走るぞ。

 

そうならないためにも必ず捕まえよう。捕まえたらああしてこうして…ウヘヘヘヘ

 

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「………………!?」

 

なんだ、今の悪寒は。なんだかとてつもなく嫌な予感が後ろの追跡者から感じる。そう、まるで自分の

都合のいいような解釈を押し付けられたかのような。

 

(アーチャー準備できたわよ)

 

(ナイスタイミングだパチュリー、なにやらとてつもない不穏な気配が近寄ってくる)

 

(よく分からないけど、とにかく今いる場所からあなたを中心に半径十メートルから動かないようにして。できるかしら)

 

(やってみる)

 

(時間は五分よ、それで転移は完了するわ。時間はあなたの頭におくるわ)

 

(了解、五分くらいなら耐えてみせる)

 

(健闘を祈るわ)

 

それだけ言うとパチュリーからの念話は途絶え代わりに頭にタイマーが流れ込んできた。

 

「さて、――――投影・開始(トレース・オン)

 

両手に干将莫耶を投影し迎撃態勢を整える。敵は強大、勝率は低い、だが生き残ることに特化すれば持ちこたえられる。

 

俺の戦闘準備が整ったとほぼ同時に追跡者が俺に追いついた、何故か涎を垂らしてるが。まあ妖怪だし俺を喰らおうしても不思議じゃないか。

 

「ようやく追いついた、立ち止まったってことは捕まる覚悟があるってことでいいかな」

 

「まさか、こちらは準備が整っただけだ。それより聞きたいことがあるんだがいいか?」

 

「教えられることなら」

 

よし、舌戦には応じてくれた。これで少しでも時間を稼げれば。

 

「君は天魔で間違いないか?」

 

「ええ、私は天魔で間違いないわ。よく分かったわね」

 

「その溢れんばかりの妖気を見ればな、かなりの実力者と見受けられるが」

 

「………………」

 

まて、なぜ泣く。なぜ目に涙をためて上をむく。今日は雨は降ってないぞ。

 

「久しぶりに敬われたからつい」

 

哀れでこっちも涙がでそうだ。

 

「そんな目で私を見ないで。そしてこれ以上私の面目を潰さないためにも捕まって」

 

「それはできない。第一捕まったら何をされるかわかったものじゃない」

 

なぜか天魔が笑う、何がおかしい?

 

「君は私をどう思う?」

 

「は?どういう意味でだ」

 

「見た目よ」

 

「口から涎を垂らしてだらしない」

 

また泣かせてしまった。

 

「そんなのじゃなくてね、純粋な見た目で言ってくれないかな」

 

「あ、ああ。美しい女性だと思うが」

 

見ていてこっちが悲しくなりそうな雰囲気を醸し出していたためつい普通に答えてしまった。

 

確かに天魔は女性でもかなり美しい部類に入るだろう。綺麗な黒髪もさることながら、スタイルも抜群だ。まあ綺麗な顔から垂れていた涎で全てが台無しになっていたがな。

 

そんな事とは露も知らずに天魔は嬉しそうに蘇った。

 

「そうだよね、私綺麗だよね。そうよ私は綺麗なのよ!シルク目がないだけなのよ、私が爛れてるわけないわ!」

 

悲しんだり元気になったり落ち込んだり怒ったり、感情の起伏に忙しい女だな。

 

「で、それがどうしたんだ」

 

「私のことを素直に綺麗と思えるあなたならきっととても気持ちいいことになれるわ」

 

なんだか嫌な予感しかしない。

 

「具体的に言うと、ピィーーしたりピィーーしたりピィーーになったり」

 

彼女の部下は言いえて確実な表現をしたものだ。

 

「ただ」

 

「それ以上言ったら私はここら一帯を炎の海に変えるわよ」

 

どうやらこの言葉は禁句だったようだ。俺は藪を突いて蛇をだす趣味はない。

 

「それじゃあ私と一緒に来てくれるわよね」

 

「嫌だよ」

 

なぜさっきの回答で行くという選択肢が生まれるのだろう。天魔は鶏が空を飛んだように驚いている。

 

だいたい天魔の魂胆が見え見えだ。こいつは俺を利用して楽をしようとしてるだけだ。

 

「それじゃあ私は君が諦めるまで追いかけ続けるわよ」

 

なんてはた迷惑なストーカー行為だ。

 

「天魔としての仕事はどうする?君の部屋には大量の書類があったはずだが」

 

「んなもん部下に押し付けるわ。私の欲望と仕事、どっちが大事だと思ってるの!」

 

確実に仕事だろう。そして今の発言を君の部下が聴いたら泣くだろう。

 

「ふん!私の部下が泣くもんですか。私の部下だったら顔を往復ビンタしてくるわ」

 

もはや威厳は地に落ちている気がするのは俺の気のせいだろうか。

 

「まあ俺としてもそれは困る。それでこちらからから条件を出す」

 

「条件?なんの」

 

「今から二分以内に君が俺を倒すことができれば俺は君に着いていこう」

 

「それだけでいいの?」

 

天魔はマジで?とでも言わんばかりに驚いている。まあ天魔にとっては破格の条件だろう、俺を倒しさえすればいいんだ。天魔の力なら俺を殺すこともできる。

 

しかし天魔は俺の死体じゃなく生きている俺を必要としている。相手を生かしたまま倒すことは相手を殺す事よりも難しい。この条件なら二分程度なら俺でも生き残れる。

 

あくまでこれは生き抜く戦いだ。俺だって殺す気で挑めば勝率は低くても天魔に勝利できる可能性もある。

 

「返答は?」

 

「もちろんオッケーよ、早く始めましょう」

 

「わかった、それではこの砂時計が落ちきる瞬間がタイムリミットだ」

 

ここに戦いの火ぶたは切って落とされた。今創れるもの全てを用いてこの敵を迎撃する!




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