東方赤弓兵   作:ライダ

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長かった天魔編もこれで最終回です。

どうぞお楽しみください。


戦う者と創る者

「いくぞ!!」

 

先手必勝、まずはこちらから攻めていく。左手の干将で守りを固め右手の莫耶で天魔の胴を薙ぎ払う。

 

「近寄ってきてくれるなんて気が利くわね」

 

「なんだと!?」

 

天魔に攻撃したはずが何故か天魔に届くまでに勢いが殺され掴み取られてしまう。そして俺の顔めがけての蹴りが襲ってくる。

 

バキッ!!

 

防御に使った干将は音を立て砕け散る。けど干将を犠牲にしたおかげで回避する時間ができた。上体をそらし蹴りを回避。天魔はそのまま体を回し俺から奪い取った莫耶で切り付けてくる。

 

「っち投影・破却(トレース・オフ)

 

瞬時に莫耶を破却、俺の首を狙った一撃は空を切った。その隙を利用し足に魔力を集中して一旦離脱。

 

「さすがにやる」

 

一度の戦闘で三度死にかけた。蹴り殺されかけ、切り殺されかけ、殴り殺されかけた。もし天魔が薙ぎ払いじゃなく剣で突きをしてきていたら、剣を消してもそのまま拳が俺を襲っていただろう。

 

「あらら、今のを避けるんだ。ますます欲しくなったよ」

 

天魔が一瞬で姿を消す。間に合うか?

 

投影・開始(トレース・オン)!、壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!」

 

無名の剣を後方に投影し即座に爆破、爆風を利用して前方へ吹き飛ぶ。後ろには爆風の中から再び突っ込んでくる天魔、爆破の時右手で俺を貫く気でいたのかそこだけ服が焼け焦げていた。

 

投影・開始(トレース・オン)

 

三度干将莫邪を投影。身を翻しながら天魔を迎え撃つ、まともに受ければ剣がもたない。天魔の手刀を干将で受け流す、同時に莫耶で天魔の腕を狙う。今度は勢いを失うことはなかったが剣は空を切った。天魔は高速で俺の攻撃範囲外に移動していた。

 

「さすがは天魔、速さではかなわんな」

 

「舌戦には応じないよ。時間があるんだ」

 

さすがに舌戦に応じるとは思っていない、俺はこの間が欲しかっただけだ。

 

停止・解凍(フリーズ・アウト)全投影・連続層写(ソードバレル・フルオープン)!」

 

上空に無数の剣を生み出し天魔めがけて射出。剣群は天魔を蹂躙する勢いで迫る。

 

「それが奥の手?だったら拍子抜けね」

 

しかし剣群は天魔を貫くことはできず天魔から一メートル離れた付近で何かに遮られ弾き飛んで行った。まあ予想の範疇だ、天魔の力が空気を操っている以上固められて壁を作られたらただの剣では突破できない。

 

「まだだ、投影・開始(トレース・オン)

 

干将莫耶を投影し天魔に向けて投擲、剣は同じように見えない壁に遮られ天魔の後方に吹き飛ぶ。

 

「無駄だよ、そんな剣じゃ突破は無理だ。時間も後わずかだし終わりにさせてもらうよ」

 

「それはどうかな?投影・開始(トレース・オン)

 

もう一度干将莫耶を投影し天魔に向かって投擲。

 

「無駄なことを…ッツ!?」

 

ほう気付いたか。見えない壁に当たらぬよう左右から襲いかかる干将莫耶、それは注意をそらす囮。干将莫耶は夫婦剣、磁石のように陰と陽は引き付けあう。先ほど後方に飛ばされた剣が引き付けられ天魔を襲う。

 

しかしさすがは天魔か、二度目の剣を壁にまかせ強引に体を捻り迫りくる剣を弾き飛ばす。

 

 

「なん…ですって!」

 

しかしそれでも攻撃は終わらない。天魔が後方の剣の対処の瞬間とほぼ同時に天魔に接近し三回目の投影。この瞬間天魔は態勢を戻すことはできない。

 

鶴翼三連、アーチャーが担い手を本物を超え生み出した絶技。干将莫耶の互いに引き合う性質を利用した三方向からの同時攻撃は敵の命を確実に刈り取る。

 

はずだった。

 

「ふう、危なかったわ」

 

天魔を確実に切り裂くはずだった剣は天魔の体を裂くことはなく体そのものに受け止められていた。

 

「よっ」

 

「がっ!?」

 

最後の苦し紛れの剣の投擲もあっけなく躱され天魔に蹴り飛ばされ地面を転がる。そのまま天魔に馬乗りにされてしまった。

 

「残り十秒、残念だったわね。剣が引き合うのには驚いたけど威力が足りなかったわね」

 

どうやら天魔はあらかじめ全身に空気の膜を纏っていたようだ。触れられたことでそれがわかった。

 

「ああ、本当に残念だったよ。だが…」

 

「じゃあ来てもらうわ!?」

 

「その油断が君の敗因だ」

 

存在しないの四度目の攻撃。天魔の腹部には干将が深々と突き刺さっていた。

 

「ガハッ!…どうし、て剣はもう…ない、はず」

 

天魔を上からどかし天魔の服についていたポケットをあさる。

 

「それは!?」

 

天魔の服から出てきたのは縮小され小指サイズになった莫耶。

 

「…いつの間に、私の服の中に入れたの」

 

「君に初めて捕まった時だ。運ばれている最中に君の服に仕込ませてもらった。本当だったら君の勝利だった、あの攻撃に四度目は存在しないからな」

 

これは一種の賭けだった。天魔が空気を操れるということは、体全体に空気をまとわりつかせることも可能だ。もしそうだったら鶴翼三連じゃあ仕留められない。最後の一撃を強化できれば違ったが生憎魔力不足だ。天魔が最後に自分から能力を解かなければ干将は天魔を貫くことはなかっただろう。

 

そして砂時計の砂が落ち切る。

 

「時間だ」

 

俺の周りに魔法陣が展開される。何とか半径十メートルの範囲で戦いを終えられたようだ。

 

「どうやって逃げるのかと思ったら…魔法で逃げる気だったんだ。いいよ約束は守る、ただせめて名前教えてくれない」

 

「…アーチャーだ」

 

「アーチャーね、覚えとくわ」

 

すると天魔から何かが投げ渡される。

 

「羽?」

 

「勝者への景品よ」

 

その言葉を最後に俺の視界は暗転した。

 

 

 

「おかえり、どうやら無事だったみたいね」

 

「おかげさまで」

 

視界が戻ると目には多くの本が移った。どうやら転移は無事成功したようだ。

 

「どこか体に異常は?」

 

「…いや、特にないみたいだ」

 

体を解析してみたが魔力不足以外は特にこれといって異常はない。

 

「おかしいわね、あんな距離移動したら何かしら異常が起きても不思議じゃないのに。何か強力なマジックアイテムでも持っての?」

 

「そんな物はないが、ああそういえば帰り際に天魔から羽をもらったな」

 

「天魔の羽ですって!?」

 

なんだ?天魔の羽は珍しいものだったのか。パチュリーが言うには、天魔の羽は強力なマジックアイテムを作る元にもなるしそれだけで一種の加護を得られるようだ。

 

「その羽をよこしなさい」

 

「え?いや…はい」

 

有無を言わさぬ勢いで羽を奪われてしまった。まあこれが対価と思えばいいか、どうせ俺がもっていても役に立つことは少ないだろう。

 

「………………」

 

「どうしたんだ?」

 

「この羽何かの力が込められてる。これじゃ使えないわ」

 

パチュリーが言うに、一度別の力が込められた羽はほかの力を受け付けないとのことだ。

 

「それはマジックアイテムってことは魔力も関係してるんだろ」

 

「そうだけど」

 

「ならなんとかできる。ただ今魔力不足でな、少し魔力を貸してくれ」

 

「いいけどどうする気?」

 

「まあ見てろ。――――投影・開始(トレース・オン)

 

魔力を体に通し剣の丘から一本の剣を引き抜く。

 

「――――投影・完了(トレース・オフ)

 

手に一本の剣が顕現する。その名は…

 

破壊すべき全ての符(ルールブレイカー)

 

破壊すべき全ての符、裏切りの魔女メディアが持つ短刀。殺傷能力そのものは低いがその力は究極のマジックキャンセラー。あらゆる魔術効果を打消し初期状態に戻す力を持つ。

 

天魔の羽がマジックアイテムならこの短刀が通用するだろう。

 

「どうだ?」

 

「力が消えてるわ。何なのその剣」

 

「これはあらゆる魔術効果を打ち消し初期状態に戻す剣だ」

 

「なによそれ、私たちとって最大の天敵じゃない」

 

そうでもないぞ、突き刺すことが発動条件だから戦闘ではほとんど意味をなさないからな。使い魔同士の対決なら話は別だがな。

 

「それでも危険極まりないわ」

 

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「あーあ行っちゃった」

 

目の前にいた男は魔法陣の消滅とともに私の前から消え失せた。

 

「……ッツ!ふう」

 

よくもまあぶっさしてくれちゃって、服に穴が空いちゃったじゃない。こんなんじゃ死なないけど服は治らないんだからね。

 

「しかしまさか負けるとは、負けたのは何百年ぶりかな」

 

最後に負けたのは鬼神にだったな。あんにゃろう勝ち逃げしていきやがって、あの去り際のムカつく顔は今でも鮮明に覚えている。

 

「天魔様!!」

 

「!?」

 

ビックリしたなもう。いやそれよりもなんで…

 

「や、やあシルクさん」

 

「天魔様、こんなところで何をしていたんですか?侵入者はどこです」

 

い、いかん。よりにもよってシルクに見つかった。どうする正直に答えるべきだろうか。

 

「じ、実は紅葉狩りを」

 

「今は春です」

 

私の中では秋でした。そ、そうだ。こんな時のためにちゃんと布石を用意したんだ。

 

「ちょっと侵入者と遊んでました」

 

「で、逃がしたと」

 

「でもですね。ちゃんと終えるようにしたのよ。私の羽を持たせてるから私の羽を風に乗せれば後を追ってくれる」

 

実はあの時そっと羽に力を加えてた。あんな上質な男逃がしてなるものですか。先に仕込みをしたのはあっちなんだから文句を言われる筋合いわないわ!

 

私は羽を上に投げ捨てた。羽はもう一本の羽をめがけ飛んでいく。

 

「なんのご冗談ですか?」

 

飛んで行かなかった。羽はヒラヒラと空中から地面に落ちた。な、なんで?

 

「え、うそ?なんでいかないの、さあ早くいきなさい羽。なにサボってんの、仕事をしなさい仕事を!」

 

「茶番は終わりましたか?」

 

はっ!殺気が。

 

「違うの、何かの間違いなの。ちゃんと飛んでいくはずだったの!やめて、こないで、さわらなぁぁぁぁぁ!!?」

 

天魔の悲鳴が妖怪の山にこだました。

 

その醜態を下っ端の哨戒天狗に見られた天魔は暫く威厳が地に落ちたようなそうでないよな日々を送った。

 




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