東方赤弓兵   作:ライダ

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悪霊と魔理沙

「…………朝か」

 

鳥のさえずりによって目が覚めた。

 

「まあ鳥のさえずりというより鴉のわめき声か」

 

「失礼ですね、だれが鴉ですか」

 

「君以外に誰がいる射命丸。というか家に無断で侵入するな」

 

鴉が侵入したせいで家の警報が鳴りっぱなしだ。

 

「まあまあ、私とあなたの中じゃないですか。気軽に文って呼んでくださいよ」

 

「どんな中だ、今度無断侵入したら契約を解約するぞ」

 

「あややや、それは困ります。次からは堂々と玄関から入ることにします」

 

「…もういい。新聞持ってきたんなら置いておいてくれ」

 

鴉天狗、射命丸文の発行する文々。新聞は幻想郷の鴉天狗達が発行する新聞のうちの一つだ。あてになるかは別にして俺は文々。新聞を購読している。理由としては天狗の新聞は的が外れなければ最速で届けられるからだ。幻想郷内の情勢を知るのにも便利だ。まあ的外れのことの方が多いが。

 

「ちょっと五月蠅いわよ!なんなの朝っぱらから」

 

「ああすまん霊夢、ちょっと騒がしかったか」

 

「ちょっとどころじゃないわよ」

 

「あやや、あなたは博麗の巫女。もしやアーチャーさんが博霊の巫女をさらってきた…これはスキャンダルの予感ですね!」

 

「焼き鳥にするぞ」

 

もちろん俺が霊夢を攫ってきたわけじゃない。実はこの間異変があり、霊夢の住む博麗神社が人間でない何かに破壊されたとのことだ。これは異変として霊夢により解決された、何でも魔界という場所と地獄という場所に行ってきたらしい。

 

神社が破壊されたため霊夢は一時的に俺の家に居座ることになった。といっても、いきなり一昨日俺の家に押しかけてきたわけだが。

 

「朝飯食べるか?」

 

「食べるわよ」

 

「いただきます」

 

文、お前には聞いてないぞ。

 

「それで朝食はなんですか?」

 

「鳥の唐揚げだ」

 

それを聞くとしかめっ面になる文、そんな顔したってメニューは変わらんぞ。

 

 

 

「ところでアーチャーさん知っていますか?」

 

唐揚げには全く手を付けず飯を貪り食っている文が訪ねてくる。いったい何をだよ。

 

「なにがさ」

 

「なんでも霧雨道具店の所の娘さんが勘当されたらしいんですよ」

 

「なに?」

 

霧雨ってことは魔理沙か、なんで魔理沙が勘当を。

 

「仲間の話では何でも魔道に手を染めたとかなんとか」

 

「魔道ね……」

 

魔法使いにでもなる気か魔理沙は。

 

「案外淡白な反応ですね。確か霧雨さんとはお知り合いだったはずでは?」

 

「俺が気にしても仕方ない。魔理沙は自分からその道に行くと決めたんだろう、なら俺が止めるのは筋違いだ」

 

第一魔理沙の性格からして俺が止めたところで止めはしないだろう。自分の道は自分で決める強さくらい魔理沙は持っている。

 

「あやや、意外と非情ですね。霊夢さんはどう思いです」

 

「……どうでもいいわ」

 

うん霊夢はそういう性格だよな。

 

「人間にしては非情な紅白コンビですね」

 

俺たちのどこが紅白コンビなんだ。

 

「服と髪の色、赤白でまさに紅白コンビじゃないですか。次の記事はこれで行きましょう!みっちゃっく紅白コンビ二十四時これで決まりです!」

 

勝手なことを決めるな馬鹿ガラス。天魔といい天狗とは運がないな。

 

「ところで私の神社いつ直るの?」

 

「もう少しかかる」

 

「何でよ、こんな家一人で作っんなら神社くらい一日で直しなさいよ」

 

勘弁してくれ、神社を一日で直すなんて無理に決まったてるだろ。俺は大工じゃないし、家一軒復元させるほどの魔術なんて使える魔力はない。せいぜい家の壁程度しか修復は無理だ。

 

「使えないのね英霊って」

 

無償で家を直してやってるってのに何て言いぐさだこの巫女は。

 

 

 

「はぁ…今日はこんなとこか」

 

今日も博麗神社の修復で一日が終わってしまった。この調子だとあと一週間はかかりそうだ。それまであの傲慢な巫女が家に居座ると思うと…ああ胃が痛い。

 

「…今日は見事な満月だ」

 

はあ、見事な満月なのに今日は何故か巨大な死兆星に見える。まああれだけでかい死兆星なら見失う心配もないか。

 

「……いい加減出てこい。帽子が丸出しだぞ魔理沙」

 

頭隠して尻隠さず、いやこの場合は逆か。

 

「アーチャー……」

 

「どうした、そんな顔して。勘当されたことを嘆いてるのか?それとも…」

 

「私は…」

 

「それとも、その魔力で俺を傷つけることへの断罪か?」

 

「!?」

 

やれやれ、オレはともかくアーチャーが気付かないわけないだろう。そんな分かりやすい魔力の収束に。

 

「ま、その程度じゃ俺を気付つけることは無理だがな」

 

「ば、バカにすんな!舐めてると痛い目見るぞ」

 

「別に馬鹿にしてるつもりはない。たった数日でここまで魔力を扱えるようになったんだ、君はオレなんかよりもよっぽど優秀だよ」

 

実際たいしたものだ、魔理沙が魔道に手を染めたのは知っていたが師匠もなしにもう魔力の収束の仕方を覚えたのか。俺はパチュリーに匙を投げられたというのに。

 

「当たり前だ、私は天才だからな」

 

少しは元に戻ったか。

 

「ああお前は間違いなく天才だよ。ただ今の時間はいくら天才でも子供は眠る時間だ」

 

「子ども扱いすう!!?」

 

首筋に魔力を落し気絶させる。落とすといっても頸動脈を抑えて気絶させるようなもんだけどな。

 

「さて、前座は終わりだ。そこの悪霊、さっさと出てこい」

 

「……さすがは英霊様、お気づきかい」

 

木の陰の裏からゆっくりと姿を現したのはロングヘアーで、髪と瞳の色は緑の女性だった。まあもっと特徴的なのは腰から下の状態だが。

 

「お前か、霊夢が言っていた魅魔というやつは」

 

「私をご存じで、なら話が早い。私の物になれアーチャー。そして霊夢から陰陽玉を奪う手助けをしろ」

 

「なんの冗談だ、なぜ俺がそんなことをする必要がある」

 

霊夢から聞いた話のとうりこの悪霊は陰陽玉を狙っているようだ。なんでも陰陽玉の力を使って全人類に復讐するつもりらしい。なぜ知ってるかって、今ここでペラペラと喋っていたからだ。

 

「第一お前はなぜ人類に復讐する」

 

「さあね、もう忘れちまったよ。ただ今私の中にある感情で一番強いものがそれなだけだ」

 

はた迷惑にもほどがある。たかが感情論だけで人類に復讐するって、せめてもう少し理知的な回答を聞けるかと思ったんだが。

 

「話にならん。そんな感情論で人類に復讐されてはたまったものじゃない、そんな感情なら俺にでもぶつけていけ。少しは気が晴れるだろ」

 

「…なら相手をしてもらう。どのみちお前を従えるのにはお前を倒す必要があるんだろう」

 

魅魔が満月をバックに先端が三日月のロッドを構え俺に相対する。そして背中からは羽のようなものが現れる、本気モードってわけか。

 

「――――投影・開始(トレース・オン)

 

俺も干将莫耶を両手に投影し迎撃態勢を整える。それと同時に大量の魔力弾が俺を襲った。

 

「ちぃ!」

 

避けきれないものは干将莫耶で弾きつつ魅魔に接近していく、しかしここで戦闘をするんじゃなかった。神社がまた壊れてしまう。

 

「そらそら、休んでる暇なんてないよ!」

 

今度はレーザーが四方から飛んできた。これは避けるしかない。

 

「くそ!」

 

「遅いよ!」

 

剣を振りかざすも避けられてしまう。意外に素早い、剣じゃ捉えられないか。

 

「なら、投影・開始(トレース・オン)

 

アーチャーの本分の遠距離戦といこう。

 

弓と矢を投影し魅魔に向けて射出する。魔力弾と矢が相殺しあう、だがやはり手数不足…ここは一気に決めるしかないか。

 

「――――I am the bone of my sword(我が骨子は捻じれ狂う)

 

「ん、なかなかの魔力を感じるね。なら私も」

 

魅魔の体に魔力が収束され前方に魔法陣が展開される。かなりの一撃が来る。

 

「―――偽・螺旋剣(カラドボルグ)!!」

 

「マスタースパーク!!」

 

真明を開放した偽・螺旋剣と魅魔のマスタースパークがぶつかり合う。辺り一帯を大きな衝撃が襲った。

 

「いっつつ、思ってたよりきついね」

 

「それはこっちのセリフだ」

 

殺さないよう威力を抑えたとはいえ偽・螺旋剣と引き分けるか。なんて破壊力だ。

 

魅魔は何事もなかったかのように再び宙に浮きレーザーを放ってきた。

 

「つっとと」

 

今の攻撃じゃないな、距離を取っただけか。

 

「今度は私から行くよ」

 

魅魔が杖を前方に構えると今度は魔法陣が二つ出現した。まさかさっきのを同時に打つつもりか!

 

「――――I am the bone of my sword(体は剣で出来ている)

 

「何をするつもりか知らないけどこれに耐えられるかな?」

 

「耐えてみせる」

 

いい覚悟だというと、魅魔が出した魔法陣に魔力が収束された。くる!

 

「ダブルスパーク!!」

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)――――!」

 

アイアスに向けて魅魔の放ったダブルスパークが直撃する。アイアスの花弁が一気に三枚は減った。

 

「ぐぅ……」

 

「まだまだ!!」

 

魅魔のダブルスパークがさらに強まる。花弁がさらに二枚消え去る、あと二枚これじゃあ持たない。

 

「これで終わりだ、私の全魔力持ってけぇ!!」

 

「……I am the bone of my sword(体は剣で出来ている)

 

こっちも全力だ!俺の魔力を持っていきやがれ。花弁が全て破壊され俺に光が届く、その瞬間

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)――――!」

 

「なに!?」

 

再び七枚の花弁が前方に咲き誇る。アイアスの連続展開、初めての試みだがだいぶ無茶だったらしい。体の中が傷だらけだ。

 

「いけえぇぇぇ!!」

 

「させねえぇぇ!!」

 

衝突の光が辺りを包み込み辺り一帯を包み込む。その衝撃は辺りの木々を薙ぎ払った。

 

 

「…っつあ~流石に限界だよ」

 

魅魔が上空から力を失い落下する。

 

「まったく、せめて飛ぶ力くらい残しとけ」

 

痛む体を引きずって落下する魅魔を何とか受け止めることができた。

 

「おや、助けてくれるのかい?」

 

「お相子、魔理沙の分だ」

 

魅魔は最後の衝突の時さりげなく魔理沙を魔力で覆い衝撃の余波から守っていた。

 

「おや気付いてたのかい。親切はしてみるもんだね」

 

「それでどうだ?少しは気が晴れたか」

 

「……ああ、そういえばそんな話だったね」

 

そういえばって、気まぐれにもほどがあるだろうに。こっちはせっかく立てた神社を犠牲にしたってのに。

 

「で、どうよ。まだ人類に復讐したいか」

 

「ん、ああ、なんかどうでもよくなってきたね」

 

「それは何より」

 

人類を救うために神社は犠牲になったか。そう思わないとやってられない。

 

「……うぅん…は!?ここはってなにがあったんだ?」

 

どうやら魔理沙も目が覚めたようだ。外傷も特にないしよかったよかった。

 

「魅魔様!?アーチャーお前の仕業か!」

 

「ぐふっ!落ち着け魔理沙、確かに俺の責任だがこうなったのはこいつの自業自得だ」

 

痛む体にブロウは止めろ、というか俺のこともよく見ろ。魅魔と似た感じにボロボロだろうが。つうか魅魔様だと、まさか魔理沙のやつよりにもよって悪霊に師事したのか?

 

「魔理沙止めな」

 

そうそう、師匠なら弟子の奇行を止めてくれ。

 

「私みたいに犯されちまうよ」

 

てめえこの野郎!!

 

「んあ?犯すってなんですか」

 

魔理沙がお子様で助かった。

 

「犯すっていうのはな…」

 

「このまま滅するぞコラ」

 

子供に何教えようとしてんだ。

 

「冗談だよ冗談。冗談が通じない男は嫌われるよ」

 

嫌われた方がむしろ楽な気がするよ。

 

「何でもいいぜ、とにかく魅魔様離せこの野郎!」

 

「ホガァ!?」

 

お、おま、そこは反則だぞ馬鹿野郎!

 

「おや、いい金的が入ったね。よくやったよ魔理沙」

 

「え、あ、はい」

 

よくやったじゃねえ、助けてやったのにこの仕打ちはないだろうが。

 

「さてどうしようかね、動けないみたいだし無理やり契約しちゃおうかね」

 

「ふざけるな、誰がそんな一方的な契約を受け入れるか」

 

「私を舐めるんじゃないよ、一方的な契約が出来ないとでも」

 

「追いやめろ、なぜ顔を近づけてくる」

 

まさか、止めろ!魔理沙もみてんだぞ。

 

「することなんて決まってるだろ。魔理沙あっちにいいマジックアイテムが落ちてるよ」

 

「マジですか!?今とってきます」

 

「さあこれで魔理沙は行ったよ。おとなしく受け入れな」

 

「や、止めろ。こんなことしたって俺には意味なムグゥ!?」

 

ぐぅ舌が、しかもそこから魔力が…

 

「あむっ、ちゅ、む…」

 

「む、ぐ、ふん!」

 

「ブッ!?なひすんのはひらかんひゃったひゃないのひゃ」

 

人の口を無理やり奪っといて何て言いぐさだこの悪霊は、クソまだ口の中が気持ち悪い。

 

「ッツ無駄な魔力使わせるんじゃないよ。男だったら喜ぶところだろうに、お前は乙女か」

 

「だまれ、無理やり魔力なんか流し込みやがって」

 

「気持ちよかったろ」

 

「んなわけあるか!他人の魔力なんて体になじむわけないだろ、無理やり契約しようとするから体が拒否反応起こしたわ!まだ舌が痺れてる」

 

他人の魔力の気持ち悪さといったら、自己コントロールに慣れてるアーチャーじゃなかったらどうなってたか。ぐぅまだ体が熱い。

 

「ま、なんにせよこれでアーチャーは私の使い魔、なんだっけ、あんたの言うサーヴァントってやつなんだろ。ま、めんどくさいから使い魔でいいか」

 

「不本意ながらな」

 

まさか一時的にでも契約させられるとは思ってもみなかった。あんな方法で無駄に完璧にパス繋ぎやがって。

 

「それじゃあ続きを」

 

「何言ってる、近寄って来るな」

 

「使い魔は主人の言うことを聞けばいいの。あなたの魔力って面白いわね、ほとんどクソ不味いのに、ほんの少し流れてくる魔力はとってもおいしいわ。癖になる味ね」

 

なんて奴だ、このパスただ与えるだけじゃなくて俺から魔力奪い取ってやがる。

 

「それじゃあいただきます」

 

破壊すべき全ての符(ルールブレイカー)!!」

 

「へ?」

 

何とか間に合った、魅魔から受け取った魔力のおかげでルールブレイカーを投影できた。

 

「あだぁぁ!!ひ、額に剣が」

 

「殺傷能力はない剣。ただのマジックキャンセラーだ」

 

「はい?げ、パスが切れてるじゃないかい。そんなの反則よ反則」

 

あんな非常識な契約をしといて何が反則だ。

 

「それなら今度は魔力を渡さずに契約を」

 

「よるな痴女!」

 

「誰が痴女か!」

 

「魅魔様何もありませんでしたよ…って何があったんです?」

 

結局今日は一晩中逃げ回るはめになった。おかげで夕飯が遅れて霊夢にはキレられるは魔力はすっからかんになるは最悪の一日だ。

 

 

翌日

 

「……何故だ」

 

「…う~んあ、おはよう。目覚めの魔力の受け渡しを一つ」

 

破壊すべき全ての符(ルールブレイカー)!!」

 

「あ、ひど。いきなり破棄することないじゃないのかい?」

 

「黙れ!どうやって侵入しやがったこの悪霊め。しかもまた勝手に契約結びやがったな!」

 

「昨日の夜は気持ちよかったわね」

 

「まて、お前は人が眠ってる間になにをした」

 

「聞きたいのかい?それとも今からじっせんを」

 

「いや聞きたくない、ええいさっさと服を着ろ!」

 

「ちょっとうるさいわよ!」

 

「うるさいぜ!」

 

「あややや、なにやら特ダネの予感がします!今日の号外は幽霊の爛れた関係に決まりです!」

 

「待てこらあほガラス!そんなことしたら山をエクスカリバーで消し飛ばすぞ!ええい全員はなしをきけぇぇ!!!」

 

 




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