人里を出てから一時間、土地を把握するために歩いて向かっているためか予想よりも時間がかかる。
「しかし意外と険しい道だ。妖怪もでるし人里の人たちは参拝に向かえないんじゃないか?」
人里を出てから数回妖怪に襲われた。低級妖怪らしくそこまで強くなかったがそれでも十分人間には脅威だろう。それに妖精もちまちまと出現、大岩を落とされたときはさすがにあせった。神秘が衰えてるから岩に潰されても死んでしまうからな。
「……お、どうやら到着したか」
目の前に長い階段が見えてきてその上に大きな鳥居が見える。それに空間の変化を感じる、おそらく結界の影響だろう。ここが博麗神社で間違いない。
階段を上りきると目の前には掃除がいきとどいた綺麗な境内が目に入った。
「けど人が来た形跡がないな。やっぱり人はこれないか」
いったいどうやって賽銭もなしに生活してるんだか。
「賽銭でも入れてやりたいが生憎俺も文無しだ」
これもいずれは何とかしないとな、今は春らしいが冬には生き物が減る。狩りだけでは生活できない。
「ちっ早く入れなさいよ」
何やら神社にはあり得ない俗物的な言葉が聞こえてきた気がする。
辺りを見回すと神社のわきからなぜか腋が空いている巫女服をきた少女が顔を覗かせていた。歳は魔理沙と同じくらいかな。
「あーそこの覗いている子、生憎俺は一文無しだぞ」
「ちっひやかしかよ」
ここは本当に神社か、確かに人はあまり来なくて賽銭不足だろうがいったいどんな教育をしてるんだ。魔理沙とは別の意味で将来が楽しみだよ。
「……あんた人間?なんか変な感じ、なんかこう混じってる感じがする」
「!?」
驚いた、まさかこんな子供に正体が見破られかけるとは。博麗の巫女は異変解決を生業としてると慧音に聞いてるけど、まさかこの年からこれほどの眼力を持っているとは。
「はは、さすがは博麗の巫女だな。確かに俺は人間とは言えないかな、しいて言うなら落ちた英霊かな」
まあ本当は落とした英霊が正しいだろうけど。
「英霊?なにそれ、幽霊の仲間かなにか」
「幽霊とは違うかな。英霊は元は人間だよ、ただし生前何かしらの偉業をなしたね。君が言った通り俺は何の因果かある英霊の魂が混じった存在だよ」
「よく分からないけど問題を起こさないなら何でもいいわ。問題をおこしたら叩きのめすからね」
普通なら子供の戯言ととるんだが、この子の力はすでにそこらの妖怪を倒せるレベルまでいっているだろう。
「ほう、威勢だけはいいようだな。だが君ではまだアーチャーを倒すことはおろかオレも倒せないと思うが」
何で俺はこんなことをいってしまったのか。何故か赤い服を着て威勢がいい子を見るとこう…からかいたくなるのはなぜだろう。
「言ってくれるじゃない、英霊だか幽霊だか知らないけどあんたが私より強いですって?」
「ああ、少なくとも今の君ではオレに傷を負わせることはできてもアーチャーに傷を負わせることは不可能だ
」
「へぇ~そぉ~ふぅ~ん、だったらあんたの力をみしてもらおうじゃない!!」
俺めがけて魔力弾らしき物が殺到する。おそらくこれは慧音に聞いた霊力を丸く固めたものだろう、威力もこの歳にしてはなかなかのものだ。
「だが、当たらなければどうということはない」
威力はあるが狙いはまだまだ粗い。それでは俺は捉えられない。数歩動けば弾は勝手に俺を素通りして森の方に消えて行った。
「そら、せめて俺の能力くらいは使わせてみろ」
「あったまきた、もうどうなっても知らないわよ!」
次は袖の部分からお札を取り出し俺めがけ投げられる。今度は狙いも鋭く俺めがけて飛んできている、けどスピードが足りないな。これでは先ほどより躱しやすい。
「ん、まさか追尾せいか」
「そうよ!躱せるもんなら躱してみなさい!!」
確かに躱すのは難しい。ただし難しいだけであって躱せないわけではない、さすがに投擲者の後方まで回れば追尾できまい。まあしかし、躱すばかりでは能がない。
「ふん!その程度ではな」
「な!?掴み取ったですって」
「ほう、札に霊力を通し威力を挙げさらに追尾性能を付与したか。さらに札そのものもなかなか力のあるものだ、並みの妖怪ならひとたまりもないだろうな」
本当になんて才能だ。これで場数をふみ経験を得たらどこまで化けるのやら。まあ自分の力を相手にばらしてしまうのはいただけないが。
「ではこちらから行こうか!」
「なっ消えた…ッツ!?」
「ほう、今のをかわすか」
俺の手刀は少女の首があった空間の空を切っていた。
「ふん、あんたこそたいしたことないんじゃない」
「確かに今の回避には正直驚いた。だが挑発を軽率に行うのはいただけないぞ」
「言ってなさい!もう油断はしないわ」
少女の目は俺を見据えもう今度は見失わないといわんばかりに睨み付けている。少しは楽しめそうだな。
「さて、もう限界かね」
「……………………」
少女は仰向けに参道に突っ伏していた。なかなかに粘ったがやはりまだ若すぎるか。
「さて、ほおっておくのもなんだ。手当はしておくッツ!?
背後に殺気を感じ干将莫耶を瞬時に投影し一閃。何かを弾いた感触がして腕に凄い痺れがはしった。
「なんだと」
弾くのに使用した右手の莫耶は砕け散っていた。即興の投影だがまさか砕かれるとは。
「さすが英霊ですわ。やはりお強いのですね」
空間が避け中から不気味な目玉が見えた。そしてその中から妖艶な女性が姿を表した。いや、そのまがまがしい力は人間を超えている。この妖力はおそらく大妖怪のレベル。
「何者だ。この神社に何のようかね」
「そんなに殺気を出さなくても何もしませんわ。それに私は神社の関係者ですわ」
「何が関係者よ…このスキマ婆」
「あら、無様に地べたに突っ伏している博麗霊夢ちゃんはこの麗しの美女をみて婆というのですの」
「スキマ…まさか貴様、八雲紫か!」
スキマ、確か慧音の話に出てきた。妖怪の賢者、幻想郷を作りだした大妖怪で境界を操る程度の能力をもつこの世界で最も強いとされる人物。人前にはめったに出ないという話だがまさかここで会いまみえることになるとは。
「自己紹介させていただきますわ。ご存知でしょうが私は八雲紫、境界を操るしがない美女ですわ。こっちの子は博麗霊夢、今代の博麗の巫女ですわ。よろしく願しますアーチャーさん」
「ああ、だがどうしてその名を」
「ふんっ、どうせまた覗き見でもしてたんでしょこのスキマ婆」
「霊夢ちゃあ~ん、そろそろお口チャックしましょうか」
「やぁ~へぇ~なぁ~ひゃ~い~」
霊夢という少女の口を引っ張っている姿にはこれっぽちも威厳は感じさせないが、そのまがまがしい妖力は否が応でも感じる。しかし覗き見か。先ほどの力を見るに八雲の力は、空間を自在に行き来することができるようだ。
「まさか人里での会話を聞いていたのか」
「え、ええ。乙女の勘というやつですわ」
何が勘か。霊夢が言っているようにやってることはただの覗きだし。
「まあそれはそれとして、改めて感謝しますわアーチャーさん。霊夢をコテンパンに伸してくれて」
「なぜ感謝をする」
「実はこの子才能にかまけ全然修行をしないんです。なまじ才能があるだけに敗北をしないものだから努力をしないんですのよ。だからこれを機にまともに修行してくれるようになれば幸いですわ」
なるほど、確かに霊夢ほどの才能があれば修行などしなくてもそれなりの力をつけることができるだろう。それこそ凡人が100の努力をして到達できるレベルくらいには。
「確かにその通りだな。しかし八雲どのはなぜ出てきたのですか。俺に何か用事でも」
「そんな八雲どのなんて、気軽にユカリン♪と呼んでくださっていいのですよ」
「婆がなに可愛子ぶってんだか」
「霊夢ちゃーん、仏の顔も三度まで言葉知ってるかしら」
「あ~戯れもけっこうなんだが要件を教えてもらえないだろうか」
「え、ええお見苦しいところを。あなたに私の式になってもらいたいのです」
「断る!!」
反射的に拒否してしまった。何故かわからんが俺のない直感が告げている、この妖怪の式になるのは不味いと。いや式の意味も知らないのだが。
「そ、即答ですのね。けどなぜです、あなたが私の式になればあなたに十分魔力供給もできますのよ」
「いやすまん少々取り乱した。その式というものの意味を教えてもらえないか」
「いいですわ。式とは簡単に言うところあなたの言っていたマスターと似ていますわ。違うところは術者の力量が式とする対象を上回っていないといけないところです」
「ほう、君が俺より勝っていると」
「ええ、確実に」
「「………………」」
「確かにそのようだ。今の私では君には勝てないであろう」
心眼にゆだねてもわかる。俺はこの妖怪にかなわない。
「ちゃんと分析ができる方で助かりますわ。それでは私の式になってくれますわね」
「だが断る!!」
「な、なぜ?」
「心眼に任せたまま言葉を出したまでだ」
ようやく分かった。さっきの反射は心眼にいつのまにか身をゆだねていたのか。アーチャーの危機察知能力と女運のなさが告げているこの提案は悪魔のささやきだ。
「よ、よくわからないのですが」
「誤解するな。俺も初対面の相手をいきなり信用するわけにもいかないんだ。君の提案は魅力的だが今は断らせてもらう」
「そう、ですか。そうですね、いきなり式になれでは失礼でした」
「わかってもらえたようで何よりだ」
正直俺が式になるのは万が一にもないと思うが。そう、よっぽどの魔力不足にでもならない限り。
「それでは私は失礼します。霊夢、これからはちゃんと修行するのよ」
「べぇーだ!あんたの言うことなんか誰がきくか!」
「そう、それならアーチャーさんの言うことをちゃんと聞きなさい。少なくとも今のあなたでは逆立ちしてもかてないわ」
俺の言うことってどういう意味だ?というより霊夢の性格からして負けた相手の言うことは余計に聞かないと思うのだが。
謎の言葉を残し八雲紫は再び空間を割りその中に消えてい…
「ああそうでした、アーチャーさん、私のことは紫とこれからはよろしく」
「なんでさ」
それだけ言うと再びやく…紫は割れ目の中に消えた。
「……さて、紫はああ言っていたが君は俺の言うことをきくか?」
「誰が聞くもんか!それと私は霊夢よ、君じゃないわ」
「それは悪かった。すまないな霊夢」
「分かればいいのよ!はぁもう疲れちゃったわ。今日はもう店じまいよ」
店じまいって、神社は店じゃない以前に客なんて俺を覗いたら人間は一人も来てないぞ。まあよく分からんが何かを頼まれたんだ。少しは世話をしていくか。
「そうか、それでは今日のお詫びに今夜は俺が食事を作ってやろう」
「しょくじ~あんたご飯なんて作れるの?」
「甘く見るなよ霊夢、料理の腕なら君はアーチャーどころかオレにも確実にかなわない」
俺は生前一人暮らしだったのは覚えている。そのとき料理は少しかじった、それにアーチャーのスキルが加われば鬼に金棒。
「どうでもいいけどアーチャーってなんでそんなに偉そうなの」
「別に偉そうにしてるつもりはないんだが」
その後俺は厨房をかり霊夢に料理をふるまった。調味料がなかったのには少し困ったがアーチャーのスキルが手助けしてくれた。もちろん料理は好評だった。
「おいしい!」
「だろう。少しは俺の実力がわかっただろう」
「結婚してください!」
「……なんでさ」
第二声には度肝を抜かれたが。
「ところでアーチャーだったりオレだったりあれはなんなの?」
「気にするな。理解するだけ脳の機能の無駄使いだ」
「ふ~ん。じゃあいいや、私無駄嫌いだもん」
後は朝になるまでに汚した境内を綺麗にし霊夢に朝食を作り博麗神社を後にした。ちなみに朝食は好評だったぞ。
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