高校教師になったらToLoveるな毎日を過ごすことになりました。   作:くるぶし戦線

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今回から徐々にTo LOVEるキャラを出していきます。学校生活に入るまでにはもう少しかかるかな……?気長にお待ちいただければ嬉しいです。


4話 初出勤

「おぉ…」

 

門を通り抜けた俺は思わず感嘆の声をあげた。

彩南高校は部活にも力をいれているらしく、左手に見えるテニスコートでは女子生徒達がランニングをしているし、校舎の向こう側にあるらしいグラウンドの方からは野太い掛け声が聴こえてくる。校舎も、まだ出来てそれほど経っていないのか白い塗装が朝の日差しを反射して眩しいほどだ。

 

だが俺が声を漏らしてしまったのは、別に校舎や設備が綺麗だったからではない。

 

こう……高校独特の雰囲気とか、時間とか…上手くは言えないが、校門をまたいだ瞬間に、何かを感じたのだ。これがもしかしたら「青春」なのかもしれない。

 

「この中で働けるんだ…」

俺は改めて先生になれたことを実感した。……これだよ!俺が教師になりたかった理由は!この感覚をずっと味わいたかったからなんだよ!

 

俺は嬉しさのあまり、小躍りしそうになったが、周りの生徒達がチラチラとこちらに目線をやっているのに気付き、そそくさと校舎の中に入っていった。

 

 

で、校舎の中に入ったのはいいんだけど…

 

「うーん…」

困った。封筒に書いてあった校長室が分からない。いや、探し回れば見つかるんだろうけど…ここは初めて来る学校だ。校舎の中には先生方と学生しかいない。そんな中をリクルートスーツを着た俺がうろうろするのはあまり得策とは言えないだろう。もしかしたら不審者扱いされるということもあるかもしれない…。

要は初めてくる高校にビビってるだけです。

 

「近藤さんに…聞いてもいいかな…?」

理事の人にこんなことで連絡をするのは気が引けるが、今の俺にそんな精神的余裕はない。スマホをポケットから取り出し、SNSを開こうとすると、

 

「あの、」

後ろから誰かが話しかけてきた。近藤さんと連絡を取ることしか頭になかった俺はビクッと震える。

 

「ひゃ、ひゃいっ!なんでしょうか!!」

噛みまくりながら振り向くと、黒髪の真面目そうな女の子が立っていた。腕には「風紀委員」と書かれた腕章をつけている。

 

「本校に何か御用でしょうか?」

俺を真っ直ぐ見ながらその子は尋ねてくる。口調は柔らかいが、どこか目つきは鋭い。

 

「あ、あぁ、そうなんだけど、校長室が判らなくて…」

俺がそう返すと、女子生徒はニコッと微笑みながら

「そうでしたか。案内するので着いてきてください」

と言った。そのまま俺に背を向けてスタスタと廊下を歩いていく。

 

…笑ったら可愛いのにな…目つきがちょっと怖いけど。

 

そんなことを考えながらその子の後をついて行く。

 

「ここです」

階段を上り、廊下を2、3回曲がったところでその子は立ち止まって振り向いた。

校長室は2階の奥にあったようだ。自分で探していたら、結構時間がかかっただろう。

 

「助かったよ、ありがとう」

「いえ、校長先生をお呼びしましょうか?」

「大丈夫。自分で入るよ」

「そうですか、それでは失礼します」

彼女はそう言うと、一礼して廊下の向こうへと歩いていった。

 

彼女が見えなくなったところで、校長室のドアに向き直る。

 

「すぅ…はぁ…よし」

深呼吸をし、ドアをノックする。……だが、中から返答はない。もう一度ノックしてみてもそれは変わらなかった。おかしいな…指定された時間通りのはずなんだけど…。

 

不思議に思いながらドアノブを回す。

 

「あの…連絡を頂いた後藤という者ですが…」

おそるおそるドアを開け、中を覗き込む。校長室の中は思ったより広く、手前には豪華な応接セットが置かれていた。

 

「校長先生…?」

校長室に入り、中を見回しても校長先生の姿は見えない。勝手に入って良かったんだろうか?なんか変な匂いがする気もするし…。なんだこれ?

 

「はぁ…はぁ…」

 

突然部屋の奥から聞こえてきた荒い息遣いに俺は驚いて肩を震わせた。

声は奥にあるデスクの方から聞こえたようだ。校長先生だろうか……もしかしたらこの変な匂いで気分を悪くして倒れられてるのかもしれない。

 

「校長先生!?大丈夫で……」

慌ててデスク裏を覗き込んだ俺が見たのは、

 

パンツ一丁でアイドルがプリントされた抱き枕にしがみつくオッサンの姿だった。

 

「…おやおや?」

俺に気づいたのかサングラスをかけた目がこちらを向く。どうしよう…恐怖で動けない…。

 

「おぉ、後藤くん。もう入っとったのか」

「こ、近藤さぁん!デスクの下に不審者がぁ!」

そこへ入ってきた近藤さんの足元に俺はすがりついた。

「なんじゃと?」

怪訝そうな顔で、デスクのほうへと目を向ける近藤さん。ちょうどデスクからは半裸の不審者がゴソゴソと這い出てくるところだった。

 

「近藤さん、あの人です!はやく警察に…」

「はぁ……やっぱり君じゃったか、校長先生…」

近藤さんがやれやれといった感じで頭を押さえる。

「……コウチョウセンセイ?」

近藤さんの言った言葉が理解できず、オウムのように繰り返す。近藤さんが苦々しい顔でうなずく。

 

「校長先生……ですか?」

「そおです!私がこの彩南高校の校長です!」

恐る恐る尋ねるとかぶり気味で答え、胸を張る校長先生。パン一だってこと忘れてませんか……?

「…とりあえず服を着なさい、話さねばならんことが沢山あるでの…」

そう校長先生に言う近藤さんの顔はすでに疲れ切っていた。

 

 

「ふむ…なるほど…事情は分かりました」

校長先生が服を着るのを待って、近藤さんが今回の事情を説明してくれた。ソファーで真剣に話を聞いている校長先生だが、さっきの半裸姿が脳裏に焼き付いて離れない。

「それで、4月から彼、後藤大輔くんを理科の教員として雇いたいんじゃが……何か問題はあるかの?」

「いえ、問題ありません。むしろこちらも理科担当の穴をどうやって埋めようかと思っていたので助かりました」

「そうかの……普段もそういう話し方をしてくれると助かるんじゃが……」

「おや?私は普段からこんな感じではないですかな?」

「…そうじゃったかも知れぬの…」

近藤さんのほうが折れたようだ。

 

「後藤君」

校長先生が俺の方を向く。

「4月から一緒に頑張っていきましょう」

「は、はい!」

なんだ、思ったより普通の先生じゃないか…。

 

「それじゃ、後藤君、いや後藤先生、この後のことは国枝先生に任せてありますので……もう、よろしいですかな近藤理事…?」

「あ、あぁ、この後じゃが、どうじゃ?久しぶりにぜんざいでも食いに行かんか?」

「ははは、ありがたいですが、この後もやることがありますので、今日は遠慮させてください」

「そうかの?じゃあ、また来るわい、後藤君もまたな」

「はい、ありがとうございました!じゃあ校長先生…僕も国枝先生のところにいってきます」

「うむ、頑張ってくれたまえ」

 一礼して、校長室を出る。廊下にはまだ、近藤さんが立っていた。

「さっきはまたなと言うたけど、よう考えたら会う機会ももうないじゃろうからな」

「そうですね…本当にお世話になり「ルンちゅわ~~~~ん!!!」

 

校長室から聞こえてきた絶叫に二人とも固まる。さっき俺と話していたあの真面目な校長はどこに行ったんだろうか。

 

「くくく……このまま笑って別れたほうがよさそうじゃの」

近藤さんは苦笑いを浮かべながら、手を差し出してきた。

「はい、お世話になりました。お元気で」

俺も両手で握手に応じ、別れを言う。

 

近藤さんは後ろ手を振りながら、玄関の方へと歩いて行った。見えなくなるまで頭を下げる。

 

「もう、お別れは済みましたか?」

突然後ろから聞こえた声に驚く。振り返ると眼鏡をかけた男の人が壁に寄り掛かっていた。

 

「は、はい。あの、国枝先生です「そうです。私が国枝、担当は社会科です。」

「あ、僕は「校長から聞いてます。後藤大輔、22歳。担当は理科。合っていますか?」

「は、はい!だいじょ「ついてきてください。色々と教えることがあるので」

そういうと、国枝先生はスタスタと歩き始めた。

「ま、待ってください!」

俺も慌てて後を追うが、国枝先生の歩くペースに追いつけない。あれ?この人、ハンター×○ンターに出てなかった?あの一次試験のやつに。

 

それから、10分ほどで学校中の施設を見てまわった。見てまわるというか走り抜けたと言う方が合ってる気がする。理科室くらいしか覚えられなかったんだけど…。

「はぁ…はぁ…」

「次は普段の仕事について教えるのでついてきてください」

そういって国枝先生はまた振り返ることなく歩き始める。ついて来いという割には、俺のことを撒こうとしてるように思えるのは気のせいだろうか?

「うおっ!?待ってくださいっ!!」

俺は再び国枝先生を追って走り出した。

 

職員室にすごいスピードで到着した後の国枝先生は、すごく丁寧に仕事のやり方、朝来たらすることなどを教えてくれた。まるで人が変わったようだ。

 

「すごく丁寧に教えてくださってありがとうござい「いえ、ただ、君が仕事を覚えられないと困るだけなので」

また被せられた。なかなか厳しい先輩だ。でも俺は橋本というもっと理不尽な奴を知ってるからこれくらいは平気なんだぜ。……はやく仲良くなりたいぜ……ぐすん。

 

一通り説明を聞き終わり、時計を見るともうそろそろ12時になるかというところだった。

 

「他に何か質問はありますか」

「いえ、大丈夫です。国枝先生のほかの先生方は…?」

「今は春休み期間中なので出勤してくる先生はそんなに多くおられません。出勤されてる先生方も部活動の指導などに行かれてるのでしょう」

「そうですか…他に何かすることはありますか?」

「いえ、もう今日は特にありません。次はそうですね……明後日の9時にまた来てください」

「分かりました、ありがとうございました」

「はい」

国枝先生は眼鏡をクイ、とあげた後自分の席に戻って行った。もう俺に関心はないらしく黙々とパソコンに何か打ち込んでいる。

 

じゃあ帰るかな…。俺は職員室を出て、下駄箱に向けて歩く。緊張したせいでのど乾いたな……。何か飲んで帰るか。そういえば、テニスコートの近くに自販機が並んでたな……。

寄っていくか。


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