「(良かった)」
隆志は安堵した
本来の隆志の実力ならセンタープレーに徹して点をとりにいけば点差をひっくり返すことは可能だ
しかしそれでは何の意味もない
あの日以来隆志はE組を本気で勝たせると誓った。
再びバスケと真剣に向き合うと
隆志は考えた
自分がチームのために何ができるのか
それはセンタープレーをすることではなく
PGとなってゲームを作ることだ
みんなを生かすこと
PG次第で試合が変わる
その意味が
バスケ経験者ならよく分かるだろう
本来隆志はミスの少ない堅実なプレイヤーだった
だからこそ高校からバスケを始めたにも関わらずシックスマンにもなれたのだろう
しかし、逆にいえばいいところのない消極的なプレイヤーなのだ
試合中ドリブルなんてあまりつかないし、ここぞという時にはパスを出す
隆志が二桁得点をあげるなんてことはめったにない
それは隆志が自分のドリブルとシュート力を信じられないからだ
もちろんミスが少ないのはいいことだ
しかし、それは隆志の芽を潰している
失敗を恐れず積極的に挑戦していかなければならないのだ
「よし、みんなディフェンス頑張ろう。自分のマークをしっかり」
「「「「おう」」」」
相手チームがパスをまわす
マリカが入ったことで更にパスまわしが早く正確になる
ボールは今日の得点王和樹へ
「淳也」
隆志が叫ぶ
「OK」
淳也が和樹に近ずき、手をあげプレッシャーをかける
「(そう。それでいいんだ。和樹はシュート打点が高いし、モーションも速い。下手にブロックに行くんじゃなくて手をあげてプレッシャーをかけるだけでいい。安芸ここからは君の仕事だ)」
ガッ
シュートが外れる
「リバウンド」
安芸が身体を使って力也を押さえる・・・・スクリーンアウト
「甘い」
力也が持ち前のパワーでぐいぐい押していく
「安芸踏ん張れ」
安芸もしっかり腰を落とす
しかし、力也に跳ばれる
しかし、競り勝ったのは緑
「よっしゃーーー」
緑が叫ぶ
「(よし、よくやった安芸。最初からパワーで劣る力也に競り勝つのは難しい。ベストジャンプさえさせなければそれでいい。バスケは一人でやるんじゃない。みんなでカバーしあえばいい)」
「安田さん」
緑からパスを受け取る
「(得点へのルートが見えた)走れ光~」
相手のリング近くまで大きなロングパス
「よっしゃまかせろ~」
光がパスキャッチしてそのままレイアップ
ドカッ
しかしこれは外れる
「まだだよ」
緑が走りこんでリバウンドをとる
シュートにいこうとしたが力也がついているため打てない
「こっち」
「まかせたよ」
緑から隆志へバックパス
「やらせないよ」
恵がつく
隆志はパスをキャッチせず斜め前にタップパスを出す
そこには安芸がいた
「ナイスパスだべ」
安芸が落ち着いてバンクショットを決めた
「ナイスシュート」
「ナイスパスだべ隆志」
「安田さんもナイスリバウンド」
「隆志もナイスパス。今度は緑にパスちょうだい」
「光、惜しかったね。でも、ナイスラン」
「おう。まかせとけ」
「淳也ナイスディフェンス」
「隆志もナイスパス」
「(チームが一つに繋がった。オレのゲームメイクが決まった。楽しい。パズルのピースが一つ一つ繋がるようなそんな感覚だ。こんなに楽しいと思ったことは今までない)」
隆志のチームが相手より勝っているのは機動力
五十メートルを七秒台で走る
光、緑コンビ
そして機動力はそこそこだが、絶妙なポジショニングのできる安芸
光、緑の俊足コンビを先に走らせレイアップ
二人に注意がいったら後から走って来る安芸にパス
この三人を中心に速攻を組み立てる
淳也には判断力とかなりの視野の広さがある。おまけに身長もある。だからパスカットされにくいしオレとは違った景色からみんなが見える
この個性を組み立てることで最高のオフェンスができる
ディフェンスはとにかくリバウンドをとる
『守って速攻』
この作戦効いて残り10秒で二十四対二十四の同点に追い付いた
「(これが最後の攻撃だ)速攻」
ボールは隆志から緑にそこから光に
しかし相手も速攻に慣れてきたのか、警戒していたのか全員がもどっている
「(外が空いてる)」
隆志が外が空いてることに気づいた
光も二人にマークされている
「光ボールを上にあげろ」
なんと淳也が声を出して中に切り込んできた
光は真上にボールを上げた
「来る!!」
隆志は直感した
淳也が空中でボールをキャッチし隆志へラストパス
このとき隆志の頭にあるイメージが浮かんだ
前の世界でのバスケ部の監督がみせたシュート
力を使わない無駄のないシュート
一瞬でフラッシュバックしてきた
気が付いたら隆志は跳んでいた
「(イメージ通り。外れるなんてありえない)」
スッ
綺麗にボールが吸い込まれていった
逆転のシュートが決まった
「「「「よっしゃ」」」」」
みんな喜ぶ
「隆志ナイスシュート」
緑が一番に隆志のところに行き隆志に抱きついた
それに続き安芸、淳也、光も跳びこんでくる
みんな本当に嬉しそうだ
「負けちゃたね」
恵は悔しそうだ
「おしかったな~」
マリカは結果が分かってたようだった
「オレがもっとリバウンドがとれていたら」
「オレもシュートたくさん外したしな」
「オレももっとディフェンス頑張れば良かった」
「隆志、お取り込み中のとこ悪いねんけど、後一回ゲームやるんやろ」
「そうだった。今度はオレとマリカが交代してもう一回やるよ」
「「「やった~~」」」
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結果は三十六対十二で隆志のチームが勝った
さっきの悔しさを果たした
恵と隆志の二人のゲームメイク
恵と隆志のコンビプレー
隆志と力也のリバウンド
孝輔のディフェンス
和樹のシュート
圧勝した
「(よっしこっちのチームも上手くゲームメイク出来た)」
「隆志君」
「田辺さんお疲れ」
「ウチら案外いいコンビになれるかもね」
「なかなかいい感じだったね」
「隆志、やっぱりお前が入ると違うな。あのおとなしい淳也があんなに声出すところは初めてみたぜ。アイツとは三歳からの付き合いなのにな」
「オレもビックリしたよ。力也もナイスリバウンドだったね」
「おう。まかしとけ」
「オレは?オレは?」
「和樹も良かったよ。もちろん孝輔も」
「隆志の指示がいいからだよおもいっきり守れる」
「ありがとう。みんな集合して」
全員が集まる
「みんな今日はお疲れ。みんな今日はいつもより動けたんじゃない?」
「「「「うんうん」」」」
みんなうなずいている
「タイヤの成果が出てきたのさ。みんなの基礎体力は上がったはずだよ。後は何をすればいいと思う?今日のゲームで何を感じた?」
「やっぱりシュートが入らないといけないべ」
「そうだね」
「やっぱりリバウンドだろ」
「そうだね力也。みんなも分かったと思うけどリバウンドはとても大事なんだリバウンドを制する者はゲームを制すって言われている」
「ディフェンスも頑張らなくちゃね」
孝輔が言う
「それらもふまえてまた明日、練習しよう。今日は解散」
みんな帰って行った
「マリカ?」
「何?」
「ありがとう」
「何のことや?」
「オレがゲームメイクしやすいように見えないところで色々してくれてたでしょ」
「なんやきいついっとったんか。それが分かってんだったらアンタはまだまだ伸びるで~。これから練習やな。まだドリブルも甘いしパスも雑やで」
「分かってる」
「ほな帰ろうか?」
「うん(絶対このクラスを勝たせる。でも、今日は本当に楽しかったな)」
バスケをしている時が楽しい
点が入るともっと楽しい
試合に勝つともっと楽しい
楽しさが自分を成長させる
楽しいから辛い練習も頑張れる
隆志は本当のバスケットの楽しさに触れたのかもしれない