川原がかつて見せたことのないない顔になる
「みんな今まですまなかった」
川原が頭を下げる
「本当は分かってたんだ。オレが下手くそだってこと。でも、認めたくなかった。オレはこれでも転校生で前の学校ではバスケ部のエースだったんだ」
よく見ると川原の目から涙が出てきている
「そういえば川原が転校してきたのは四年の時だったもんな」
力也が呟く
「前の学校ではすべてオレが一番だった。誰もオレを止められないし、誰もオレを抜けない。だからこの学校でもバスケ部に入ってエースになるつもりだった。でも、ここのバスケ部はオレのすべてが通じなかった。オレは分かってしまったんだ自分が井の中の蛙だって。悔しくて練習してみたけどダメだった。そして、オレはバスケ部を辞めたんだ」
「そうだったのか。気持ちは分からなくはない。尤もオレはエースだったわけじゃないからその辺はわからないけどね」
高校からバスケを始めた隆志にとって周りとの技術の差は火を見るより明らかなのだ。しかし川原と違うのは隆志はあきらめなかったからだろう。隆志はいまだにバスケの技術は低い。下手をしたら川原よりも下かもしれない。隆志は自分でもそれを一番理解していた。だから隆志は当たり前のことを当たり前にこなした。心折れることなく何度抜かれようともガムシャラに立ち向かっていったのである。
「隆志、オレは上手くなりたいんだ。ここのバスケ部に通用するくらいに。頼む、教えてくれ、オレはどうすればいいんだ。安芸達を強くしたようにオレも強くしてくれ。オレはエースになりたいんだ」
川原が必死に頼む
「そんな簡単に上手くなるなら誰も苦労しない。今のお前じゃエース何て無理だ。地道な基礎を何度も何度も繰り返してるから今の男バスのメンバーは強いんだ。途中であきらめたお前じゃどう足掻いたって勝てるはずないだろ」
隆志が冷たくいいはなつ
ガクッ
川原の膝から崩れ落ちる
「「「「「そんな言い方しなくたっていいだろ」」」」」
男子達が声をそろえて言った
「最後まで聞けよ、今はって言っただろ。確かにエースは誰でも憧れるしカッコいいのは分かる。けど、エースが活躍できるのは陰で支えてくれてる仲間がいるからなんだ。川原先ずは陰になれ。悔しいと思うがプライドを捨てろ。先ずは自分が出来ることを確実にこなすんだ。お前が本当に陰に徹することが出来るようになった時に新たな自分が見える。それが見えるようになった時がお前の成長する時でエースに近ずく時だ。陰を知らずエースにはなれない」
「そうすれば男バスに勝てるのか?」
「必ずしも上手い=活躍できるってわけではない。技術はなくても必死にボールを追う、必死に攻める、守る。どんなに相手が上手くても食らいついていく。ただ上手いよりもこういった選手の方がこわいんだ。観客からは分からないかもしれない。でも、中の選手たちには分るんだ。自分達より上の男バスに勝つにはこうするしかないんだ」
「分かったよ隆志。オレやるよ」
「川原」
「隆志、伸二(しんじ)って呼んでくれ」
「伸二、お前のスティールに入るスピードとドライブの一歩目の速さは武器だ。これからそれを中心に鍛えていくんだ」
「分かった」
「オイラ達のチームは上手くないけどやりずらいそんなチームを目指すべ」
「「「「おー」」」」
みんなが同意する
「(チームカラーが決まったな。うん。悪くない)じゃあポジションを発表するよ」
「その前に隆志」
「何だ伸二?」
「お前Cやれよ。オレも頑張ってガードの練習するから。お前がガンガン点取っていった方がいい場面もあるだろうし」
「そうかもしれないな。でも、基本的にはオレがガードをするよ伸二にはSGとSFを任せたいんだ」
「分かった。もう一人のガードは誰がするんだ?」
「孝輔、君にまかせるよ」
「オレが?オレなんかにできるのかな?」
孝輔は不安そうな顔をしている
「今から練習すれば大丈夫。孝輔には冷静さがあるから」
「やってみるよ」
「安芸、君にはSG、SF、PFを状況次第でやってもらうよ」
「分かったべ」
「光はSFだ」
「おっしゃー。」
「淳也にはSGを頼む」
「分かったよ」
「和樹にはSF、PFを任せる」
「ほいほい」
「力也、PF、Cは任せたぞ」
「おう」
「今日は負けたけど、いい経験になった。あしたからまた頑張ろう」
「「「「おー」」」」
チームとして一回り成長したE組であった