響介「って何やっとん?」
――え? なーんとなく、前書きでモノローグ付けたら主人公っぽいかなぁ、って。えへへぇ
響介「ったく……」
そんな緩~い感じで始まりますっ。私たちの物語、第2話っ!
いきなりだが、俺には三人の幼馴染がいる。今一度紹介しておこう。
まず一人目が
俺が背後霊なって憑いているこの超絶前進思考なおバカさんのことだ。右側に垂れる一括りにしたサイドテールが特徴的で、そして笑顔の似合う女の子だ。
胸の大きさも普通、スタイルも普通で、どちらかというと可愛い系に位置するのだが、ふとした時などに見せる彼女らしからぬ妖艶で官能的な表情がとても魅力的に映え、大人な美しさを持つ一面もある。はっきり言うが、その時の大人な表情の穂乃果を見て俺はノックアウトしたと言っても過言ではない。うん、卑怯だわあんなの……。
因みに彼女の実家は「穂むら」と呼ばれる和菓子屋を営んでおり、穂乃果はその家の長女だ。二つ下に
次に
俺が穂乃果と知り合って間もない頃に出会った、たれ目がチャームポイントな超癒し系ふわふわガールだ。穂乃果と同じくサイドテールに髪を結んでいるのだが、途中で輪っかを作っているのがまた特徴的な髪形だ。長髪だからこそできる芸当だろうか。
俺の幼馴染の中では一番胸もあるし、スタイルもいい。別にそういう目で見ているわけではないけど、どうも彼女の場合、そういうスタイルの分かる服を着る傾向が無いように思われる。基本的にゆったりとした長いスカートを穿いているイメージだ。だがそのおしとやかでふんわりしたイメージが、彼女の性格と非常にマッチしていて余計に可愛く感じる。また、ことりは衣服をデザインしたり製作するのが好きだったりするのだが、その話もまた今度な。
そして
三人の中では最後に知り合った、清楚という言葉がよく似合う大和撫子だ。さらっと流れるような綺麗な長髪が特徴的で、また、そのきりっとした目に見合うだけの、何事にも真摯に取り組む姿勢、怠けた態度が嫌いで常に自分にも厳しく追求していく生真面目な性格を持っており、まあとにかく真面目な子である。と言うのも、彼女の実家が日舞の家元であり、昔からその厳しい稽古を続けてきた賜物であるらしい。それどころか、弓道や剣道といった武道まで極めており、その実力は折り紙付きだ。
そんな日本男児のように心身共に強い彼女だが、別に弱点や欠点がないわけではない。恥ずかしがり屋だったり、男の人に対して初心だったり、なのに偶に妄想癖があったり……と割と挙げるとキリがない。ま、そんなどこか抜けたところが海未の可愛いところなんだけどな(本人の前では中々口に出せなかったけど)。
これが俺の大切な幼馴染たちだ。幽霊になってしまってもなお、その気持ちは変わらない。
そしてそんな俺の幼馴染たちはというと……。
「遅いですよ、穂乃果。学年が上がって早々遅刻する気ですか?」
学校に着いた途端、早速幼馴染の一人である海未からお叱りの言葉を受ける穂乃果。家からずっと走り続けて、何とかギリギリで教室に入れたのはいいが、もう既に身体はへとへとのようだ。朝もそんなに食べなかったし……昼まで持つのかコイツは?
「あへへぇ~……ごめん海未ちゃん。ことりちゃんも」
「ううん。ことりは穂乃果ちゃんの元気な姿が見れて嬉しいかな」
相変わらずの柔らかい笑顔で包み込んでくれることりを見てると、穂乃果でもないのにこちらまで自然と心が安らぐような感覚に包まれる。ホント、不思議なオーラの持ち主だよ、ことりは。
まあいつもこんな感じだ、俺の幼馴染たちは。穂乃果がバカして海未がそれを咎め、ことりが二人を宥める。それが彼女たちのいつもの光景だ。
……え? 俺? う~ん……これが実際に日によって違っていたりするんだよなぁ……。穂乃果と一緒にバカやる日もあれば海未と一緒に叱る時もあるし、ことりと二人で海未を宥める時もある。ま、その時その時によっていたな。
とにかく、穂乃果だけでなく二人も元気にしているようで何よりだ。取り敢えずは一安心と言ったところか。
しかし、この時点で俺と穂乃果は気付いたことがある。
この二人には俺の姿は見えていない……という事だ。
『……やっぱ、ことりと海未にも見えないんだな。俺のこと』
「(うん……そうみたいだね……)」
いたずらに俺に話しかけることはせず、誰にも気付かれないように小さく頷く穂乃果。穂乃果の事だから、と思って登校中に「無暗に話しかけないこと」と釘を打っておいて正解だったな。
……ま、すぐにボロが出そうではあるが……。
「穂乃果? どうしました?」
「っ、ぅえっ!?」
しかし案の定、彼女達二人が俺の姿を見えないことを悲しく感じた穂乃果は、ついその気持ちを顔に出してしまっていたようだ。どこか哀愁漂う穂乃果に二人は心配そうに顔を近づける。
『穂乃果……早速やりおったな』
「(うぅぅ、どうなるの……?)」
流石に俺の存在を勘付くことは無いとは思うが、それでも穂乃果に何らかの疑惑を浮かべることは避けられないだろう。穂乃果が一々俺の言動に反応していたら、仕舞いには変人に見られてしまう可能性だってある。幼馴染としてもそれだけは絶対に避けたいところなのだが……。
しかし、海未は珍しく痛々しげな顔つきを浮かべると、穂乃果にこう質してきた。
「間違っていたら申し訳ないのですが……穂乃果……まだ、響介のことを……?」
「えっ……」
『海未……』
その質問に少し驚いてしまうが、よく見れば海未だけでなく、ことりも彼女と同じように顔に悲しみの色を浮かべていた。ああ、そうか。二人は穂乃果がまだ俺の死を引きづっているものだと思っているんだな。あれから日数としては二週間ちょっとしか過ぎていない。そんな中で俺の件を忘れられなくても仕方のないことだと思う。
ま、現にそうだったしな。俺が朝、穂乃果の前に現れた時は。
「えっ……え、ええっと……うん、まあ、そうかな。あはは……」
しかし穂乃果は、あからさまに取り繕ったような誤魔化し方でその場を乗り切ろうとする。そのベタベタな動揺が見ていて滑稽だった。
──コイツ、本当に大丈夫なんだろうな……。
これから背後霊としてやっていく中で、そんな不安を抱えずにはいられない朝の教室だった。
────────────────―
「(ふぅ…………ちょっと危なかったかも)」
海未ちゃんに幽霊のキョウくんについてバレたのかなと思ったけど、どうやら私の思い過ごしだったみたい。それどころか、二人は私の心配をしてくれていた。付き合いの長い親友なだけに、それがとても嬉しく感じる。
「でも、私ならもう大丈夫っ」
──だって、キョウくんなら傍にいるもんねっ、えへへっ。
自分が大丈夫な事を伝えると、海未ちゃんとことりちゃんは少し安心したような表情を浮かべてくれた。
取り敢えずはこれでよかったのかな? 私に関しては。でも……。
「海未ちゃんは……その……もう、いいの?」
そんな風に、私は少し遠慮気味に海未ちゃんに訊ねてしまう。そう、あの時──キョウくんが死んだ時、私たちの中で一番悲しんでいたのは、私でもことりちゃんでもなく、海未ちゃんだった。ううん、海未ちゃんの場合、悲しみというよりは「後悔」の色の方が強かったかもしれない。
──気付くのが遅すぎたんだよ、海未ちゃんは。自分の気持ちに。失ってようやく気付いたんだ。海未ちゃんはキョウくんが……っ。
だけど海未ちゃんは、声色だけ取り繕って質問に答えてくる。
「……いつまでも彼に縋るのはいい事ではありません。ふふっ……私なら大丈夫ですよ、穂乃果」
「海未ちゃん……」
──嘘だ。海未ちゃんのその言葉が虚飾で固められていることくらい、私にだって分かる。海未ちゃんは自分の思っていることをよく顔に出しちゃう子だからすぐに分かるの。今だって海未ちゃんの顔は、これ以上見ていられないほど痛々しい憂いの表情に満ちていたから……。
「それに……きっと響介は私たちの事、見守ってくれています。そうですよね?」
「うんっ、ことりもそう思うっ」
「海未ちゃん……ことりちゃん……」
でも、すぐに笑みを浮かべてそう返してくる海未ちゃん。笑って言えるっていうことは、本当にそう信じてるんだ。
今でも二人は、キョウくんの事を想っている。
彼が、私たちを見守っていると信じている。
キョウくんが今でも──
──まあ…………現に本当に見守っているんだけどね……あはは……。
『えー……どうすんのコレ。え? ねぇ、俺どうすればいいの穂乃果? どんな反応したらいいの? こんなに悲しまれてるけど、俺いるからねここに。絶賛見守ってるからね、俺』
「(私に聞かないでよ……)」
あぁ……キョウくんといると全然しんみりした気持ちになれないよ……。
────────────────―
『ふぃ~……ま、今日のところは何ともなくてよかったな』
「うん、そうだね」
本日は始業式ということで特に授業があるわけでもなく、式の後は諸連絡やプリントの配布等で学校での時間は終わりを迎えた。その後はことりと海未といったお馴染みのメンバーと共に帰路を進み、今しがたその二人と別れたところだ。だから俺は穂乃果に話しかけることができるし、穂乃果も俺と会話することできる。
『あ、でもその前にだ。穂乃果、携帯出してみ?』
「え? う、うん……っと。それでどうしたの?」
『あぁ~……なんだ……一応さ、俺と話す時は携帯に耳を当てたままにしておいた方がいいな、と思ってさ』
他の人に俺との会話を聞かれた場合、その人には穂乃果が独り言を喋っているようにしか見えないだろう。しかも見えない相手と。そうなれば変人の道まっしぐらだ。もちろん俺だってそれだけは避けたい。だから穂乃果には、はなっから誰かと会話しているような素振りをさせておいた方がいいのでは、と思ったわけだ。
「そうだね。うんっ、じゃあこれからそうするよ」
『ご理解頂けてあざっす』
──俺と話す時は携帯を出すこと。
また一つ、俺たちの間で決められたルールが増えることになった。他のルールについては……また今度な。
言われた通り携帯を耳に当てて再び歩きだす穂乃果。しかし、流石に電話を掛けながら歩くというのはマナー的によろしくないかもしれない。話す時は携帯を使うとは言ったものの、やはり少し危なく感じる。
そうだな……。
『穂乃果。せめてどっかで座って話さないか? ほら、すぐそこの神田明神とかで』
そう言って俺は、すぐ右に見える神田明神へと続く長い石段を指差す。境内へと続く石段は何段にも積み重ねられているものの、別段長い坂という訳でもなく、朝から爺ちゃん婆ちゃんも登れるようななんて事ない普通の坂だ。
「えぇーっ! 今からここ登るのぉ~!?」
しかしやはりと言うべきか、当の穂乃果本人が全然乗り気ではない。ま、穂乃果だって一般的な一女の子だし、そんな労力を課してまで俺と座って話したくないのだろう。どうせ、家に着けば存分に話せるのだから。
しかしこれは俺の個人的な気持ちである。この晴れ渡った空の下で、穂乃果と境内で涼みながらゆっくりと話をしたいというのが俺の本心だ。折角現世に戻ってきたんだ。狭い部屋の中ではなく、外で広々と彼女と話をしたかった。それだけである。
そんな身勝手なエゴではあるが、俺は彼女を何とか説得させようとしていた。
「キョウくんはいいよねぇっ。だって浮いてるから歩く必要ないんだもん!」
『いいじゃんか別に。ほーら行くぞ。着いたら頭でも撫でてやるから』
「ふぇ? そ、そう……? ……だったら……」
──お前、結構チョロイのな……。
予想以上に簡単に穂乃果を説得できた事に少し拍子抜けをするも、俺はこのまま穂乃果が石段を登りきるのを真横から見守り続けた。
そして割と早めのペースだったのか、一分とかからないうちに穂乃果はこの石段を登りきった。しかし高校に上がってからはさほど運動もしていないのか、その姿は少しばて気味のように思える。
「はぁ、はぁ……やっぱり疲れるよぉ……この坂」
『お前、本当に高校入ってから運動してないのな……』
「だって、そこまでしたいことが見つからないんだもぉん……」
『ああ、そうですかい』
なんて暇な学校生活な事で……。そんな彼女の退屈そうな高校生活を軽くスルーしながら、俺は穂乃果を境内の中のベンチへと誘導する。そしてようやく腰を下ろすことができ、穂乃果は盛大に息を吐きだした。もうその仕草は女子高生というよりかは、むしろオバサンだ。ま、こんな事口が裂けても言わないけど。
しかし、それでも何とか登りきったんだ。俺は約束通り穂乃果の頭を撫でてやることにした。
「……ぇっへへぇ~」
『お前本当に好きだな、頭撫でられんの』
「だってキョウくんに撫でられるのすごく気持ちいいんだもん」
『……そうかい』
「?」
急に声に張りが無くなる俺を穂乃果は不審そうに見上げてくるが、俺はあくまでも平静を装って依然彼女の頭を撫で続ける。彼女はそんな俺を見て特に何も感じなかったようだが、こちらとしては言いたい想いを何とかして抑えている状態だ。
──なんでお前は簡単にそんな事……っ。
本当、素で人の心を乱すのが得意な奴だ。しかも全く意図していないところがまた厄介だ。
あんな台詞を不意打ちで撃ってくるのは卑怯だろ……。本当、なんで──
『──なんでこんなやつを俺は……』
「ん? どうしたの?」
『あぁ……いや、何でもないよ』
「んー? ……変なのっ」
ふと漏らしてしまった俺の呟きを特に気に留めず、穂乃果は引き続き俺の手に身(頭)を委ね始める。しかしずっとこのままというわけにもいかないだろう。そして俺は穂乃果の頭を撫でる手を止め、ゆっくりと彼女から手を放していく。
「ぁ……」
だーかーらーっ、そんなもの惜しげな顔するなよっ。なんか罪悪感半端ねーんだよっ。
しかし何時までも甘えてる訳にはいかないと思ったのか、穂乃果はすぐに元の明るい笑顔を見せてくれる。
……かと思えば、今度はいきなり目を輝かせ、嬉々とした表情で俺に迫ってきた。
「そうだっ、折角だからちょっとお参りしていこうよ。ねっ?」
『え? まあ別にいいけど、どうし──』
「よーっし、じゃあ早速!」
『──ってオイッ!? 聞けよっ!』
俺の言葉を待たずに颯爽と走り出す穂乃果。もちろんそんな穂乃果につられて、俺の身体も自然とそっちに引っ張られてしまう。浮いていられるのはいいが、こうして穂乃果の移動時に強制的に引っ張られるのは少しキツかったりする。だから、突発的な行動をよく起こす穂乃果の前では、俺は文字通り「振り回される」はめになってしまうわけだ。まあ、それはそれで穂乃果らしいし、振り回されるのは生前から同じ事だったしな。俺的にはこれはこれでありだと思っている。
そして神社の本殿前にたどり着くと、穂乃果は財布から1円玉を2枚取り出して(セコいなとは思ったが何も言うまい)賽銭箱に投げ入れた。
『って、なんで2枚?』
「なんでって……キョウくんの分に決まってるよ。ほら、キョウくんも何か神様にお願いごとしよっ」
『穂乃果……』
ははっ、なんか穂乃果らしいな。死んでしまって幽霊になった俺の分なんて……。そして穂乃果の方を見ると、早速神様にお祈りしているようで、目を閉じて手を合わせたままじっと動かなくなっている。
それにしても、神様へのお願い……か……。
『…………』
──果たして今、この状況以上の事を願えるのだろうか?
穂乃果の横に立ち、両手を合わせながらふと思う。そもそも俺がこの場に幽霊として存在していること自体、神様のおかげなのかもしれない。俺が死ぬ直前に穂乃果といることを願ったから、神様は俺にチャンスをくれたのかもしれない。こうして幽霊として、神様は俺に彼女の傍に居させてくれたのかもしれない。
ならば、今俺がここでこれ以上願うことがあるのだろうか? いくらなんでも欲張りすぎなんじゃないだろうか? そんな思いが頭を駆け巡る。
『……(これ以上は……望めないな)』
結局、穂乃果と一緒に手を合わせながらも、俺は今の現状以上の事を神様に望むことはなかった。
「……ふぅ。ねえ、キョウくんは何お願いしたの?」
『ふっ、なーいしょっ』
「ぅえっ? そんなぁ、教えてよぉ」
『そもそも神社ってのは神様にお願いしにくるところじゃねーんだよっ。願いってのは自分で叶えるもんなの』
「ぶぅー。それはそうだけど……」
俺の願いを聞けないことに文句を言う彼女が可愛らしく思えるも、取り敢えずはそう言って誤魔化すしかなかった。
『じゃあ逆に、穂乃果は何お願いしたんだよ』
「……私だけ言うのは不公平だと思うけど……いいよ、教えてあげる」
穂乃果の言う通り、自分の願いを言わないのに人に聞くのは卑怯だとは思うが、それでも穂乃果はまるで隠すことなく自分の願いを聞かせてくれる。彼女が今一番望んでいる、祈りを……。
「いつまでも……この状況が続きますように……って」
『この状況?』
「うん。ことりちゃんがいて、海未ちゃんがいて、お父さんにお母さんに雪穂もいて……それにキョウくんもいるこの状況っ」
『それは……』
──そんなの無理に決まっている。
そう言い返しかけてしまうが、何とか言葉を飲む。みんないつかは大人になる。ことりも海未も大人になれば仕事もするだろうし、結婚もする。それはもちろん穂乃果だって同じだ。そんな中でみんながいつでも一緒にいられる保証なんてどこにもない。よくて偶に顔を合わせるくらいだ。流れゆく時の中で、誰もが変わらずにいられるなんてそんなの不可能だからだ。
しかも、穂乃果は俺のいることも含めてこの状況がいいと願った。
『ずっと俺がいたら邪魔だろう。結婚できねーぞ』
「もうっ、なんでそんなこと言うのっ。いいんだよ、キョウくんも一緒で。私がお婆ちゃんになるまでいててもいいから」
『……多分その頃にはもう成仏してるだろうよ』
穂乃果の今の言葉……果たしてどこまでが本気なのだろうか……。しかし、そんな本気とも一時のテンションとも取れる彼女の言葉に一々振り回されるのも、また俺の望んでいる状況なのかもしれないな。
──今の状況がずっと続く。それを願うことくらいは誰にでも許されるのかも……な。
『ま、一応そういう事にしておいてやるか』
「そういう事って何なの~」
発言を受け流すともとれる俺の言葉に不満を零す穂乃果。こうして二人してバカしてるのが、俺たちらしいったららしいな。
そんな賑やかな雰囲気に包まれ、つい心が温かくなるような感覚に包まれる昼前の境内であった。
『……あれ?』
しかし……何だろうか? 何か一つ引っかかっていることがある。
朝と同じく、また何か大事なことを忘れてるような……。
『──って穂乃果! 携帯携帯!』
「あ……」
俺も完全にうっかりしていたが、穂乃果は参拝する時に携帯を鞄に閉まっており、しかもそれを出すことなく今までこうして俺と会話を進めてしまった。急いで鞄から携帯を取り出す穂乃果だが、もしかすると今更過ぎるかもしれない。
──オイ、不味いんじゃないのか……もしこんなとこ誰かに見られたりしたら……。
そして不幸なことに、そんな穂乃果の独り言(に見える光景)を見ていた人物がすぐそこにいた。
「…………ええっと……何してるんかな?」
「っえ? ぇ、ぁ、ぇ……えへへぇ……」
『あ、終わった……』
参拝していた俺たちの背後から聞こえる、どこか嘘っぽい特徴的な関西弁につられて振り返る。そこには、胸をこれでもかと言わんばかりに膨らませた、端正な顔立ちの巫女さんが呆け面で立っていた。巫女さんらしく長い髪を後ろで一括りにまとめ、衣装から見える肌は透き通るように白く綺麗で、まさしく神様に仕える人らしい清楚な雰囲気を醸し出している……ってそんな解析してる場合じゃねぇ!
「ねぇ、君……」
「は、はいっ……?」
そんな巫女の呼びかけに完全にテンパってしまっている穂乃果。まあ仕方ないだろうよ。あんな電波な独り言をこんな至近距離で聞かれたんじゃあな。
しかし何故だろうか? 穂乃果に話しかける巫女さん、という図にどこか違和感を感じる。なんだ……この違和感は……。
まるで穂乃果を見ていないような…………っ!?
『……えっ?』
そう、その巫女さんは最初から穂乃果の方を見ていなかった。
巫女さんが見ているのは穂乃果のすぐ隣。
穂乃果の横にある、本来なら誰もいないはずの空間を。
「……君は……誰なん?」
その巫女さんは、間違いなく俺の方を見て話しかけていたのだ。
『……え? うそん……?』
そんな呆気ない俺の呟きは、きっと穂乃果にすら届かなかっただろう。
勢いで書いた結果、後半で失速する羽目に……反省です。
それでは次回もご期待ください。
感想、評価お待ちしています。