なのはさん要素無し回ですがお許しください。
「何?逃した?」
シックな造りの、いわゆる執務室に相手を震え上がらせる程の威圧を含んだ声が重々しく響く。
「は、はい。瀕死にまで追い込んだのですが第三勢力の妨害を受け…」
「それはいい。だが問題はその後だ。……再度発見するも、またもや逃げられた、だと?」
「っ!そ、そこにはその、6課の連中もいまして…」
「…まあ、いい。処罰はまたの機会だ」
「はい。失礼致します」
そう申し立てた部下の男はそそくさと部屋を立ち去る。
一人残された男は窓際に寄りかかり憂いの溜め息をつく。
「………近い、のだろうな。もうまもなくだ。全ての終わりは。…さてどう転ぶか……」
男に名前はない。
男を知る者も数少ない。
ほんの一握りの、彼を知る人間は彼をこう呼ぶ。
インペラトルと。
その男を理解できた人間はいない。
その男の過去を知る人間もいない。
そも、彼は魔導師であるのかどうかも誰も知り得ない。
しかし彼はいる。確かに存在している。
その言い表せぬ恐怖、
見た者全てに抱かせる畏怖、
その異怖こそが、
彼をインペラトル…皇帝たらしめているのかも知れない。
それからしばらく後、もう日が赤く染まりだした頃
彼は薄暗い倉庫のような場所に来ていた。
彼の前には百人程の人間。
その誰もが時空管理局において上官クラスの魔導師だった。彼はおもむろに話始める。
「今回久々に君達に集まってもらったのは他でもない、例の願望機のことだ」
上官達は直立不動で黙している。
「先日、ようやく発見したアレはちょうど高町隊員に回収されようとしているところだった。すぐさま強奪し、口封じをしようとするも余所者の邪魔を受け、失敗。さらに、二日前に所在を掴んだ時も暗殺に失敗。状況は芳しくない。…しかしこちら側にも得るものはあった。それが何かは明かせないが諸君にこれからは高町隊員の殺害ではなく、確保を優先してもらう。やってくれるな?」
「イェッサーインペラトル」
そうして音もなく、集会は終わった。
彼には唯一無二の補佐がいる。
名はあったがとうに忘れられ、誰しも彼を補佐と呼ぶ。
補佐は執務室に戻った彼に声をかける。
「よろしかったので?」
何を、といった顔で振り向く彼
「このような展開は望まなかったのでは?」
「そのことか…いいのだ。つまり俺も結局抗えなかったという訳だ。」
日頃の彼からは想像もできないほど穏やかな声色。
「あの娘は果たしてどう進むのだろうな…」
その顔は子を見る父のように見えないこともなかった。