魔法少女リリカルなのは~星を統べる少女~   作:sT油

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戦闘シーン……ないですよね………


主治医の憂悶

私の名は、八神シャマル。

はやてちゃんの守護騎士であり、家族でもあるヴォルケンリッターの一員。

それ以外にも私を形容する呼び方はある。

……「高町なのはの主治医」それもその1つだ。

 

 

懐かしさを感じる夕暮れの海鳴に転移してきたのがつい先程。はやてちゃんはついて来ようとしていたけれど、彼女はもう管理局の重役だ。迂闊にホイホイ管理外世界に来れよう筈もない。別に戦線に出張る訳じゃないのだからと宥めすかして単独行動をどうにか許可して貰えた。

こうまでして海鳴に来た理由、それは昨日の通信にある。その“電話”の内容はこうだった。

『娘の行方不明の件について、娘の主治医である貴女から直接話が聞きたい。時間が合うなら明日、翠屋に来てほしい』

それは高町なのはの父親、高町士郎からの電話だった。実際には挨拶等もあったが主にこういった内容を告げられた。その話し方は言外に一人で来て欲しいと匂わせていたのを感じとり、こうして一人でやって来たのだった。

元々、高町家には伝えれる情報は全て流しているので高町なのはの捜索状況は知っているだろう。

なんとなく、察してはいるのだがあまりその可能性は考えたくない。

…等と考えているうちに翠屋に着いたようだ。重い足を動かして、店内へと踏み出す。

「いらっしゃいませ……あぁシャマルさん」

「お久しぶりです。桃子さん」

出迎えたのは高町桃子。割と年齢をくってる筈だがその美貌には全く陰りがない。

「主人なら奥ですよ」

「ありがとうございます…それにしても相変わらずここは人気ですね」

店内は平日だというのに六割程席が埋まっていた。

「毎日が嬉しい忙しさです」

「お体には気をつけて下さいね」

つい医者っぽい世話焼き口調になってしまうが桃子は気にしていないようだ。そのまま私は奥に向かう。

そこは応接室だった。軽くノックをすると中から扉が開く。

「突然呼び出してすいません。シャマル先生」

「いえいえこちらは大丈夫ですので」

「どうぞお掛けになって下さい」

席に腰を降ろすと出迎えた壮年の男……高町士郎は向かいの席に座る。机には淹れたての紅茶が既に置かれてある。私が来たのを察知して淹れたのだろうか。

「どうぞ。自分の淹れた物なのでお口に合うかわかりませんが」

勧められるまま飲んでみるととても奥の深い味が口腔に染み渡り、爽やかな柑橘系の香りが鼻腔に満ちる。

「とても美味しいです。流石ですね」

「いえ、妻の淹れる茶に比べれば足元にも及びません」

このレベルを凌駕する紅茶とは如何に、と軽く戦慄する。

紅茶で士郎も一息つく。どうやら本題に入るらしい。

「単刀直入に聞きたい、シャマル先生。娘の、状態はどうなんです」

どうやら鎌をかけている訳ではないらしい。

「解っていらしたんですか」

「家族、ですから」

その言葉はまるではぐらかしているように聞こえるが、多分そうではなく、根拠がないからそういうのだろう。

あながちその根拠無しの憶測も間違ってはいない。

「なのはちゃんの後遺症は魔力の低下だと当時…つまりJS事件のときはそう思われていました」

……最初に気付いたのは局の定期健診のときだった。どうもその時のなのはは教導訓練が大変だったらしく、診察中にベッドの上で眠ってしまったのだ。起こそうかと思ったが時間に余裕もあったのでそのままにしておくことにした。その直後だった。突然なのはの身体が痙攣しだしたのだ。その時の彼女の表情は苦悶という言葉では足りないほどの苦痛を訴えていた。

「……ぐっ………」

「な、なのはちゃん!?大丈夫!?」

しかし鎮痛剤を探している内に彼女の痙攣はおさまっていた。だがあまりにも異常なので目を覚ましたなのはに精密検査を受けさせた。

 

「…シャマル先生。どうだったんです?その検査結果は」

「ヒビです」

「ヒビ…?」

「はい。彼女の全身は筋肉から骨、リンカーコアに繋がる神経等全てに細かいヒビがあったのです。…普段は恐らく我慢していたのでしょうが…」

はっきり言って我慢できるできないのレベルの痛みではない。歩く度に全身をハンマーで叩かれているようなものなのだ。

「…。」

「…。」

応接室に沈黙が広がる。

「なのはは、今どうなんでしょう」

「…失踪現場には多量の血痕がありましたので、かなりの大怪我を負っているのではないかと…」

「そうですか…。ありがとうございます。本当に」

「え…?」

「家の娘が御迷惑をおかけしました」

「い、いえいえそんな…私は彼女の主治医ですから」

「なのはのことを、どうかお願いします…」

「はい。任せてください。彼女を必ず救い出します」

言いながら心が痛む。

ここに白状すると、現在管理局は高町なのはがいるとされる次元跳躍船の足取りすら掴めていない。つまり向こうが何かしらのアクションを起こさない限りこちらも動けないのだ。

その事実を伝えられる程、私は豪胆ではなかった。

そのまま二言三言交わしてから応接室をあとにする。はやてご要望のケーキを買って翠屋を出る。時間にしてみれば一時間程の間だったが、とても密な時間だったと感じる。

 

ふと見上げると満天の星空が広がっていた………




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