魔法少女リリカルなのは~星を統べる少女~   作:sT油

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タイトル変えました。
突然ですいません。



垣間見る本質

無。

 

未。

 

非。

 

不。

 

嫌。

 

悪。

 

害。

 

憎。

 

恨。

 

怨。

 

死。

 

ネガティブな言葉など、一文字だけでもこれほどある。いや、これ以上あるだろう。ましてやそれら一つ一つを組み合わせた熟語を数に含めば、その数はもう数えるのも莫伽らしい。

だがその無数の感情表現の全てを今、私は感じている。

“この世に、自分と同じベクトルにいることが許せない”。私は目の前の初老の人物にそういうモノを抱いていた。

 

抱くと同時に、混乱していた。

何より自分は今まで、例え撃破するべき敵と相対したとしても、ここまでの激情を抱いたことなどない。

 

あまつさえ、“相手を殺そう”となど考えたことすらない。

そうだ。認めよう。自分は今、この男に対して殺意を抱いている。

こんな激情、抱いたことすら無いのだ。

抑え込むことなんて、出来る筈もなかった。

「ああああああああああ!!!」

アステルの交代を求める声も、今の私の頭には届かない。否、届いていても認識できない。

だから私は一直線に、戦技など欠片もない突進で男に迫る。

「そう、そうでなくてはな!“後継者”!!私を滅ぼしたいか!消したいか!いや違うな!単純に、私を殺したいのだろう!?タカマチナノハ!!」

男は喋り続けている。

その煩い口に手が届くまであと一歩……

「っ!あぁっ!」

寸での所で、男の喉笛に掴みかかろうとする己の左手を逸らす。

「どうした?殺さないのか?」

男の言葉に答える余裕は今の私にはなかった。

 

……今、自分は何をしようとした?

 

悪寒が背筋を走る。我を忘れていたとはいえ、迷いなく相手の喉笛をかっ切ろうとした。その事実に戦慄する。

 

……どうして止めた?

 

やり場のない怒りが身体を焦がす。殺すべき相手を前に手を止めた。その事実に激昂する。

 

殺さなきゃ 殺しちゃダメ 

なんで殺しちゃいけない なんで殺さなきゃいけない

だって殺さなきゃ そんなのダメ

なんで まだお話してない

話す必要なんてない 話さなきゃわからない

憎いのに どうして

私をこんなにした まだわからない

殺さなきゃ 殺しちゃダメ

なんで殺しちゃいけない なんで殺さなきゃいけない

…………………………………

 

頭が割れそうだ。私のなかで二つの感情がぶつかりあっている。一体どちらが自分なのか。それともどちらも自分なのか。

目の前の男は全て判っているとでも言いたげに頭を抱える私を見ている。その目は、何故だろう、少しの憂いを含んで……?

「ナノハッ!」

男は突然降ってきた炎撃に直撃して吹き飛ぶ。

「ナノハ、無事ですか!?」

必死の顔で私を見るのは私……じゃない、シュテルだ。

「シュテ……ちゃ……」

心配しないで、と声を紡ごうにも掠れて言葉にならない。

「これだから行かせたくなかったのです…!っ……ジェイルから連絡が入りました。局の増援がここに押し寄せて来るらしいです。ここは一度撤退を」

「…わかった」

まださっきの余韻が身体の内側で燻っているが幾分か冷静にはなれた。

アレは不味い。

私とは多分、相性は最悪だ。ミドルレンジとかクロスレンジとかの問題ではない。高町なのは(ワタシ)という人間と根本的に沿わないのだろう。

「ナノハ早く」

「うん。あ、ごめんねアステル。無理言っちゃって」

[私は構いませんから早く退きましょう]

「じゃあレイジングハート、セットアップ」

愛杖を握り、空に飛び上がる瞬間、視界の隅に赤いモノが映る。

「………っ、ごめんね」

死んではいない。急所は外れている筈だし、何より彼女は戦闘機人だ。

そんなことを考えてしまう私は最低の人間だ。……シュテルが性格やその人の本質すらコピーしてなくてホントによかったと思う。もしそこまで高町なのは(ワタシ)に似ていたら多分……

 

殺してしまうだろう、そう確信をもって思った。

 

 

 

 

「スバルッ!スバルッ!返事しなさいよ!」

いつだって私は駆けつけるのが遅い。

彼女が姉を助けようと単身で敵に向かって行き、傷を負った時も、空港のときも。

私は、何ひとつ彼女にしてあげられない。

執務官になって多くの人を救えても、大切な人を守れない奴は無能だ。

「ナカジマは無事か!?」

駆け寄ってくるのは彼女の上司、ヴォルツ・スターン。

「重傷ですがまだ助かります。ここにはシャマル先生がいる筈ですからそこまでお手伝いできますか?」

一応冷静なつもりだが、早口になるところ、私も焦っているのかもしれない。

血で汚れるのも構わず(ティアナ・ランスター)親友(スバル・ナカジマ)を担ぎ上げた。

 

 

 

「熱い。痛い。だがそれもいい」

瓦礫から立ち上がった男の前に高町なのははいない。

「今度の適合者はなかなか面白いな」

話題の主の高町なのはは男の前にいない。

「お前もそう思わないか」

男の前にいるのは高町なのはではなく……

「なぁ?リペル・クロイツ。私の元部下よ」

二本の小太刀を男に向けるリペル・クロイツ(高町なのはの恩人)だった。

 

「あんたは……まだ追い続けてるのか」

「勿論。だが飽きた訳ではないが…少し、別の愉しみもできた」

「あんたのことだ、どうせ幼女をバラバラにして愉しんでいるんだろう」

「………え、お前、私のことそんな風に見てたのか?」

「おかしかったか?記憶が正しければ、あんたは俺を部下にするために村の住民を全て、残虐な、冷酷な、非道な方法で殺し尽くした。勿論俺の家族も、友達も、恋人も。俺は直接見てないが、なんでも俺の恋人をバラバラにして殺したのはお前自身だったそうじゃないか」

「くっ、クックックッ。あのときは流石にそんなことまでは知らなかったさ。ただ彼女は唯一私に立ち向かおうとした。私はそれに応えただけ」

「………俺はあんたと昔話をしにきたんじゃない。支払いに来ただけだ」

「そうだな。こちらも払ってくれるなら嬉しいものだ。勿論、延滞金はあるが」

「そういえばさっき言った愉しみとは?」

「あぁ、いやなに、降りかかった宿命もさることながらあの人間性、心の在り方がね……とても美しく捻れているものでね」

「………壊すのか」

「さぁ?それは私が決めることではない。…さて、君はどういう方法で私を倒すのかな?」

「御大層な戦術なんてありはしないさ。ただ」

次の瞬間には既にリペルは男の背後で小太刀を振りかぶっている。

移動する(ウゴク)だけだ」

 

 

 

戦場の上に広がるのは

青い、蒼い空。

戦いで流れるのは

赤い、紅い血。

 

この現実を、星は、憂うのだろうか。

 




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