あの襲撃から六日が経った。死者は一人、襲撃と同時刻にとある局員が何者かに殺害された。それを除けば誰も死んではいない。
だが六日後の朝になってもスバル・ナカジマは目を醒まさない。彼女だけではない。あの日、「高町なのは」と思わしき人物に昏倒させられた局員は皆、今も眠っている。シャマル先生の診断によれば、本当にただ眠っているだけで命に別状は無く、点滴による栄養補給さえ行えば問題ないとのこと。今日の六課の議題はまさにそのことについてだった。
「ほな始めよか。あー、でもまず整理せんとな。ティアナ」
名前を呼ばれて席から立ち上がる。そして手元の端末を操作して会議室の大型スクリーンに画像を映し出す。
「はい。今日の議題である複数局員の長期昏睡ですが、原因はこの画像の物体にあると思われます。この弾丸の形状をした物体は、昏睡した局員全員の体内から発見されました」
「そしてそれの解析が終わったと」
シグナム副隊長の言葉に頷き、解析結果を映し出す。
「結果として分かったのは、この弾丸がカートリッジのようなもので中に魔力を籠めることができるということです。ですがただ純粋な魔力を撃ち込まれただけで管理局員が何日も昏倒するとは思えません。しかも昏倒した局員の中には戦闘機人である者もいます。これは推測ですが、弾丸に籠められていたのは何らかの『魔法』だったのではないかと考えています」
会議室に動揺が走る。まず声をあげたのはヴィータ副隊長だった。
「あたしらの使うカートリッジよりもずっと小せぇアレに魔法なんて籠めれんのかよ」
「あー、そのことに関して言えば……あ、自分発言していいですかね?」
そう言って、私の隣の席から立ち上がったヴァイス陸曹は八神指令に許可を仰ぐ。
「ええよ。他のみんなも思ったことがあったら遠慮なく言ってな?」
「ありがとうございます。……えー、弾丸に魔法を籠めることに関しては可能です。空の薬莢に非殺傷設定した麻痺魔法を籠めたりして撃ったりしたことありますんで。ただそれに数日もの間昏睡させるような魔法を仕込めるかっていうと、少なくとも俺にはできませんね」
「なのはには出来るかも知れねぇってことか……」
「いやまぁ全部推測の話ですけどね? それにまだあの人本人と決まったわけじゃないですし、ははは、は、は……」
部屋に痛いほどの静けさが満ちる。そう、仮にそれが理論上可能だとしても、実行可能な魔導師などそうはいない。精鋭集いのこの六課にも三人いるかどうか。
おそらく、彼女なら可能だろう。
「こちらからの報告は以上です」
「ありがとな、ティアナ。……これは更に推測を重ねることになるんやけどな、ちょっと見てくれへんか」
陸曹と共に席に座りスクリーンに目を向けると、そこには何かのグラフが表示されていた。
「これは件の局員達の脳波の推移を平均したグラフや。どうもシャマルに言わせるとこれは『非常に幸福な時を過ごしている人』の脳波と同じらしい」
その言葉を聞いて八神指令の隣にいるフェイト隊長が身を強張らせる。
「……なんでそうなるんかは、まだわからんけどな。何かに関係することかも知れんから一応覚えといてな」
私はその指令の言葉に少し違和感を覚えた。『推測を重ねる』にしては推測らしい推測はしていない、まるで言おうとした推測を飲み込んだかのような……。
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「……別に、言ってもよかったんだよ? あれはもう、私の中で整理がついていることだから」
ティアナの報告の後、いくつかの報告や意見交換を経て会議は終了した。私はヴィヴィオが独りで待つ家への帰路についていた。通信ウィンドウ越しにはやてが答える。
「もしそうやとしても私が言うべきじゃないって思ったんよ。それに整理がついてるって言う割には、誰かさんガチガチになってたし」
「……そうか。まだ、整理しきれてないのかな、私」
「整理しきれるもんでもないやろ。私ら人間はそういったもんを背負ったまま生き続けなあかん生き物なんやから」
厳しい言葉の割に画面に映るはやての顔は穏やかだった。そうだ、私達は背負い続けなければならないし、そして今の私たちを構成するのも、その背負っているものなのだ。
「それにそもそもまだ決まった訳じゃない。闇の書事件の時、私とフェイトちゃんが経験したあの魔法は、私にも使えへん。使えたんは先代リインフォースだけや。もしなのはちゃんやったとしても使えるとは思えんしな」
「そうだね。……あ、もうすぐ着くからそろそろ」
「わかった。あ、そういえばヴィヴィオはなのはちゃんのこと、知ってるん?」
住宅地に車を進めながら答える。もう外は随分と暗くなっている。
「ううん、まだ。でも聡い子だからもしかしたら勘づいてはいるかもしれない」
「そうか……まぁ、言わんうちに片付く可能性もあるしな」
「そうなるのが一番良いんだけどね……。ん、着いた」
「ほなまた明日な。おやすみ」
「うん、おやすみ。はやて」
通信を切って車を降りる。駐車場から家まで歩いていく。少し肌寒いので上着をしっかり着込む。
角を曲がると家が見える。宵闇の中で家々の明かりが目立つ。よく見ると我が家の玄関先でヴィヴィオが誰かと話している。一人でいるヴィヴィオを心配したご近所さんだろうか?
「――――帰ってくるの?」
「うん――――必ず」
冷たい風にその来客の髪が舞う。それは見慣れた栗色の。
「あ、フェイトママ……」
ヴィヴィオの声で気付いたのか、その人物はゆっくりと振り返る。私を見るその青い瞳は。
「――――フェイトちゃん」
「なの、は……?」
どうしようもなく『高町なのは』だった。
うちの六課は定時退社できるのデース
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