神童や、霧野、葵が帰った後・・・
「お母様、ちょっと涼みに、外へ行って来てもいいですか?」
「そんな・・・そんな体で外になんか出るものではないわ。せめて、庭くらいにしときなさい。あと、何度言ったら分かるの?『お母様』ではなく、『お母さん』と呼びなさい」
「はい、分かりました、お母さん。でも、今日は庭ではなく、外に出たい気分なのですが・・・」
「・・・分かったわ。外に出てもいいわ」
「ありがとうございます。では、行ってきます」
桜子さんの、許しを得た楓は、剣城との約束を守るため、河川敷の練習場まで走った。しかし、途中で、神童、霧野、葵を見つけたため、少し遅れる・・・というハプニングが起こった。体調が悪かった人が、走ってどこかに行くなんて、変な事だからだ。ようやく、3人に見つからないところまで来て、そこから、また走り出した。
河川敷の練習場まで来た楓は、剣城を探した。
「剣城?どこにいるの?いるのなら、出てきなさい」
「隠れてなんかねぇよ」
その声と同時に、暗闇の中から、剣城が出てきた。いつもと違い、普通に雷門中学校の制服を着ている。おそらく、変装だと楓は思った。
「剣城、その格好、どうしたの?変装のつもり」
「いや、変装なら、そのまま帝国学園の制服着てくるに決まってるだろ」
「そうね。なら、なぜ、雷門中の制服を着ているの?」
「ま、一応変装・・・のつもりってことにしとくぜ」
「・・・そう。そうしとくわ。で、何の用?」
早速、本題を切りだした瞬間、剣城が、楓の手を握った。とても強く。
「いたっ!な、何するの?!」
「おまえ・・・聖帝を裏切るような事、してねぇだろうな」
「して・・・ないわよ・・・」
「嘘ついてないだろうな、楓」
「えぇ。私たちシードは、全てを、聖帝に注ぐ存在よ。そんな、裏切りなんて、するはずないでしょ・・・と言いたいけれど、あなただって、心からは仕えていないでしょう?」
「・・・あぁ、そうだな。だって、俺は、兄さんの・・・」
「言わなくていいわ。分かっているから。聖帝は、ずるいもの」
「あぁ、そうだな」
そして、一息置いてから、本当の本題に入ることにした。
「あとは、何?あなたが、これだけ伝えるために、私を呼び出したとは思えないわ」
「楓にはわかってたな・・・」
「早く話して」
「あぁ・・・松風の親戚・・・知ってるか?」
「秋さん・・・のことね。お兄さんから聞いた。円堂監督や、鬼道監督の中学校時代の、同級生・・・よね?それで、秋さんがどうかした?」
「秋さんは、聖帝の正体を知っている」
楓は、心の底から驚いた。
「秋・・・さんが?!どうして・・・聖帝の正体を・・・」
「ということは、楓も知っているんだな・・・聖帝の正体」
「・・・えぇ。お兄さんから聞いた。いまは、他の人に、口外することは出来ないけれど、これだけは言える。聖帝は、悪い人ではない。黒幕は、他にいる」
「やはりな・・・それだけ、知らせておきたかっただけだ。じゃあな」
「えぇ、さようなら」
そして、剣城と楓は、それぞれの家に帰った。
その帰り、楓は神童と会った。
やばい、と思ったが、神童からかけられた言葉は、意外なものだった。
「剣城と、何を話していたんだ」
「・・・みていたんですか。さっきの事」
「あぁ。それで、質問に答えてくれ」
「・・・誰にも口外しないでください。そう約束して下さるのなら、お話します」
「あぁ、分かった。約束しよう。話してくれるな?」
「はい。私は、剣城と同じ、フィフスセクターのシードとして、この学校に入学しました」
「なんだって?!じゃあ、楓は、スパイ・・・」
「はい。でも、私の真の目的は、この前皆で見に行った、フィフスセクターを潰すための組織、『レジスタンス』に、フィフスセクターに侵入して、スパイとして、フィフスセクターの情報を、流す事です。そのことは、剣城は、知りません。だから、少し私の様子が、おかしかったのでしょう。だから、裏切っているのではないか?と質問されただけです。・・・これでいいですか?キャプテン」
楓は、本当の本題は、神童にも話さなかった。
「あぁ。ありがとう。それじゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい。また明日」
そして、神童と楓は別れた。